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第一話「猿夢」

この物語はフィクションであり実在する個人、団体とは一切関係ありません。

001


 窓の外は桜が満開に咲き乱れ小川の潺がまるで先日まで積もっていた雪を嘘とあざ笑うかのようだった。

彼女は一人列車に揺られながらその窓の外の景色を只々眺めている。

 「春は嫌いだ、まるで物語の終わりを見るようだから」

自分に言い聞かせるように彼女は呟いた。

私から見ればそんな感情どうでも良いのだが、しいて私が彼女に魅力を感じるとしたらあの事件のときの彼女を見たからだろう。但しその話はまだするべき時ではない、というよりも誰も知らないほうがいいのだと私は思う。なぜだろう、彼女を見ていると忘れかけていた感情と言うものを思い出すのだ。


002


彼女は自分の職場につき、いつものように他の者達に作り笑いをしながら「おはよう」と言って回った。どの者も頭を深く下げ彼女を敬ったが彼女はそれが気に入らず苦痛でしかない。

自分はそれほどの価値がある人間ではない、と彼女は思った。

ただ、思うだけで声には出さなかったが・・・否、出せない。

国家の狗と蔑まれながら生きねばならない彼らの事を思うと。

この時だった、私が初めて彼女に感情らしきものを見たのは。この表現を不適切だと言う者は居ないだろう。彼女はそれだけ人らしい感情が無いのだ。否、有ってもそれを必死に隠している。

私は思った、なんて哀れで滑稽なのだろうと。

 彼女は自分の職場である階へと独り足を運ぶ。

その階に部屋は一つしかない、その部屋に入ると真っ先に目につくのは壁一面の本棚だった。

本棚には英語から独語、仏語、露語、蘭語等々数えだしたらキリがないほどの言語の古びた本が収まっていた。

 だが、彼女はそれに見向きもせずに部屋の奥にある自分の机に腰かけた。

そしてもう一度辺りを見渡す。

「これが・・・こんなものが母が私に残した財産だと思うと虫唾が走るわ。」

彼女の名は【千鳥野 優子】、一部では英雄の娘と言われ、一部では穢れた血を引く者と呼ばれている。

容姿はとても幼くスーツを着ていても小学生と間違えられるほどだった。

年齢は十四ととても若く、本来であれば学校に通わねばならない歳だが彼女はすでに高等教育終了時に等しいだけの一般的な学力は備わっており、法律や外国語に関しては一般人を遥かに凌駕している。

