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第一章 第十話  女王国編10

召喚者たちが女王国リュカレアに協力すると決めてから4日が経過した。現在、霜葉たちは馬車で移動中だ。


「目的地はまだなのか?」

「今日中には着くらしいよ?」

「馬車での長時間移動も疲れるんですね」

「私たちは車に慣れていますからね。それと比べしまうとどうしても劣りますよね」

「くぅ~zzz」

「にゃ~zzz」

「・・・・・こんなに揺れてるのによく寝れるなその二匹は」

「ふふ、そうだね」

「・・・・かわいいです」


霜葉たちは女王陛下の依頼である場所に向かっている。きっかけは生徒会長が女王陛下に協力すると伝えた日の御昼過ぎにお茶会に呼ばれた時に・・・・



「まずはお礼を述べさせてください。この国に協力すると決めていただきありがとうございます」

「協力する形は個人の能力で考えてもらうので、戦いを強制しないのならばみんな協力してくれるでしょう」

「はい、それはもちろんです。誓ってそのようなことはいたしません」


ここは以前もお茶会に呼ばれた中庭。霜葉たちは女王陛下にお茶会のお誘いを受けてこの場所に来ていた。今回も女王陛下と一緒にレギオス王子とメルビス王女が隣に座っている。


「イザヨイ~おいしい?」

「にゃ~♪」

「うわ~やっぱりふわふわだ~」

「わふ~♪」


二人は霜葉から白夜と十六夜を受け取り、現在お世話中。その顔はにっこにこである。そばにいるメイドさんたちも微笑ましい光景に笑顔を浮かべている。なお二匹の名前を教えた時、メルビス王女が変な名前と言ったのをレギオス王子が注意した一幕があったりした。


「それで今日のお誘いはどう言った御用で?」

「今日はお礼と、ソウハ殿がこれからどうするのかをお聞きしたくてお誘いいたしました」

「僕ですか?」

「はい、と言うのもアルバンが最近貴族たちと夜に話し合っているようなのです。話の内容までは分りませんが、これまでのことを考えると召喚者様方に何かするのではないかと心配なのです。特にソウハ殿はアルバンが何か失礼なことをするのではないかと・・・・」


確かに、アルバン王子は職業主義なところがあり表向きは【魔物使い】の霜葉を弱い職業だからと言って見下しているのだ。


「確かに心配になる話ですね」

「我が息子のことで皆様には要らぬことに手を割くことになり申し訳ありません」

「いえ、女王陛下が謝ることではありません。これは本人の考え方の問題ですので」

「ありがとうございます」

「とりあえず、僕のこれからの予定は冒険者になり、魔物を何人か仲間にした後、旅をしたいと思います」

「旅、でございますか?」

「はい、僕自身はスキルの効果で何とか役に立っていますが、いずれは皆の足手まといになるでしょう。ですから、僕は魔物を何人か仲間にして魔王の情報や元の世界に帰れる情報を集めようと考えています。そのためにも他の国々に行ってみたいのです」


今、霜葉の言った言葉は後半はともかく前半は方便だ。本当のことが言えないため、表向きの理由を考えたのだ。


「何も危険な旅をする必要はないのでは?」

「魔王と言う危険人物がいる以上どの国に居ても安全とは言えません。それにこの国が調べられるのはこの国の中だけです。各国の情報まではある程度は調べられるでしょうが、そう深くは調べられないのでは?」

「それは・・・・」

「ですので、僕は旅をしながら情報を集めようと考えたのです。冒険者にでもなれば身元の保証はされますし、旅をする上では最適ですから」

「・・・・どうやら意志は固いご様子。でしたらお止めしても無駄でございましょう」

「はい、わがままを言って申し訳ありません」

「謝る必要など・・・ですが、そう言うことなら丁度良いお話があります」


そう言って女王陛下は姿勢を正した。女王陛下の様子に話が変わると思い4人も姿勢を正した。


「この王都から西の森を進んだ先にわが国で最も魔物の種類が多い辺境の地があるのですが、あなた方四人にそこへ行ってほしいのです」

「なぜですか?」

「理由は3つほどあります。一つはそこは魔物の数が多く生息して種類も豊富です。ソウハ殿が新た魔物を仲間にするなら探しやすく、他のお三方も戦闘経験を積む意味でも職業ジョブやスキルのLv上げでもふさわしい場所です」


