表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地獄の顔は何度まで?  作者: 安達夷三郎
第一章、ポンコツ閻魔のミス
1/22

一話

「起きろよー」

切実に問いたい。

朝起きると、家族でも何でもない友達が部屋にいた時の対処法を。

殴るか、悲鳴を上げるか、はたまた見惚れるか。

とりあえず私は夢の中だろうと判断し、目を閉じた。

それが、普通を知らない私の出した答えだった。

「......十秒以内に起きないと等活地獄(とうかつじごく)に堕とすよ」

「うわぁぁぁ!!」

ガバッと布団から飛び起きた。

畳の上にあぐらをかきながら座っているのは、同じく十王の仲間でサイコパスな変成王(へんじょうおう)

ちなみに私は秦広王(しんこうおう)だよ。

笑顔で殴ってくるから、サイコパスとか言われている。

十王や獄卒の暗黙のルールで、『変成王が怒ったら、すぐ逃げよう』なんてものもある。

「おはよう」なんて言う余裕はない。布団を蹴飛ばしたまま私は仰向けにのけ反り、目の前の変成くんを凝視した。

「脅されて起きるの、目覚めが悪いからやめて......」

「お前が起きないからでしょ」

にこやかな笑みでとんでもないこと言ったぞ、おい。

とりあえず変成くんを追い出して、のそのそと着替え始める。

私が生まれ育ったのは『地獄』と呼ばれる場所だ。

そして私達は悪行をして死後地獄に落とされた亡者達を裁いて管理するのが仕事......なんだけど、地獄の王であり、私達の上司でもある閻魔大王はポンコツすぎて笑えない。

人道には『嘘をつくと閻魔大王に舌を抜かれる』という迷信があるらしいが、全然そんなことはない。嘘をつくだけで舌を抜くようものなら、ほとんどの死者からの反発を受けて、逆に閻魔が三日くらい寝込む。

思い出しただけで頭が痛くなる。あの時の閻魔――地獄の王たる威厳(いげん)はどこへ消えたのか。

(あ、元からなかったわ......)

部下である十王や獄卒からは『馬鹿』だの『馬鹿閻魔』とか言われている。少なくとも変成くんには言われている。

今日は閻魔に呼ばれているので、閻魔庁に向かう。昨日連絡がきて、絶対来て!とのことで理由は『とっても大事な用事』なんだって。

今までそれで呼ばれることはあっても、まともな用事じゃなかった。

『仕事めんどい、ぴえん』とか、『仕事多すぎて、ぴえん』とか......上げだしたらキリがない。


「秦広王、来てくれたんだね!」

「......」

えーっと、変成くん達に土下座されられているのは......閻魔だよね?

「え、何してんの......?」

「いやぁね〜、地獄の扉を開けっ放しにしながら寝ていたら亡者(もうじゃ)達、逃げちゃった☆......それで反省してます」

「秦!今夜はバーベキューだ!!」

「え、僕、焼かれる?」

「炭火焼きが良いですか?」

「あーん、めっちゃキレてるー」

ぎゅうぎゅうと無惨にも縄で縛られている閻魔。

それを囲みながら「おめーら今日はバーベキューだ!!」と、はしゃいでいる十王と獄卒のみんな。

(よーし、私は焼肉のタレを買って来ようかな!)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