第1章
初めまして。
なぜかキーボードを見ていたらうずうずしてしまい、気がつけば打ち込んでいました。
といいつつ、スマホは便利ですね、気がつけばそちらで書いていました。
つまらないものですが趣味程度で書いています、その辺は宜しくお願いします。
インターネット、略してネットと言うものは現代社会において落ちこぼれ中の落ちこぼれの俺にとってなくてはならないものだ。
高校は留年し、現在二回目の高校三年生。
とはいってもほとんど、俺の脚が通学路を歩くことはない。
原因は簡単である。馴染めないのだ。
俺の人間性や性格などにも問題はあるだろうが、もう少し社会的な問題もある。
そう、俺は同性愛者なのだ。
生まれつきなのかは知らないが、気がついたころには性的な目で男友達を見ていた。
しかし、それらを隠すことは上手かったし芽生えた小さな恋も押さえ込み消すことで何事もなく友人として接することができた。
だからそのことで虐められて留年したとかではないが…やはり行きにくい。
そして何より1つ年下だらけの中でもう一度キラキラした高校最後の青春を過ごすのは辛かった。
留年の原因は兄が死んだこと。
これだけである。
18の男が兄の死で外に出れなくなるほど凹んだのである。
交通事故に巻き込まれ、植物人間となり俺の前に現れた兄を見て、ショックで引きこもった。
その後の兄は知らないが、俺の父親だ。
有意義なことに使うだろう。
綺麗事を吐き、人様のために社会のために困ってる人のためにと血の繋がった人間の温かさを捨てる決断をする人間だ。
この父親をよく言えば、冷静に物事を考えることができる人。
悪く言えば、冷酷、冷徹。
どちらにも冷たいという漢字がつくあたり、やはりあの人らしい。
ここまでざっと俺のことに話したが、要するに今頭に入れといて欲しいのは、同性愛者でブラコンでネットが生きがいの留年生。
そしてここにもう1つプラスされる。
ネットで俺がしていること。
ずばり、出会い探し。
そう、ホモを漁っているのである。
自分で言うのもなんだか、結構遊んできたと思う。
なんせ、18、19だ。
若いというのは、お金で買えない素晴らしく価値のあるものなのだ。
それは男女だろうが男男だろうが同じ。
若いというのはそれだけで価値を上げてくれるのだ。
男にしては成長せず低めの背も、声変わりの時期はあったが、見事に通り過ぎられたこの声帯も、この俺にとっては全てが、いい。
男だろうが可愛ければそれだけ、男には愛されるのだ。
俺は年上の男を好む。
きっと家庭崩壊しているのと、兄を失ったこと。
これによって年上からの愛に飢えていたのだろう。
どこにも居場所がない、家族からも見放され、学校には存在しないような生徒になり、そして社会からも突き放された俺にとって、ネットで繋がった同じ同性愛者の腕の中はひどく落ち着くものだった。
それを求めて今日も今日も明日も、ネットで漁る。
一時のあの安心する空間を求めて。
地域、年齢、容姿の特徴。
それらを打ち込み、検索。
ザーッと並ぶ男の写真。
顔はそれほど濃ゆくなく、落ち着きがありそうな低い声。
筋肉質でもなくメタボ体型でもない。
そして黒髪なら問題なし。
そんな理想を並べながら3ページ目をめくろうと矢印を持って行こうとした時、ふと目にとまった1つの写真。
見た瞬間、こんな酷い仕打ちのような奇跡があるのかと思った。
しかし胸の高鳴りは止まらないし、その写真をクリックするマウスを動かす手も止まらなかった。
大きくした写真で確認する。
少し違う。
やはり別人だからか。
しかし近い何かを感じるし、似ていることは申し分ないほど似ていた。
住んでる地域で検索をかけたが、念のためプロフを確認した。
住みはやはり同じ、名前は、かなめ。
年は検索の範囲通りの25歳。
しかし職業や細かい趣味とかは書いてなかった。
