エピック69【マレブランケ中編】
ジョンアイデルが霧の中を力強く突き進むと、突如として獣のような鋭い殺気が立ち込めた。前方の岩場から、しなやかな跳躍で着地したのは、黒いビキニを纏った野性味溢れる姿の魔族――グラッフィアカーネだ。彼女にはピンと立った黒い犬耳と、激しく左右に振られる尻尾があり、その瞳は獲物を追い詰める猟犬のようにギラついていた。彼女は鼻先をピクピクさせながら、ジョンアイデルの至近距離まで詰め寄り、ハキハキと、しかし獣じみた声で言い放つ。
「ガウガウッ! お前……すごい臭いがするな。ただの人間じゃない。……混ざり合ってる、いろんな大罪の、美味そうで、それでいて鼻がひん曲がりそうなほど濃い王様の臭いだ!」ジョンアイデルは盾杖を軽く構え、鼻を鳴らす彼女を不敵な笑みで見据えてハキハキと応じる。
「ははっ、鼻が利くじゃねえか。この『臭い』は俺が背負ってる罪と、魔皇としての覚悟の証だ。お前がグラッフィアカーネか。戦闘狂って聞いてたが、まずはクンクン挨拶からか?」セレスティアは、グラッフィアカーネの放つ制御不能な野生のプレッシャーに息を呑み、ハキハキと叫ぶ。
「ジョンアイデル様、気をつけてください! 彼女の筋肉は一瞬で爆発的な力を生み出すように鍛え上げられています。言葉よりも先に、牙が飛んできますよ!」ルナーロは同じ獣の属性を持つ者として、彼女の「狂犬」としての本能に当てられ、槍を握る手に力を込めてハキハキと吼える。
「ふん、いい面構えだ! だが、ジョンアイデル様の臭いに惹かれたのはお前だけじゃないぜ。その牙、俺の槍とどっちが鋭いか試してみるか!」クレティアは、ジョンアイデルを執拗に嗅ぎ回るグラッフィアカーネに不快そうな視線を向け、ハキハキと囁く。
「ちょっと、その鼻をアイデルから離しなさいな。獣臭いのが移るわ。アイデル、その躾のなってないワンちゃん、お座りさせてあげなさい?」
ノクスは腕を組み、グラッフィアカーネの背後の霧の奥に、さらに別の「四足歩行」の荒々しい気配を感じ取ってハキハキと告げる。
「……グラッフィアカーネ。奴は囮、あるいは先陣だ。ジョンアイデル、足元に注意しろ。奴と対になる『チリアット』が、死角から貴様の喉元を狙っているぞ」グラッフィアカーネはニヤリと鋭い牙を見せて笑い、地面を爪で掻き毟りながらハキハキと吼えた。
「ガウッ! 挨拶は終わりだ! その美味そうな臭いの中身、ぶちまけて見せてくれよ!!」グラッフィアカーネがジョンアイデルの至近距離で牙を剥き出しにする中、崩れかけた火山岩の陰から、もう一つの鋭い視線が注がれていた。
そこに潜んでいたのは、同じく犬耳と尻尾を持ち、グラッフィアカーネよりも少し落ち着いた、だがより執拗な殺気を孕んだ魔族の女性、チリアットだ。彼女は愛おしそうに、そして心配そうに相棒の背中を見つめ、ハキハキとした、しかしどこか過保護な響きのある声で呟く。
「……ああっ、アカーネちゃんったら。またそんなに近づいちゃって。大丈夫かしら、あの子は時々、相手の力も見ずに無茶な突撃をするから……心配で見ていられないわ」
チリアットはそう言いながらも、その手元にある鋭利な爪を、いつでもジョンアイデルの喉元へ突き立てられるよう、音もなく研ぎ澄ませている。
ジョンアイデルは盾杖を構えたまま、その物陰に潜む気配に鋭い視線を送り、ハキハキと呼びかける。
「隠れて見てるだけかよ、チリアット! 相棒が心配なら、一緒に出てきてかかってきな。二人まとめて、俺がその『無茶』を受け止めてやるぜ!」セレスティアは、死角から忍び寄るチリアットの執念深い魔力を察知し、ハキハキと叫ぶ。
