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Mパーティー  作者: 亜依子
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言葉の裏と悲しい嘘

生井京介の楽屋のドアに1枚のカードが挟まっている。引き抜いてみたが何も書かれていない。京介は何か気付いたようで近くにいたホテルスタッフにライターを借りて、下から火で炙ってみる……。

すると、カードから浮き出た。


ーオマエタイセツナヒトウシナウダロネー


とても驚いた。だが、驚いたのは脅迫文では無く、文章そのものだった。京介は新人ミステリ小説家で先日出版した『闇』の物語のカギとなる大事な1文が使われていたからだ。

しかし、ポジティブシンキングの京介は、ただのイタズラだ。としか思わなかった。ドアノブを持ち手前に引く。すると楽屋が爆発した。彼は吹き飛んだドアと壁に打ち付けられ動けなくなっていた。頭からは血が流れている。

爆発に気づいたスタッフが警察、消防、救急に連絡をしてからおおよそ5分後に救助が来て…。

目が覚めると、病院のベッドの上に寝ていた。

ー俺は助かったのかー


体には、たくさんの管で繋がれており、頭は包帯で頑丈に巻かれていた。横を見てみるとベッドが7床しかない。どうやら、どこかの病院のICUに運ばれていたようだ。

少し立つと研修医らしき人がやって来て「わかりますか?」と聞いてきたので、手を少し動かすと「今、先生を呼んでくるのでお待ち下さい」と言って走っていってしまった。すぐに、主治医の先生が来て目に光を当てられたり、住所・名前・電話番号などを聞かれた。

「もう大丈夫ですね」

CTの結果、損傷や記憶障害が出ていないことから集中治療室から一般病棟の個室へと移動になった。

それから数日が経ち、窓の外を眺めているとドアのノック音が聞こえた。「どうぞ」と答えると、怖い顔で背広を来たガタイの良いお兄さんと優しい笑顔で私服を着た30代くらいの、どう見ても不釣り合いな男性2人組だった。京介は検討は付いていたが「どなたですか?」と聞くと2人は警察手帳を見せた。

「警視庁刑事部捜査一課の押原(おしはら)引田(ひきた)です。覚えている範囲で構いませんので当時の状況を詳しく教えていただけますか?」

「はい、あの日…」


9月1日のことだった。東京駅丸の内南口を出て目の前に最近になって建てられた、フォンターナ・プリンスグランドホテルで新人賞最優秀賞の作品『闇』の出版記念パーティーが午後6時から開かれた。パーティーの参加者は2000人。内閣総理大臣や大物政治家の他、彼の親戚や友人で1000人。残りの1000人は彼の本の帯に付いている応募券を送って当選した老若男女である。

6時丁度に京介が登場。少し話した後、彼の乾杯の音頭で食事がスタートした。食事はビュッフェスタイルで子どもが食べられるようにキッズメニューのスペースも設けてあった。アルコールやドリンク飲み放題付きで大人1人5000円。子どもが半額の2500円だった。彼は各テーブルに回りサインを書いたり写真を撮ったり、お酒を配ったり会話をしたりと、あっという間に終わりの時間を迎えた。お開きになったのが9時丁度。参加者を玄関で見送り終わったのが9時30分。

「お見送りをした後スタッフ総出で片付けをして楽屋に戻ると、ドアノブから3センチ上あたりに白い長方形のカードが挟まってました。刑事さん、そこのスーツを取っていただけますか?すみません、ありがとうございます。これです。これが挟まっていたカードです」そう言い、押原に渡した。

「拝見します」

また、京介はペンと紙を取りだしドアのどの部分に挟まっていたかなど図に書いて詳しく伝えた。

「どうして炙り出しだと気づいたのですか?」と引田が尋ねる。

「私は推理小説作家で、たくさんのトリックを勉強してきました。カードを抜いたとき微かに甘い臭いがしたので確信しました」

「ではライターは誰に?」

「ホテルスタッフの絵島幹広さんに借りました。絵島は小学校からの同級生で今回のパーティーも彼が手配してくれました」

「その後、絵島さんはどこに行かれましたか?」

「私の楽屋の隣の部屋です」

「誰かが開けてくれたのでしょうか?」

「いいえ、絵島が鍵を持ってて、その鍵で開けて入っていきました」

「実は、生井さんが病院に運ばれた後、我々は現場検証を行いました。その結果、あなたの楽屋から男性の遺体が発見されました。ホテルスタッフに立ち会ってもらい身元を調べた結果、生井さんの良く知っている絵島さんだったということが明らかになりました」

京介の目から大粒の涙が流れ落ちた。

「辛いとは思いますが捜査に協力していただきたいのですがよろしいでしょうか?」

優しい口調で引田が言うと京介の重い口が開いた。

「刑事さん、協力します。その代わり条件があります」

「何でしょうか?」

彼が言う条件とは、絵島を現場写真ではなく、ご遺体を見せてほしい。また身元引き受け人になりたい。ということだった。

二人は少し拒んだが刑事部長に連絡をして許可をもらった。

江島には身寄りが無く、遺品を返す人がいなかったため京介が受けとることとなった。

退院後は、病院に行ったり小説を考えたり、警視庁に行って詳しい話をしたり。ある日は押原、引田と共にフォンターナ・プリンスグランドホテルに行って当時の様子を伝えたりしていた。


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