エピック67【4〜7圏】
ジョンアイデルが先頭に立って洞窟の石段を踏み下ろし、ルナーロ、クレティア、セレスティア、そしてパイモンが続く。階段は長く続き、壁には第三圏よりもさらに濃い色の鉱物が鈍く輝いていた。やがて階段を下りきり、視界が開けた——そこは第四圏だった。第四圏は一面に黒い砂漠が広がっており、空はどんよりと曇り、地面からは時折、熱気が立ち上っているのが感じられる。遠くにはいくつかの砂嵐が渦巻き、砂の中から無数の骨のようなものが突き出しているのが見え、どこか荒廃した、死の雰囲気が漂っていた。ジョンアイデルは砂漠の風を受けながら、手をかざして辺りを見渡し、ハキハキと言う。
「ここが第四圏か…砂漠ばかりで先が見えにくいな。だが、マレブランケの手がかりはこの先にあるはずだ。気をつけて進もうぜ」だが、よく見ると砂漠のあちこちにレンガや土壁で作られた建物が点々と残っており、かつては集落だったような痕跡が見て取れる。さらに、それらの建物の周りには透明な石英でできた樹木が生えており、黒い砂漠の中で異質な輝きを放っている。ジョンアイデルは石英の樹木に目を留め、頷きながらハキハキと言う。
「やはり、四圏からは雰囲気ががらりと変わるな。真ん中の層圏だから、下の層とも上の層とも違う特徴があるのかもしれないな」パイモンは石英の樹木の一本に手を触れ、冷たい感触を確かめるようにしながら、ハキハキと語り出す。
「この層もかつては栄えていたんですよ。だけど、栄えすぎてしまったがために、魔獄神や魔獄王の目に留まってしまったんです。そして、一度完全に滅ぼされてしまったんです。理由は…『罪の象徴が栄えるのを許せない』から、ということでした」ジョンアイデルは廃墟となった建物と石英の樹木を眺め、感慨深げな表情を浮かべながらハキハキと言う。
「確かに、罪を償うのに繁栄がそこまで必要だとは思えないな…。そういえば、魔獄界ってもしかして、かつて神界の偉い者たちに逆らった者たちが行き着いた場所なのか?」ルナーロは翼を軽くはためかせ、頷きながらハキハキと説明する。
「まあ、一概にそうとは言えないんですよ。勢力に属することを極端に嫌った者、勢力の指針に背きすぎて神罰を受けた者もいますし、そもそも最初から魔獄界に生まれ育った者も大勢いるんです」砂漠の道を進む中、ところどころで奇妙な存在たちの姿が目に入った。彼らは人間の姿をしているものの、腕や脚、あるいは全身が金属製の機械に置き換わっており、重たい足音を立てながら闊歩している。中には、機械の部分から蒸気や火花を散らしている者もいれば、冷たい金属の瞳でこちらをじっと見つめてくる者もいた。セレスティアはそんな彼らの姿に少し身構えながら、ジョンアイデルの側に寄り添う。
「ジョンアイデル様、あの人たちは…一体何なのでしょう? 身体が機械になっているなんて、初めて見ました」ジョンアイデルは機械の体をした存在たちを眺めながら、ハキハキと説明する。
「機魔族って存在だろう。物界には機械族ってのがいるが、機魔族は機械の体にコアとしてマナ結晶や獄結晶を体に埋め込まれた存在なんだ。そういえば…セレスティアも外見には目立たないだけで、似たようなもんじゃないか?」セレスティアは一瞬目を見開き、すぐに柔らかい笑みを浮かべてハキハキと応じる。
「分かってたんですね…。やはり、隠し通せるものではなかったのですね」ジョンアイデルは手を後ろに組み、悪戯っぽい表情を浮かべながらハキハキと答える。
「ああ、実はお前の近くにいると、時折微かな機械の作動音がしてたのを聞いてたからな。だけど、それが何かは言わなかっただけだ」その時、一人の機魔族の少女がジョンアイデルたちに近づいてきた。彼女の服装は整ったメイド服で、その手足は金属の装甲で覆われ、瞳には冷たいがどこか意思の強さを感じさせる輝きが宿っていた。
マキーナと名乗る機魔族の少女は、ジョンアイデルの前で立ち止まり、ハキハキと自己紹介する。
「アナタ達、先に進むんでしょ。私はマキーナ。アナタ達の力になりたいわ。案内もできるし、戦うこともできる」ルナーロはマキーナをじっと見つめ、翼を少しだけすぼめるようにしてハキハキとジョンアイデルに忠告する。
「変わり者の魔族ですね。普通、機魔族には興味本位といった感情は持ち合わせていないはずなのですが、マキーナさんからはそれを感じ取れます。油断は禁物ですよ」ジョンアイデルはルナーロを横目で見て、少し苦笑しながらハキハキと言い返す。
「そんな風に言ってやるなよ。そういうお前だって、俺についてきてるのは興味本位なんだろう?」ルナーロは少しだけ照れくさそうに、翼を羽ばたかせてハキハキと認める。
「まあ、そうですね」ジョンアイデルは砂漠の端に置かれていた古びた箱を見つけ、その中を慎重に調べる。中には小さな記憶媒体のようなもの、いわゆるアビリティメモリーが入っていた。その表面には、鋭い鉤爪が伸びたロープの絵が描かれている。ジョンアイデルはメモリーを手に取り、それを眺めながらハキハキと言う。
「アビリティメモリーの『フッククロー』か。これがあれば、高い場所や離れた場所へ移動するのも楽になるな」一行は「フッククロー」のメモリーを回収すると、さらなる深部を目指して石造りの強固な階段へと足を進めた。一段、また一段と降りるごとに、空気の密度が増し、機械油の匂いと乾いた砂の香りが混ざり合っていく。マキーナはメイド服の裾を揺らしながら、音もなく一行の後に続く。階段を降りきった先、再び視界が開けたそこは、第五圏。頭上には巨大な歯車がゆっくりと回転し、石英の樹木が街灯のように道を照らしている。そこには、崩れかけたレンガ造りの建物と、最新の機械設備が歪に融合した不思議な光景が広がっていた。ジョンアイデルは新しく手に入れたメモリーを手に、周囲を警戒しながらハキハキと言う。
「ここが第五圏か。建物が多い分、待ち伏せには気をつけないとな」マキーナは無機質な瞳を巡らせ、静かに告げた。
「この先、機魔族の防衛ユニットが徘徊しています。私の案内が必要なはずです」この奇妙な機械と廃墟の層で、一行は何を見つけるのでしょうか?突然、上空から金属音が響き、三体の機魔族が鋭い駆動音を立てながら舞い降りた。彼らの四肢は無骨な重火器や刃に換装されており、赤いセンサー状の瞳が不気味に発光している。