「ジョンアイデル様、右の岩陰です! 彼女はグラッフィアカーネの暴走をフォローしつつ、最も致命的な一撃を狙っています!」ルナーロは槍を回し、連携を得意とする「猟犬コンビ」のプレッシャーを楽しみながら、ハキハキと吼える。
「ははは! 姉妹のような絆ですか! ですが、その甘っちょろい心配ごと、この俺が槍で断ち切ってやりましょう!」クレティアは指先で赤い唇をなぞり、チリアットの過保護な視線に冷ややかな笑みを浮かべてハキハキと囁く。
「ふふ、愛が重いわね。でもアイデル、その『心配』の正体は、獲物を逃さないための執着よ。二人まとめて、首輪をつけてあげなさいな?」
ノクスは腕を組み、チリアットが地面に這いつくばり、爆発的な加速の予備動作に入ったのを冷静に分析し、ハキハキと告げる。
「……チリアット。グラッフィアカーネが『剛』なら、彼女は『迅』。ジョンアイデル、その盾杖で正面の犬を抑えつつ、背後の影の不意打ちを、重力波で叩き落とせ」
チリアットは「見つかっちゃったわね」と低く笑うと、岩場を蹴り破り、弾丸のような速さでジョンアイデルの背後へと躍り出た!弾丸のような速さでジョンアイデルの背後に着地したチリアットは、攻撃を繰り出す寸前でピタリと動きを止めた。彼女は鋭い爪をスッと収め、長い尻尾を優雅に揺らしながら、ハキハキと、どこか理知的で落ち着いた声で語りかける。
「あら、ごめんなさい。……でも、いきなり牙を剥く前に、少し会話をしませんこと? 私は他の血の気の多いマレブランケたちに比べれば、ずいぶんと交渉の余地がある方だと思うのですけれど」チリアットは首をかしげ、相棒のグラッフィアカーネを「お行儀よくしなさい」とたしなめるような視線で見つめながら、ジョンアイデルに真っ直ぐな瞳を向ける。ジョンアイデルは盾杖を構えたまま、その意外な提案にニヤリと不敵な笑みを浮かべてハキハキと応じる。
「交渉、か。いいぜ。地獄の番犬様が、ただ噛みつくだけのケダモノじゃないってところ、見せてもらおうじゃねえか。……お前たちの望みは何だ、チリアット?」セレスティアは、張り詰めた殺気が一瞬で「対話」の空気に変わったことに驚き、ハキハキと叫ぶ。
「ジョンアイデル様! 彼女、戦う意思がないわけではありませんが、こちらの『器』を言葉で測ろうとしています! 隙を見せないよう気をつけてください!」ルナーロは槍を肩に担ぎ、チリアットの「交渉」という言葉に鼻を鳴らしながらも、ハキハキと吼える。
「ははは! 策士の次は、話し合いですか! ですが、主殿の言葉には、どんな魔力よりも強い真実が宿っていますぜ。犬の耳にも届くはずだ!」クレティアは指先で赤い唇をなぞり、チリアットの計算高い瞳を見透かすようにハキハキと囁く。
「ふふ、お上品なワンちゃんね。でもアイデル、彼女が求めているのは、自分の友人を守るための『保証』よ。貴方の器が、それに応えられるかどうかね?」ノクスは腕を組み、チリアットの魔力波形が安定し、周囲の罠が一時的に解除されたのを冷静に分析してハキハキと告げる。
「……ジョンアイデル。チリアットはグラッフィアカーネを守るために、最も損害の少ない道を探っている。貴様が提示すべきは、力による支配ではなく、彼女たちが納得できる『共生』の理だ」グラッフィアカーネは「えー、戦わないのー?」と不満そうに喉を鳴らしたが、チリアットの制止に従い、大人しくその場に腰を下ろした。チリアットは優雅な足取りでジョンアイデルに詰め寄ると、その豊満な胸元を彼の逞しい胸板にピタリと押し付けるように密着させた。彼女は上目遣いにジョンアイデルを見つめ、ハキハキとした、だが熱を帯びた吐息混じりの声で語りかける。
