異なる理想と現実
なぜこの職業を選んだのか。分からない。
大学生活までは順風満帆だったはず。
成績優秀で高校、大学を卒業。
実習も常にリーダーシップを執り、先生、指導者、患者さんとの関係も良好で、記録、実技も素晴らしいと誉められ、クラスの皆からも羨ましいと思われる程だった。
看護師国家試験、保健師国家試験を受けて両方合格し、免許を取得した。
そのまま、看護大学系列の大学病院で勤務。
6年間は救命救急でがむしゃらに働き、手技、対応、外科の治療を仕事しながら学び、自分の実技、経験を身につけた。
その後、地元に帰省し、ゆったりとした、整形外科病院で自分のスキルを活かしながら働いた。
そんな俺も看護師10年目になる。
整形外科看護よりももっと別の病棟に行きたい、今まで経験したことがしてみたいと思い新しい職場を探していた。
その時、インターネット検索でとある求人情報を見つけた。
『初心者、未経験者、大歓迎!!
精神科看護をやってみませんか?』
…精神科看護?
今まで、身体の機能、構造、疾患、いわゆる、外面にしか携わってなかった俺には、人の内面、心、精神の部分には興味がなかった。
身体が治ったら経過は良い、日常生活を良好に過ごせるとずっと思っていた。