第四章 第十一話 海王国編9
霜葉たちが鈴蘭の家族を発見し、襲われていたところを助けてその時の経験で鈴蘭の父親ガーベラたちの群れは進化できた。その後は到着した島の責任者であるアーシア子爵の館で世話になること五日間。いつものごとく島の住人から感謝されていた。
漁師や港で働く人たちは大和が島に居るおかげで安全に漁ができ、獲物も大型の魚介類が獲れる。それらを捌くための人員はガーベラたちや武蔵たちが子供たちと遊んでいるおかげで確保できた。特に鈴蘭と同じ子供たちが楽し気に遊んでいる。
霜葉は港での捌く作業を手伝い、白夜たちも各々役立っている。アーシア子爵からも感謝された。現在も彼女の館で朝食を食べているところだ。
「ソウハ殿たちのおかげでこの島も久しぶりの活気に包まれているよ。海賊団の問題で犠牲者も出ていて、みな気持ちが沈んでいたからな・・・・」
「お役に立ったのならよかったです」
海賊団が長い間暴れているような状況では、そのようなことになるのも必然だろう。
「ソウハ殿たちはこれからはどうするのだ?」
「そうですね・・・鈴蘭の家族も見つけて仲間にできましたし、そろそろ本格的に冒険者として活動しようかと考えています」
鈴蘭を保護しその家族を探していたので、冒険者としての活動はあまり積極的にしていなかった霜葉たち。彼らも仲間にしたので大和や武蔵たちと一緒にさらなる進化をするために頑張ろうかと考えていた。
具体的には魔物討伐や新たな島の発見に、ダンジョンがある島へと向かうことなのを考えている。
「それはこちらとしてもお願いしたいな。今の海王国で海賊の心配をしないで冒険できるのはソウハ殿だけだろう」
「大和のおかげですけどね」
いくら海賊団が暴れていると言っても、アーケロンにケンカを売るほど馬鹿ではない
「冒険者の活動が停滞していて、彼らの手に入れた素材やダンジョン産の素材などが市場に出回らなくなって長いのでな・・・このままでは商王国との取引にまで影響が出てしまう」
現在の海王国の交易に関しては、貴族の協力を得てダンジョンがある島や、貴重な魔物が生息している島に大型船を出して海賊を警戒しつつ、長期に滞在して素材を大量に手に入れているようだ。
ただ、この方法に関しても絶対にうまくいっているわけではなく、少なくない被害も出ていて今すぐにどうこうなることはないが・・・このままではそう遠くない未来に無視できない影響が出てしまう。
「今日のところは冒険者ギルドで活動に関しての情報収集をしてきますね」
そう言ってから他愛無い世間話をしながら朝食を終え、霜葉は白夜、十六夜、ルナを連れて冒険者ギルドへと向かう。新月たちと金剛一家はアーシア子爵の依頼で農地の開拓へと向っている。
今までの生活で彼らの安全性は疑われなくなっており、霜葉がそばに居なくてもいいようになっているのだ。もっとも、もしものために騎士か冒険者が待機してはいるのだが。
島民から声を掛けられながら冒険者ギルドへと到着。すぐさま入り受付嬢にこの島の周りに関して冒険者として、知っていたほうがいい情報はないか尋ねると・・・・
「ソウハ! 冒険者として活動してくれるのは本当か!?」
ギルドマスターであるバートの部屋へと案内され、そう尋ねられた。
「え、ええ。ここしばらく事情があり活動に関して、消極的になってまして。その事情は解決したのでこれからは積極的に活動していきますが・・・・」
この霜葉のセリフにバートは歓喜した。
「そう言うことなら頼みたい依頼があるんだ! 話だけでも聞いてくれ!!」
そう言われとりあえず話を聞くことに。その依頼とはとあるダンジョンの素材集めだった。
「この島から南南西の方角へまっすぐ行くと、ダンジョンがある島があるんだが、そこのダンジョンに出てくる魔物の素材集めと木々の伐採を頼みたい」
