第一章 第九話 女王国編9
生徒会長と副会長の話し合いは副会長側が態度を変えなかったため無駄に終わった。生産職の召喚者たちには生徒会長が謝罪してこの場の雰囲気は緩和したが、根本的な解決にはならない。
「こんな状況なんだから、仲良くすればいいのに」
「まぁ、それがベストではあるんだがな?」
「結局は一人一人の考え方ですからね」
『ご主人?どうしたの~?』
『元気ない~?』
『何でもないよ。二人とも心配してくれてありがとう。えらいよ』
『『わ~いほめられた~♪』』
足元で心配そうにしていた二匹を褒めて、気持ちを切り替えた霜葉。やがて召喚者全員が訓練所に戻ってきて、その後にドルトス王子が現れた。
「騎士団はご苦労だったな。召喚者様たちもほとんどは戦闘を経験したようだしお疲れ様だ。今回で戦闘ができなかった者は落ち込むことはない、初めは誰しも緊張し怖気ずく者がほとんどだ。それでも決意して戦おうとする者こそ本当の戦士なのだ」
ドルトス王子はそう言って騎士団と召喚者たちを労い励ました。
「さて、戦闘を経験した者は自分のステータスを見た方がいいだろう。Lvが上がっているかもしれないからな。今から騎士団の人間が簡易版のステータスを見れる魔道具を持ってくる。これは本人以外はステータスが見えない物だから、確認だけなら問題ない。順番に並んで確かめてくれ」
そう言った後に片手で持てるくらいの水晶玉を4人の騎士が持ってきた。召喚者たちは騎士たちの下に並び順番に自身のステータスを確かめた。霜葉も超鑑定は持っているがここで並ばないと怪しまれるので並んでいる。
(ドルトス王子は信用できそうだし、大丈夫だろう。あ、でもあの魔道具に何か仕掛けがあるかも知れないし、念のため鑑定!)
霜葉は魔道具である水晶玉を視界にいれて鑑定してみた。結果は・・・・
【看破の水晶玉】
簡易版のステータス表示魔道具。本来は本人以外見ることができないのだが、細工が施されていて対である魔道具に調べたステータスが送信される。
(うわぁ・・・あったよ仕掛け・・・まず間違いなくアルバン王子だな犯人は)
鑑定をして正解だった霜葉。そこで霜葉は自身のステータスを改めて隠蔽することにした。今現在の霜葉のステータスは・・・・
名 動島 霜葉
職業: 【軍勢の魔王Lv3】
固有スキル:【存在進化】:【箱庭世界Lv1】:【思念会話Lv2】
スキル: 回復魔法術Lv10 : 付与魔法術Lv10 : 錬金術Lv10
調理術Lv10 : 魔道の極み : 魔力強化・極
魔力回復強化・極 : 無詠唱 : 職人の極み
超鑑定 : 超隠蔽 : 短剣術Lv1 : 杖術Lv1
アイテムボックス・極
このような物だ。それを超隠蔽を使って・・・・
名 動島 霜葉
職業: 【魔物使いLv3】
スキル: 回復魔法術Lv5 : 付与魔法術Lv5 : 錬金術Lv5
調理術Lv5 : 魔道の極み : 魔力強化 : 魔力回復強化
無詠唱 : 職人の極み : 短剣術Lv1 : 杖術Lv1
アイテムボックス
このように隠蔽した。ちなみに、アイテムボックス・極は無限に収納できる某青いネコ型ロボットのポケットのような物らしい。しかも、中の時間は止まっていると言う大きなおまけつき。ただのアイテムボックスは収納上限があり、時間も止まってはいないとのこと。このスキルは霜葉以外にも生産職や生産スキル持ちが持っているのを超鑑定で確認したので、極だけ消したのだ。
そして霜葉は水晶玉に自分の手を置き、ステータスを確認した。そこに表示されたのは隠蔽したステータスだった。
(よし、これで大丈夫だ。にしてもアルバン王子は何を目的にこんなことをしてるんだろうか?)