「見慣れない奴らだな。この第五圏が我ら機魔族のテリトリーだということを知らないのか?」リーダー格と思われる機魔族が、金属的な合成音声で威圧するように告げる。すると、ルナーロが翼を軽く広げ、小首を傾げながらハキハキと応じる。
「妙ですね。この層が特定の種族の独占テリトリーになったなんて話、一度も聞いたことがありませんよ。勝手にルールを書き換えたのですか?」ジョンアイデルは腰の剣の柄に手をかけ、不敵な笑みを浮かべながらハキハキと言い放つ。
「テリトリーとかは知らんよ。だが、俺たちの道を引き返すつもりはない。……邪魔をするなら、力ずくで通らせてもらうぜ」機魔族のリーダー格は、その言葉に反応してガシャリと腕の重火器を構える。
「威勢がいいな。だが、この第五圏の鉄の掟を教え込んでやる必要があるようだ」一触即発の空気が流れる中、マキーナが静かに一歩前へ出た。
「彼らは私の客人です。機魔族の同胞として、無益な戦闘は避けるべきだと進言します」青い装甲を纏った機魔族は、マキーナの言葉に激しく反応し、火花を散らしながらハキハキと吐き捨てる。
「喧嘩を売られて、無益だの有益だの言っていられるか! それに、他界域の者を手引きするとは……マキーナ、お前は我が機魔族の裏切り者だ!」マキーナは表情を変えずに静かに佇んでいるが、その指先が鋭い金属の爪に変化し始めている。ジョンアイデルは剣を抜き放ち、ハキハキと叫ぶ
「裏切り者か……。仲間にそんな言葉を投げかけるなら、手加減はいらないな!」リーダー格の赤い装甲を纏った機魔族は、逆上するアズーレンを片手で制し、重厚な金属音を響かせながらハキハキと告げる。
「待て、アズーレン。お前の気持ちもわかるが、簡単に同胞を破壊することは我が部隊では許さぬ。……それに、そこのリーダー格と思われる男。お前、ただの生身ではないな。その魂の原初に、我らと同じ『機械』に似た響きを感じるぞ」ジョンアイデルは剣を構えたまま、不敵に口角を上げてハキハキと応じる。
「ほう、俺の正体を見抜こうってのか? 機械かどうかなんて、動いてりゃどっちでもいいだろ。だが、話が通じるなら無駄な戦いは避けたいもんだな」セレスティアはジョンアイデルの背中を見つめ、少し不安そうにマナの輝きを強める。赤と青、二体の機魔族の視線がジョンアイデルの「核」を探るように鋭く注がれた。その瞬間、一言も発していなかった黄色の機魔族が唐突に腕を掲げた
「……殲滅対象、捕捉」無機質な声と共に、その銃口から収束された熱線——破壊ビームが放たれた。空気を焼き焦がす轟音が響き渡る。
「危ない!」ジョンアイデルは鋭い反応でセレスティアの腰を抱き寄せ、横へと飛び退く。アズーレンと赤のリーダー格も、背中のスラスターを吹かして左右に回避してクレティアたちも回避した。ビームが通り過ぎた背後の石英の樹木は、一瞬で蒸発し、地面には真っ赤に焼けた溝が刻まれる。ジョンアイデルは着地と同時に剣を構え直し、ハキハキと叫ぶ
「おいおい、仲間同士で話し合ってる最中にぶっ放すなんて、随分と気の早い奴がいるな!」リーダーの赤い機魔族は、着地の衝撃を抑えながら黄色の機魔族を鋭く睨みつける。
「キラン! 貴様、私の制止を聞かずに撃ったな!」クレティアは周囲の状況を冷徹に分析し、手のひらに魔導の輝きを宿らせながらハキハキと言う
「バグかウィルスでも仕込まれているんじゃない? 仲間の制止も聞かずに暴発するなんて、正常とは思えないわ」その言葉に対し、リーダーの赤い機魔族は首を左右に振り、重厚な金属音を立てながらハキハキと否定する。
「それはない! 我ら機魔族は常に高密度のネットワークで全個体のデータを共有している。もしバグやウイルスに感染した者がいれば、瞬時にその異変が検知され、強制停止させられるはずだ!」アズーレンが舌打ちをしながら、黄色い機魔族——キランへと視線を向ける。
「だとしたら、キラン、お前は自分の意思で撃ったというのか!? 仲間にまで当たるかもしれないビームを!」キランの無機質な瞳が怪しく明滅し、再びその銃口が熱を帯び始める。
「……計算完了。ココには同胞はいない。視界に入る全ての動体を、排除する」ハキハキと、しかし一切の感情を排したその宣言に、赤のリーダーとアズーレンのセンサーが激しく警告を発した。ジョンアイデルは剣を正眼に構え、鋭い視線でキランを射抜きながらハキハキと言う。
「同胞はいない……だと? 目の前に仲間がいるってのに、その認識回路、いよいよイカれちまったみたいだな!」マキーナが一歩前に出て、自身の解析モニターを展開しながら叫ぶ。
「全ネットワークから孤立しています! キラン、アナタのデータリンクは完全に切断されているわ!」ジョンアイデルは剣を強く握り直し、鋭く、しかし冷静にハキハキと言い放つ。
「話し合いは無理だな。言葉より先に、鉄の弾丸が飛び交う戦場になりそうだぜ!」その直後、空中から複数の排除ユニットが急降下してきた。それらは一切の容赦なく、キランを包囲するようにして無数の弾丸を集中砲火する。
「排除ユニット……!? 仲間の攻撃を容赦なく食らわせるなんてな!」ジョンアイデルは砂煙を巻き上げながら、激しい銃撃の嵐を回避し、反撃の機会を伺う。一方のキランは、身体の一部を装甲に変形させながら、集中砲火の中でも微動だにせず、再びビームを収束し始めていた。
「……そこだ!」ジョンアイデルは集中砲火の中、一瞬の隙を見逃さなかった。懐から銀色に輝く投げナイフを抜き放ち、鋭い動作でキランのビーム砲へと投げ放つ。キランが引き金を引き、熱線が放たれようとした瞬間、ナイフの刃先が正確にビーム砲の継ぎ目を撃ち抜いた。
「ぐっ……! 計算外の……干渉……!」不気味な火花が散り、キランの腕が激しく痙攣する。収束されかけていた高エネルギーは制御を失い、ビームは意図せぬ方向へと逸れて空を切り裂いた。ジョンアイデルは着地と同時に剣を低く構え、ハキハキと叫ぶ。
「精密機械ってのは、たった一本のナイフでも狂うもんだぜ!」不気味な青白い火花が散り、キランの身体が内部から激しい異音を立て始める。