確かに霜葉が旅をするなら戦力増強は必須だ。しかし、そのためにはこの王都では魔物の数的にも強さ的にも物足りないと思っていたのだ。


「二つ目は、そこを治める辺境伯は亡くなった夫の無二の親友なのですが、現在辺境伯はとある問題に頭を悩ませているのです」

「問題ですか?」

「はい、それは生産職不足です。その町は魔物の数が多いため、冒険者の数質ともに高く魔物素材も数多く売られているのですが、今現在その町にはそれを加工できる職人が少なくて生産が追い付かないのです」


どうやら異世界でも後継者不足と言うか、働き手不足の問題はあるようだ。


「そこで私は召喚者たちの生産職に就いている皆様にその町へ行っていただきたいのです。そこでは貴重な魔物素材も手に入ることがありますし、職業ジョブやスキルのLv上げには最適な環境です」


確かにそれはいい考えだ。協力したくても生産職の場合は素材がなければ物は作れない。行きたいと思う召喚者たちは多いのではなかろうか?


「3つ目は皆さんも一緒に行って、召喚者たちのまとめ役をお願いしたいのです。さすがに魔物の多い環境では危険もあります。行くのが生産職ばかりと言うのも問題でしょう」


霜葉たち4人は受けてもいいと思った。霜葉の戦力強化はもちろん他の三人にもメリットがあるからだ。


「いくつか質問してもいいですか?」

「どうぞ」

「まず、その町の辺境伯は信用できますか?」


ちなみに辺境伯の地位は貴族の位で言うと侯爵くらいの地位だ。貴族としてはかなりの上位の立場だ。


「はい、もちろんです。名はガルレオ・カルナキスと言うのですが、勇者召喚の反対の立場だった私に一番早く味方してくれた者です。人柄も理解しておりますし、信用できる者です」

「なるほど、次はなぜ私たちにこの話を?召喚者の中には勇者もいますが?」

「勇者が起こしたトラブルは私の耳にも届いています。生産職の者を軽んじる彼では問題を起こすだけです。皆さまは生産職に就いている者たちとも親しくされていると聞いています。あなた方が一番適任なのです」


さすがに女王であるがゆえ情報を集めていたようだ。そして質問していた生徒会長は三人を見渡して三人が頷くのを確認した。


「女王陛下。そのお話しお受けしようと思います」

「ありがとうございます」


そして早速生産職の召喚者たちに説明がされ。行きたい者たちと準備をして次の日の昼には出発した。なお、霜葉が居なくなると知って十六夜がお気に入りのメルビス王女が行かないでと言ってきたが、女王陛下とレギオス王子が説得してしぶしぶ納得したとか。



そして現在はその辺境の地に馬車で移動している。何度か野宿も経験しながら途中で現れた魔物も護衛の騎士や自分たちで倒して霜葉や調理術スキル持ちで素材を剥ぎ取ったりしながらだ。


ここで活躍したスキルがアイテムボックスだ。このスキルのおかげで嵩張る魔物素材や荷物、武器などが仕舞えるので重宝している。アイテムボックスはスキル持ちが物に手を触れて収納と思えば消えて、閲覧と思えば仕舞った物が確認できて、出したい物を思えば目の前に出てくる便利スキルだった。


さらに魔物との戦いで一番活躍した人は生徒会長だ。近接戦闘では槍や体術で対応し、遠距離では風魔法術を放ち、傷ついた者が居れば回復魔法術で回復する。一人で何でもできたのだ。なお、火魔法術は周りが森のため使えなかった。


さらに蛇足だが現在の生徒会長の服は制服のスカートではなく茶色いズボンと灰色のシャツ様なものを着ている。他の女子も少なくとも魔法術師以外はズボンのようなものを穿いている。訓練が激しくなってきた時からスカートではできなくなったのでズボンを提供してもらったのだ。