霜葉はおそらくはこの仕掛けを仕込んだのはアルバン王子と思っているが、何を目的にしてこのような事をしているのかが気になった。
(戦争は考えにくいよね?魔物や魔王なんて共通の敵がいる中で自分から敵を増やすのはアホらしいし)
「霜葉~終わったのか?」
「あ、うん終わったよ健吾君」
「そっか、ちなみに何か新しいスキルはあったか?」
「健吾君、その話はお部屋でしよう?」
「あ、そうだな。わかったぜ」
その後は、戦闘を経験した召喚者たちはステータスを確認し、今日は解散となった。そして所変わってここは霜葉たちの使っている部屋。
「・・・・じゃあ、あの水晶玉で調べた私たちの情報は誰かに筒抜けだってこと?」
「うん。多分アルバン王子だと思うんだけど」
「まあ、そうだな」
「現時点ではそれ以外は考えられませんね」
『あの人きらい~』
『主にいじわるするの~』
現在、霜葉による先ほどの水晶玉に仕掛けてあったものについて部屋を訪ねた生徒会長も含めて説明しているところだ。アルバン王子の名前を出した時、白夜と十六夜が不機嫌になったので霜葉が二匹を撫でると一瞬で上機嫌に。霜葉が好きすぎる二匹であった。
「しかし、こうもいろいろやってくるとアルバン王子は何を目的にしているのか気になりますね?」
「どっかの国と戦争をしようとしてるんじゃないっすか?」
「そうなのかな?」
「いえ、それは無いでしょう。この世界には魔物と言う共通の敵がいますし、現在は魔王と言う強敵もいるのです。そんな状況で敵を増やすのは愚策だと思いますよ?」
「僕も同意見です」
「ん~それが違うとなると俺じゃあわからん!」
「アルバン王子の目的については、注意するしかありませんね」
霜葉たちは今まで以上にアルバン王子を警戒することに決めた。
「そう言えば、皆は何か新しいスキル手に入れた?」
「俺は、【戦棍術】を手に入れたぞ?」
「私は【杖術】を覚えてました」
「私は【風魔法術】と【火魔法術】がありましたね」
「二つも魔法術を手に入れたんっすか!?」
「た、確か聖夏先輩も【魔道の極み】を持っていたよね?だからかな?」
「?何の話ですか?」
三人は生徒会長に極みスキルの話をした。
「・・・・それはまた強力なスキルですね。そしてそんな物を二つも持っている霜葉君がどれほどすごいかも理解しました。アルバン王子は節穴ですね」
「なんというか、職業主義なところがありますよね?」
「あ~なるほど。上手い言い方だな」
「ジョブやスキルのあるこの世界ではそう言う人たちがいるのかもしれないね?」
事実、霜葉や裕佳梨の言う通りこの世界には職業主義者やスキル主義者などが存在する。強力な職業やスキルを持っている者が、人の上に立つべきだなどと言っている者たちだ。
「そう言えば、霜葉君は何かありましたか?」
「僕は、【短剣術】と【杖術】あとは【アイテムボックス・極】がありました」
「3つも手に入れたのかよ!」
「それも霜葉君の職業の効果かな?」
「多分そうだと思う。ちなみにアイテムボックスの方は水晶玉で確認する前に隠蔽で極の文字は消しておいたよ」
「【アイテムボックス】は生産職や生産スキルを持った生徒たちが手に入れたって言ってたな」
「その方がいいでしょうね」
霜葉以外の三人はそう言いながら、心の中で霜葉の職業はやはり強力だなと改めて感じていた。
「後、今日は三人に相談したいことがあるんだ」
「ん?なんだよ霜葉」
「私たちで役に立つならいいよ」
「私もです」
「ありがとう。相談と言うのは副会長の鑑定について何だ」
「あ~その問題か」
