シーン3:冷たい食卓(Iの研究室) +シーン4:三つのサイン
シーン3:冷たい食卓(Iの研究室)
(散乱するケーブルとサーバー。
中央にはホログラムで投影された「女性の笑顔」がループ再生されている。
Iは冷めたピザを齧りながら、キーボードを叩いている)
I: シミュレーション回数、14,502回目。失敗。 人格データの再現率、82%で停止。 ……ダメだ。これじゃ君じゃない。 (ホログラムに手を伸ばし、Iが触れようとするが、触れられない。)ただの光の粒子だ。触れられない。温もりがない。 なぜ人間は死ぬんだ?
(彼女の顔が歪み、ノイズ混じりの声で「……アイザック、演算を……止めて……」)
なぜ「心」なんて不確定なバグが存在する? この悲しみを消去するコードが見つからない。
(モニターの画面が全てМの顔に切り替わる)
М: 悲しみというバグを取り除くには、システムごと書き換える必要がありますよ、アイザック博士。
I: (動じずに)ハッキングか。セキュリティレベル5を突破するとは。何者だ。
М: 同業者ですよ。もっとも、私は「個体」の蘇生などという非効率なことはしませんが。 (デスクの上に封筒が出現する) 博士、あなたの知能は人類の宝だ。だが、その「感情」が処理速度を落としている。 我々のプロジェクトに参加しなさい。 そこでは、全ての意識が統合され、死者は生者と、過去は未来と接続される。 つまり、論理的な意味で、あなたは彼女と「一つ」になれる。
I: ……物理的な再会ではなく、意識の統合か。 理論的には可能だ。
……そこに、この痛み(グリーフ)はないんだな?
М: ありません。あるのは完全なる静寂と、調和だけです。
I: (ペンを取る) 合理的だ。契約しよう。
シーン4:三つのサイン
O、V、Iが同時に契約書にペンを走らせる。 紙にインクが滲み、ペンを走らせる音が不気味に大きく響く。
O・V・I: (ユニゾンで) 「「「私は、永遠を望む」」」
(暗転)




