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地獄の顔は何度まで?  作者: 安達夷三郎
第二章、入学早々、目立っちゃってます
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五話

「キャー、楓くん頑張って〜!」

体育の時間。黄色い歓声が響き渡るグラウンド。

今、目の前では男子のサッカーが行われているんだけど、変成くんはどのチームよりも目立って輝いていた。

だって運動神経抜群だから、試合でも大活躍。

さっきから見事なパス回しとシュートを決めていて、それを見た女子達は大興奮。

なんでも噂では、入学したばっかりなのに既にファンクラブまであるんだとか。

「あらまぁ、すごい人気だと。真宵の幼馴染くん」

コートの隅で一緒に見学していた水崎美穂(みほ)ちゃんが、感心したように呟く。

彼女は、入学して初めてできた友達なんだ。席が前後というだけあって、すぐに仲良くなったんだ。

美穂ちゃんは一房だけ赤いリボンを付けているボブがよく似合う可愛い女の子。裏表のない性格の美穂ちゃんは私にとって頼れる姉のような存在であり、お互いに悩みを相談し合える唯一の友達。

「真宵ってさ、楓くんと幼馴染なんでしょ?」

美穂ちゃんが、グラウンドの方を見ながら小声で聞いてきた。

「う、うん。小さい頃からずっと一緒で……」

「へぇ〜良いなぁ。あんなイケメンで運動神経も良くて、優しい幼馴染とか、少女漫画じゃん」

「そ、そんなことないよ!?楓くん、優しいどころか怖い時もあるし……腹黒サイコパスだよ」

「あははっ、仲良しなんだね!」

美穂ちゃんは、からかうように笑って私の肩を軽く叩いた。

「楓くんはやっぱり真宵の可愛さにやられたか」

「ま、まさか!」

「いや〜有り得るかもよ?だって、中学生って小さい時みたいに好きな子のいじわるしちゃう年頃じゃん?それに、真宵って女の私から見ても可愛いし」

「え、ありがとう」

そんな風にあれこれ考えていたら、ふと何処かから大声が上がって―――

「そこ、危ないっ!」

次の瞬間、勢いよくサッカーボールがこちらに向かってくるのが見えた。

「え!?」

思わず声を上げる私。

すると、どこからか変成くんが走ってきて私を庇うようにギュッと抱きしめた。

―――ドンッ!

飛んできたボールは勢いよく彼に当たったので、ヒヤッとしてしまった。

「キャー、楓くん!!」

それを見た女子達も大騒ぎ。

「真宵、大丈夫?」

だけど私はそれ以上に、変成くんの方が心配だった。

「楓くんも大丈夫?」

「大丈夫だけど」

胡散臭い笑みで笑う彼はどうやら平気みたいだけど......どこか申し訳ない。

だって、絶対痛かったよね?今の。

すると、その様子を見ていた女子達が口々に騒ぎ出す。

「良いな〜白崎さん」

「羨ましい、私にもボールが当たれば良かったのに」

「はぁ、私も楓くんに守ってもらいたーい!」

さらには隣にいた美穂ちゃんも何故かニヤニヤしていて。

一気にみんなから注目される羽目(はめ)になってしまったので、なんだかちょっと恥ずかしかった。

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