第四章 第十七話 海王国編15
リトルラミアたちが進化したサーペントラミアは水中行動もできるので、その訓練をすることに。しかし、初めての水中に彼女たちは四苦八苦。そのため予定を変更して彼女たちの訓練にその日は費やされた。
その翌日には何とか水中にも慣れたリビュア達が武蔵やガーベラたちと泳いでいた。ぱっと見どこぞのモデルさんが可愛らしいイルカさんとアザラシさんと泳いでいるPVのようだ。下半身が蛇でなければだが。
『すまないね。あたしらのせいで・・・』
『なんの。仲間のためじゃ。気にするな』
『当然・・・』
『そうですよ。お気になさらずに』
『一緒に泳げる仲間が増えてうれしいんだぞ!』
『その通りですよ』
リビュアも自分たちの訓練で、仲間が強くなるための狩りをできなかったのを気にしていたが、彼らはまったく気にしていなかった。
『でも・・・』
『リビュア。みんな仲間のために何かすることを苦にしたり、狩りができないことを悔やんだりはしてないよ。むしろこういう場合は別の言葉を言ってほしいな』
『・・・ありがとう皆』
それでも何か言いたそうにしていたリビュアに霜葉は言葉を口にする。それを察したリビュアはお礼の言葉を言って頭を下げる。
『『『『どういたしまして』』』』
そんな彼女に仲間たちは嬉しそうに返事をする。心温まる一幕があった後に全員で朝食を食べながら、今後の予定を話す。
「今日は素材集めに狩りをして、木々も伐採したいね」
昨日の時点で素材はかなり集まったが、召喚者たちにもお土産を考えると少々心もとない。また、そろそろギルドの依頼用に伐採も考える必要がある。
『木々の伐採なら我らにお任せを。わしとカイロスたちなら問題ないでしょう』
『まかせろ・・・』
伐採に関してはガウェインとカイロスが名乗り出てくれた。
「海の魔物は次の階層で集めよう。さすがに大和たちにお願いするわけにはいかないし」
『ありがと~♪』
海の魔物素材に関しては、昨日の今日で頼むのは気が引けた霜葉は大和たちはお休みを指示。その指示に大和はお礼を言い嬉しそうです。
『あたしらは進化して初の実戦だね。昨日以上に慎重に戦うようにね』
進化後の戦闘に対して、リビュアは仲間に注意を呼び掛ける。その姿は立派に群れの長をしていた。
朝食後の小休止に話し合い、まずは戦闘に行く前に海岸近くの木々を採取することが決まった。木々はあってもあまり密度が濃くない森林なので、最初に取ってしまおうと結論したのだ。
木々を10本ほど採取した後は、チームに分かれて狩りを再開。霜葉のチームはさっそくシルバーウルフ三体と遭遇した。
「じゃあ、予定通りで」
『『『ありがとうございます』』』
その三体に対して、進化したラミア三人が進み出る。これはリビュア達がお願いしてきたことでピンチになれば助けることを条件に霜葉は許可を出した。
進化したサーペントラミアたちは武器である短槍を取り出す。三人のうち二人はそれだが、もう一人は短剣を持っている。ラミアたちの武器は海での活動のためかスキルが【短槍術】と【短剣術】のどちらかとなっていた。
なお、霜葉の持っているダンジョンで手に入れた武器の魔道具には海中で使えるような短槍と短剣はなかったため、北斗たちがドロップ品である牙や骨を加工して、持ち手部分は木を使ってこしらえた。
短槍は槍と言うよりは銛と言うべき形状に。短剣も海での行動を意識して刃を細くしている。それらを構えてあるいはすぐに使えるように準備したラミア達。シルバーウルフも彼女たちを警戒しつつにらみ合い・・・
「「「ガゥ!」」」
シルバーウルフたちが声を発し、一斉に行動を開始。一体が正面から疾走し残る二体は左右から仕掛けた。それらの行動に対して、一人のラミアが正面のシルバーウルフに対して短槍を両手に持ち噛みつきを防御した。
そのラミアに左右からシルバーウルフ二体が襲い掛かろうとするが、ラミアたちがすぐさま相手を蛇の下半身で巻き付いて拘束。一体は脳天を短槍で突かれて絶命。もう一体も短剣で喉元を引き裂かれてこれまた絶命。
