第四章 第十三話 海王国編11
冒険者ギルドで依頼を受けた霜葉たちは、ダンジョンがある島へと上陸。そこで出会ったリトルラミアたちを仲間に加えた翌日に、霜葉たちは全員でダンジョン探索を行っている。今のダンジョンは人が居ないことは確定しているからだ。
そんなダンジョンで活躍しているのは新たな仲間のリトルラミアたちだ。彼女たちは隙をついて魔物を奇襲。そのまま仕留めてしまう。他のパーティのリトルラミアたちも順調に戦っているとの報告を受けている。
しかし、あまりに簡単に決着がつくのであまりレベル上げとして機能しないのではないかと霜葉は考えた。とりあえず他の場所で戦っている仲間にも意見を聞くと・・・
『こちらも・・・簡単に倒せてしまう・・・』
『こっちもなんだぞ!』
『大和殿がいますし、すごく簡単に戦闘が終わってしまいますね』
そのような報告がされた。さすがにまずい事態だと霜葉は考える。
『コレは予定を変更して、3階層まで行った方がいいね?』
『わしも賛成ですぞ。さすがにこのままでは連携のれの字も理解できますまい』
『そうですな。あまりに簡単では若い者たちにもよくないですので』
『賛成だ・・・・』
『私もその方がよろしいかと・・・』
そう言うわけで急遽予定を変更し、3階層まで向かうことに。3階層では出てくる魔物は変わらないが数が増えて、4階層の魔物も現れることがあるのだ。そこの方が新たな仲間のレベル上げにも古株のレベル上げにもなる。
方針が決まれば善は急げと、全員を回収しいつものメンバーでギルドで購入した地図を頼りに3階層へと向かう。そうそうに2階層へと降りて3階層へと向かうが、やけにアンバーウルフと接敵して時間がかかってしまった。
3階層へと辿り着いた時には昼に近い時間帯になった。アンバーウルフとの戦闘がなければもっと早く辿り着けたはずだ。
「まぁ、タラレバを考えても仕方ないね。ちょうどいいからお昼にしようか」
霜葉の言葉にその場の全員が嬉し気に頷く。そんな彼らを見ながら霜葉は【箱庭世界】の入り口を出現させる。
お昼の準備を始めながら、霜葉はリトルラミアたちに料理を教えている。まず最初はお味噌汁を教えて、料理の注意点を学んでもらおうと考えた。
『お味噌汁は極論だけど、このお味噌を入れたお湯でもできるんだ。でも、だからこそ水とお味噌の量で味が決まるんだよ?』
そう言って少ない水を温めた中にお味噌を投入。それをリトルラミアたちに味見してもらう。
『む? 味がかなり濃いな』
『うん。これは水が少ない中にお味噌を大量に入れたからなんだ』
『コレは飲むのにきついな・・・』
『じゃあ、今度は水を多めにしてみるよ』
次は、濃いお味噌汁に水を大量に入れる。温めたそれを再度リトルラミアたちに味見してもらう。
『ん? 今度は薄くなった?』
『コレはさっきとは逆だね。水の量に対してお味噌が少ないから味が薄くなったんだよ』
『つまり、うまいみそ汁を作るには水とみその量を気を付けないといけないのか?』
『そうだね。ただし、これは水とみそだけの話。入れる具材でも水の量とみその量を考える必要があるんだよ』
『『『『具材でも?』』』』
『今からその見本を作るよ』
そう言って霜葉は具材を用意した。お肉、ジャガイモに近い野菜に葉物野菜。それらを一口サイズに切ってお鍋に投入。沸騰させずに温めると味を見ながら、水とお味噌を追加する。出来上がったお味噌汁をリトルラミアが食べると・・・
『コレは! 朝に飲んだみそ汁とは違うぞ!』
『肉の味とみその味がスープに溶けて何とも言えん! うまい!』
『この野菜もいいな~肉の味とみそ汁を吸ってすごく食べ応えがある』
『この緑の野菜もいいな! シャキシャキとした歯ごたえが癖になる!』
朝に食べた味噌汁とは具材を変えただけではあるのだが、具材を変えただけで全く別物になるのが料理のすごいところだと言える。
『こんな感じで、ちょっと変えるだけで同じ料理でも全く違う味になるんだよ?』
リトルラミアたちは無言でうなずく。
『でもね? 逆を言えばほんのちょっと何かが変わっただけでおいしい料理は途端においしくなくなるんだ』
『『『『!?』』』』
『君たちがこれから料理を覚えたいなら、これだけは忘れないようにね? 君たちはまずは料理の基本から学ぶ必要があるってことを。その基本を十二分に学んで生かすことが出来ないと料理をおいしくすることはできないよ?』
『『『『わかりました!』』』』
料理をするうえで失敗する理由の一つに、基本通りに作らないと言うのがある。まだ基礎すらわからないような素人が勝手にアレンジをして料理をだめにしてしまうパターンだ。そう言う失敗をさせないために霜葉はわかりやすく説明したのだ。
