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◆第5話◆

 翌日はバイクで学校へ行った。正確に言うと、学校の近くまでだが。

 当然のように高校はバイク通学どころか、本来二輪免許自体が禁止されている。

 毎日バイクで登校する連中もいるが、皆、近くの路地裏に止めている。

 今日は教師たちの都合で授業が午前中で終わりなのだ。僕は久しぶりに上野にでも行ってバイクのパーツを見ようと思っていた。

「ハル、今日これからどうすんの」

 放課後、聡史が声をかけてきた。

「俺、上野のバイク屋行く」

「メットある?」

 聡史が訊いた。タンデム用の予備のヘルメットの事だ。

「あるけど、行く?」

「ああ」

「理奈と会わないの?」

「ああ、最近めんどい」

 聡史はそう言って笑った。

 コイツは何時もそうだ。彼女をコロコロ替えて、半年と持ちやしない。

 僕たちは学校から駅へ向かう途中の雑居ビルの裏まで歩いて、バイクで走り出した。

 上野と言えばアメ横が有名だが、大通りに面して中古のバイク街が連なっている。

 車体の値段は少し割高感があるものの、ここを一回りするとだいたい欲しいバイクに巡りあえる。

 パーツショップも多いから、買い物には困る事が無い。小さいショップでは取り寄せになるパーツもこの辺では在庫が在ったりする。

「おお、結構女子高生いるね」

 僕がショップから出てくると、付き合うのに飽きた聡史は、歩道の柵に寄りかかってコーラを飲みながら下校する何処かの女子高生の集団を眺めていた。

 この辺りは大通りだけではなく、路地を入ってもバイク屋が軒を連ねて、大きな展示スペースにずらりと中古バイクが並んでいる。

 僕たちは路地裏に置いたバイクの所まで歩いていた。その間も、僕は連なるバイクを眺めているが、聡史は周囲を歩く女子高生を眺めていた。

「ああいうのって、痛々しいよな」

 聡史が不意に言った。

「何が?」

 僕は並んだ中古バイクから視線を離して通りを見た。

 二人の女子高生がゆっくりと歩いている。そして、その一人は松葉杖を着きながら片脚を庇って、短いスカートから生えたその左足には、ぐるぐるとしつこいくらいの包帯が巻かれていた。

 しかし、その光景とは裏腹に明るい笑い声が聞こえる。

 あの声……

 僕はその声に聞き覚えがあった。

 まさか…… でも、あれは高校生だ。

 僕たちは普通に歩いても、次第に前の二人の女の子に近づいていった。

 僕は、追い越し際にその二人を盗み見た。

 二人の女子高生は、笑いながら人の気配に反射したのか、何となくこちらに視線を注いだ。

 その時松葉杖の娘と視線が交わった。

「ああっ」

 僕は思わず声を出して立ち止まった。

「あっ……」

 彼女も立ち止まる。

 隣の娘は何が何だか判らずに、笑顔が途端に怪訝な表情に変わった。

 僕の横にいた聡史も、おそらくは同じような顔をしただろう。

「き、キミって、高校生なの?」

 そこにいたのは、七倉榛菜だった。

 彼女は小さく舌を出すような表情で、笑いながら頷いた。

「誰? 知ってる人?」

 榛菜の隣の娘が彼女に訊いている。

「うん。バイトで一緒の人」

「ああ、ウルサイバイクの人ね」

 う、ウルサイバイクの人? 僕はそんな認識のされ方に少しショックを受けた。

「ナニナニ、バイト一緒って、イタ飯屋のか?」

 聡史が訊いてきたから、僕は

「ああ」

 とだけ、簡単に返事をした。

 



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