「以前に話し合った時に、この問題を回避する方法があるって言ったよね?」
「ええ、覚えています。その時に女王陛下からお茶会のお誘いがあったため聞きそびれてしまいましたが」
「霜葉君、改めて聞かせてくれる?」
「もちろんいいよ。その方法でいいのか三人の意見も聞きたいし」
「わかったぜ。で、どんな方法なんだ?」
「そばにそう言う人がいるから問題ならそばに居なければいいんだよ」
「「え?」」
「霜葉君?あなたまさか・・・・」
「僕はこの国を出て旅をしようと思ってます」
霜葉のこの言葉に健吾と裕佳梨は驚き、生徒会長はやっぱりと言う顔になった。
「おいおい、霜葉。マジで言ってんの?」
「大真面目に言ってますけど何か?」
「で、でもこの世界で旅なんて危険じゃない?」
「・・・・理由を説明してくれますか?」
「もちろんです。まずはこの国に居続けるのは僕のジョブ的にまずいのは副会長がいるから分るよね?」
「そうだな」
あとの二人も頷く。
「あとこの国に居たんじゃ、僕のジョブを満足に使えないのもあります。この子たちがLvMAXになったとしても進化させることができませんし」
「確かにいきなり姿が変われば、まずいよな」
「この子たち姿変わっちゃうの?そ、それは見たいようなそうでもないような?」
「時間が経てば大人になりますし、そこは仕方がありません。進化すると言ってもどんな風に変わるのかもわかりませんしね」
「わん?」
「にゃ?」
二匹は自分たちが話題になったのが分かっていないのか首を傾げている。
「最後に、旅をしながら元の世界に帰れる情報も探ろうかと思います。この国も調べてくれるでしょうけど、僕たちは僕たちで探した方がいいと思うんです」
「一理ありますね」
「以上が理由です。三人はこの意見についてどう思う?」
「一人で旅ををするつもりなのか?」
「もちろんそうだよ。言っておくけど三人は付いてくるのは無理だと思うよ?まず間違いなくアルバン王子が反対するし邪魔もするだろうし、聖夏先輩は生徒たちのまとめ役ですからいなくなるのはまずいですし」
『僕たちもいっしょ~』
『いっしょです~』
『そうだね。二人は一緒だよ』
『『わ~い♪』』
霜葉が二匹と頭の中で会話している間に三人は、霜葉の言葉を否定できずにいた。生徒会長は霜葉の言う通りだし、残りの二人も強力な職業に就いているのだし確実にアルバン王子が何かしてくるに違いない。
「・・・・霜葉君は今すぐにでも旅立つ気ですか?」
「さすがにそれは無理ですね。今の僕は弱いですし、この子たちが予想よりも戦えたけれどそれでもたった三人です。最低でもあと2体、最高で4体くらいは魔物を仲間にしたいですね。出ないと女王陛下もドルトス王子も納得してくれないでしょうし」
「そうですか、そこまで考えているのなら説得して無駄でしょうね」
「確かにな・・・・」
「で、でも霜葉君危険だよ」
「危険なのはこの国に居ても変わらないよ?闘争の魔王って脅威があるんだし他にも亜人系のゴブリンやオークだって徒党を組んで攻めてくるかもしれないいんだし」
裕佳梨の意見も正論で返し、霜葉の意志の固さがうかがえた。
「裕佳梨、半端な意見じゃ霜葉は意思を変えないよ」
「健吾君・・・」
「桂木君の言う通りです。霜葉君も中途半端な結論を言っているわけではありません。彼なりに考え現状を理解したうえで結論しています」
「では・・・・」
「霜葉君の意見はもっともでした。私は賛成しますよ?」
「副会長がいるんじゃ、霜葉はこの国に居ると危ないってのは分るし俺も賛成だ」
「・・・・・」
生徒会長や健吾が霜葉の意見を肯定するなか、裕佳梨だけは沈黙していた。
