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地獄の顔は何度まで?  作者: 安達夷三郎
第四章、都市王を探せ
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十八話

進路指導室は、空気がズーンと重たい。

隣に座っているのは、妙に緊張しているスーツ姿の閻魔。

「それで、白崎さんは勉強を頑張っていますよ。提出物とか」

にこやかに先生が言った。

「そ、そうですか......はい、ええっと、秦......じゃなかった、真宵は頑張って......!」

前日に伝えたのに、まさか来てくれるとは......。

頑張って保護者を演じているんだろうけど、めっちゃ動揺している。

見てるこっちが辛い。

「はい。クラスでも楽しそうですし、仲良くやっていますよ。それで、これが白崎さんの成績表なんですけど......」

先生が机にスッと置いたのは、一学期の成績表。

閻魔は私よりも先にそれを覗き込んだ。

「英語が少し苦手みたいですね。得意科目は国語......みたいです」

「そうですか〜......」

そう言っている閻魔の顔は引きつっている。

無事、気まずすぎる三者懇談が終わった。

進路指導室から出た途端、閻魔がその場に崩れ落ちそうになる。

「いや〜、緊張したね〜」

閻魔は髪をわしゃわしゃと掻き上げながら、情けない笑みを浮かべる。

周りの生徒達がチラチラと見るので、私は彼の袖を引っ張ったまま校舎を出た。

校門を出たあたりで、ようやく閻魔はネクタイを緩めた。肩をグルグル回している。

(......何だろう。この前やってたドラマに出てくる銀座で働いているホストみたい)

「秦広王って成績良かったよね。冥府学校にいた時は」

「誰かさんがミスして仕事を増やしたからだと思うけど」

閻魔は目を逸らして口笛を吹く。

「......本当にごめんね」

本当に申し訳ないと思っているのなら、もう少し仕事量を減らして欲しい。......無理か。無理ならお給料アップを!!

なんて思っていると、

「あ、そうだ。今の閻魔帳って使いやすい?」

突拍子もなくそんなことを聞いてきた。

「え?」

「いやー、今の手帳型だとみんな同じだから、なくしたり、入れ替わったりするよね〜って思って。別々の作ろうかと思うんだけど、どうかな?」

今の閻魔帳でも良い気がするんだけど......でもなくなったら嫌だし。それなら新しいの作ってもらった方が良い気がする。

(そういや昔、閻魔帳を何回かなくしてめっちゃ怒られたっけ......)

「僕的にはこう......時代を先取りしたようなやつとかどうかと思うんだ。面白そうでしょ」

新しい閻魔帳についてあれこれ話していると、ちょうど本屋さんから出てきたであろう変成くんと目が合った。

「「あ」」

目が合った瞬間、心底嫌そうな顔をされた。

「変成王〜!!」

「秦、懇談終わったの?」

「終わった!」

手をブンブン振る閻魔をスルーする変成くん。

「ねぇ秦。閻魔と学校から歩いてきたの?」

「うん」

そう返事すると、変成くんは手を顎に当てて何やら考え出した。

「......まずい」

「何が?」

「......帰るよ」

「え?え!?」

ぐいっと腕を引っ張られ、半ば強制的に帰宅させられた。もちろん閻魔は置き去りに。



「―――自分の家に帰れよ」

息切れしながら初江王の家の玄関で呼吸を整えていると、仁王立ちした初江王が呆れながら呟いた。

「だって......変成くんが」

呼吸を整えながら変成くんを指差す。

変成くんはというと、まったく悪びれない表情で腕を組んでいる。

リビングに上がらせてもらい、氷が入ったお茶を貰った。

喉が乾きすぎて、一気飲みしてしまう。

「何があったんだ一体」

初江王が怪訝そうに変成くんを見る。

「今日、秦の三者懇談だったんだよ。で、保護者役として来たのがスーツ姿の閻魔だった」

「ああ......それは災難だったな」

(どういうこと?)

私が疑問に思っていると、初江王が説明してくれた。

「閻魔は黙ってればチャラい二十代だ。金髪がちょっと会社的じゃないが。で、秦広王は制服」

「はい、怪しい組み合わせの完成」

「ひぇ......」

変成くんのにっこりした表情に、全てを察してしまった私は思わず声をもらした。

「そこまで考えてなかった......」

項垂れていると、それを良いことにこの男はさらに追い打ちをかけてくる。

「秦って、良く言えば楽観的だけど悪く言えば馬鹿だよね」

上機嫌そうにクツクツと喉を鳴らす。

「昔からお前は何も変わってないな」

変わってないのかな?私はしばし考えたが、幼馴染の言葉以外に説得力があるものは見付からないので、ここは素直に応じることにした。

「いや、昔よりは大人しくなったよ」

「「どこが?」」

二人の声が重なった。

「えぇぇぇぇ!?何で揃って即答なの?私だって昔みたいに考えなしに行動しないよ!」

「へぇ......」

変成くんが悪い笑みを浮かべる。

「昨日、亡者に自ら突っ込んで行ったのは誰だったっけ?」

「うっ......」

「全く、あそこで私が助けなかったらどうなってたか......」

「......ごめん」

初江王には本当に申し訳ないと思ってるよ。

「謝罪は何回も聞いた。感謝の言葉の方が良い」

「あ、ありがとう」

「初江王って意外に計画性あるよね〜」

ゴホン!

「あー、問題の懇談のことなんだが」

咳払いをした初江王が急に真面目な話に戻る。

「私は実際に今日の閻魔を見ていないから分からないが、人間は噂好きだ。恐らく明日にでも『金髪ホストが保護者』という噂が流れているだろう」

「本当にどうしよう......」

テーブルに額を押し付けるように呻くと、変成くんはストローで氷をつつきながら軽く言った。

「すぐに噂が落ち着けば良いけどねー」

「だな」

人道には『人の噂も七十五日』ということわざがある。広まった噂でも長くは続かないという意味らしいんだけど......。

オムライスが私の足元に歩いてきて、くぅ〜んと心配そうに私を見上げた。

「まぁ、私達は今まで通り亡者を裁いていけば良いだろ。あと、何を言われても堂々としろ。分かったな?」

「うん」

「俺達もついてるから何かあったら頼ってよ。何も無くても頼っても良いよ」

少し心が軽くなった気がした。

「二人共、ありがとう」

「どういたしまして。という訳で明日、修羅場(しゅらば)になるの楽しみにしてるね」

「変成くん、最低!」

「褒め言葉として受け取っておくよ」

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