残ったラミアとシルバーウルフは、仲間がやられたことに動揺した隙に後ろ足を拘束されて、近くの木々に叩きつけられ腹を短槍に突かれて倒された。
あっという間にシルバーウルフを倒したサーペントラミア達。ちょうどいいので霜葉とシルバーヴォルフ達が素材の剥ぎ取りをしている間に霜葉は彼女たちに話を聞くことに。
『どうだった? 進化した後の戦闘は』
『大将の力のすごさを改めて認識したよ』
『苦戦してた相手を苦も無く倒せるなんて・・・』
『スゴイ・・・』
サーペントラミアたちは素材となりつつあるシルバーウルフと自分たちを交互に見つめながら、呆然としていた。それと同時に霜葉の力のすごさを実感している。
『確かに強くなったよ。でも世の中にはまだまだ強い魔物がいるからね? それこそ僕たちの仲間と同じ種族とかどこかで出会うかもしれないし』
『『『確かに・・・』』』
強さに過信しないように霜葉はわかりやすい強者の例を話した。
『今の世の中には僕以外の【魔王】もいるからね』
『大将以外の【魔王】がいるのかい!?』
『うん。僕とは違う力だけどそれでも強いよ。まだ仲間が今ほどいないときに戦って負けちゃったし』
『『『え!?』』』
霜葉の負けた発言にラミアたちは驚く。
『何とか命だけは助かったけど、だからこそ僕たちも強くなりたいんだよね。他の子達も同じだよ。君たちも強くなっても弱かった時を忘れないでいてくれると嬉しいな』
『わかったよ。その言葉忘れない・・・』
『他の子達にも教えないとね・・・』
『うん・・・』
霜葉の言葉に思うことがあるようでラミアたちはしっかりと心に刻む。素材の剥ぎ取りも終わり、霜葉たちは狩りの続きのために移動する。
その後の狩りは順調そのもので、ラミアたちの戦力強化は大きく戦闘時間の短縮で効率が上がった。他のメンバーも狩りは順調な様子。
他のラミアたちもタイマンでシルバーウルフを圧倒していた。身体能力が上がり、特に武器を扱えるようになり攻撃手段が増えたことが一番大きかった。
武器を使い巧みな身のこなしで相手を圧倒して、以前のような戦い方もより速く瞬時に動けるようになっているので、敵対者は目で追えずに絶命する。そのまま日暮れまで狩りを行い、素材も多く集まった。
「金剛一家のチームが階段も見つけてくれたし、明日は8階層でがんばろうね」
探索の途中で金剛一家が8階層の階段を発見した。そのため今日はこれまでとして霜葉たちは明日の予定を決めることに。
「8階層では大和たちも戦うかい?」
『ぼくもがんばるよ~強くなりたいから!』
『おいらたちも頑張るんだぞ!』
お休みしていた大和たちも明日の探索は参加すると言っている。
「無理はしちゃだめだよ? 僕たちも最初は様子見で待機しておくからね」
『ありがと~♪』
『たすかるんだぞ!』
『お願いします』
霜葉の言葉に大和は喜び、武蔵は感謝を伝えてガーベラは丁寧にお願いする。実に個性豊かである。
『それなんだけどね大将? 明日はアタシらは海で戦うよ』
「海で?」
『皆と話し合ったけど、そろそろ本格的に海での戦闘を経験しておきたいんだ。それと海の方が大変だし、戦力は多い方がいいだろう?』
「うん、そうしてくれると僕も安心だね。ありがとう」
リビュア達の提案は霜葉としてもありがたくお礼を口にした。その日は海での狩りの連携を遅くまで確かめるのだった。
翌日。霜葉たちは8階層に降りて現在は大和たちの戦いを見守っている。とは言え、最初は不安だったが今は安心して見ている。と言うのもリビュア達が活躍しているからだ。
大和に攻撃するファングシャークを武器で的確に攻撃し、自分たちに注意を向けさせて追撃をガーベラたちが担当。そのためファングシャークは大和から目標を変える。その間に武蔵たちが大和を回復。
後はリビュア達とガーベラたちがファングシャークを仕留めている。さすがにリビュア達の攻撃手段の一つである下半身での拘束は、サメ肌で傷つくため武器のみで戦っている。