「とりあえず、お金が手に入ればまずは服を買わないといけませんね」

「そうですね。いつまでも制服と訓練の時に着ている服だけというのも・・・・」

「そうだね。僕ももうちょっとラフな服が欲しいよ」

「俺もだ」


洗濯するのは【クリーン】の呪文でどうにかなっているが、さすがに男子でもずっと制服のままと言うのはつらいようだ。


やがて森をぬけ、目の前に大きな壁が見えてきた。壁はかなり重厚に造られていてもはや要塞のような迫力だ。


「おいおい、すっげー壁だな」

「王都の壁より立派です」

「それだけ魔物の脅威が王都の周りより危険だってことだね」

「そうですね。これは気を引き締める必要がありますね」


想像よりも立派過ぎる壁に4人は驚き、これくらいの壁がないとここでは安心して生活できないと言う事実を正しく理解していた。


壁に取り付けられた門の前まで着いて、護衛の騎士が門番に説明と物資の届けに来たと言っている。この物資を届ける必要があったため、女王は召喚者たちに話を持ってきたのだ。さすが女王であるからかよく考えている。


説明が終わり、門を抜け町の中を辺境伯の家まで行く道中で霜葉たちは町の様子を見ていた。


「武装している人が目立つな。兵士も多いみたいだし、やっぱりここは危険なんだな?」

「兵士が多いのは冒険者は荒くれ者が多いみたいだから、治安維持も兼ねていると思うよ?」

「それもあるでしょうね。私たちも気を付けないといけませんね」

「でも、街は活気があるね。屋台なんかも多いし」

『zzz~ん?いいにおいがする~』

『zzz~ん?主~ごはん~?』

『二人ともおはよう。でもごめんね?ごはんはまだだよ』

『『ざんねん~』』


町のあっちこっちにある屋台の匂いで起きた2匹は食べられないと知り残念そうだ。それはともかく。裕佳梨の言った通り、屋台の呼び込みや店の宣伝の声などで中々の活気に包まれている。そんな道を進み、しばらくすると町の雰囲気が変わった場所へと入った。


「さっきの場所は商店街って感じだったけど、ここら辺は高級住宅街って感じだな?」

「おそらくは貴族の住まう地区でしょう。辺境と言えど貴族が全くいないのも問題ですからね」

「なるほど」

「見るからに高級そうな建物ばっかりですね」


さっきまで通っていた道の建物はほとんどが平屋で木材で造られていたが、この場所はほとんどが2階建ての石やレンガ造りの建物だ。そんな場所の先へと進んだ先には・・・・


「なぁ?あそこが辺境伯の家か?」

「向かっている方向からしてそうみたいだね」

「家と言うか・・・・見るからに要塞とか砦って感じなんだが?」

「す、すごいね・・・・」


霜葉たちの向っている先には、重厚な石造りの壁に守られたこれまた重厚な造りの石を積み上げて造ったと言うべき砦があった。壁の方はさすがに町を囲んでいる壁程ではないが、それでも人がたやすく乗り越えられないように工夫がされていた。


「おそらくは緊急時の避難場所でもあるのでしょう。魔物が押し寄せてもあの建物に立て籠もれば援軍が来るまで持ちこたえることができるように」


生徒会長の意見に三人はなるほどと思った。実際その通りなのだ。この場所が特別と言うわけではないが、ほとんどの貴族が治めている町ではこういった避難場所を造るか、治める貴族の家を避難場所にするためこのような造りとするかに分かれる。もっとも、金銭的問題で家を避難場所にするのがほとんどだが。


やがて馬車はその見るからに砦のような家?の門の前で止まり、町へ入った時のように門番に説明をしている。しばらく経った後に門番が門を開け霜葉たちと召喚者たちの乗った馬車が、続々と砦に入り進んで行く。


着いた先はおそらく兵士たちの訓練所だろう。砦の裏側にあり王都の訓練所ほどではないがかなりの広さがあった。霜葉たちはここで降りるように護衛の騎士たちに言われて今馬車から出た所だ。