「魔物の素材集めは望むところですが。木々の伐採もですか?」
「ああ。そこのダンジョンは海王国でも数少ない木々が伐採できるダンジョンでな? 具体的に言うとそこダンジョンの階層は海と島なんだよ」
「海と島ですか??」
商王国でダンジョンに挑戦した霜葉だが、聞いたことのないダンジョンだ。
「ああ。海王国でも三つしか確認されていないダンジョンでな? そこはダンジョンの中に海と島があってなかなかに規模が大きい森があるんだよ」
「・・・商王国でもダンジョンには驚きましたが、そんなところまであるんですね?」
「なんでそんな風になってるのかは研究者の間でも議論されているが、いまだに答えが出ないからな。まぁ、冒険者にとってはどうでもいい話さ」
冒険者にとっては自身の実力で探索できるかどうかの方が大事だから、研究方面は言い方は悪いがどうでもいい話なのだ。
「で、そのダンジョンでは砂浜ではカニ系の魔物が。海には魚系の魔物。森にはウルフ系の魔物が生息している。素材を集めてほしいのはカニとウルフだ」
「どうしてその二種類が必要なんですか?」
「カニ系の魔物の甲殻は防具に最適なんだ。特にこの海王国ではどうしても海の影響を考えんといかんからな」
「ああ~普通の金属製の鎧なんかは海風の影響で痛みやすいからですね?」
「そう言うことだ」
海王国では騎士団でも金属鎧を装備している者が居ない。理由は霜葉が言ったように海風の影響で装備が傷みやすいから。しかし、防御面の向上は戦う者からしたら考えないといけない問題だ。
そこで海王国では魔物素材を使った鎧が一般的なのだ。特にカニ系の甲殻素材は人気であり、船の装甲としても優秀で重宝されている。
「ウルフ系の方は交易用だな。下の階層に行けば珍しい魔物も居て結構な人気でな? 今はまだ在庫があるが、先々を考えると今のうちに補充しておきたいんだ」
「わかりました。その依頼受けます」
「感謝する!」
霜葉の言葉にバートは笑みを浮かべた。依頼の報酬は銀貨八枚であり、持ってきた素材数によって追加も出すとのこと。また、霜葉が持ち込んだ素材に関しては買い取り額にも色を付けてくれることに。
それからの霜葉は二日かけてそのダンジョンの情報収集と準備を始めた。準備と言っても必要な物はほとんど【アイテムボックス・極み】の中に入っているので、調味料を少し買い込む程度だが。
むしろ、情報収集の方に力を入れた形だ。冒険者に酒をおごり聞き込みをしたり、冒険者ギルドで地図を購入したりなどだ。その過程でいろいろわかった。
まず、目的のダンジョンは今までの到達記録は18階層まででそれ以降の情報はない。17と18階層にしても現在はそこまで到達できる冒険者がいないので、古い情報しかない。
1階層から3階層まではカニ系の魔物は、ブルーシザーと言う青い甲殻のカニが。ウルフ系ではアンバーウルフが出てくる。
4階層から6階層までは、アイアンクラブと言う鉄並みに堅い甲殻で覆われたカニが。森にはホワイトウルフがいるようだ。
6階層から9階層は人気の階層で、出てくる魔物が良い素材として高値で取引されている。カニはスティールクラブでウルフはシルバーウルフだ。
残念ながら、10階層以降はそこまで行ける冒険者が情報を出し渋ったので不明だ。情報収集を切り上げた霜葉たちは現在、そのダンジョンへと向かうため大和の背に乗っている。
「このダンジョンでは大和や武蔵にガーベラたちを進化させたいね」
『ご主人。僕も頑張るよ?』
『私も強くなりたいです』
白夜と十六夜の言葉に周りの者たちも頷く。
「うん。もちろん白夜たちも頑張ってもらうけど、メインは彼らかな? そうじゃないと強さに開きが出来ちゃうからね」
『そうですな。海王国に居る間は彼らが主力になるでしょうから、このダンジョンで進化まで行きたいところですな』