一言も初めに設定されている、宜しくお願いしますの文字だけで、あまり出会いたい、とかの強い意志は感じないプロフィールだった。
メッセージを送っても返事がないかもしれない。
冷やかしでゲイサイトに登録したのかもしれない。
もう少しアピールしている人の方がいいかもしれない。
期待して無駄に終わって損するだけかもしれない。
しかし、文章を打つ手を止めさせるような理由を用意できなかった。
〔初めまして。住みが同じで話してみたくなったので送らせてもらいました。よかったら是非。〕
送信っと。
それだけのためにネットを立ち上げたかのようにパソコンの電源を落とした。
時間を見ると夜の11時。
そろそろお風呂に入ろうと思い、用意し風呂場へと向かった。
家庭崩壊。
その名の通り家庭が崩壊。
家族でいるということをやめた家庭。
俺の両親は夫婦でいることをやめた。
いや、市役所にある書類上はやめていない。
世間体や、財産、そして俺の親権。
めんどくさかったのだと思う。
しかし、やはりあの両親の間に愛はないし思いやりもない。
夫婦仲が冷めきり、そして俺との親子であることも両方ともがやめた。
これで立派な家庭崩壊。
兄だけは違った。
両親を尊敬していた。
両親も兄だけは愛していた。
俺も兄だけには心を開いた。
人間的にも学力も素晴らしかった。
そして容姿端麗だった。
あの両親でよくこの顔ができたなと誰もが思うくらいの美しさだった、儚い芸術作品のような美しさだった。
そして兄の周りの友人からも、学校の先生方からもそれはそれはいい評判で、よくできた自慢の兄だった。
この家族が唯一誇れるものだった。
しかし突然の交通事故でこの世を去り、家庭はますます崩壊、俺はますますクズに。
そして今現在、もはやこの家に俺しかいない。
両親はどちらも仕事に生きる人間で、家には帰ってこなかったし、俺に連絡の1つも入れないし、もはや血の繋がり以外は何もなかった。
なので俺が学校に行こうが、何時に風呂に入ろうが、何を食べようが、男と寝ていようが、関係ない。
知られもしない。
そんなことを考えながら入浴を終え、部屋に戻った。
なんとなく日課のようにパソコンをつける。
この部屋を出る時、そして眠りにつく時以外は起動しているからだ。
ピコンっと受信の音がなる。
この音、あのサイトだ。
まさか、さっきの、かなめという男からか?
いや、ついさっき送ったところだ、1時間も経ってはいない。
そんなはずはない。
と思いながらサイトを開き受信ボックスを開いた。
初めまして!
それから始まる言葉と、かなめという文字。
それだけで、俺の心を満たすには事足りた。
かなめからのメッセージを開いた。
〔初めまして!メッセージありがとうございます。ぜひこちらこそよろしくお願いします!〕
簡素なありきたりの分だったけど、帰ってきた喜びが大きくすぐに返事を書いた。
〔返信ありがとうございます。19の大学生でかなり年下ですけど大丈夫ですか?〕
このサイトでは年齢は本当だが大学生は嘘をついている、そうなる予定だった未来の話だ。
会ったとしても大学生の僕で通し、恋人や体の関係になったとしても大学生の俺ということにしている。
知らなくてもいい事実だし、どうせ生涯を共にすることはないし終わりがくる。
ならば理想の俺で十分だ。
そんなことを考えているうちに、あの通知音がなる。
〔大丈夫ですよー(笑)そちらこそこんな25のおっさんでいいんですか?〕
カタカタとキーボードを打つ。
〔おっさんじゃないですよ!(笑)すごくかっこいいですから気になっちゃってメッセージ送ったんです!〕
〔かっこよくないですけどありがとうございます、なんだか照れますね。(笑)
そちらもすごくモテそうですしちょっと緊張します。〕
人間性に難ありでまったくモテません。
緊張?きっと俺のほうが緊張している。
〔モテないですよ!あ、そういやそちらは何されてる方ですか?