しかしそれすらも千鳥野にとって母からの遺産でしかない。

全てが与えられたものだった。学力も、容姿も、友人さえも。

そんな彼女でも唯一自分で手に入れたものがある。

「よう、千鳥野。今日もこんなかび臭いところに引きこもってるとカビ生えるぞ?」

「煩い。それと上司には敬語を使いなさい」

「俺はお前みたいなマセガキを上司扱いしない、絶対にだ。」

「地方に飛ばす。」

「いやぁ、千鳥野警視総監は今日もお若いですね。」

 彼の名は【深ツ門 帰幽】、警視庁特務捜査課所属、階級は警部。そして千鳥野直轄で唯一の手足だ。

「地方と言う単語を聞くと同時にそんな反応するのやめなさい。」

「それは良かった、自分より年下の奴に気をつかうのは疲れる。」

「それにあなただってこんな職場に居るよりも地方の方が楽でしょう?」

「地方、か・・・。」

「さっさと私に悪態ついて地方に飛ばされるか辞表を書くかしなさいな。あなたには未来があるのだから。」

 千鳥野は静かに、そして当たり前のようにそう告げた。彼を気遣っての事だろう。

「ふざけるな。」

 だからこそ彼女は深ツ門のそんな一蹴する言葉に驚きを隠せなかった。

「俺が辞職願を出すのはお前が警視総監を辞職する時だけだ。」

当たり前のような気づかいを当たり前のように断る。そんな目の前の男を見て千鳥野は、

「好きにしなさい」

と一言悔しそうに呟くのだった。

 「それで、今日はどんな厄介事を引きずってきたのかしら?」

「N県Y市の高校、八咫月学園にて自殺者が何人も出ている。」

「あら、そんなのただの刑事事件じゃないのかしら?」

「そこで終わったらただの刑事事件だ。」

「じゃあ、刑事事件じゃない要素は何なのかしら?」

「二つあって一つは噂。どうやら被害者は自殺する前に電車に乗る夢を見るという噂が流れてるんだ。」

「電車?」

「ああ、現代風の電車らしい。被害者から直接聞いた人間にまではたどり着けなかったがな。」

「ふぅん、もう一つは何?」

千鳥野はそう尋ねたが深ツ門は黙り込んであしまった。彼女が幼い容姿だからなのか言うのを躊躇してるのだ。

「大丈夫よ、見かけほど幼くないわ。」

千鳥野の諭すような視線に負けて深ツ門は重い口を開いた。

「自殺した際に必ず体の部位が一つ無くなっている。」

静寂が辺りを包み込んだ。深ツ門は言わなければよかったのではないかと思案するのだが

「無くなった部位を全て教えなさい。」

全く表情を変えずに千鳥野はそう言った。

「頭、右腕、右手、左腕、右足、左足、眼球に胃などの内臓。それくらいだな。」

「逆に聞くわ。ど死体からも無くなっていない部位は何?」

彼女の全てを見透かしたかのような言葉を聞く。深ツ門はは、何故この子はこんな発想に至るのだろうと思い、そして彼女の意に気づく。

「心臓だ。」

「心臓ね、次抜き取られるのは。」


003


N県Y市八咫月高校校門前。

「暑い」

「まだ四月なんだが?」

「もう四月なのよ。このままじゃ干からびるわね。」

「引きこもり体質め。たまには外に出て運動しろよ。」

「断る。冷房の効いた部屋で書類整理をするのが私の仕事であって外回りは専門外よ。」

「嘘つけ。お前冷房苦手じゃないか。」

などと言い合っている二つの影があった。

時刻はすでに夕方で、下校する生徒も部活動に励む生徒も事情を知ってる教員でさえも犯罪臭を感じ、警察に通報しようとしていた。

それだけビジュアルがひどいのだろう。軽い筋肉質のスーツを着た男性のそばに居るのは黒いワンピースに黒い日傘の幼女、その二人が言い争いをしているのだ。

「はぁ、とにかく私は冷房の効いた車内にはやく戻りたいのよ。」

「ここに来るまで車内で体調崩してたくせに。」

「・・・減給か左遷」

「さぁ、聞き込み行くか!」

閑話休題

「それでどこで聞き込みするのかしら?」

「生徒に聞き込みしたいが・・・まずは教師陣だろう。場合によっては伏せて聞かないといけないこともあるしな。」

「それじゃあまずは職員室ね。」

校舎に入りしばらく進む。

「学校か。」

「お巡りさんこいつです。」

「ちょっと待て。俺は法に触れてない。」

「今はまだ、ね。どうせ女子高生見てハァハァしてるんでしょう?」

「俺は女子高生に興味はない。」

しばらくの沈黙が走り、千鳥野が一言、

「もしかして・・・ホモ?」

「・・・違う。」

「じゃあ、まさかの熟女好き!?」

「そんな訳あるか。」

「なるほど、ペドフィリアか。」

「せめてロリコンと言え。」

そしてまた沈黙。

「・・・(無言で距離を開ける)」

「・・・(無言で距離を縮める)」


 004


そんなこんなで職員室についた。

千鳥野はノックをして中に入る。

「あれ、お嬢ちゃんどうしたんだい?」

教員の一言に少し傷つきながらも言う。

「警視庁特務捜査査課所属、千鳥野です。こちらは私の部下の深ツ門です。例の件についてお話を伺いたく来ました。」