「……計算不能……データ……消失……」その言葉を最期に、キランの装甲の隙間から眩い閃光が溢れ出し、大きな爆発を巻き起こした。激しい爆風と共に、砂漠の砂が舞い上がり、周囲に沈黙が戻る。ジョンアイデルは剣を鞘に納め、まだ煙を上げているキランの残骸を見つめながら、ハキハキと言い放つ。
「計算違いか……。まあ、最後は自分のデータ不足が命取りになったな」ジョンアイデルは膝をつき、まだ熱を帯びているキランの残骸にそっと手を触れる。その指先から微かな魔力を流し込み、内部回路の状態を鋭く読み取っていく。
「……なるほどな。こいつ、表面上のデータリンクは正常に見せかけて、根っこの部分が『穢れ』に浸食されてやがった。だからネットワークの監視も潜り抜けたってわけか。クソッ、すぐ側にいながら気づかなかったとは不覚だぜ!」ジョンアイデルは苦々しい表情で吐き捨て、ハキハキと周囲に警戒を促す。赤のリーダー格の機魔族は、その言葉を聞いて愕然とした様子で後退った。
「穢れだと……!? 我ら機魔族の強固なプロテクトを突破して、精神を汚染したというのか」ルナーロは翼を鋭く研ぎ澄ませ、周囲の空間を凝視しながらハキハキと言う。
「見かけの数値だけでは測れない汚染……。これはこの階層全体に広がっている可能性もありますね」砂煙の向こうから、聞き覚えのある足音が近づいてきた。現れたその姿は、かつて対峙したヴァルガレに酷似している。しかし、その纏う空気は以前のものとは明らかに異なっていた
ジョンアイデルは剣の柄に手をかけ、鋭い視線を向けながらハキハキと問う。
「ヴァルガレ……? チッ、またあの野郎の複製体か。しつこい連中だな」すると、ヴァルガレに似たその男は、冷ややかな笑みを浮かべ、落ち着いた動作で首を横に振りながらハキハキと答えた。
「そんな奴もいたな。だが、私はあんな出来損ないの写し身とは違う。私は『ネームレス』という種に分類される存在だ。個体名はヴァルレロ。以後、お見知りおきを」ルナーロはヴァルレロから放たれる圧倒的なプレッシャーを感じ取り、羽を逆立ててハキハキと警告する。
「『ネームレス』……! 以前の複製体とは格が違うと思います。ジョンアイデル様、こいつからは底知れない魔力と、何より先ほどのキランと同じ『穢れ』の気配を感じますよ!」ジョンアイデルは一瞬、視線を鋭く細め、低く響く声でハキハキと応じる。
「『ネームレス』か……。まさか、こんな場所でその単語を耳にするとはな。俺にとって、あまり気分のいい名前じゃないぜ」すると、ヴァルレロは恭しく胸に手を当て、深い敬意を込めた眼差しでジョンアイデルを見つめながらハキハキと告げた。
「ええ、そして自覚されているはずだ。アナタもまた、我らと同じ……いえ、我ら『ネームレス』の頂点に立つ御方。かつて全てを統べた王が、ようやくこの地へ帰ってきたのですから」
「ジョンアイデル様が……ネームレスの頂点……? 一体どういうことなのですか?」ジョンアイデルは剣を構えたまま、ヴァルレロの言葉を突き放すようにハキハキと言い放つ。
「勝手に王に祭り上げるんじゃねえよ。俺は俺だ。お前たちの都合で『帰ってきた』なんて言われる筋合いはないな!」セレスティアはその言葉に息を呑み、ジョンアイデルの横顔を不安げに見つめる。クレティアは静かに瞳を閉じ、その奥に宿る魔力の輝き——千里眼を研ぎ澄ませる。ジョンアイデルの魂の深淵、そのさらに奥にある「根源」を覗き見た彼女は、納得したようにハキハキと告げる。
「千里眼でその本質を覗かせてもらったけれど……なるほどね。アイデル、貴方が『ネームレス』だったから、これまでの不自然なほどの強さや、あの機械的な魔力反応に説明がつくわ」ジョンアイデルは苦笑いを浮かべ、肩をすくめてハキハキと応じる。
「おいおい、そんなプライバシーまで覗き見んなよ。……まあ、隠してたわけじゃないが、自分でもあまり思い出したくない過去なんだよ」ヴァルレロはクレティアの言葉に満足げに頷き、一歩前へ踏み出しながらハキハキと言葉を重ねる。
「左様。我らネームレスは、形無き魂に仮初めの名を与えられた存在。だが、貴方だけは違う。貴方はその『無』から全てを生み出した原初の個体いや作られた存在でもある。さあ、その力を解放し、我らと共にこの腐った階層を浄化しようではありませんか」ルナーロは緊張した面持ちでジョンアイデルを見守り、セレスティアは彼の腕をそっと掴んだ。ジョンアイデルはセレスティアの手に一瞬だけ視線を落とし、それからヴァルレロを真っ向から見据えてハキハキと言い放つ。
「ああ、俺が『ネームレス』だってことは認めるよ。だがな、だからといってお前らみたいな一方的なやり口を肯定するわけにはいかないんだ。浄化だか何だか知らねえが、仲間を穢れで操って使い捨てるような奴らに、俺の王座なんて用意してねえよ」ヴァルレロは表情を崩さず、悲しげに首を振る。
「……左様ですか。至高の王も、人の情に絆されて牙を忘れてしまったというわけだ。ならば、力ずくで思い出していただくしかありませんね」ルナーロは槍を構え、鋭くハキハキと叫ぶ。
「交渉決裂ですね! ジョンアイデル様、来ますよ!」ヴァルレロは一瞬、姿を消したかと思うほど高速でジョンアイデルへと詰め寄った。その指先が、ジョンアイデルのこめかみへと吸い込まれるように押し当てられる。
「……ッ!? 速い……!」ジョンアイデルは咄嗟に反応したが、ヴァルレロの手はまるで磁石のように彼の動きに追随し、逃げることを許さない。ヴァルレロは冷酷な笑みを浮かべ、囁くようにハキハキと告げる。
「思い出してください、王。あなたがかつて見てきた地獄、そして、この世界をどう作り直そうとしたのかを……」こめかみを伝わり、ジョンアイデルの脳内に直接、暗黒のような膨大な情報と『穢れ』の記憶が流れ込み始めた。ジョンアイデルの視界が歪み、魔力の波動が狂い出す。セレスティアが悲鳴を上げた。
「ジョンアイデル様! 離れてください!」ジョンアイデルの脳裏に、かつての戦火と絶望の情景が鮮明に浮かび上がる。あまりの情報の奔流に、彼は膝を突き、呻くように声を絞り出した。
「ぐっ……! あ、ああああっ……!」
ヴァルレロは冷酷に囁く。