「ここで待ってればいいのか?」

「僕たちの数が数だからね。ここで全員に挨拶するつもりなんじゃないかな?」

「あ、誰か来たようだよ?」


霜葉たちや召喚者たちが待っていると、砦から三人の人が出てきた。二人は鎧を着ているので護衛の騎士だろう。もう一人は赤い髪を刈り上げて筋骨隆々な体を貴族が着るような服に包んでいる。その服はパンパンになっていてどこかきつそうだ。その三人は召喚者たちの前に来て真ん中の貴族服を着ている人が一歩前に出た。


「まずは自己紹介からだな。俺はこの町の責任者であるガルレオ・カルキナスだ。まずは召喚者である君たちにはこの世界のことに巻き込んでしまい申し訳ない」


そう言って彼は深く頭を下げた。護衛の騎士たちもだ。いきなり責任者が頭を下げたことに驚いている召喚者たち。霜葉たちは彼が勇者召喚を反対していた女王に味方した人物だと聞いていたので、こうなることは予想の中にあったため驚いてはいない。彼はさらに続ける。


「そのような状況にもかかわらず、この国に協力する選択をしてくれたことには感謝してもしきれるものではない。この町に居る間はできることは可能な限り協力は惜しまない。約束する」


そう言い切った彼はいまだに頭を下げたままだ。戸惑いが解けない召喚者たち。そこに・・・


「ガルレオ辺境伯殿。どうかお顔をお上げください」


生徒会長が声を掛けた。辺境伯はその声を聴き頭を上げ声を発したと思われる女性を見た。


「君は?」

「はじめまして。このたび女王陛下から召喚者たちのまとめ役を頼まれた、高坂 聖夏といいます。聖夏とお呼びください」

「おお、そうか。女王陛下からの早馬で手紙が届き、君のことは聞いている。だが、セイカ殿。この国の貴族は君たちに謝罪と感謝を言う義務があると思うのだが?」

「確かに、この世界に来たことは色々思う所はあります。ですが、それを何時までも引きずっていては先に進めないのです。こちらとしては元の世界に帰るために協力してくれるなら文句はありません」

「・・・・・先へは進めないか。確かに君の言う通りだな。だがこれだけははっきりと言っておかねば、君たちが元の世界へ帰るように私もできることで協力をすることを約束しよう」

「ありがとうございます」


このやり取りを聞いた召喚者たちはようやく落ち着いた。そして、霜葉は目の前の人物が信用できると思っていた。だが、念のため。


『白夜に十六夜、目の前のあの赤い髪の人は嫌な匂いとかするかな?』

『しないよ~むしろいいにおい~』

『草原にふく風のおとがするの~いいおとなの~』


二人のお墨付きがもらえて霜葉はほっとした。一番性質が悪いのはこの二匹でしかわからないような悪人だったから、目の前の人物がそうではないと分り安心したのだ。


「さて、召喚者たちは長旅で疲れてもいるだろう。荷物を受け取った後はこちらで君たちがこの町で生活する場所を用意した。あとで案内させよう」

「それは助かります。ですが、そこまでしていただかなくても・・・・」

「何、これも協力の一つさ。それにこれだけの数の生産職に就いた者たちが来てくれたのだ。生産が追い付けばこの町の利益にもなる先行投資と言うやつさ。こちらにも得はあるのだから遠慮は無用だ」

「・・・・わかりました。そういうことでしたら」


それからは召喚者たちのアイテムボックスに入れていた物資を倉庫のような場所に出した。この光景に辺境伯は驚いていた。アイテムボックスは商人がのどから手が出るほどに欲しいスキルでこれだけの人数が持っていることはほとんどないと言う。商人にでもなれば荷物の差で他の商人より有利になるぞと興奮気味に言っていた。


ただ、商人になる気は召喚者たちにはなかった。いつかは元の世界に帰るのだからこの世界で商会などを造っても邪魔なだけだから。


物資の受け渡しが終わり、兵士たちが確認を始めて霜葉たちは辺境伯の用意した生活の場へと向かう。


「本来なら俺自ら案内したいが、立場がありできないのでこの者が案内する」


そう言って辺境伯は右側を手で示すと、いつの間にか燕尾服に身を包んだおじいさんが居た。髪は立派な白髪の短髪腰は曲がっておらず、むしろ鍛えているのかピンと伸びている。