『楽しみ~』
『が、頑張るんだぞ!』
『お役に立てるように頑張ります』
霜葉の言葉にガウェインが同調しながら補足を添えた。大和は進化に興味を持ち、武蔵は鼻息を荒くしガーベラたちはニコニコです。
やがて、目的地であろう島を目視した。その島には事前に聞いていた通り簡素な船着き場があった。その船着き場で大和から降りて、大和にはダンジョンへ入るまで箱庭世界で待機してもらう予定だ。
大和を【箱庭世界】へ戻ってもらおうとしたところ、白夜と十六夜がとある存在に気が付いた。
『ご主人。何かたくさんいるよ?』
『主。いっぱい近づいてきます』
「え?」
冒険者ギルドでは、この島にはダンジョン以外に注意すべきものはいないと教えられた。魔物に関しては島に生息するものは皆無で、時々カニ系の魔物が湧くくらいだとか。
だから白夜と十六夜の言葉に驚く霜葉。そんな彼を状況は待ってはくれず、森から何やら気配がする。やがて森から出てきたのは・・・・
「「「「「シャ~」」」」」
女の子の上半身と蛇の下半身を持つ存在だった。数は目視で12人くらい。森から音がするからまだまだいるようだが。それはラミアと呼ばれる魔物であった。
ファンタジーゲームでは特に男性に人気の魔物であり、作品にもよるが基本的に妖艶な美貌を持つモンスターとして有名だ。ただ、目の前のラミアは妖艶な美貌とは程遠い可愛い女の子たちだが。年月が経てば美人になるのは疑いようがないがね。
ちなみに彼女たちの上半身は裸だが、胸部は鱗で隠されているので見えない。一部の男子からしたらショックなことだろうが。
なお、ラミアたちは鳴き声を上げながら二股の舌を出し、霜葉たちを威嚇しながら徐々に近づいている。
「クォン」
「ガァル」
「ぐぅ」
「まぁ」
「ぐる」
「「「「「モグ~」」」」」
霜葉を守るため、前に出て臨戦態勢をとる白夜たち。大和や武蔵にガーベラたちは海で見守っている。いつ戦闘が始まってもおかしくないのだが・・・
ぐきゅる~~~~
「「「「シャァ~」」」」
ラミアたちの後方の茂みから何やら気の抜ける音と共に、幼い女の子のような鳴き声が響いた。そのせいで一触即発の空気が瓦解してしまった。
『お腹を空かせている子たちが居るの?』
「「「「「!?」」」」」
気になった霜葉は【思念会話】で目の前のラミアたちに尋ねることに。いきなり頭に響いた言葉にラミアたちは困惑する。
『・・・・この声はあんたのしわざかい?』
困惑するラミアの中で一番先頭に居た他のラミアより少し大きな個体が、冷静さを取り戻したようで霜葉に視線を向けて質問してきた。
『うん。僕のスキルだよ』
『まさか、人間と話ができるとはねぇ・・・』
『それよりも質問の答えは?』
『ああ、いるよ。あたしたちよりも小さな子が腹を空かせてるんだよ』
『そっか。じゃあ、君たちの好物は何かな? 教えてくれたらあげるよ』
『なに?』
霜葉の言葉にラミアは目を丸くする。
『どういうつもりだい?』
『いや、小さな子がお腹空かせてるのなら助けてあげたいから』
『あたしらは魔物だよ』
『そうだね。何か問題でもある?』
霜葉は至極真面目に答えた。今まで白夜たち魔物と一緒に旅をしているので問答無用で襲わなかった彼女たちには本気でそう思っているのだ。交渉の余地のない魔物なら白夜や十六夜が問答無用で攻撃している。
『・・・ふふふ。そうかい問題ないって考えかい』
『???』
『何でもないよ。だったら果物をくれると助かる。ここ何日何も食べてないからねぇ』
『わかった』
答えてもらったので霜葉は、ストックしている果物類をその場に山積みにする。
『こんなもんで足りるかな?』
『・・・・はぁ~、あんたすごいね? こんなにあれば余裕さね』
そう言うとそのラミアは茂みに対して、出て来いと言うべき身振りをした。数秒後に恐る恐ると言う感じで小さなラミアが六人ほど現れた。