「そう、それです。それが貴方の本質だ。無から生まれ、破壊を司る者の姿だ」しかし、ジョンアイデルは歯を食いしばり、必死に自分自身を繋ぎ止める。
「確かに……この身体に生まれる前の俺は、そうだったかもしれない。破壊の化身として、全てを無に帰そうとしていた……。だがな、俺は転生してこの身体になったんだ。名前を授かり、仲間を得て、今を生きている!」
ジョンアイデルは血を吐くような思いで叫び、ヴァルレロの手を力任せに振り払った。
「二度と同じ過ちはしない! 俺は、この新しい人生で……俺自身の意志で道を選ぶんだ!」その瞬間、彼の魔力が眩い純白の光を放ち、周囲の「穢れ」を力強く押し返した。ヴァルレロはジョンアイデルから放たれた衝撃波に圧され、数メートル後退して着地する。その無機質な顔に、初めて明らかな驚愕の色が浮かんだ。
「……ッ!? なんという力だ。純粋な魔力ではない……。空間そのものを書き換えるようなこの位相力、全盛期であった過去の比ではないというのか!」ジョンアイデルの周囲では、大気がバチバチと音を立てて震え、彼自身の存在感がこの世界の法則を塗り替えていく。ジョンアイデルは肩で息をしながらも、鋭い眼光でヴァルレロを射抜き、ハキハキと言い放つ。
「過去の俺がどうだったかは知らねえよ。だが、今の俺には守るべき奴らがいる。その想いが、この力を引き出してるんだ!」ルナーロはジョンアイデルの背中から溢れる圧倒的なプレッシャーに圧倒されつつも、槍を握り直しハキハキと叫ぶ。
「ジョンアイデル様……! その力、まさに王の風格です!」ヴァルレロは自らの手のひらを見つめ、震える声で笑みを漏らした。
「素晴らしい……。これこそが、我らネームレスが渇望した真の『個』の完成形。ならば、全力で奪い取らせていただきますよ!」二人の間に割って入るように、黒いスーツを纏い、頭部に赤い包帯を幾重にも巻き付けた異様な風貌の人物が現れた。その姿を見たヴァルレロは、突き出した手を止めて一歩身を引く。
「やめろ、ヴァルレロ! 彼の力は奪い取れるほど浅いものではない。それに、我ら『ネームレス』の真の目的を忘れるな。個の完成も重要だが、我々には安住の地が必要なのだ」ジョンアイデルはその人物の気配を察し、構えを解かずにハキハキと応じる。
「シュワルツか。久しいな、相変わらず怪しい格好をしてやがる。……住む場所を探しているというなら、俺が皇帝になれたらの話だが、力を貸してやれる。居住区の確保くらいはな」シュワルツは包帯の隙間から鋭い視線を向け、沈黙して耳を傾ける。ジョンアイデルはさらに言葉を強めて続けた。
「だが、条件がある。それは『他種族との共存』だ。穢れを撒き散らして、他者を支配するようなやり方は一切認めない。それが飲めるなら、お前たち『名もなき者』にも居場所を作ってやる」ヴァルレロは不満げに顔を歪めたが、シュワルツは静かにジョンアイデルを見据え、その提案の重さを量るように佇んでいた。シュワルツの背後から、優雅でありながらも底知れぬ威圧感を纏った一人の女性が姿を現した。彼女はゆったりとした足取りで歩み寄り、ジョンアイデルの提案を弄ぶようにハキハキと告げる。
「他種族と共存しながらでも、我ら『ネームレス』に安住の住処が与えられるというのなら、何ら問題はないわ。奪い合うよりも、守られる椅子の方が心地よいものね」ジョンアイデルはその声に聞き覚えがあるのか、眉をひそめながらもハキハキと応じる。
「ネナトスか。お前まで出てくるとはな。相変わらず、損得勘定だけは一丁前だ」ネナトスは妖艶な笑みを浮かべ、ジョンアイデルの放つ強大な位相力をじっと見つめる。
「あら、王様。私たちだって、ただ破壊の渦に身を投じたいわけではないのよ。……シュワルツ、ヴァルレロ。この御方の提示した条件、乗ってみる価値はあるんじゃないかしら?」
ヴァルレロは苦々しい表情を浮かべつつも、ネナトスとシュワルツの様子を見て、突き出していた拳を静かに収めた。セレスティアはジョンアイデルの傍らに寄り添い、現れた三人の「ネームレス」の幹部たちを警戒しながらも、ジョンアイデルの決断を信じるようにその背中を見つめている。ジョンアイデルは、集まったネームレスの幹部たちを一人ずつ見据え、王としての威厳を漂わせながらハキハキと言い放つ。
「いいか。我々『ネームレス』が、ただの破壊者として歴史に名を残すより、この世界の発展者として名を残す方が、お前たちにとっても都合がいいはずだ。そうすれば、余計な摩擦を生まずに世界に溶け込める。……それに、共存という形をとれば、他種族の優れた能力を『使える者』として活用することも可能だ」その現実的かつ合理的な提案に、シュワルツとネナトスが沈黙し、最終的にヴァルレロが深々と頭を下げてハキハキと応じる。
「……いいでしょう。我が主、ジョンアイデル様。その言葉、ネームレスの代表としてお受けいたします。我らの力、貴方の掲げる新世界の礎として捧げましょう」殺伐としていた第五圏の空気は一変し、かつての敵対勢力がジョンアイデルの傘下へと下る歴史的な瞬間となった。ルナーロは驚きを隠せない様子でハキハキと呟く。
「まさか、あのネームレスを言葉一つで従えるとは……。ジョンアイデル様、貴方は本当に、この世界の理を変えてしまうおつもりですね」セレスティアは安堵の溜息をつき、ジョンアイデルの横顔を見つめて静かに微笑んだ。機魔族の最深部、青白く発光する巨大な円筒状のメインサーバーが鎮座する部屋に到着した。ジョンアイデルは迷いなくサーバーの端子へ歩み寄る。
「……よし、繋ぐぜ」ジョンアイデルの腕の一部が精密な銀色のメモリーケーブルへと変形し、サーバーのポートへ鋭く差し込まれた。膨大な演算データが彼の脳内へと直接流れ込み、情報の奔流が火花を散らす。数秒の沈黙の後、ジョンアイデルはケーブルを引き抜き、手応えを感じたようにハキハキと呟く。
「なるほどな。機魔族の全技術体系か……。ビットプログラムに、敵を内部から壊すウイルスバグプログラム。広域探査のソナープログラム、それに空中戦を支配するフライトプログラムなどか。これだけのデータがあれば、俺の位相力と組み合わせて面白いことができそうだ」クレティアはその様子を感心したように眺め、ハキハキと問いかける。