先ほどの職員は青ざめ、すぐさま動揺しながら

「し、失礼しました。校長が話をしたいとの事なのでこちらへ。」

二人は校長室に通された。職員がそそくさと出ようとしたところで千鳥野は、子供扱いはいつものことだから大丈夫と職員に告げるのだ。

校長室には二十代後半ぐらいの女性が机で書類をまとめている。

千鳥野たちに気づきお辞儀した後、

「遠いところからすみません。私、この学校の校長を務めさせていただいてます、【矢内 神代】と申します。お電話で窺った千鳥野さんと深ツ門さんですよね?」

「はい、警視庁の千鳥野です。お時間を割いていただきありがとうございます。」

「いえいえ、警察の協力するのは我々国民の義務ですから。それにしてもお若いですね。」

「よく言われます・・・。」

「とりあえず、これが被害者のリストと成績や校内での態度などの情報を纏めたものです。」

「・・・被害者なんですね。」

「ええ、被害者です。」

深ツ門は何故二人が被害者と言ってるのかすぐに理解できなかった。

その表情に気づいたのか矢内は付け足す

「私は・・・私の生徒が自殺したとは思えません。お願いです、どうか私の教え子の敵をとってください。」

矢内は深々と頭を下げた。

「・・・大丈夫です、必ず真相を表に引きずりだしますから。」

といつの間にか深ツ門は言っていた。

矢内が顔を上げたとき頬に一滴の雫が流れたのを深ツ門を見て「なんとしてでも事件を解決させなければ」と思うのだった。深ツ門は千鳥野の方を見ると。

彼女は気にせず資料に目を通していた。

「なぁ、千鳥野。それは今読むべきなのか?」

「最重要ね、これを一通り読まないと質問もできないもの。」

千鳥野を殴り飛ばしそうなのを我慢しながら矢内に謝る。

「大丈夫ですよ、これぐらい熱心な警察の方の方が私としてもうれしいです。」

「なんか、本当にすみません・・・。あの、失礼ですが確か最初の遺体を発見したのは・・・。」

「・・・私ですね。」

「その時の事を詳しくお聞きしても。」

「大丈夫ですよ。えっと・・・残業で私はよくここで寝てしまう癖がありまして、それで、その日も寝てしまってたんです。

「ただ、朝何か強い音で目が覚めまして、窓から外を見ると・・・。」

「既に遺体だったと。」

「はい、急いで救急車と警察に連絡しました。」

「なるほど・・・屋上は誰でも出入りできるんですか?」

「できません。鍵は必ず施錠して、いつも職員室に保管されています。」

「そのあと屋上は・・・。」

「靴がそろえられていて、そこには遺書がありました。」

「え?」

深ツ門は思わず疑問を言おうとしてしまった。

「すみません、今日はもう失礼しますね。あ、資料お借りしていっても?」

さっきまで資料を読んでいた千鳥野が急に割り込んできた。

「え、千鳥野まだ・・・。」

「時間も時間だし、調べておきたいものがあるのよ。」

「えっと・・・資料についてはお貸しします。すみません、あまり力になれなくて。」

「いえ、こちらこそすみません。って千鳥野、待てよ!」

千鳥野はそそくさと校長室を後にした。

深ツ門は後を追いかける。

車に戻り千鳥野は一言、

「他殺ね、間違いなく。」

と、言った。

「ああ。だろうな。自殺の現場は何度か見たことあるが靴を脱いで揃えるなんて普通しない。」

「ふう、これであとは県警に丸投げすれば私たちの仕事はおしまい。意外とあっけなかったわね。」

「そう・・・だな。」

車を走らせ今晩泊まるホテルに向かう。

「そういえば千鳥野。・・・千鳥野?」

深ツ門は返事が無いので赤信号で助手席を見ると、千鳥野は寝ていた。

気持ちよさそうに、あたかも襲ってくださいと言わんばかりに可愛い寝顔だった。

「落ち着け、深ツ門。YESロリータNOタッチの精神を忘れたのか・・・いやでも男性と二人きりの車内で寝ている、普通なら絶対にありえない。これはもうOKと言うことでは!?」

などと一時間葛藤してホテルに着いた深ツ門だった。


005


ビジネスホテル前

ホテルについたにも関わらず目を覚まさない千鳥野をどう起こすか悩んでいる深ツ門の姿がそこにはあった。

「さて、どうしようか。ここで起こそうとしたらライトノベルの主人公的な展開になりそうで怖いというのが本音だが、起こさないわけにもいかない。」

と、やけに説明口調を続けていた。

「おい、起きろ千鳥野。着いたぞ。」

千鳥野は眠気眼を擦りながら、

「ん、深ツ門。もう着いたの?」

「ああ、ホテルついたぞ。」

「・・・おんぶ。」

「え?」

「おんぶ・・・して?」

深ツ門は思った。「なんだこの可愛い生物は。」と。

ホテルにチェックインし、ベットに千鳥野を寝かせ、シャワーを浴び自分は椅子に腰かける。

今日の事を手帳に書き、考える。

しかしその湯上りの体には睡魔が襲ってきてそのまま寝てしまうのだった。


006


目が覚めると俺は電車の中にいた。次の停車駅のアナウンスが聞こえる。

『~次は、挽肉、挽肉~』

・・・え?