「実は……私たちマレブランケも、その『共生』という理想には協力したいと考えているのです。ですが、かつて私たちは物界の者に手ひどく騙された身……。言葉だけでは信じられません。だから、アナタの『真実の心』を、私の鼻で見極めさせてくださいな」チリアットはジョンアイデルの首筋に顔を寄せ、クンクンと深く、吸い込むようにその匂いを嗅ぎ始める。彼女の尻尾が期待と緊張でピンと跳ね上がった。ジョンアイデルは盾杖を握ったまま、至近距離での誘惑とも取れる接触に動じることなく、不敵な笑みを浮かべてハキハキと応じる
「いいぜ、好きなだけ嗅ぎな。俺の心に嘘や濁りがあるかどうか……地獄の番犬の鼻なら、一瞬で分かるはずだろ? 俺の『個』は、隠し事なんてしねえ質だからな!」セレスティアは、あまりにも大胆なチリアットの行動に顔を真っ赤にし、ハキハキと叫ぶ。
「ちょ、ちょっと! チリアットさん! 離れてください! いくら確認のためとはいえ、ジョンアイデル様にそんなにベタベタするなんて……不謹慎ですっ!」ルナーロは槍を地面に突き立て、主君の堂々とした振る舞いに感心しながら、ハキハキと吼える。
「ははは! 逃げも隠れもしないのが我が主だ! 犬の鼻だろうが神の眼だろうが、ジョンアイデル様の真っ直ぐな魂を覗けば、ひれ伏すしかねえんだよ!」クレティアは指先で髪を激しく巻き取り、チリアットの挑発的な接触に青筋を立ててハキハキと囁く。
「ふふ、いい度胸ね。アイデルの『心』を嗅ぐついでに、私の『殺意』も嗅いでおく? その胸、これ以上押し付けたら、焼き払ってあげるわよ?」ノクスは腕を組み、チリアットの魔力波形がジョンアイデルの放つ「魔皇の波動」に当てられ、急速に陶酔と信頼へと書き換えられていくのを冷静に分析し、ハキハキと告げる。
「……ジョンアイデル。チリアットは確信したようだ。貴様の魂から立ち昇る、偽りのない『王の香り』を。ドラギニャッツォたちが認めた理由を、彼女は今、肌で理解しているぞ」チリアットは顔を上げ、頬をわずかに上気させながら、ハキハキと感嘆の声を漏らした。
「……素晴らしい。甘くて、それでいてどこまでも澄んでいる……。アカーネちゃん、このお方は本物よ。私たちの未来を預けるに足る、真の『王様』だわ!」チリアットがジョンアイデルの放つ「王の香り」に陶酔し、膝をつかんばかりの勢いだったが、一歩引いて地面を爪でカリカリと引っ掻いていたグラッフィアカーネが、不満そうに、しかし鋭い眼光でハキハキと、地を這うような声で言い放つ。
「ふん! 確かに王様……いや、それ以上の『バケモノ』になりそうな臭いはするがよぉ……。だが、コイツが土壇場で俺たちを裏切らねえ、そんな保証がどこにあるってんだ? 俺たちは昔、そうやって信じた人間に後ろから刺されたんだぜ!」グラッフィアカーネは鼻にシワを寄せ、ジョンアイデルを威嚇するように一歩詰め寄る。その不信感を、かつての裏切りの記憶が鋭く突き刺していた。しかし、その場を制するように人型のドラギニャッツォが前に進み出た。彼は重厚な足取りでジョンアイデルの隣に立ち、ハキハキと、マレブランケの長としての威厳を持って言い放つ。
「アカーネ、心配は無用だ! このお方は裏切りはしないし、仲間を絶対に見捨てはしない。何故なら、この方は我らと同じ、高貴なる魔族の血を色濃く引いているのだからな!」
ドラギニャッツォはジョンアイデルの肩に手を置き、確信に満ちた表情でハキハキと続ける。