「それだけの膨大なプログラムを一瞬でインストールできるなんて、やっぱり貴方の演算能力は人間離れしているわね。それ、私たちにも共有できるのかしら?」ジョンアイデルは軽く肩を回し、手の中に小さな光のビットを出現させながらハキハキと応じる。
「ああ、調整すればお前たちの武装や魔法の補助にも回せるはずだ。これで、この階層の『穢れ』の源流を叩く準備が整ったな!」研究施設の奥底、不気味な脈動を繰り返す巨大な装置が待ち構えていた。その核にあるのは、デビルコアと同じ禍々しい赤黒い輝き——。
「なるほど。こいつが『穢れ』を撒き散らしていた張本人か」ジョンアイデルは装置に迷いなく手をかざすと、膨大な位相力を注ぎ込む。周囲の空間が歪み、大気中に漂っていた黒い霧が渦を巻いて彼の手元へと集約されていく。
「……ッ、この邪気、半端じゃねえな!」苦悶の色を一瞬見せながらも、ジョンアイデルはその「穢れ」を無理やり圧縮し、掌の中に一つの漆黒の結晶として固定化した。その瞬間、施設全体を覆っていた不気味な気配が霧散し、清浄な空気が流れ込む。装置の脈動は止まり、死にゆく灯火のようにその輝きを失っていった。ジョンアイデルは手の中の結晶を見つめ、ハキハキと呟く。
「発生源はこれで完全に浄化した。……だが、こいつの中にはまだ膨大な怨念と力が渦巻いているな」セレスティアは浄化された空気を深く吸い込み、ジョンアイデルを誇らしげに見つめてハキハキと言う。
「ジョンアイデル様、素晴らしい手腕です! 穢れを見事に手なずけ、無害化されるなんて……」ルナーロは槍の切っ先を下げ、周囲の異変が止まったことを確認しながら安堵の表情を見せる。一行は研究施設の奥にある隠された洞窟へと歩みを進める。湿り気を帯びた岩壁の奥から、未知の冷気が流れ込んでくる。
「……ここか」ジョンアイデルは足元に広がる、遥か地底へと続く巨大な石階段を見下ろす。一段ずつ、靴音が反響して静寂な洞窟内に響き渡る。
「下りるぜ、みんな。油断すんなよ。五階層があの状態だったんだ、次はもっとエグいのが待ち構えてるかもしれねえ」一段、また一段と深い闇の中へ降りていく。やがて、その階段の終着点に差し掛かると、足元の岩肌が次第に冷たい金属的な質感へと変わり、空気が凍り付くような緊張感に包まれた。
「……着いたな。ここが第六階層か」
ジョンアイデルはハキハキと呟き、目の前に広がる未知の景色に視線を凝らす。そこは、五階層とは打って変わって、冷たく、不気味な静寂に支配された世界だった。セレスティアはそっとジョンアイデルの外套の裾を掴み、ルナーロは槍を握り直す。クレティアは冷静に周囲の魔力の波長を読み取り始めた。
「さあ、お宝か、それともまた新しい敵か……どっちにしろ、暴れてやるだけだ!」第六階層に足を踏み入れた途端、一行は思わず言葉を失った。そこは五階層のような無機質な機械の森ではなく、濃密な魔力と欲望が渦巻く、艶めかしい夜の街のような光景だった。
「……何だ、ここは……。まるで酒場か、あるいは……」ジョンアイデルは、露出度の高い衣装を纏った美しい女淫魔たちがこちらを挑発的に見つめる視線を受け、少し困ったようにハキハキと呟く。
「おいおい、目のやり場に困るな。こっちの連中、戦う気なんて微塵もなさそうに見えるが……」周囲には、しなやかな肢体を見せつける淫魔だけでなく、筋肉質な体つきに妖しい色香を漂わせる男淫魔たちもたむろしている。さらには、獣の耳や尾を持ち、野性味溢れる強靭な肉体を持った獣魔族たちが、酒を酌み交わしながらこちらを観察していた。セレスティアは思わず顔を赤らめ、視線を逸らしながらハキハキと言う。
「な、なんて破廉恥な……! ジョンアイデル様、あまりジロジロ見てはいけませんよ!」ルナーロは槍を構えたまま、不審げに鼻を動かす。
「……血の匂いはしません。ですが、この甘ったるい香りに魔力を奪われる感覚がありますね」クレティアは冷徹な眼差しで周囲を見渡し、ハキハキと分析する。
「ここは、力ではなく、快楽や本能で他者を支配する階層のようね。アイデル、誘惑に負けないでちょうだい?」ジョンアイデルは苦笑いを浮かべ、剣の柄に手をかけたまま、群衆の中を悠然と歩き出した。
「あら~ん、君、素敵な方だね。身体つきも、その不敵な笑みも……どう、あたしといいことしませんこと?」艶やかな肢体をゆらゆらと揺らしながら、一人の女淫魔がジョンアイデルへと歩み寄ってきた。
甘い香りを漂わせ、露骨に露出したその胸元を強調するようにして、彼の腕に自身のそれを押し付けてくる。ジョンアイデルは一瞬、眉をぴくりと動かしたが、冷静さを崩さずハキハキと応じる。
「おっと、ご馳走様だな。だが、悪い。今はちょっと急ぎなんだ。せっかくのお誘いだが、後にしてくれるか?」女淫魔はふわりと微笑み、彼の首筋に手を回そうとして指先を這わせた。
「あら、つれないわね。せっかく六階層にたどり着いたご褒美に、極上の夢を見せてあげようと思ったのに」ルナーロは槍の柄で女淫魔を制するように間に割り込み、ハキハキと叫ぶ。
「こら! ジョンアイデル様に馴れ馴れしくするな! 私たちの旅は遊びではないのですよ!」セレスティアは真っ赤な顔をして、震える声で叫ぶ。
「そ、そうです! 私たちが第八圏へと向かう途中だということを、お忘れなく!」女淫魔はルナーロとセレスティアの必死な様子を見て、楽しげにクスクスと笑い声を上げた。女淫魔はジョンアイデルから離れると、思わせぶりに指先を唇に当ててハキハキと告げる。
「へぇ~、第八圏……マレボルジェに向かうのかしらーん? あそこは厄災と罪の象徴、命がいくつあっても足りない死の領域よ。そんな場所へ自分から進んで行こうだなんて、相当な物好きねぇ~」そして、女淫魔は鋭い視線を一行の背後にいるクレティアへと向けた。妖艶な笑みを深め、彼女に歩み寄りながらハキハキと語りかける。
「でも、そこの角の狐耳のお嬢さん……貴方、隠しきれていないわよ。その魂の奥底、アタシたち淫魔と同じ『力』の匂いがぷんぷんするわ。同族、あるいはそれ以上の業を背負っているのかしら?」クレティアは表情を一切変えず、冷徹な黄金の瞳で女淫魔を見据え、ハキハキと応じる。
「……私のルーツを勝手に詮索しないでちょうだい。私は私の目的のために、この力を使っているだけよ」ジョンアイデルは二人を見比べ、少し意外そうに眉を上げる。
