表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地獄の顔は何度まで?  作者: 安達夷三郎
第三章、宿泊学習は大盛り上がり
13/25

十三話

すると、材料を前にして美穂ちゃんがひと言。

「ごめん。私、料理下手なんだよね」

どうやら美穂ちゃん、料理はあまりしたことないみたいで。

「大丈夫だよ。じゃあ、野菜は私が切るね」

そう言うと、申し訳なさそうに目の前で両手を合わせた。

全然気にしてないから大丈夫だよ。

「本当にごめん!代わりに火起こしでもなんでもやるから!」

そしたらそこで変成くんが飯盒をサッと差し出して。

「じゃあ、米炊くのお願いしても良い?」

「うん、お米ね。オッケー!」

そうして私と変成くんは野菜を切る係、美穂ちゃんはお米係、他の子達はカレーの係になった。

「じゃあ私、お米取りに行ってきまーす」

美穂ちゃんがそう言って先生のところへ行くのを見送った後は、二人で早速野菜を分担して切り始める。

私はとりあえず、ジャガイモの皮むきからすることに。

変成くんは玉ねぎ、私はジャガイモ。

それぞれ手元に集中しながら、聞こえてくるのは包丁のリズムだけ——

……と言いたいところだけど、現実はそう上手くいかない。

「えっと……先生、お米ってどれくらい持っていけばいいんですか?」

少し離れたところで、美穂ちゃんの声が聞こえる。

「六人分なら、このくらいだな」

「えっ、多くない!? こんなに炊けますか!?」

「炊くんだよ」

先生は呆れながらそう言った。

その後、少しお米が焦げたりなどのプチハプニングがあれど、美味しいおこげカレーが作れた。


一日目の活動を終えた後はお風呂に入って、同じ部屋の女の子五人でのガールズトークが始まった。

「美穂ちゃんは好きな人いないの?」

「え〜......部活の先輩がちょっと気になってて......」

「きゃー!そうだんだ!!」

みんな、好きな男子や気になる人の話で大盛り上がり。

そして、やっぱり話題に上がってきたのは、

「でもうちのクラスと言えば楓くんだよね〜」

変成くんだった。

変成くんのファンクラブは何故か『貴公子楓を見守る会』という名前が付き、上級生の子まで入会しているという程の人気っぷり。

「ねぇねぇ、真宵ちゃんは楓くんといつも一緒にいるけど、幼馴染なんだよね」

「え!?」

急に話を振られて、びっくりしてしまう。

「やっぱり、楓くんの小さい時の話とか聞きたい!」

「私も!」

「お願い!白崎さん!」

みんながぐいっと身を乗り出してくる。

部屋の空気が、一気に『暴露会』に変わってしまった。

「え、えっと......小さい頃の話?」

「そう!なんかないの?可愛いエピソードとか!」

「楓くんって完璧って感じだけど、昔はドジだったとか!」

「泣き虫だったとか!!」

四方八方から質問の嵐。

私は完全に逃げ場を失った。

確かに変成くんとは幼い頃から一緒だったけど、あの人、幼少期から完成されてた気がするんだよね......。

というか、昔から落ち着いてて......むしろ私の方がいろいろ世話されてた。

でも、みんなのキラキラした期待の目がまぶしすぎて、「ごめん、特にない」なんて言いにくい。

「えっと……」

苦し紛れに、なんとか思い出を探る。

(何かあったはず……なんか……なんか……!)

宋と初江王にグループのメッセージアプリで『変成くんの小さい頃の可愛いエピソードって何かある!?友達に聞かれてさ〜』と送ったら、即既読が付いた。

―――なになに、恋バナ〜?w

―――川のことでも言っとけ

(あ、あれ......)

初江王のメールでひとつだけ、思い出が引っかかった。

「……あの、小さい頃、川で遊んだ時に……」

「うんうん!!」

「どうしたの!?」

みんなの期待が天井を突き抜けそうだ。

「……私が足を滑らせて転んで……水飲んじゃって……」

「え!? 真宵ちゃんが!?」

「で、でね、そしたら……」

あまりに可愛くない自分のエピソードに、喉が詰まる。

「楓くんが、泣いた」

「「「ぇぇぇぇぇぇぇ!?」」」

部屋が揺れた。

「な、泣いたって……楓くんが!?」

「嘘でしょ!? あのクールな楓くんが!?」

「真宵ちゃんが溺れたと思って……?」

泣いたのが変成くんと宋、怒ったのが初江王。

(今思い返すと恥ずかしいかも......)

「やばっ……真宵ちゃん、絶対特別じゃん!」

「幼馴染に泣かれるヒロイン、本当に存在したんだ……」

「楓くん、真宵ちゃんのこと小さい頃から守ってたんだねぇ〜!」

みんながもう勝手に盛り上がってる。

美穂ちゃんも「少女漫画の世界じゃん......!」と目を輝かせていた。

ガールズトークがひと段落した後、何故か男子の部屋に行こう!ということになった。

「お邪魔しまーす」

「遊びに来たぞー」

女子五人で男子部屋を訪ねると、そこは大部屋の和室でクラスメイトの男子八人がゲームをしたり雑誌を読んだりしてくつろいでいた。

そこには変成くんもいて。

だけど、何とも言えない渋い表情で私のことをじっと見たかと思うと、すぐにパッと目を逸らす。

(あれ?何か不機嫌......?)

心当たりはこれといったものはないんだよね〜と頭を捻っていたらその時、部屋にいた男子の一人が私達の方に駆け寄ってきた。

「女子が来るとか最高!良かったらカードゲームしない?」

「良いね!やりたーい!」

「よし、じゃあみんな入ってよ」

他の子達に誘導されるがまま着いていくと、ちょうど変成くんを含めた四人でカードゲームをしている途中だった。

「次から女子も入れてやろうぜ〜」

「良いね良いね!」

「このゲーム定員七人だったよね。全員は無理じゃない?」

それを聞いて、思わず遠慮しようとしたら、サッと美穂ちゃんが手を上げた。

「じゃあ私と真宵は待っとくから、先に(みお)達先にどうぞ〜」

「え、良いの?」

「うん、メンバー交代しながらやろうよ」

すかさず提案してくれたので、先に澪ちゃん達がやることになり、私と美穂ちゃんは傍で待つことに。

男女七人がゲームでワイワイ盛り上がる傍で、美穂ちゃんとスマホで動画を見たりしながらまったり過ごす。

すると、みんなの楽しそうな会話が聞こえてくる。

「てかさ、楓くんって好きな人いないの?」

「あ、私も気になる!」

「いない」

変成くんが即答したのを聞いて、男子達がはやし立てる。

「信じらんないよなぁ〜!あんなモテるのに入学以来、全部の告白を断ってるらしいぜ」

「良いよな〜、一人くらい分けてくれよ〜」

「その中に付き合ってみたい子とかいなかったの?」

美穂ちゃんが尋ねると、楓くんは頷いた。

「いないね」

「そっかぁ......」

それにしても熱気すごいなぁ......。何だか暑くなっちゃったよ。

そう思った私は、美穂ちゃんにひと言告げ、一旦部屋を出て飲み物を買いに行くことにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