そのまま危なげなく戦い、大和たちが勝利。砂浜にファングシャークのドロップ品が山積みになる。狩りの戦果はそれだけではなく・・・
《【アーケロン】個体名大和のLvMAXを確認。条件達成。【存在進化】の効果で進化を行えます》
ついに大和も進化できるようになった。進化できると知り大和は上機嫌に。念の為、【箱庭世界】に戻り安全を確認してから進化先を確認。
《進化先を選択してください》
【アーケロン】 ⇒ 【ラージアーケロン】
【フォートレスアーケロン】
【キャッスルアーケロン】
【アサルトシェル】
【パンツァーシェル】
さすが、海で有名な魔物であるためか進化先が多い。詳細を見てみると・・・
【ラージアーケロン】
アーケロンがごく低確率でなれるラージ種。すべての能力が向上しさらに大型化する。
これ以上の進化はできない。
【フォートレスアーケロン】
甲羅の上に砦が形成され一体となったアーケロンの亜種。
アーケロン種の中ではもっとも攻撃能力が高い。
【キャッスルアーケロン】
甲羅の上にお城が形成され一体となったアーケロン種の亜種。特殊な魔法術を覚える。
アーケロン種の中ではもっとも防御能力が高い。
【アサルトシュル】
大型のカメの魔物。甲羅から岩石を発射する攻撃能力があり、戦闘力が高い。
【パンツァーシェル】
大型のカメの魔物。もっとも堅い甲羅を持つと言われる。防御能力が高く戦闘力も侮れない。
中々個性的な進化先や、攻撃か防御に特化したものまで豊富な進化先だ。大和に説明すると・・・
『ぼく、【キャッスルアーケロン】か【パンツァーシェル】になりたい』
「なんでその二つなの?」
『ぼく攻撃苦手だから。その二つなら一緒に戦う皆を守れるんじゃないかと思って』
「そっか、大和は優しいね」
『えへへ~♪』
確かに今の大和は攻撃能力は低い。攻撃事態も積極的に行わず、前線で相手の攻撃を耐える戦法をとる。大型なので攻撃手段が限られるのも理由だろうが。
それでも大和は仲間のために守る選択をしている。それは大和の優しい性格も影響しているだろう。そんな彼に霜葉はうれしくなるのだった。
さらに大和の選択を絞るために二つの進化先をみんなで相談する。その結果、進化先は【キャッスルアーケロン】に決定した。
「じゃあ、行くよ大和?」
『うん! ワクワク♪』
「大和を【キャッスルアーケロン】に進化させます!」
霜葉が宣言すると大和は光に包まれた。大きさが大きさなのでかなり眩しく、全員が目を手で覆う中、光が収まり大和は・・・
「おお~! こんな感じなんだね」
『スゴイよ! 力がみなぎるよ!』
そこには多少大きくなったカメの魔物が居た。その甲羅の上には一体となった西洋城が存在している。
「そのお城には入れるのかな?」
『みたいだよ。ちょっと待ってて!』
大和がそう言うと甲羅が変形し、階段となり城への扉も出現した。召喚者の主に男子が見たら興奮しそうなギミックである。実際に霜葉もちょっとワクワクしてたりする。
さすがにお城の中は調度品はなく、武骨な部屋だけであった。しかし寝泊まりするには十分な物だ。一旦お城から出て大和のステータスを確認する。
名: 大和
種族: 【キャッスルアーケロンLv1/40】
スキル: 牙撃Lv7 : 堅守Lv8 : 遊泳Lv10
: 水中適正Lv9 : 城壁 : 騎乗Lv4
: 嗅覚Lv6 : 不動 : 結界魔法術Lv1
: 体当たりLv1 : 退化Lv1
やはり強くなった。【攻撃耐性】はすべての攻撃を軽減する【城壁】に。【衝撃耐性】はノックバック無効効果の【不動】に。【体当たり】は体で敵に当たるとダメージが増える。初見の【結界魔法術】に関しては・・・
【結界魔法術】
一部の魔物のみ使える魔物専用魔法術。効果は自身や仲間に結界を張り、攻撃から身を守ることが出来る。
結界を身にまとい突撃するだけでも強力。
中々汎用性がありそうな魔法術だ。その日の残り時間は大和の能力確認に費やし、霜葉たちはしっかりと休息をとるのだった。