「我ら魔族は、多少の嘘やハッタリはつくが、一度交わした『血の契約』と約束を違えることは決してなかれだ! ボクがこの身をもって、その信頼を保証しよう!」ジョンアイデルは盾杖を背負い直し、グラッフィアカーネの不信感を正面から受け止め、不敵な笑みを浮かべてハキハキと応じる。
「いいぜ、グラッフィアカーネ。裏切らない保証なんて、俺の『個』がこれから見せてやる行動そのものだ! 疑り深いなら、俺の背中をずっと監視してろ。お前たちを導く背中が、一歩でも揺らぐかどうかをな!」セレスティアは、ドラギニャッツォの力強い保証に胸を打たれ、ハキハキと叫ぶ。
「そうです! ジョンアイデル様は、どんなに苦しい戦いの中でも、私たちを一度たりとも見捨てませんでした! その事実は、どんな言葉よりも重い保証です!」ルナーロは槍を回し、グラッフィアカーネの疑念を吹き飛ばすようにハキハキと吼える。
「ははは! 魔の祖龍殿がそう言うなら間違いない! 魔族の誇りにかけて、主殿の約束は鉄よりも硬いってことですよ!」クレティアは指先で赤い唇をなぞり、グラッフィアカーネの不信感に冷ややかな笑みを浮かべてハキハキと囁く。
「ふふ、野良犬の猜疑心ね。でもアイデル、その疑いを『忠誠』に変える瞬間が、一番ゾクゾクするわよ。彼女の首輪、貴方の手でしっかり握ってあげなさいな?」ノクスは腕を組み、グラッフィアカーネの魔力波形がドラギニャッツォの説得とジョンアイデルの覇気に打たれ、急速に軟化していくのを冷静に分析し、ハキハキと告げる。
「……グラッフィアカーネ。奴の猜疑心は、裏を返せば一度信じた者への狂信的な忠誠心だ。ジョンアイデル、貴様がその『約束』を貫く限り、彼女は最強の盾となるだろう。ドラギニャッツォの保証が、その橋渡しをしたな」グラッフィアカーネはふいっと顔を背け、尻尾をパタパタと振りながら、ハキハキと照れ隠しのように呟いた。
「……ちっ、長がそこまで言うなら、今は信じてやるよ! その代わり、もし裏切ったらその喉笛、アタシが真っ先に噛みちぎってやるからな!」チリアットは頬を赤らめ、先ほどジョンアイデルの胸に身を預けた際の感触を思い返すように、自身の胸元にそっと手を当ててハキハキと、熱を帯びた声で語りかける。
「ええ、それに……先ほど私があれほど至近距離まで詰め寄り、この身を押し付けて誘惑に近い接触をしたというのに。アナタの鼓動も、魔力の波も、微塵も揺れ動くことがありませんでしたわ。……ほんとこれほどまでに『心』が座っている御方は、私の長い獄吏人生でも初めてです」チリアットは心酔したような瞳でジョンアイデルを見つめ、その圧倒的な自制心と精神の強固さに、完全な敗北と信頼を認めてハキハキと続ける。
「ただの強がりや虚勢ではない、真に揺るぎない王の器……。グラッフィアカーネ、このお方の『個』は、私たちの疑念などとうに超越しているのよ」ジョンアイデルは盾杖を軽く回し、チリアットの賞賛を不敵な笑みで受け流しながらハキハキと応じる。
「ははっ、そりゃあ悪かったな。俺の心は、守るべき仲間と、この世界の未来を見据えることで一杯なんだ。色仕掛けや小細工で揺らぐほど、安っぽいもんじゃないぜ!」セレスティアは、チリアットの「揺れ動かなかった」という言葉を聞いて、少しだけ複雑そうな、安堵と感心が混ざった表情でハキハキと叫ぶ。
「流石はジョンアイデル様……! 誘惑にも動じないその高潔な精神、まさに魔皇に相応しい誇り高さです。……でも、少しはドキドキしてもバチは当たらない気もしますけれど!」ルナーロは槍を肩に担ぎ、主君の鋼のメンタルに爆笑しながらハキハキと吼える。