そのまま山積みになった果物の前に進み果物を恐々と食べ始めた。すると徐々にその勢いが増してきた。しばらくするとすごい勢いで食べだすラミアたち。
いつの間にか全員が食べているが、特に止めることもないと霜葉は考えている。やがて、山盛りの果物が種だけ残し、すべてラミアのお腹に消えた。
満足げなラミアたちは子供が6人いて、それより大きい子達が16人の22人いるようだ。なお、そんなラミアたちの能力は・・・・
名前: なし
種族: 【リトルラミアLv8/Lv30】
スキル: かみつきLv4 : しめつけLv5 : 身体強化Lv3
: 熱源感知Lv5 : 登攀Lv6 : 水上移動Lv3
やはり小さくとも有名魔物は伊達ではないようで割と強い。初めて見るスキルの詳細は・・・
しめつけ
長い体を生かした巻き付き行動に補正。
熱源感知
熱を持つ物体や生物などを感知できる。
登攀
壁や天井に木々などを移動する行動に補正。
水上移動
水の上を移動できるようになる。
なかなか有用なスキルを持っている。この島には魔物はいないと言う情報だったが、【水上移動】でここまで来たのかもしれない。
『主殿、またも珍しい魔物に出会いましたな?』
『ガウェイン。この子達リトルラミアって珍しいんだ?』
『ええ。そもそもラミアと言う魔物が珍しい魔物でして、能力も高く知恵も高度でめったに人前に現れない魔物ですな。このリトルラミアらはラミア種では最も弱い種ですが、それでも一般的な魔物よりも強いです』
『じゃあ、本来ならお腹を空かせてるなんてありえない?』
『そうですな。何やら事情がありそうです』
そんな会話をしているとお腹を満たしたリーダー格と思われるリトルラミアが霜葉に近づいてお辞儀をした。
『本当に助かった。まさか人に助けられるとは思ってもみなかった』
『よかったけど、なんでまたお腹を空かせてたの? 君たちなら自力で魚とか獲れるんじゃない?』
『確かにそうだがね・・・今この島の周辺にはテンタクルスの群れが居るのさ・・・』
『テンタクルス?』
霜葉が初めて聞く魔物だ。そしてこんな時に頼りになる仲間が霜葉にはいる。
『むう・・・なるほどテンタクルスか。それは厄介な』
『結構強い魔物なんだ』
『ええ、大型のイカの魔物で海では狂暴な奴ですな。クラーケンほどの強さはないですが、こ奴らは群れを作って連携して襲ってきます。確かにテンタクルスではリトルラミアたちでは太刀打ちできますまい』
さらに詳しく話を聞くと、リトルラミアたちはこことは別の場所で生活していた。ところが何日も前に大嵐のせいで海に放り出されてしまったと言う。
幸い【水上移動】のスキルで溺れることはなかったが、運悪くテンタクルスの群れと遭遇。リトルラミアたちは何とか逃げようとするが比較的若い子らと子供たちを逃がすため、大人たちが犠牲になってやっとこの島までたどり着いたと言う。
『あたしは群れの長の娘で、母から後を託されたんだ。何とかこの島に辿り着いたはよかったが、あいつらあたしたちを諦めずに島の周りで見張ってるんだ。そのせいで魚は取れないし、この島にも果物はない。そんな時にあんたがやってきたのさ』
人間なら何か食べ物を持っているかもしれないと、破れかぶれで襲うことにしたと言う。
『理由はわかったよ。でもそれならなんで正面から襲ってきたの?』
『母から聞いたが、あたしたちは人間の間では恐れられてるって。だから正面から襲えば無力化できるんじゃないかと・・・』
『それは無茶だよ』
『むう・・・』
さすがにダメ出しをする霜葉。話しているリトルラミアも自覚はあるのか押し黙る。
『まぁ、でも事情は分かったよ。わかった上で提案なんだけど、君たち僕の仲間にならない?』
『え?』
次回更新は未定です。