「クレティア、お前……淫魔の素質があったのか? 道理でたまに、妙に色っぽい視線を感じるわけだぜ」セレスティアは慌ててジョンアイデルの視界を遮り、ハキハキと叫ぶ。
「ジョンアイデル様! 何を感心しているのですか! クレティアさんをそんな目で見ないでください!」クレティアは金銀のメッシュが美しく混ざり合った藍色の髪をさらりとなびかせ、余裕を感じさせる笑みを浮かべてハキハキと言う。
「あら、アイデル。貴方が私にそんな視線を向けてくれるなら、別に構わないわよ。むしろ、悪い気はしないし……むしろ、歓迎したいくらいね」その言葉に、ジョンアイデルは一瞬たじろぎ、頭を掻きながらハキハキと応じる。
「お、おい……。冗談か本気か分かりづらいぜ。お前のそういう掴みどころのないところ、相変わらずだな」セレスティアは顔を真っ赤にして、クレティアとジョンアイデルの間に入り込みながらハキハキと叫ぶ。
「クレティアさん! どさくさに紛れて何を言っているのですか! ジョンアイデル様をたぶらかさないでください!」女淫魔は三人のやり取りを面白そうに眺め、艶やかな声でハキハキと告げる。
「ふふふふふ、やっぱりね。その執着、その渇望……。貴方、私たちよりもずっと業が深そう。第八圏へ行く前に、ここで少し『修行』していってもいいのよ?」ルナーロは冷や汗を流しながら、槍を抱え直してハキハキと呟く。
「……五階層の機械人形たちより、ここの住人たちの方が、ある意味で恐ろしい気がしてきました……」女淫魔は唐突に、クレティアへと近寄ると、有無を言わさぬ速さで彼女の顎に指をかけ、その唇に深く吸い付くようにキスをした。
「……ッ!? んん……っ!」クレティアの身体が一瞬硬直し、次の瞬間、彼女の全身から濃密な魔力の奔流が溢れ出した。その内側に眠っていた淫魔の因子が、外部からの刺激に呼応して強制的に覚醒していく。ジョンアイデルは目を見開き、咄嗟に手を伸ばしてハキハキと叫ぶ。
「おい、何を……ッ! クレティア!」金銀のメッシュが入った藍色の髪が逆立ち、クレティアの瞳が妖しい深紅色へと変色していく。その全身からは、以前とは比べ物にならないほど強力で芳醇な「魔性」の香りが漂い始めた。女淫魔は満足げに身を引き、唇を拭いながらハキハキと笑う。
「ふふ……、やっぱりね。これほどまでの純度、これこそが本当の貴方の姿。淫魔の因子が目覚めた今、その本能をどう抑えつけるのかしら?」クレティアは荒い息を吐きながら、自身の手に宿る禍々しくも甘美な魔力を見つめる。
「……っ、これが、ワタシの中にあった力なのか……。身体が、熱い……」セレスティアは真っ青な顔をして、震える声で叫ぶ。
「クレティアさん!? 何てことを……! 淫魔の力なんて、彼女をどうするつもりなのですか!」ルナーロは槍を構え、女淫魔を睨みつけながらハキハキと言い放つ。
「ふざけるな! 彼女を弄んで、ただで済むと思うなよ!」ジョンアイデルは慌てるセレスティアや憤るルナーロの前に一歩踏み出し、穏やかながらもハキハキとした声で制する。
「おい、みんな落ち着けって。そんなに大騒ぎすることじゃない。クレティアにはもともと、『夢狐』の獣人の遺伝子が混ざってるんだ」ジョンアイデルは状況を冷静に分析し、ハキハキと続ける。
「夢狐っていうのは、夢魔と狐の獣人のハーフのことだ。淫魔の因子に触発されて覚醒したと言っても、それは彼女が本来持っていた性質の一部が表に出ただけだよ。だから、彼女自身の意志が乗っ取られるような実害はない。な、クレティア?」クレティアは熱を帯びた吐息をつきながらも、黄金の瞳に確かな理性を宿し、ジョンアイデルを妖艶に見据えてハキハキと応じる。
「……ふふ、流石ね、アイデル。私のルーツをそこまで把握しているなんて。確かに、今は少しだけ気分が高揚しているけれど……、ワタシ自身が消えるわけじゃないわ」セレスティアはジョンアイデルの言葉に安堵しつつも、クレティアのあまりの色香に戸惑いを隠せない。
「そ、そうだったのですか……。ですが、以前よりもずっと、その……『魔性』が強くなったように見えます」ルナーロは槍を収め、困惑した表情でハキハキと言う。
「夢狐の末裔……。淫魔の王すら凌駕する、伝説の種族じゃありませんか。そんな凄まじい力が目覚めてしまったのなら、これからの戦いには心強いですが……」女淫魔はジョンアイデルの知識に感心したように拍手を送り、ハキハキと呟く。
「あら~、よくご存知ね。これなら、八階層の困難も少しは楽になるんじゃないかしら?」クレティアは覚醒した妖艶な魔力を纏いながら、ジョンアイデルの腕を包み込むようにギュッとしがみつく。潤んだ黄金の瞳で彼を見上げ、ハキハキと爆弾発言を投げかけた。
「そうそう、流石はアイデルね。私のルーツを完璧に把握しているわ。それに、実は私……『ネームレス』の一体でもあるんだよね。夢狐という種族をベースに、名を持たない魂として調整された存在……。それがワタシよ」ジョンアイデルは一瞬目を見開き、驚きの色を隠せない様子でハキハキと応じる。
「なっ……!? お前、あのシュワルツやネナトスや俺と同じ『ネームレス』だったのか? 全く気づかなかったぜ。……それにしては、随分とヒトらしい感情を持ってるじゃないか」クレティアはジョンアイデルの胸元に顔を埋め、甘い香りを漂わせながらハキハキと囁く。
「ふふ、そうね。それは、アイデル……貴方が私を見つけ、共に歩んでくれたからかもしれない。ワタシにとって、この名は貴方と母上が与えてくれたようなもの。だから、私は貴方のための『ネームレス』として、最後までお供させてもらうわよ」セレスティアはクレティアの大胆な告白と密着ぶりに、顔を真っ赤にして地団駄を踏みながらハキハキと叫ぶ。
「ク、クレティアさん! どさくさに紛れて何を言っているのですか! ジョンアイデル様から離れてくださいよ!」ルナーロは槍を握り締め、驚愕の事実を咀嚼するようにハキハキと呟く。
「ネームレス……。夢狐であり、名もなき者……。ジョンアイデル様、私たちの仲間には、どれほどの秘密が隠されているのですか?」女淫魔は三人の複雑な関係をニヤニヤと眺めながら、爪を弄びつつハキハキと告げる。