「ははは! さすが主殿だ! 美女の抱擁よりも、戦いと共存の理想に胸を躍らせる……。男の中の男、これこそが俺たちが惚れ込んだ王いや頂点の姿ですよ!」クレティアは指先で赤い唇をなぞり、チリアットの敗北宣言を勝ち誇ったように見つめてハキハキと囁く。
「ふふ、当然よ。アイデルの心の一番奥にある特等席は、そう簡単には譲らないわ。ワンちゃん、貴方の負けね。その鋼の心に一生、鎖で繋がれていなさいな?」ノクスは腕を組み、チリアットの魔力共鳴が完全にジョンアイデルの波長と同期し、深い「忠誠」のフェーズへ移行したのを冷静に分析し、ハキハキと告げる。
「……ジョンアイデル。精神の恒常性が、チリアットの『疑い』というフィルターを完全に無効化した。彼女たちの本能が、貴様を『抗えない主』として定義した瞬間だ。残るは……遠距離から我々を狙い続けている、あの二人だけだな」その言葉に応じるように、周囲の空気が一気に凍りつき、同時に足元からは猛烈な熱気が噴き出し始めた! 極寒と極熱の二人――カルカブリーナとアリキーノが、ついにその牙を剥こうとしていた。ジョンアイデルは、急激に変動する周囲の温度――肌を刺すような冷気と、肺を焼くような熱気――を全身で受け止めながら、盾杖を力強く握り直し、ハキハキとした声で断言する。
「……来たな、アリキーノとカルカブリーナ。極熱と極寒、属性が真逆のあいつらだ。一見すると仲が悪そうに見えるが……その実、お互いの力を引き出し合う最悪のコンビネーションを仕掛けてくるはずだぜ!」ジョンアイデルの言葉通り、前方の空間が歪み、炎を纏った道化のような影と、氷の結晶を従えた冷徹な乙女の影が重なり合うように出現した。ドラギニャッツォは人型の拳を構え、かつての同僚たちの厄介な連携を思い出しながらハキハキと警告する。
「察しがいいな、ジョンアイデル! あの二人は喧嘩ばかりしているが、戦場では『相反する魔力』を衝突させて爆発的な破壊力を生む、マレブランケ随一の広域殲滅スペシャリストだ!」ルビカンテは真っ赤なドレスを揺らし、炎の属性を持つ者としてアリキーノの熱量を感じ取り、ハキハキと叫ぶ。
「あはは! アリキーノの熱波に、カルカブリーナの絶対零度が混ざると……。空気そのものが砕け散る『熱衝撃』が来るよ! 兄ちゃん、防げるかな!?」セレスティアは、交互に襲いかかる猛烈な温度変化に魔法障壁を展開し、ハキハキと叫ぶ。
「魔法回路が凍りつき、直後に熱で暴走させられます! ジョンアイデル様、この不規則なリズム……盾杖の『吸収』だけでは追いつきません!」ルナーロは槍を回し、氷の床で滑り、炎の壁に阻まれる戦場を睨みつけてハキハキと吼える。
「ははは! 面倒な術式ですね! ですが、その熱すぎる情熱も、冷めきった根性も、俺の槍が纏う風で一気に吹き飛ばしてやりましょう!」クレティアは妖艶な微笑を浮かべつつ、自身の炎がアリキーノのそれと共鳴するのを冷ややかに抑え込み、ハキハキと囁く。
「ふふ、氷と炎の二重奏ね。でもアイデル、貴方の黄金の魔力は、そのどちらにも染まらない……。すべての属性を飲み込む『無』の境地を見せてあげなさいな?」ノクスは腕を組み、アリキーノの熱源とカルカブリーナの寒冷核が、ジョンアイデルを包囲するように座標を固定したのを冷静に分析し、ハキハキと告げる。
「……ジョンアイデル。奴らは貴様の『個』を、この温度差の檻に閉じ込めようとしている。盾杖の出力を最大にしろ。熱と冷、相反するエネルギーを同時に吸い込み、内部で衝突させて相殺する……『ゼロ』の領域を作り出すんだ」霧の向こうから、アリキーノの哄笑とカルカブリーナの冷徹な詠唱が重なり合い、巨大な氷炎の嵐がジョンアイデルへと襲いかかった!ジョンアイデルは迫りくる極寒と極熱の奔流を前に、盾杖を大地に力強く突き立てた。彼の瞳には魔皇の深淵なる輝きが宿り、空間そのものを震わせる重厚なハキハキとした詠唱が響き渡る。