聞いてもいいなら教えて欲しいです!〕
〔またまた(笑)あ、失礼しました、まだ何も自己紹介してませんでしたね。
高校で数学の教師してます。〕
高校で?
まあ、俺の高校にはこんなにいい男の教師はいなかったし、まず俺がもう行かないから教師だろうか関係ない。
〔へぇー先生してるんですね。すごいですね!
また勉強でも教えてください。(笑)〕
〔まだまだ新米ですし、だめだめですよ(笑)数学だけなら・・・(笑)
どんな勉強してるんですか、大学で。〕
まぁ25歳ならまで新人か。
〔機械系の大学です。高校の教科でいうと数学というよりは物理に近いので、きっとかなめさんに教えてもらうことはないかと。(笑)〕
〔おおーかっこいいですね!物理はごめんなさい、僕わからないです。(笑)〕
実の俺は数学も物理も、というか理系全般、いや全教科だめだ。
〔俺もいまいち分かってません。(笑)難しすぎて。(笑)〕
〔えぇー頑張って下さいね?また大学生活で暇ができたら会いませんか?〕
そちらからコンタクトを取ってくるとは予想外、しかしこのサイトに登録しているのなら、冷やかしでなければ会うこと目的だろう。それなら俺にとっても都合がいい。
〔頑張ります!やった、かなめさんに会ってみたいです。いつでも暇ですし。(笑)〕
〔よかったー、なら僕は最短で日曜が暇なんですけどどうですか、いきなりすぎますか?〕
ニートの僕には曜日感覚がないし必要ない。
のであわてて確認した。
今日は火曜。5日後か。
〔俺も大丈夫です、昼からか夜からかは任せます。〕
〔んじゃ、夜からで。〕
かなめからのこの返事を見てから、俺は眠りについた。
たわいもない会話を繰り返した。
夜の10時頃から日付の変わるころまでメッセージでの会話を繰り返す。
俺は実際会っていいなと思った人にしか携帯の連絡先は教えない。
なのでかなめとのやり取りは、このサイト上だけだった。
声は少し気になったが、まぁあの写真から分かる外見のよさ。
どんな高い声でも許せたので心配はしなかった。
男と出かけるときくらいしか髪の毛をセットしないので、まったく髪の毛の状態を気にしてなかったのだが、鏡を見ると前髪で鼻まで隠れていたので、土曜日美容院へ出かけた。
自分で言うのは変だが、男にしては可愛らしい顔付きだし小柄なので美容院に行きお任せで切ってもらうと長めで完成されてしまう。
今回も量は減ったが、そんなに短くはならなかった。
癖っ毛なので、朝大変だしボサっと見えるのでもう少し切って欲しいとは思うが、かなめに会いに行くのに失敗した髪型はいやだった。
家に帰り、いつも通りにご飯を食べていつも通りに風呂にはいって眠りについた。
明日はいよいよ日曜だ。
そういえば最近、かなめと話すようになってからあのサイトはその為だけに開くようになった。
前までは開けば好みの男を検索していたのに、今では受信ボックスまっしぐらだ。
かなりぞっこんらしい。
たしかに顔は好みだし、それだけでなく話す内容や文章からも伝わる優しい言葉選びとか、落ち着いた話し方とか、なにもかもが好みで俺にとって理想を詰め込んだ人だった。
きっと明日会っても嫌いになることはないと思うほど好きだし、多分もっと好きになってしまうと思う。
しかし男同士だ。
本気になったところで壁は高い。
男同士で一生を誓うなどこんな俺には無理だし、まず女であろうと男であろうと一生を捧げたいと思ってもらえるような人間ではないと自分でも思っている。
だから、せめて。
少しの間でもいいから、そばにいてほしい。
そう思って日曜も男の背中に手をまわすのだろうか。
癖付いた習慣のように、いつものように。