「裕佳梨さん、何も今すぐに旅立つ訳ではないのです。それに霜葉君なら大丈夫ですよ」
「そうだぜ裕佳梨?さっきの説明を聞いただろう?霜葉は旅の安全も考えて仲間も増やすって言ってんだし大丈夫だよ」
「・・・・うん、ありがとう。健吾君に聖夏先輩、いきなりの言葉に戸惑っちゃった。確かに霜葉君の言っていることはどこも間違ってないよね」
「心配してくれてありがとう。裕佳梨ちゃん」
「友達を心配するのは当然だよ」
「そうだぜ霜葉?でも仲間にするってどんな魔物を仲間にするんだ?」
「ん~取り敢えず冒険者にでもなってこの国の魔物を見てみるつもり。いい子がいたら仲間にしてみようかな?」
「そこはアバウトなんだな?」
さっきまではちゃんとした話だったのにっと思う三人であった。
「だって、僕にはこの子たちがいるから。ブルーベアみたいに味方になりそうな魔物の見分けはできるからね」
「ああ、なるほど。その手があったか」
「ふふ、頑張ってねおチビちゃんたち」
『ご主人~なかまふえるの~?』
『ふやすの~?』
『うんそうだよ。二人と仲良くできる子たちだといいね?二人にも頑張ってもらうよ?』
『『がんばる~♪』』
「ブルーベアですか・・・聞けば小熊もいたとか?見たかったです・・・・」
生徒会長が小熊に会えなかったのを残念がっているが、霜葉個人のこれからのことは決まった。
「あ、そうだ。霜葉俺も冒険者になるから、旅立つまでは一緒に行動しようぜ?」
「私もそうしようかな?」
「二人ともいいの?」
「いいんだよ。そもそも俺のジョブではやれることは限られてるからな。冒険者なら自由に動けそうだしな?」
「私の場合は選択肢はあるけど、健吾君や霜葉君と行動するなら冒険者の方がいいでしょ?」
「ふむ、では私も冒険者になるとしますか」
「聖夏先輩もですか?」
「私は霜葉君の言ったように生徒たちのまとめ役です。ですので自由に動ける冒険者は都合がいいのです」
「なるほど」
こうして三人のこれからも決まり、生徒会長も三人と行動したいと言い三人は歓迎した。
「ところで、この国に協力する話はどうします?」
「それについては、夕飯の時に答えを出そうと思います。全生徒の意見も聞かねばなりませんし」
「そうですね。わかりました」
今日の話し合いはこれで解散となり、夕飯まで霜葉は白夜と十六夜と遊ぶのだった。
それから夕食の準備が出来てメイドさんに呼べれ集まったのはいつもの大広間。そこでみんなは食事をしながら今日の初戦闘のことを話し合っていた。そこに・・・
「皆さん、食事しながらでいいので話を聞いてください」
生徒会長の声が聞こえ、召喚者全員が生徒会長のいる場所を向く。
「今日は初めて戦闘を経験しました。その結果は皆さんの話を聞けばまずまずだったのではないかと思います。ですので、今日は先延ばしにしていたこの国に協力するかどうかを決めたいと思います」
生徒会長の言葉に皆が気を引き締めた。国に協力と言うことは闘争の魔王が攻めてきた時に戦うと言うことだ。
「皆さんは魔王と呼ばれる者と戦うことが協力と思っているでしょうが、私は必ずしも戦う必要はないと考えています」
この言葉に召喚者一同首を傾げた。
「何も戦うだけが協力の手段ではないのです。私を例にすれば【回復魔法術】がありますから、魔王との戦いで負傷した騎士たちの回復を行えば十分協力と言えるのではないでしょうか?他にも、鍛冶ができる人は武器の提供や防具の開発、調合師などは薬の提供、料理人などは日々おいしい料理を作るなど、個人の能力を最大限に生かす方法で協力すればいいと思います」
