第2章
[7時に〇〇駅で。]
そうかなめから朝一で来ていた。
午前2時。
ウダウダと過ごしている間に5時。
待ち合わせの駅まで30分。
そろそろ動き出さないと、と言い聞かせ立ち上がる。
歯を磨き、切りたての慣れない髪の毛を整え、カバンを持って家を出た。
ケータイを開いて受信ボックスを開く。
どうやらかなめからは何も連絡がないらしい。
なら、予定の時間通りでいいのだろう。
しかし、やはり教師なのだなと思った。
日曜でも仕事があるから夜からなのだろうか。
学校はないのに先生は行くものなんだ、大変だなと俺は感じた。
待ち合わせに10分ほど早く着いてしまった。
どうやら俺が思うより俺は浮かれているらしい。
かなめ。
本名なのだろうか。
だとしたら素敵な名前だ、漢字はどんなのだろうか。
無難に要かな、とか考えてた。
気になってあのサイトを開いた。
なぜが自分のプロフィールの画面。
『セイ』
俺のサイトでの名前だ。
俺の本名は金木 犀香
読み方はカネキ サイカ。
女みたいな名前で随分小さい頃は悩んだ。
今になっては呼ばれることもない。
金木犀という花がある。
どうやらこの花が好きだったのだろうか、俺の親は。
名前の由来は聞いたことがないのでわからない。
でもこの花の名前から来ているのだろう。
金木犀の香り、それでカネキサイカ。
突然受信ボックスにかなめからのメッセージが来た。
[目の前。]
ドクンと心臓が高鳴る。
目線を足元にやると、焦げ茶色の靴。
黒のスキニーを纏った足が見えた。
目線を上にやる。
写真通りのいい男が立っていた。
目があうとニコッと笑って
「セイさんですよね?」と尋ねてきた。
「あ、はいそうです。」
「よかったー、初めまして、かなめです。」
「初めまして。」
「よかったらセイさん、夜ご飯食べませんか?」
そうゆうかなめの提案もあって店を探すことにした。
こいつほんとにゲイなのか、と思うほど女の目線を集める。
まぁこんだけスタイル良くてこんな顔なら当たり前か。
「何食べたいですか?」
そう唐突にかなめに聞かれる。
「え、特にこれといったものは…嫌いなものないですし。」
「おぉー、好き嫌いしないのは感心(笑)んじゃ、僕お寿司食べたい気分なのでそれでもいいですか?」
適当にそのへんの寿司屋に入った。
普段はだいたいお高そうな寿司屋さんに連れて行かれる。かなり年上とかに手を出していたからかもしれないが。
だからお寿司がくるくる回ってるのは久しぶりに見た。
きっと最後に来たのは兄とだから。
「社会人さんもこんなところくるんですね。」
「いやー、教師って給料少ないし僕料理しないし牛丼屋さんとかもよく行くよ(笑)」
「あ、そうなんですね(笑)学生の溜まり場だと思ってた(笑)というか、料理頑張りましょうよ(笑)」
「学生多いもんね。(笑)いや、もう絶対料理だけは無理。」
器用そうな指。
これで料理できないとは。
この手でいつもチョークを持って授業してるのか。
その手だけで興奮しそうだ。
低すぎることもないどこか甘い声。
目があうとそらしてクスッと笑うその仕草。
長すぎることもない、ちょうどいい長さのサラサラの髪。
今の教師は茶色でもいいのか。
これなら生徒に人気だろうな、きっと。
「かなめさん、思っていた以上にモテそうですね。」
気がつけばこんな言葉が口から出ていた。
「え、?(笑)全然だよ。(笑)」
「それより、セイさんのほうがモテるんじゃないの?」
へへっと照れ隠しに笑うかなめ。
これがモテないワケがない。
「いや、背低いし顔も良くないし頭も悪いから全然です。(笑)」
「いや、可愛い綺麗な顔してるよ、背は低いけど。(笑)」
どうやら僕のモテるは、男対象と意味で言った感じがした。
その価値観で言ってくるのなら本当にゲイなのかも。
俺がかなめに行ったのは男女どちらともからも、という意味だが。
「ごめん、こんなの今聞くってなるけど、タチなのネコなの?」
「ネコ。」
もっぱらネコだ。
まぁこの体格だし。
「あ、そうなんだ。」
「僕もネコなんだよね。」
かなめがネコだったのは誤算だった。
仕方ない。
「そっかー、凄い好みだけどイケメンのネコはいいや、ご縁がなかったってことで。」
「ごちそうさまでした。」
そういって食べた皿分くらいのお金をおいて席を立った。
ネコに興味はない、かなめほどの顔だ、あの長身でも抱いてくれる奴は腐るほどいる。
そして俺にも腐るほどいる。
振り返ることなく店を出た。
横断歩道の信号を待つ。
駅はどっちだっけ。
青に変わって渡ろうとした瞬間手を引かれた。
「イケメンのタチなら興味ありますか?」
そう言いながら手を引かれてバランスを崩した俺の体を受け止めた。