「虚無の者よ、歪みを生み我もとに来る攻撃を無きにせよ! 『アストラル・ヴォイド(星界の虚無)』!!」
盾杖の先端から、光すら吸い込む漆黒の球体状の力場が展開された。アリキーノの放った灼熱の業火と、カルカブリーナの放った絶対零度の氷塊がその領域に触れた瞬間――。爆発も衝撃もなく、まるで最初から存在しなかったかのように、音もなく虚無の彼方へと吸い込まれ、霧散していった。
アリキーノは道化のような身のこなしをピタリと止め、自身の灼熱の業火が霧散した空間を信じられないといった様子で見つめ、ハキハキと、しかし焦燥に満ちた声で吠えた。
「……はぁ!? 俺の熱波と、アイツの冷気が……完全に消されただと!? おい、ふざけんなよ! 俺の自慢の火力を、指一本触れずにゴミ箱行きにしやがって!」アリキーノは真っ赤な髪をかきむしり、ジョンアイデルの展開した『アストラル・ヴォイド』の漆黒の輝きに、恐怖を超えた「理解不能」という屈辱を感じてハキハキと続ける。
「俺の攻撃を『防ぐ』奴はいたが、『無かったこと』にしやがったのは、前の魔皇様以来だぜ……! お前、一体何モンなんだよ、ジョンアイデル!」ジョンアイデルは盾杖を肩に担ぎ、アリキーノの剥き出しの敵意と困惑を不敵な笑みで受け流し、ハキハキと応じる。
「何モンか、だと? 言っただろ、前の魔皇の力を継ぎ、さらに自分自身の『個』で新しい時代を創る男だ。俺の虚無は、お前の熱すぎる情熱も、カルカブリーナの冷めた理屈も、全部まとめて飲み込んで平等にしてやるのさ!」セレスティアは、アリキーノの熱量が混乱によって乱れ始めたのを察知し、ハキハキと叫ぶ。
「ジョンアイデル様! アリキーノの魔力供給が不安定になっています! 彼の誇りである『熱』が、貴方の虚無に恐怖を感じて逃げ出そうとしているんです!」ルナーロは槍を回し、アリキーノの狼狽えぶりを嘲笑うようにハキハキと吼える。
「ははは! 俺、俺って威勢がいいのは最初だけかよ! 自慢の火遊びが消されて、今度は自分が灰になりそうな気分はどうだい、アリキーノ!」クレティアは指先で赤い唇をなぞり、アリキーノの焦燥を冷ややかに見つめてハキハキと囁く。
「ふふ、可愛いわね。自分のアイデンティティが消されたショックで、火の粉も出せなくなっちゃった? アイデル、この熱血ピエロに、本当の『熱さ』が何か、その拳で教えてあげなさいな?」ノクスは腕を組み、アリキーノの背後で沈黙を守るカルカブリーナが、次の一手を「絶対零度の自爆」に切り替えようとしているのを冷静に分析し、ハキハキと告げる。
「……アリキーノ。貴様の『熱』はすでにジョンアイデルの『虚無』に敗北した。だが隣のカルカブリーナはまだ諦めていないぞ。ジョンアイデル、奴らの連携が崩れた今こそ、二人同時にその盾杖で封じ込めろ」アリキーノは「……くそっ、俺が……俺の炎が通用しねえなんて!」と呻きながらも、隣のカルカブリーナと視線を合わせ、最後にして最大の合体魔法の構えをとった!アリキーノとカルカブリーナが最後の手札として魔力を練り上げようとしたその瞬間、ジョンアイデルは盾杖を軽く一振りし、カルカブリーナの周囲に漂う絶対零度の粒子を強引に引き剥がした。
「悪いな、カルカブリーナ。お前のその『冷たさ』、俺の盾が全部吸い取っちまったぜ!」ジョンアイデルはハキハキと言い放つ。盾杖の核が青白く輝き、カルカブリーナが必死に紡ごうとしていた冷気の術式は、形を成す前に霧散して消え去った。カルカブリーナは感情の薄い瞳を微かに見開き、ハキハキとした、だが震える声で呻く。