この言葉で目から鱗が落ちたのは生産職に就いていて戦闘が怖くて今日城に残った者たちだ。最初に召喚された時の説明で、戦う力があると言われて戦いばかりに目が行っていたが、生産職は本来はそう言う者なのだ。
「それを踏まえて、どうでしょうか?ちなみに私個人は協力しようと考えています。そのためにも冒険者となり戦闘経験を増やそうと考えています。私の場合は強力な戦闘職業のようですしね」
「そうだな。俺もそう言う職業だし金も稼げるようだしいいかもしれない」
「私は料理人だし、戦えないからお城で雇ってもらえないかな?」
「俺は皮革職人だけど、戦えるし冒険者になって素材は自分で手に入れようかな?」
「俺は騎士だし、ドルトス王子に騎士団に誘われてるんだよな~」
皆自分のできることで協力するのに好意的なようだ。何人かの召喚者はドルトス王子に騎士団に勧誘されたり、霜葉や裕佳梨のようにここで働くのはどうかと勧められている様だ。
「では皆さん、生徒たち個人個人が協力できることでこの国に協力すると女王陛下に伝えても構いませんか?」
「賛成です!」
「この国に何かあれば帰れないかもしれないしな~」
「こんなに世話になったんだし、少しは協力せんとな」
「最初は何を作ればいいかな~?」
生徒会長の意見に皆が前向きな声を上げる。
「では、明日にでも女王陛下に私たちの答えを伝えてきます。話を聞いてくれてありがとうございます」
その言葉でお話は終了。召喚者たちは食事を再開した。
「とりあえずはこれでひと段落かな?」
「そうだな、でもこれからが忙しくなるかもな?」
「魔王と戦うことを選んだ人たちは強くならないといけませんからね」
「やっぱそう言う生徒は、冒険者になったほうががいいのかね?」
「ん~どうかな?騎士団に入れば、今日みたいな調査や駆除なんかもするし強くはなると思うよ?」
「それもそっか」
「何人かは騎士団に入るようですし、自身の身の置き方はご自分で考えてもらいましょう」
「あ、聖夏先輩。お疲れ様です」
霜葉たちが話していると、生徒会長が話の輪に入ってきた。一仕事終えた彼女に裕佳梨は飲み物を渡した。
「ありがとう裕佳梨さん」
「僕たちは冒険者ギルドに行って登録をしないといけませんね」
「あ、でも登録料ってかかるんだろう?その金はどうする?」
「ああ、それなら今日倒した魔物の魔結晶をお金に変えるよ。他の魔物素材も売れるらしいから」
「あれ?それって生産職に就いている人たちへあげるんじゃ?」
「それがね、他の生徒も同じことしてて素材が多いから僕が持ってきた物はお金に変えてくれってさ」
霜葉と同じことをした生徒は意外にも結構いたのだ。そのため、素材が多くなりすぎたため一部の生徒が持ち込んだのは、お金に変えることとなった。なお、山菜の方は城の料理人が喜び今日の夕食に使っている。
「・・・・魔物解体できた奴結構いたのか?」
「うんそうみたい。ほとんどは料理人とか僕みたいに調理術を持っている人だけど」
「まじか・・・・」
「皆すごいね・・・」
「頼もしい限りです」
召喚者たちの行動力に二人は驚き、一人は感心していると・・・・
「生徒会長」
副会長が何人か引き連れて話しかけてきた。
「なんでしょうか?副会長」
「単刀直入に言います。俺達と行動を共にしてください」
「お断りします」
「理由は・・・え!?」
副会長の唐突な発言を打てば響くの言葉通りのタイミングで断った生徒会長。
「まだ理由も何も言っていません!」
「だいたいは分ります。おおかた冒険者になるつもりだから回復役と戦力のために私が欲しくて誘っているのでしょう?」
