大家さんは齢70でもピアスしてる。
今回はちょっといい話。
〇月●日、金曜日、また晴れか。
失恋後、目の下のくまがひどくなった。
「やばい……」
もう好きな人もいないし、どうせお前だからくまぐらい平気だろだって?
いやいや、これがちょっと…うん、ヤバイ。
それは…
大家さんにバカにされるから。
あの人にバカにされるなんて、想像しただけでイライラする。
…あ、コーラ無くなった。
くそぅっ何でこんな時コーラが無くなるんだ!!
コーラを買うには外の自動販売機に行かなくては。
言っていなかったが、佳奈はコーラが大好きである。
外に出るということは、現在の佳奈にとって絶対絶命。
大家さんに会うからだ。
あのババ…大家さんは、昼は大体日向ぼっこしている。
日焼けしてシミ増えるぞ?
そんな事はさておき、一刻も早くコーラが飲みたい。
たたがコーラに熱くなる自分の姿が惨めだが、そんなことは今はどうでもいい。
大家さんに見つからないように階段をゆっくり降りる。
…いた。
大家さんだ。うわぁお願いだから気付かないで!
「…あれ?」
大家さんは私に気付かず、友達らしき人と話していた。
「このアパートに、若い娘が住んでいるんですってね。」
「あぁ…。あの子か。」
私の事?
佳奈は隠れて、大家さんの話を聞いた。
「私がもし、結婚して子宝に恵まれていたら、あの子ぐらいの年齢の娘がいたんだろうね。正直、あの子がこのアパートに来てくれて嬉しいんだよ。」
「でも、相当喧嘩してるみたいですね。」
「それくらい本音が言えるってことさ。私は素直じゃないからね。つい、きついことを言ってしまうんだ。あの子が私のようになって欲しくないからね。早く結婚していい家に住んで欲しいんだよ。」
「まるで娘さんのようですね。」
「あぁ。私はあの子を娘のように思ってるよ。」
涙が出てきた。
大家さんがそんなことを思ってるなんて知らなかった。
「ますます酷い顔になった…」
佳奈は泣きながら、笑った。 そして、自販機へ向かって、コーラを二本買って、大家さんに渡した。
「聞いてたのかい。それにしても酷い顔だねぇ。」
「ほっといて下さいよ…!」
大家さんはニヤニヤ笑ってコーラを受け取った。
「でも、もしあんたが結婚していなくなったら寂しくなるねぇ。ずっと結婚しなくてもいいんだよ。」
「冗談じゃない!結婚しますから!」
笑いがあふれる。
大家さんの耳には、いつも若作りだとバカにしてた綺麗なピアスが輝いていた。