周りに目をやると隣の席大学生ぐらいの女性の前に何かの機械が運ばれていた。

運んできたのはぼろぼろの服を着た小人、そして機械を作動させていた。

その機械はその女性にじわじわと近づいていき彼女に触れそうになる。

彼女を助けるために俺は立ち上がるがそれと同時の出来事だった。

居なかった。の一言に尽きるだろう。俺が立ち上がった時には既にその女性は消えていたのだ。

俺は、何が起きたのか分からなくて只々立ち尽くしていると、

『~また逃げるんですか?次はないですからね~』

とアナウンスが聞こえる。

何が起こってるんだ?と佇んでいると先ほどの機械は片づけられていた。

改めて周りを見渡す。見てしまった。

床には人間の臓物や四肢が無残にも散らばっている。車内には鉄のような悪臭が漂い吐き気を催してしまうほどだった。

必死に口を押え吐き気を堪える。きっと夢だ、そうに違いない、そうであってくれと只々目の前の現実から逃げるように祈ることしか俺にはできなかった。自分の後ろにはまだ何人か人が居る。目には光が無い者が殆どだった。

そして次のアナウンスが聞こえる。そう・・・俺の番だ。

『~おやぁ?珍しい人が居ますねぇ。このまま殺してもいいのですが、つまらないので次は、殺し合い、殺し合い~』

そのアナウンスが流れると同時に他の乗客の手元に包丁、鋏、カッター、様々な刃物が現れた。

『~他のお客様にご連絡、そこの男を殺せた人間はもれなくこの夢から逃げられる権利を上げましょう~』

それを聞くと同時に先ほどまで目に光が無い者達がそれぞれの刃物を持って俺に近づいてきた。

一番近い奴の包丁が振り下ろされる・・・。

すぐさま俺は腕を掴み捻りあげ、そのまま座席に向けて投げ飛ばした。

『~おやぁ?武道の心得があるのは厄介ですね~』

アナウンスを俺は無視し急いで別の車両に移動した。

車両番号を確認すると4号車となっている。さっきの車両は出るときに少し見えたが5号車だったはずだ。

一番前の車両に行ってみるか。でもその前に、目の前のこいつらをどう制圧するかだな。

『~制圧する必要なんてありませんよ、思い切り殺しちゃってください。だって殺し合いなんですから~』

「煩い、一般市民を殺す警察が居てたまるか。」

『~でも殺さないと先には進めませんよ?~』

「殺せないと先に進めない、か。勝手に決めるんじゃねえよ。」

一番近い人間に組み付き鋏を奪い取る、そして二人目のナイフを受け流し腹部に拳を叩き込む。二人目はその場に崩れ落ちた。


007


3号車までは何とか来れた。

『~すごいですね、ここまで一人も殺すことなく来れるなんて~』

「当たり前だ、でなきゃ千鳥野の手足は務まらねえよ。」

『~ではこんなのはどうでしょう~』

天井から黒い水のようなものが垂れだし、それが反対側のドアに集まり形を成していく。

不定形なそれは触手のようなものを形作り俺に迫ってくる。

俺はそれを躊躇なく腕で受け流した。

触手を上手く弾くことはできたが同時に鈍い痛みが腕を走る。

『~そいつならどうします?あなたの武道は効きませんし逆にあなたに痛みが走る。どうです、ここで殺されるというのは?~』

「まぁ、確かに殺されるしか選択肢は無さそうだが生憎殉職するわけにはまだ行かなくてね。俺が死ぬと困る奴が居るんだ。」

俺はあいつを守らなきゃならない、だから死ぬわけにはいかない。と付け足す。

『~まぁ、格好良い事言ったところで死亡フラグにしかならないんですけどね。それではさようなら~』

触手がもう一度俺に迫る、次食らったらまともに動けなくなるだろう。でも、逃げるわけにはいかないよな。

「本当に馬鹿ね、だからさっさと退職届出せって言ったのに。」

目の前に走った青い炎。そしてその中から聞き覚えのある声。そこには千鳥野が居た。

「と、言うかこの状況で引かないあなたもなかなかのマゾよね。ロリコンにマゾ、次はどんな異常性癖を見せつけてくれるのかしら?」

「うるせえ。」

「少し休んでなさい、上司の命令よ。」