「皆様初めまして。カルキナス家の執事長のセバスと申します」


召喚者から文字が足りないなどの声が聞こえた気がした。


「わたくしがご案内をいたしますので、よろしくお願いします。ここから近い場所ですので、どうぞ付いて来てください」


そうして執事であるセバスの案内で辺境伯邸を出て行った召喚者たち。しばらく進むと貴族地区に入る入口の真ん前にある2階建ての大きな建物が道を挟んで2棟建っていた。


「こちらの二つの建物は貴族用の宿屋として営業されていたのですが、利用客が全くいなかったため建物を旦那様が買い取り、以来旦那様のお客様用の宿として使ってきました」

「そうような建物を私たちが使っていいのですか?」

「はい、もちろんです。と言いますかお客様用と言いましたが、正しくはお客様に付いて来ている使用人用なんですよ。ですが最近は旦那様を訪ねてくるお客様をめっきり減りまして、少ないお客様も知り合いの貴族宅に泊まることがほとんどで使用人を連れてきません。使い道のなかった建物ですので問題ありません」

「そうですか。ならばお言葉に甘えましょう」


セバスは用事が済んんで召喚者たちに綺麗な礼をして辺境伯邸に帰っていた。そして召喚者たちの話し合いで貴族地区の入り口の右側を女子が、左側を男子が使うこととなった。部屋は二人一組で使うことにして霜葉たちは男子が使う建物の1階にある食堂に来ていた。


「さて、これからどうする?」

「他の皆は馬車での旅が想像以上に疲れたみたいだから、順番にシャワーを浴びて寝るって言ってたよ?」

「男子も同じだよ」


この建物は1階に食堂とシャワー室に数個の客室、2階は全部客室とかなりの広さだった。なんせ男子と女子が二手に分かれて二人一組になっても部屋が余っているのだから。まぁ。さすがに一人一部屋ほどはないが。


「とりあえず、僕としては冒険者の登録だけして持っている魔物素材を売りたいかな?」

「ここに来る途中で出てきた魔物も倒してまた増えたもんな」

「余ってるお肉は私たちで消費すればいいから、それ以外の物を売るんだよね?」


ちなみにこの食堂は調理器具はそのまま残っているので自由に使っていいとセバスが言っていた。


「では、私たちは冒険者ギルドに行き登録を済ませますか?」


生徒会長の意見に他の三人は頷き、冒険者ギルドへ向かうのだった。


冒険者ギルドの場所を町の人に聞いて、目的地へとたどり着いた霜葉たち。ここは霜葉たちが町に入った時に通った大通りの一角で平屋が多いこのあたりでは数少ない2階建ての建物だ。入り口の上には盾の前に剣が2本交差している看板が飾られている。


霜葉たちはこの建物に入った。中は意外と小奇麗にに掃除されていて、右側にカウンター反対側に紙がいくつも張られているボードが、その奥にはテーブルとイスがいくつか置いてありそこで何人かがお酒を飲んでいる様だ。4人はカウンターへと進む。


「冒険者ギルドへようこそ。今日はどのような御用ですか?」


対応したのは美人の受付嬢ではなく、細マッチョな若い男性だ。美人な受付嬢はいたのだが先客が居たのでこちらに来たのだ。


「今日は僕たち4人冒険者ギルドへ登録に来ました」

「わかりました。ではこの水晶玉に触れてください」


そう言って男性はカウンターの下から手のひらに収まる水晶玉を出して、目の前に置いた。台座が付いているので転げ落ちはしない。


4人は言われた通り、順番に水晶玉に手のひらで触れてそのたびか淡く輝きだす水晶玉。それを見るたびに次の方どうぞと言う男性。4人全員が終わった時男性が銀色に輝くカードを渡してきた。


「はい、このカードが冒険者ギルド所属の証明書と同時に冒険者のランクを示す物です。なくさないようにしてくださいね?あと、冒険者ギルドの説明は要りますか?」

「皆はどうする?」

「せっかくだから、聞いとこうぜ」

「うん、そうだね」

「そうですね。私たちの知識が間違っていないかどうかの確認のためにも」

「ではお願いします」

「わかりました。まずは冒険者ギルドと言うのは・・・・」


ここからは簡単に説明しよう。冒険者ギルドと住人達からの依頼をこなす所謂何でも屋だ。その依頼はさまざまで、魔物の素材調達や討伐、薬草や植物採取、商人の護衛から町の雑用まで幅広い。