それから霜葉とリトルラミアは大量の焼き肉を作った。リトルラミアたちは霜葉の教えを守り、霜葉が教えた通りにタレを作りお肉を焼いて行く。それらの料理は仲間たちから受け入れられた。
『『おいしい~』』
白夜と十六夜を筆頭にお肉をおいしそうに食べている仲間たち。そんな姿を見たリトルラミアたちは初めての感情を感じている。自分たちが一生懸命作った料理をおいしいと言って食べたり、食べながら笑顔になる仲間たち。
『なんなんだろうね? この気持ちは・・・』
『今まで感じたことがないね?』
『嬉しいような誇らしいような・・・くすぐったいような』
『うまく言葉にできないよ・・・』
初めての感情に戸惑うリトルラミアたち。その感情の答えは霜葉が教える。
『初めて他者に認められたんだよ』
『『『認められた?』』』
『うん。魔物では他者に認めてもらうってなかなかないからね。例えば親に褒められたときに似てないかな? 今の気持ちは』
『『『『あ・・・・』』』』
『そう言う他者に自分のことを褒められたり認めてもらうってすごく難しいからね。料理はそいういのが分かりやすい方だけど。おいしい物を作って他者においしいって言ってもらったり、おいしそうに食べてもらったりするとすごくそう感じるんだよ』
『『『『なるほど・・・』』』』
『今の気持ちを忘れないでね?』
『『『『はい!』』』』
何やら料理漫画の一コマのように締めくくられたが、霜葉たちはお昼ご飯を堪能するのだった。
お昼を済ませたら、1階層のように各パーティが狩場に分かれて探索開始だ。さっそく霜葉たちの前にアンバーウルフが五体現れた。しかもその五体はいきなり襲い掛かることはせずに、霜葉たちの周囲を囲みだした。
数も多く、いきなり襲うような真似はしない敵に油断せずに霜葉は仲間に指示を出す。
『ルナは空中で待機』
『わかった!』
『シルバーヴォルフ達は僕を中心に円陣を組んで。リトルラミアたちは隙間を埋めて』
『『『『わかりました』』』』
『『『了解だよ』』』
すぐさま指示を実行する仲間たち。そんな霜葉たちに対してアンバーウルフは一斉に襲い掛かる。しかし・・・
「「「ウォン!」」」
「「「ぎゃん!?」」」
シルバーヴォルフ達はタイミングを見切って、武器で切りつけた。さすがにそれでは倒れないが、3体は引かせることが出来た。残り2体は・・・
「「シャ~」」
シルバーヴォルフ達が相手を攻撃し、それを躱すためにジャンプしたところをリトルラミアの二人が素早く接近し巻き付いた。そのまま喉元に噛みついてドロップ品を残す。
残った3体もルナの魔法術を受けて2体は撃破。最後の1体もリトルラミアに接近され同じ手段で最期を迎えた。
「ふむ。ここはなかなか手ごわいね?」
『はい。連携してくるので油断はできません』
『私らだけじゃあ、勝てたとしてもケガを負いかねないよ』
「よし。じゃあ、予定通りここで素材集めを行いつつ戦闘で連携を意識して戦い続けよう」
『は~い』
『『『わかりました』』』
『『『あいよ』』』
それからの霜葉たちは探索しつつ現れるアンバーウルフと戦闘をし、こちらが先に見つけた場合は奇襲をするなどして戦闘連携を考えながら戦い続けた。
霜葉たち以外のところも白夜たちは仲間を援護する程度に抑えて、主にリトルラミアたちとの連携を意識するようにしていた。
砂浜の方では、カイロスたちはいつも通り戦っているが、ガウェインの方は指示を出すことに集中してあまり手を出すことはしなかった。
海の方は大和が敵を追い込み、武蔵たちとガーベラたちが仕留める追い込み漁のような戦い方をしていた。それらを夕暮れまで続けて一旦【箱庭世界】に帰り、明日の相談をすることに。
「じゃあ、明日は4階層へ降りる方がいいかな?」
『その方がよろしいかと。話を聞く限り、戦闘連携に関しては問題ないと考えます。むしろ、ここでこれ以上戦うのは今後を考えますとやめた方がいいでしょうな』
『そうですな。あまりに戦闘があっけないとやる気も下がりますしな』
『連携戦闘は十分だと思いますよ』
『自分たちも・・・強くなりたいしな』
『おいらたちもだぞ!』
『もっと強い場所でも私たちなら大丈夫です。今日の戦闘で自信も付きました』
彼らの意見と素材も十分すぎるほどに集まったし、木々の方もカイロスたちがいくつか引っこ抜いてくれたのがあるので、霜葉は明日は4階層へと降りることに決めた。
翌日。リトルラミアたちに料理を教えながら朝食を作り、食べ終えて霜葉たちは4階層へと向かう。4階層への階段は白夜のパーティが見つけていたので場所は問題なし。
さっそく案内された階段を下りて、4階層へと到着。すると砂浜にスティールクラブが3体いて、霜葉たちに襲い掛かった。
「クォン!」
「ガァル!」
