始まり
新作です!
「ハンス、おはよう。今日は遅かったんだね」
「ああ…」
ベルはハンスに声をかける。ここはベルの家の食事の場。
「何か夢を見た?」
ベルは食卓に並べられたパンに手を伸ばした。
「いや…」
ベルは、そっとため息をつく。
この家に来てから、ハンスは口数が少なくなった。これなら、怖くても前の方がよかったかもしれないと、ベルは思う。
(ううん。こんな事思っちゃいけないわ。ハンスはマルガレーテを亡くして、気を落としているはずだもの。そうよ、ひどいことをされたからといって、実の妹だもん。私は一人っ子だからよく分からないけれど、きっと、すごく悲しいことよ。)
ベルは、自分に言い聞かせて、そっと紅茶を飲む。そして、
「ご馳走様でした。」
と言って、席を立った。
ベルは自分の部屋へ行くと、そっとヒースを手に取る。すると、
「えっ?」
なんと、ヒースがひとりでに動きだしたのだ。
「どういうこと?ハンスなの?」
しかし、ヒースはちがうと言うように、体を左右に振った。
「じゃ、じゃあ、一体だれが…」
ベルは考えたが、分かるはずもない。
「は、ハンス…!」
ベルはハンスの部屋へ小走りで向かった。
「ハンス、いる!?」
「なんだ、ベル」
ベルはヒースをハンスの前に持っていくと、
「ひ、ヒースが、動いたの!」
と、興奮気味に言った。
「なんだって…?」
「は、ハンスじゃないよ、ね?」
「ああ、だが、一体誰が…?」
すると、ヒースがぴょんぴょんとはね回り始めた。
「…ど、どうしたの?ヒース」
ヒースは、ハンスの部屋の壁の前で止まると、ベルたちの方を振り向いて、飛び跳ねた。
「そこの壁が、どうかしたの?」
ベルとハンスが近付くと、急に壁が光りだし、ベルたちは吸い込まれてしまった。
見て頂いて、ありがとうございます(๑•∀•๑)