「それだけが理由ではありません!」
「聞いても私の意思は変わりません。お断りします」
「生徒会長、いや聖夏さん私はあなたのことが・・・」
「私はあなたのことが嫌いです」
「なぁ!?」
告白する前に一刀両断。周りの召喚者たちが笑いを堪えるのに必死である。
「兄の見合い話をお受けする気か!」
「なぜそんな話になるかはわかりませんが、それはお断りしました」
「ならばなぜ!?」
「少なくともそうやって人の意見を無視するような態度の人は好みではありません。だいたいなぜとは何ですか?私が貴方の話をお受けするとでも?一体どういう風に考えればそうなるのです?」
「そ、それは・・・」
「この話は終わりです。早く立ち去ってください」
「ま、待ってくれ!まさか一人で冒険者の活動をする気ではないか!?」
「彼らと行動を共にしますので、心配は無用です」
生徒会長が俺達を見て副会長も視線を送る、そこで霜葉を見た時勝ち誇った顔と見下した目を向けた。
「生徒会長、魔物使いと一緒に行くのは考え直した方がいい。そこの二人もだ。そんな使えない奴と一緒だとろくなことにはならない」
いきなり人を侮辱する言葉を放つ副会長。その言葉に健吾と裕佳梨、生徒会長も機嫌を悪くする。しかし、明らかに雰囲気が悪くなったのに副会長は気付かない。
「ほう、ろくなことにならないとはどういうことですか?」
「ふん、決まっているだろう?この世界では魔物使いは落ちこぼれの代名詞。そんな奴が戦闘ができる訳がない。おおかた今日の戦闘でも活躍などしてないのだろう?」
「おや、私の聞いた話とはだいぶ違いますね?彼、霜葉君とそこの子たちはかなり活躍したそうですよ?」
「・・・・え?」
「二匹でニードルラビットを一匹を倒し、ランドボアと戦た時も的確な動きでフォローしたとか。霜葉君も魔法術でで援護をして同行した騎士たちも驚いたとか」
「な、なに?」
「しかもその後の魔物を解体して素材を綺麗に剥ぎ取ったとか。どこかの誰かは自分ができないくせに他の人に高圧的に命令したらしいですね?そんな人とは大違いです」
「ば、ばかな!?聞いてた話と違う!?」
「自分の目と耳で確かめないからですよ。そもそも人から聞いた話はその人の価値観や考えが反映されます。だと言うのに話を真に受けるなど、あなたの目と耳は飾りですか?」
「す、すまんがこれで失礼する!」
そう言うと副会長は、さっさと立ち去った周りに居た者たちも慌てて後を追う。
「ぐるぅ~!」
「フシャー!」
「二人とも落ち着いて」
『あの人きらい~!』
『主いじめる人きら~い!』
霜葉を侮辱し始めたころから白夜と十六夜は怒っていた。そんな二匹を霜葉は宥めるのに必死だった。襲いかかっても不思議ではなかったためだ。
「いけません。少し大人げない行動でした」
「いや~あれは仕方ないと思いますよ?生徒会長」
「かなり失礼でしたからね」
「聖夏先輩。反論ありがとうございます」
「いえ、親しい友人に対してあの言動は私もカチンと来ましたので」
「なぁ、もう部屋に帰らないか?」
「そうだね。十分食べたし」
霜葉たちは外で待機していたメイドさんにもう部屋へ帰ると言って案内してもらった。その間怒りの収まらない二匹が居たが、霜葉が懸命に撫でて宥めて落ち着かせた。そのまま今日は早めに寝た三人。
翌日、生徒会長は女王陛下と謁見。協力はするがあくまでも個人個人ができることで協力すると戦えるからと言って戦いを強制することの無い様にと伝えた。女王陛下はこれを承諾。かくして召喚者たちは各々のやり方で魔王に備えるのだった・・・・