「……私の……絶対零度が……。干渉すら許されず、散らされるなんて……。計算が、合わないわ……」ジョンアイデルは不敵な笑みを浮かべ、魔力が空っぽになった二人を見据えてハキハキと応じる。
「計算通りの地獄なんてつまらねえだろ? お前たちの冷気も熱気も、俺の『個』が描き変える新しい世界のエネルギーに変えてやるよ!」セレスティアは、カルカブリーナの精密な魔法構築を一瞬で無効化したジョンアイデルの支配力に感動し、ハキハキと叫ぶ。
「すごいです! 魔法の発動そのものを根底から否定しました! カルカブリーナさんの冷静沈黙すら、ジョンアイデル様の覇気に圧倒されています!」ルナーロは槍を担ぎ、冷気を失って立ち尽くすカルカブリーナを指差してハキハキと吼える。
「ははは! 計算違いってのは気分がいいもんだな! さあ、冷めた理屈も熱い意地も、全部まとめて我が主に降伏しな!」クレティアは指先で赤い唇をなぞり、カルカブリーナのプライドが崩れ去る瞬間を愉悦と共に眺めてハキハキと囁く。
「ふふ、氷の乙女が溶けちゃったわね。アイデル、貴方のその強引な干渉……。彼女の心の奥まで凍りつかせたんじゃないかしら?」ノクスは腕を組み、カルカブリーナの防御結界が霧散し、完全に無防備になったのを冷静に分析してハキハキと告げる。
「……カルカブリーナ。貴様の理論はジョンアイデルの『不条理』の前に敗れた。アリキーノの熱も、貴様の寒冷も、もはやこの場には存在しない。ジョンアイデル、奴らの魂に直接、貴様の契約を刻み込め」アリキーノは「……嘘だろ、アアリキーノは、自身の灼熱が虚無に飲み込まれた拳を握りしめ、完敗を認めるようにその場にドサリと膝をついた。彼は道化の仮面を脱ぎ捨て、ハキハキとした、だが清々しいまでの敗北宣言を口にする。
「……ちっ、完敗だ! 俺の負けだよ! 魔法を消すんじゃなく、存在そのものを『無』にされちゃあ、これ以上抗う理由もねえ。ジョンアイデル……いや、我が主よ! どうか、俺のこの熱すぎる力を、アンタのために使わせてくれ!」
その隣で、計算の全てを狂わされたカルカブリーナもまた、静かに、そして優雅にスカートを摘んで跪いた。彼女の感情の薄かった瞳には、今やジョンアイデルという未知の数式に対する、深い敬畏の念が宿り、ハキハキと、鈴を転がすような声で告げる。
「……私の絶対零度を、あれほど容易く散らす理。……理解はできませんが、その『不条理』こそが新しい世界の真理なのでしょう。私も、貴方という新たな主についていきますわ。私の氷、貴方の盾の一部としてお役立てください」
ジョンアイデルは盾杖を大地に突き立て、跪く二人の獄吏を見下ろして不敵な笑みを浮かべ、ハキハキと応じる。
「いいぜ、アリキーノ、カルカブリーナ! お前たちの熱さと冷たさ、俺の盾の中で最高に反発させて、最強のエネルギーに変えてやるよ。俺の『個』に、お前たちの『個』を上乗せして、誰も見たことのない地獄……いや、新世界を創ろうぜ!」
セレスティアは、相反する二人が同時に忠誠を誓った奇跡に胸を熱くし、ハキハキと叫ぶ。
「すごいです、ジョンアイデル様! 炎と氷、決して交わらない二つの心が、今、ジョンアイデル様という一つの太陽の下で結ばれました!」
ルナーロは槍を回し、新たな仲間となった二人を歓迎するようにハキハキと吼える。
「ははは! 賑やかになってきましたね! 火力担当に冷却担当、これならどんな敵が来ても、温度差で風邪を引かせてやれますよ!」クレティアは指先で赤い唇をなぞり、アリキーノとカルカブリーナの忠誠の誓いを品定めするようにハキハキと囁く。