悔しい、また彼女に守られてしまうのか。彼女を、千鳥野を俺は守れないのか。

「あと・・・」

彼女は決してこちらに振り向かず言った。

「嬉しかったわよ、さっきの言葉。」

そこからの戦闘はあっけなかった。

目の前の少女は古びた本を片手に青い炎を操りその不定形の怪物を倒していた。

アナウンスが聞こえる。

『~魔術とか反則じゃないですか?もういいですよ、1号車に行けるようにしますよ~』


008


1号車の扉を開けるとそこは教室だった。

中央に机が山積みにされており、その上には真っ黒のスーツを着た男性が座っており俺と千鳥野を見て軽い拍手をしていた。

「いやぁ、ここまで来れた人間は初めてだよ。僕としては驚きを禁じ得ないね。」

「お前の目的は何だ?」

俺は真っ先にそれを聞いた。だが男性は意外そうに答える。

「あれ、君は僕の事を知らないのか。優子ちゃんの部下なのに本当に何も知らないんだね。」

俺は千鳥野の方を見る。露骨に視線を逸らしやがった。

「まぁ軽い自己紹介を。僕の名前はニャアルトテップ。ま人間が付けた名前なんだけどね。それで目的だっけ?えっとね・・・暇つぶし。」

え?

「あんたの暇つぶしは質が悪いのよ。もうちょっとましな事をして欲しいわ。」

「そう言うなって千鳥野ちゃん。僕は君ら人間が呼んだから来ただけだよ。この間から結構付きまとわせてもらってたけど気づいてたんだろう?」

「気持ち悪い」

「まぁ、なかなか良い暇つぶしになったから僕はもうやめるよ。」

こいつ、気が狂ってやがる。

「あ、今僕が気が狂ってるって思ったでしょ。でもその気が狂ってる奴にすら君は勝てないんだよ。」

「うちの部下をからかわないでもらってもいいかしら。」

「はいはい、んじゃあ帰りたいから千鳥野ちゃんアレお願い。」

「分かったわよ。」

千鳥野は本を開き詠唱を始めていた。

「そうだ、そこの人間。気に入ったから名前聞いてやるよ。」

「深ツ門、深ツ門帰幽だ。」

「そうかい、じゃあね。帰幽君。」

そう言い終えると男性は闇に消えて行った。

「はぁ・・・やっと終わったわね。さっさと帰るわよ。」

「なぁ、あいつは一体何なんだ?」

「あいつの言った通りニャアルトテップとか言う神様よ。」

「・・・神様が暇つぶしで人間を殺すとは思えないんだが。」

「まぁ、あの神様は人間によって想像され、創造された神様だから。人を殺したところでこっちはしょうがないとしか言えないのよ。」

「どういう事だ?」

「生まれながらにして人を陥れなきゃいけない神様って事。それを生んだのも人間。」

俺は何も言い返せなかった。


009


 今回のオチ。

目が覚めるとそこはビジネスホテルだった。そして隣には古びた本を持ちながら寝ている少女の姿がある。

彼女の寝顔を見ながら考えた。

千鳥野優子は魔術が使える。但しそれは彼女が望んで使えるようになったわけでは無い。こんな小さな体であのような怪物達の知識が膨大に詰め込まれていると思うと、悲しいものがあった。やはり、俺が守らなければと思う。

彼女を起こし、朝食をとり、車で警視庁へと戻る。

警視庁につけばこの出来事は闇に葬られ、またいつものような会話に発展するだろう。

俺は思う。

彼女がどんなに辛い時でもそばに居られるような奴になりたいと。

恋とか愛とかではなく、命の恩人の力になりたいと只々思いながら車を走らせるのだった。


なんか後書き的なものを書くべきだと思うのですがどうも思いつかないのです。

ちょっと物語の言い訳をしておきましょうか。

Q、人らしい感情が無いとか言いながらめっちゃ感情だしてるのですが。

A、伏線です。

Q、作品のクォリティが低いのですが。

A、ごめんなさい。

あ、これ以上やると精神的に死ぬ。

ともあれ、第一話「猿夢」を読んでいただきありがとうございます。

表現技法とかつじつま合わせとかまだまだ素人ですがご意見ご感想をくださるととてもうれしい限りです。

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