すぐさま白夜と十六夜が反応し、アロー系の魔法術で牽制。それらを受けたカニたちは凍ったり、痺れたりして動きが鈍る。そんなカニたちを新月たちと金剛一家が止めを刺した。
「みんな。ありがとね」
お礼を伝えるのを忘れない霜葉。白夜と十六夜は嬉しそうに霜葉にじゃれ付き、他の皆も嬉しそうだ。ドロップ品を回収し、全員を【箱庭世界】から呼ぶ。
『ここの魔物は昨日までのより手ごわいから、全員油断しないようにね?』
霜葉の言葉に全員が神妙に頷き、探索をスタート。しばらく森を歩いていたら霜葉たちに向かってホワイトウルフ3体がこちらへと走ってくる。それを見たシルバーヴォルフ達は迎撃態勢に。リトルラミアたちは近くの木を登り始める。
「「「ウォン!」」」
アンバーウルフよりも早く鋭くホワイトウルフたちは霜葉たちに襲い掛かるが・・・
「「「クォン!」」」
「「「ギャン!?」」」
シルバーヴォルフ達は敵の攻撃を見切り、避けて足で反撃。膝蹴りが見事に相手の顔を強打した。相手はすぐさま離れたが、そこへリトルラミアたちが襲い掛かる。
しかし、締め付けに成功したのは1体だけで残りの2体は回避に成功。奇襲が失敗したリトルラミアたちに襲い掛かろうとするが・・・
「ホー!」
そこへルナがホワイトウルフの眼前に現れてタイミングを崩す。その隙を逃すことなくシルバーヴォルフ達が首に武器を振り下ろした。
ドロップ品を回収しながら霜葉は仲間たちに戦闘について尋ねることに。特にリトルラミアたちがどうか気になるからだ。
「どうかなここの魔物たちは?」
『確かに、3階層の魔物よりは手ごわいですね』
『我らを先に見つけてスピードを生かして襲ってきたようですし』
『主様とルナ殿の援護があれば、すぐ倒せそうではありますが』
「ないと倒すのに苦労するくらいか」
霜葉の言葉にシルバーヴォルフ達は頷く。
「ふむ。リトルラミアたちはどうかな?」
『わたしらだけだと苦戦するね』
『ええ、奇襲に反応されたし』
『正面から戦いたくない相手です』
彼女たちの基本戦法は相手の隙をついて体で巻き付き、動きを封じた上で急所である首を噛みついて絶命させる。それ以外だとここの階層の魔物では厳しいようだ。
ちなみに彼女たちは正面から戦う場合、尻尾で牽制しつつ蛇の独特の動きで翻弄してからの隙をついての噛みつきか巻き付きで攻撃する。
【身体強化】スキルがあるので正面からの戦いもできなくはないが、蛇としての能力を生かすのなら奇襲が最も効果的だ。武器を持っているのなら話は変わるが、これは進化に期待するしかない。
「じゃあ、リトルラミアたちに僕の【付与魔法術】で強化してから戦闘を一度してみよう」
反対意見は出ないので探索を再開。次に出会った相手には霜葉の【付与魔法術】で強化されたリトルラミアたちとシルバーヴォルフ達だけで戦った。
【ブースト】だけの強化だったが、今度は奇襲を見事成功させてしめつけだけで相手を仕留めることが出来た。
それからの戦闘では相手が襲ってきたらルナが援護し、霜葉たちが相手を見つけたら【付与魔法術】を掛けることで対処した。
他の皆も自分たちなりの戦いを模索しているようだ。白夜のところは正面から戦う場合は【咆哮】で援護するくらいでこちらからの奇襲では、ピンチにならない限り手を出さない。
十六夜は魔法術で牽制する程度で、ピンチになれば手を出すくらい。新月は自身が相手を引き付けて耐える方向で攻撃はしないことに。三日月はそのジャンプ力を生かして苦戦している仲間を助けている。
無月は魔法術で援護や助けながらスキルレベルを上げているようだ。金剛一家は得意の穴掘りでサポート。森での狩りは順調であるようだ。
一方の砂浜については、カイロスたちは正面からのガチンコ対決で問題ないようだ。ガウェインの方は彼自身が戦線に加わることで問題ない様子。無論、必要以上に戦うことはしていない。
海方面に関しては3階層に比べてかなりまともな戦闘になっているらしい。ここで出てくる魔物はソードフィッシュと言う名のカジキマグロのような魔物で、剣のような長い突起物を持つ。
しかも、その突起物は個体によって形状が違うらしくそれを生かした戦い方をしてくると言う。西洋剣のような形状の個体は突撃を主に行い、東洋剣のように切ることに特化した形状の個体は接近戦をしてくる。
これらの魔物に対して武蔵たちとガーベラたちは速さと小回りで優っているようで、危なげなく戦えているとのこと。だが、大和はそう言うわけにはいかず傷を受けている。
アーケロンの体力と防御力で耐え、傷を受けた後はカイロスたちの下へ行き、回復して戦闘を続けているとか。霜葉は大和に無理だけはしないように言い聞かせた。
海方面が心配要素だが、武蔵にガーベラにも大和のことを任せて、霜葉たちは4階層でレベル上げを続行することに。
次回更新は未定。