「ふふ、いい返事ね。アイデル、これでまた貴方のハーレム……じゃなくて、軍勢が強くなったわね。このピエロと氷の人形、しっかり使い倒してあげなさいな?」ノクスは腕を組み、アリキーノとカルカブリーナの魔力契約がジョンアイデルの魂に刻印されるのを冷静に分析し、ハキハキと告げる。
「……ジョンアイデル。これでマレブランケのうち、八体が貴様の門下に入った。残るは……参謀カニャッツォ、長マラコーダ、副長バルバリッチャ、そして……あの博打打ちのスカルミリョーネのみ。第八圏の核心、『欺瞞の湯釜』がすぐそこだ」ドラギニャッツォら八体のマレブランケを従えたジョンアイデル一行。地獄の支配構造は、今や完全に彼の手の中に引き寄せられようとしていた。イツの冷気まで一瞬で……!」と絶望の表情を浮かべ、膝をついた。極熱と極寒のコンビネーションは、ジョンアイデルという唯一無二の「虚無」によって完全に沈黙させられた。ジョンアイデルは、膝を突き忠誠を誓ったアリキーノとカルカブリーナ、そして既に背後に控えるドラギニャッツォたち八体のマレブランケを見渡し、盾杖を力強く握り締めながらハキハキとした声で自らの真意を語り出す。
「お前らを引き入れたい理由は、ただの戦力増強じゃねえ。……かつての『物魔大戦』の時、お前らマレブランケは物界(人間側)に味方し、その力を貸した……。そんな過去があるんだろ? だったら、魔族と他種族が手を取り合う『共存』は、夢物語なんかじゃねえ。過去にできたなら、今この俺の時代でも可能だってことに目をつけたのさ!」ジョンアイデルの言葉に、マレブランケたちは一様に目を見開き、かつての栄光と挫折の記憶を呼び起こされたようにハキハキと、しかし感慨深げにどよめく。
「……気づいていたのか、ジョンアイデル。ボクたちがかつて、種族の壁を超えて剣を振るった、あの遠い日の志を……!」
ドラギニャッツォは人型の拳を震わせ、誇らしげに、かつての戦友たちの顔を見渡してハキハキと呟く。セレスティアは、ジョンアイデルが単なる力による支配ではなく、歴史に基づいた深い「信頼」の種を見抜いていたことに感動し、ハキハキと叫ぶ。
「流石です、ジョンアイデル様! 過去の繋がりを『絆』として再定義し、新しい共生の礎にしようとしているのですね! その慈愛と洞察、まさに真の王の器です!」
ルナーロは槍を担ぎ、かつて人間と共に戦ったというマレブランケたちの隠された一面にニヤリと笑い、ハキハキと吼える。
「ははは! ならば話は早い! 昔のツレとまた組むようなもんだ! 主殿、この八体がいれば、人間も魔族もひっくり返るような新しい時代が作れますぜ!」クレティアは指先で赤い唇をなぞり、ジョンアイデルが「過去」という名の鎖を「希望」に変えた手法に感服し、ハキハキと囁く。
「ふふ、アイデル、貴方の『個』は本当に懐が深いわね。……マレブランケ、貴方たちの裏切られた心の傷、アイデルの愛で癒やしてあげてもいいわよ?」ノクスは腕を組み、マレブランケたちの精神構造がジョンアイデルの「共存の理」に強く共鳴し、忠誠心が盤石なものとなったのを冷静に分析してハキハキと告げる。
「……ジョンアイデル。貴様の狙いは的中した。かつて物界を救おうとした彼らの『誇り』を再燃させたな。これで残る四体――特に策略家であるカニャッツォや長のマラコーダも、この『歴史の再来』という大義名分の前では、抗う術を失うだろう」ジョンアイデルは不敵な笑みを浮かべ、八体の守護者を従えて、第八圏の最深部、全ての欺瞞が剥がれ落ちる「欺瞞の湯釜」へと堂々たる一歩を踏み出した!