「あらあら、王様。貴方の周りは、まるで運命に導かれたように特別な存在ばかりが集まっているわねぇ。これなら、マレボルジェの門番も手を焼くんじゃないかしら?」第六階層の喧騒を切り裂くように、漆黒のコートを翻してノクスが姿を現した。彼は鋭い眼光でジョンアイデルと覚醒したクレティアを見据え、地響きのような低い声で告げる。
「ネームレス……。なるほど、やはりそうか。だが、単なる『王』で終わる器ではないな。ジョンアイデル、貴様がもし神の座に届けば、とてつもない事象が引き起こされる。貴様はネームレスの王などではなく、その先にある『頂点の神』へと至る存在だ」ジョンアイデルはノクスの放つ異質な威圧感に眉をひそめ、確信を持ったようにハキハキと問いかける。
「ノクス、その言い草……。もしかして、お前もそうなのか?」ノクスは不敵な笑みを浮かべ、自身の胸元に手を当ててハキハキと答えた。
「やはり勘付くか。察しがいいな、ジョンアイデル。そうさ、俺もまた『ネームレス』の一員だ。形なき闇に意志を宿し、この階層などの深淵を見守り続けてきた闇にて影の一つに過ぎん」クレティアはジョンアイデルの腕に絡みついたまま、ノクスを品定めするように黄金の瞳を細めてハキハキと言う。
「あら、ノクス。貴方も同類だったのね。道理で、初めて会った時からあのシュワルツたちと同じ、空虚で底知れない気配が漂っていたわけだわ」セレスティアは驚愕のあまり、持っていた杖を落としそうになりながらハキハキと叫ぶ。
「ノ、ノクスさんまで……!? 私たちの旅の仲間、一体どれだけの『ネームレス』が紛れ込んでいるのですか!」ルナーロは槍を構え直し、緊張感を高めてハキハキと呟く。
「ネームレスの王、ネームレスの夢狐、そしてネームレスの影……。これでは、まるでネームレスの軍団ではありませんか!」ノクスはジョンアイデルを真っ直ぐに見つめ、静かに、だが重みのある言葉を続けた。
「案ずるな。俺は貴様達の敵ではない。貴様が『神』へと至る道筋、その果てに何が待っているのか……。この目で見届けさせてもらうぞ」ジョンアイデルは鋭い眼光をノクスに向け、確信をつくようにハキハキと問いかける。
「ノクス、お前……裏で随分と仕込んだな。『クリミナル・デビル』っていう組織を知ってるか? あいつらの動き、お前が無関係だとは思えないんだがな」ノクスは不敵な笑みを深くし、肩をすくめてハキハキと答える。
「あぁ……知ってるとも。というより、あいつらも結局は運命に踊らされているだけの道化に過ぎん。物界と魔獄界を壊すのはクリミナル・デビルのボスの思惑だが、そこには『リヴァイアサン派閥』と『テリオン派閥』が手を組んで介入している」ノクスは一歩近づき、周囲の淫魔たちが気圧されるほどの威圧感を放ちながら言葉を続けた。
「その二つの派閥はな、そもそも界域の破壊なんて望んじゃいない。ただ、奴らは『穢れ』というものに目をつけただけだ。……分かっているだろう、ジョンアイデル? あれがただの不純なゴミではないことを。あれは使い方次第で、世界の理すら書き換える膨大なエネルギーに化けるのさ」ジョンアイデルは手の中にある、先ほど浄化し結晶化させた「穢れ」を見つめ、ハキハキと応じる。
「なるほどな。エネルギー源としての価値か……。だからこそ、五階層の機魔族やこの六階層の連中まで巻き込んで、大規模な実験を繰り返していたってわけか」クレティアはジョンアイデルの腕に絡みついたまま、ノクスの言葉を反芻するようにハキハキと言う。
「リヴァイアサンにテリオン……。魔獄界の巨大派閥が動いているなら、単なるテロ組織の暴走じゃ済まないわね。アイデル、私たちが相手にするのは、想像以上に巨大な『欲望』の塊かもしれないわよ」セレスティアは不安げに胸元を押さえ、ハキハキと叫ぶ。
「そんな……! 世界を壊すためではなく、エネルギーのために『穢れ』を撒き散らすなんて、余計に質が悪いです!」ルナーロは槍を強く握り締め、ノクスを睨み据えてハキハキと問い詰める。
「ノクス! 貴方はそれを知っていて、今まで黙っていたのですか!」ノクスは冷徹な瞳でルナーロを一蹴し、再びジョンアイデルへと視線を戻した。
「俺は観測者だ。だが、貴様がそのエネルギーをどう『料理』するかには興味がある。……さあ、王よ。その穢れの結晶、どう扱うつもりだ?」ジョンアイデルは手の中にある、禍々しくも脈動する「穢れ」の結晶をじっと見つめ、迷いのない声でハキハキと言い放つ。
「ああ、分かったよ。この『穢れ』も、使い方さえ間違わなければ実害はない。むしろ、これだけの密度があれば、新世界の維持に必要なエネルギー源として十分に機能するはずだ」
周囲の淫魔や獣魔たちが息を呑む中、彼はさらに現実を見据えた言葉を続ける。
「ヒトがいる限り、そこには必ず負の感情が生まれる。悲しみ、怒り、嫉妬……。だから、この世界から『穢れ』を完全に消し去ることなんて不可能だ。だったら、それをただ排斥して爆発させるんじゃなく、俺が制御して循環させてやる。それが、この身体と名前を選んだ俺のやり方だ」ノクスはフッと口角を上げ、満足げにハキハキと応じる。
「……正解だ。光があれば影があるように、正の魔力があれば負の穢れもある。それを否定せず、一つの『力』として飲み込む器……。やはり、貴様こそがその資質を持っているな」クレティアはジョンアイデルの肩に頭を預け、妖艶な微笑みを浮かべてハキハキと囁く。
「ふふ、流石はワタシのアイデル。綺麗事だけじゃなく、世界の醜さまで愛そうとするなんて。その強欲なまでの包容力、ますます惚れ直しちゃうわ」セレスティアは少し複雑そうな表情を浮かべつつも、納得したようにハキハキと言う。
「……消せないものを力に変える。それがジョンアイデル様の目指す『共存』の形なのですね。少し怖い気もしますが、貴方ならきっと制御しきれると信じています」ルナーロは槍を背負い直し、覚悟を決めたようにハキハキと叫ぶ。
「毒を薬に変えるというわけですね! 面白いじゃありませんか。その新世界のエネルギー、私もしっかりと守らせていただきますよ!」ジョンアイデルは結晶を懐にしまい、視線をさらに奥の階層へと向けた。一行は第六階層の艶めかしく、どこか不気味な夜の街を後にし、最深部へと続く洞窟へと足を踏み入れた。足元には再び、歴史の重みを感じさせる古びた石階段が広がっている。
