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Seoul Excalibur  作者:
序章 CATION.
4/5

3話 脅迫

立ち絵がないと人物像が分からないから、いつか描きたいですね。

3話 脅迫


窓から光が差して、目を覚ました。

…体が異常に重い。そういえば、何かとても大きなことを忘れているような気もする。

…起き上がる。

「…昨日一日、寝てたのか」

ふらつきながら床に足をつき、壁に張り付いた時計をみる。

6時半。今日は学校に行こう。流石に2日も休むのはまずい。

ていうか、あれ…?

なんで休んでたんだっけ…

皆勤賞なんて狙えるような僕じゃないけど、最近風邪をひいた記憶もないし…

ひとまず顔を洗うために洗面所に行く。


…途中、玄関にあるファックスが目に入る。

受信メッセージ1…

寝てる間に来たのだろうか。

…でも、今まで一度さえ使ったことのないファックス機能だ。誰からだろうか。

目をこすりながら、メッセージを印刷する…

―――っッ!?

“お早うございます。先日、命を奪いに来た者です。

 まさかあの場で警察が来るとは思いもしませんでした。

 彼らが来たことを、貴方は感謝すべきですね。

 余談ですが、私達のことを言っておきましょう。

 私達は「カリバリア」。世間の悪党組織のイメージそのもの、と考えて間違いではないでしょう。

 もっとも、この程度の事を知った程で、貴方や警察に我々が特定できるようなものではありませんがね。

 次にいつ来るかは申し上げられませんが、必ず私達は貴方を恐怖に陥れます。

 何より、貴方が恐怖を感じることを、私達は、最高の喜びとしているわけですから。

 では残りの命、存分に楽しみ尽して下さい。


                      I'll come to kill you again...”

記憶が戻ってくる。否。

印刷された文字に吸い込まれて、一昨日のことを叩きこまれるような、そんな感覚…

記憶と目の前の現状に、酷く混乱する…


けど、はっきり分かることが一つ。

普通に生活していれば、名前を聞くことも無いような集団に、僕は殺されようとしている…


あの子に起こったことが、今僕にも降りかかろうとしている…?


「うああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


大人げないなんて分かってる。思う壺だって分かってる。こういう時こそ冷静にならなきゃならない。

こういう事例のテンプレートだ。分かってる。分かってる。

怖い。

鳥肌が立つ。眼球が血走る。声帯が震える。

きっと僕は。

残した事なんて無い筈なのに、殺されるのが酷く怖いんだ。


い や     、

無性に 憎い、 僕を見下して皆殺した 奴等 が


知らぬ間に受話器のどこかを叩いてしまったようで、変な音が、機械から漏れだす。

それのお陰で我に帰った。それでも――

「はぁ…はァ…!」

息が荒れ、冷や汗がどろりと流れ落ちていく。

そのまま崩れるように、一昨日のように、へなへなと崩れ落ちる。

あんな声をこんな朝にあげるなんて冗談じゃない。近所の人に迷惑をかけてしまったはず…

それに、僕は、今、

なんて…

「っぅっぁっ!?」

突然、爆音が鳴り響く。

もしかすると爆音でもないのかもしれないが、僕の心臓は、酷くそれに反応してしまった。

「…っ!?」

唐突に鳴り出す電話。それもファックスと連動している。

だから目前、耳元で、電話が叫び出した。

まさか…っ!

手が震える。そのまま手を伸ばし取ろうとしようと、宙を舞うばかり。取れないんじゃない、取りたくないんだ…!

でも、このままじゃ鳴り終わる…!!!

恐怖を振り払った一瞬、その一瞬に受話器を掴むことができた。何も考えず、素早く耳元に寄せる。

「も…もしもし」

両手を受話器に添えて持つ自分が異様に不自然だった。正座までしている。余計なことを気にして、声までおかしくなったような気がした。

「朝早くに申し訳ありません、紅葉さんのお宅ですか?」

受話器から聞こえる声。…返事を返すのが怖い。けれど、返事をしないと会話が進まない。

「はい…。」

「私は白礼市警察の晴と申します。モララー種の紅葉さんはおられますか?」

昨日の、警部さんか…

一昨日の集団かと思ってしまった。

安堵の息を飲みこんで、会話に戻る。

「僕が紅葉です。…先程、ファックスでメッセージが届いているのを確認しました。文面からして、昨日の犯行者か、その辺りの人かと…」

「本当ですか?よろしければ、今からそれをこちらに渡していただけないでしょうか?」

少し嬉しそうな声が聞こえてくる。

「分かりました」

大学に行く電車の時間は8時。警察は駅の近くにあるし、今からなら大丈夫だろう。

さっきの冷や汗が耳元を伝っていくのを不快に思いながら、話の続きを聴いた。

「ああそれと。ファックスの受信データ、残っていますか」

少し待って下さい、と言って、受信データを見る。警察にとってメッセージの発信源は重要だろう。その場所があの集団の本拠地ではなくても、そこにいた事は明白になる。

勿論、罠、ファックスが破棄されている場合もあるかもしれない。それでも調べてみる価値はあるはずだ。

…しかし、データ何処にも見当たらなかった。間違いなく、さっき…

…そういえば。文章を読んだ後に、どこかを叩いた気がする。

もしかすると、当たったのはデータ消去のボタンだったのだろうか。

いや、きっとそうなんだろう。とんでもない事をしたんだ…

「すみません…メッセージを見た時、自暴自棄になって、思わず消去ボタンを…押してしまいました」

「そうですか。仕方ありませんね……それだけの文章だった。だったら、犯人たちを檻に入れることも容易にできます。こちらも全力で調査させていただきます」

「お願いします…」

「ではまた後ほど」


回線の切れる音が虚しく響く。

また大きく溜息をはいた。最近どうも溜息が多い。

コードに繋がった受話器をファックスに戻し、ようやく洗面所にたどりつき…鏡を見て、少し驚く。

我ながら、酷く疲労したような顔になっていた。


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