しかし、そのどれもをいきなりやれるわけではない。特に商人の護衛は冒険者Cランク以上でないと受けることができない。冒険者のランクは低い順に、F<E<D<C<B<A<S と分けられている。Fは町の雑用しか受けることができない。EとDからは魔物の討伐や薬草の採取など町の外に出る依頼を受けられる。C以上は商人の護衛のほかに、盗賊の討伐、危険度の高い魔物の討伐やらかなり危険な依頼を受けることになる。


さらにC以上からはランクアップするために試験があり、それに合格しなければランクは上がらない。それ以下のランクは依頼を何度も達成していれば上がる。


また冒険者は色々優遇されているため、一度でも犯罪行為を行えばかなり厳しい罰が下される。一番軽くて

冒険者の資格停止、一番重いと犯罪奴隷に成り下がり危険な鉱山などで労働をすることになる。また冒険者ギルドは基本冒険者同士の諍いには介入しない。


「・・・・以上となります。なにか質問はございますか?」

「いえ、ありま・・・・」

「はい、ちょっと待った」

「「「「ん?」」」」


話の途中で声を掛けられてのはどうやら、カウンターの男性のようだ。声を掛けたのはカウンターに居る他の受付嬢と一緒の格好をしている女性だ。


「あなたねぇ~最初から聞いてたけど登録料も貰ってないのに登録用の魔道具使ったらダメでしょう?」

「・・・・・あ!?」

「まったく・・・ここは私が引き継ぐからあなたは書類の整理でもしてなさい」

「わ、わかりました・・・申し訳ありません」

「後で説教だからね?」

「・・・・はい」


その会話の後、男性は奥へと消えてった。代わりに男性と話していた女性が霜葉たちの前へと立つ。


「どうも、申し訳ございません。こちらに不備がございましたので、これからは私が対応させてもらいます」

「どういうことですか?」

「それが、本当なら先に登録料を貰わないといけないのに先ほどの男性はそれを忘れてたようで」

「ああ、そう言えば・・・」

「ですので、申し訳ありませんが登録料のお一人銀貨一枚になります」

「あの、今持っている魔物素材で払うことは可能でしょうか?」

「あら?あなたたちはもう魔物との戦闘を経験済みですか?」

「はい、ここに来る途中でも何度か戦いました」

「そうですか・・・・わかりました。まずは査定を行いますので、魔物素材の提出をお願いします」

「わかりました」


そう言って霜葉は目の前のカウンターに手をかざして、主に毛皮と魔結晶をアイテムボックスから取り出した。


「ア、アイテムボックス!?ま、まさかレアなユニークスキル持ちだったとは・・・あ、失礼いたしました!査定を行いますのでしばらくお待ちを・・・」


そう言って女性は魔結晶をいろんな角度から見たり、毛皮を広げて傷や肉が付いていないかチェックしだした。やがて・・・


「お、お待たせしました。まずはこれらの査定額ですが、毛皮も状態がよく綺麗に剥ぎ取っているのでかなり高品質です。魔結晶もサイズは小さいですが、問題ありません。全部で銀貨4枚と銅貨6枚で買い取らせていただきます」

「では、そこから登録料を引いてくれませんか?」

「はい、大丈夫ですよ。それと失礼ですが、もしかしてまだアイテムボックスの中に素材がありますか?」

「ええ、ありますよ?この後で査定してくれますか?」

「わかりました」


その後、登録料を差し引いた銅貨6枚が手渡され、それから残りの魔物素材も査定してもらい全部で銀貨一枚と銅貨4枚になった。魔物素材だけで銀貨2枚の収入となった。


こうして、小さなトラブルはあったが無事に霜葉たち4人は冒険者となった・・・・

ギルド職員だってミスはする。それを書きたかっただけであり深い意味はありません。

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