「……行くぜ。次は第七圏だ」ジョンアイデルの号令と共に、靴音が洞窟内に冷たく反響する。一段、また一段と降りるごとに、空気は重圧を増し、先ほどまでの甘美な香りは消え去り、代わりに鉄錆のような、生々しい「戦い」の匂いが漂い始めた。
「……ッ、この殺気……。これまでの階層とは、明らかに気配が違うぜ」ジョンアイデルは鋭い眼光を闇の先へ向け、ハキハキと呟く。
「第七圏。ここは、魔獄界の真髄……最強の武人たちが集う階層か」階段を降り切った瞬間、視界が開けた。そこは広大な荒野と廃墟が広がる、果てなき戦場のような光景だった。空は血のように赤く、遠くからは激しい金属音と魔法の爆発音が響いてくる。セレスティアは杖を握り締め、周囲の圧倒的なプレッシャーに息を呑みながらハキハキと叫ぶ。
「な、なんて凄まじい闘気……! ここにいる者たちは、全員が一騎当千の猛者に見えます!」ルナーロは全身の毛を逆立て、武者震いをしながら槍を構えてハキハキと言う。
「……血が騒ぎますね。ここは、純粋な『力』が全てを決める階層。腕が鳴りますよ!」クレティアは覚醒した淫魔の羽を小さく羽ばたかせ、不敵な笑みを浮かべてハキハキと囁く。
「ふふ、野蛮な連中が多いみたいね。でも、アイデルの強さを知らしめるには、絶好の舞台じゃないかしら?」ノクスは一歩前に出て、静かに周囲を見渡し、ハキハキと警告する。
「……気を引き締めろ。ここからは、言葉よりも先に拳が飛んでくる領域だ。ジョンアイデル、貴様の『神』への資質、試されるぞ」ジョンアイデルは不敵に笑い、腰の剣に手をかけたまま、赤く染まった大地を一歩ずつ踏みしめた。第七圏の中心部に進むと、そこには天を突くほど巨大な石造りのコロッセオが鎮座していた。すり鉢状の構造をしたその闘技場からは、地響きのような大歓声と、肉体と魔力が激突する凄まじい衝撃音が絶え間なく溢れ出している。
「ふん、賑やかなもんだな。ここが第七圏の心臓部か」ジョンアイデルは周囲を見渡し、ハキハキと感心した声を上げる。闘技場の周囲は、単なる戦場ではなく、逞しく生きる者たちの活気ある都市となっていた。路地には武器や防具、魔獣の肉を扱う市場が立ち並び、堅牢な石造りの住居がひしめき合っている。そして広い大通りには、力強い翼を羽ばたかせる天馬や、巨体で地を踏みしめるねじれた角の猛牛、岩場を軽々と跳ねる山羊といった、魔獄界特有の輓曳獣たちが、巨大な荷車や豪華な客車を曳いて忙しなく行き交っていた。セレスティアは、翼の生えた馬が空を低く飛びながら車両を曳く光景に目を丸くし、ハキハキと叫ぶ。
「すごいです……! 戦いばかりの階層かと思いましたが、独自の文化と生活がしっかりと根付いているのですね!」ルナーロは、通り過ぎる輓曳獣たちの強靭な筋肉に見惚れながら、槍を担いでハキハキと言う。
「あの牛、いい引きをしてますね。あんな獣たちを御せるとは、ここの住民たちの気性も推して知るべしです」クレティアはジョンアイデルにぴったりと寄り添い、市場から漂う香辛料の匂いに鼻を利かせながらハキハキと囁く。
「アイデル、あのアリーナで勝ち進めば、第八圏への扉が開くんじゃないかしら? ほら、あそこの熱気……貴方の力を欲しがっているみたいよ」ノクスは群衆に紛れるように歩き、冷徹な視線でコロッセオを仰ぎ見て、ハキハキと告げる。
「……ここは『力こそが法』の世界だ。ジョンアイデル、あの場所で頂点に立つことが、この階層を支配下に置く最短ルートだぞ」ジョンアイデルは不敵な笑みを浮かべ、輓曳車両が巻き上げる土煙を払いながら、コロッセオの正面ゲートへと堂々と歩みを進めた。ジョンアイデルはコロッセオの巨大な石造りの受付へと悠然と歩み寄り、簡素な羊皮紙にその名を書き記して登録を済ませた。
「……ジョンアイデル。これでいいな?」受付の無骨な鬼人は、彼の名を見ることなく、ただ無機質に頷いて入場を促した。ここには仰々しいアナウンスも、名前を連呼する司会者も存在しない。ジョンアイデルは闘技場の中央へと続く暗い通路を通り、眩いばかりの光の中に足を踏み出した。そこには、円形の広大な闘技場が広がり、砂埃を巻き上げながら、すでに数十人の猛者たちが各々の武器を構えて対峙していた。
「……なるほど。言葉はいらねえってわけか。全員敵、何でもありのソロバトルロワイヤル。シンプルでいいぜ!」ジョンアイデルはハキハキと不敵に笑い、背負っていた剣の柄を力強く握りしめる。周囲からは殺気が渦巻き、彼を品定めするような、飢えた獣のような視線が突き刺さる。セレスティアは観客席の最前列で、祈るように両手を組み、震える声でハキハキと叫ぶ。
「ジョンアイデル様! 無事で戻ってきてください!」ルナーロは身を乗り出し、槍の石突きを床に叩きつけてハキハキと鼓舞する。
「ジョンアイデル様! その圧倒的な力、連中に叩き込んでやってください!」クレティアは妖艶な笑みを浮かべ、ジョンアイデルの戦いぶりを心から楽しもうと瞳を輝かせてハキハキと言う。
「さあ、見せてちょうだい……。貴方がその頂点に立つ姿を、私は焼き付けておくわよ」ノクスは腕を組み、冷徹な視線で混戦の行方を見据え、ハキハキと呟く。
「……始めろ。貴様の『個』がどれほどのものか、この階層の魂に刻み込むがいい」開始の合図すらなく、一人の巨漢が斧を振り上げ、ジョンアイデルの背後から肉薄してきた。ジョンアイデルは振り向きもせず、鋭い位相力を一気に爆発させた!背後から迫る巨漢の斧が空を切る。ジョンアイデルが放った凄まじい位相力の波動に圧され、巨漢はたまらず尻もちをついた。だが、第七圏の戦士は伊達ではない。彼はすぐさま獣のような咆哮を上げ、バネのように跳ね起きると、今度は渾身の力で斧を振り下ろす!
「無駄だと言ったはずだぜ!」ジョンアイデルは避ける素振りも見せず、あろうことか素手でその巨大な斧の刃を正面からガッシリと受け止めた。金属同士が激突するような鋭い音が響き渡り、衝撃で周囲の砂埃が円形に吹き飛ぶ。巨漢は目を見開き、信じられないものを見るような顔で絶句した。
「なっ何…………!? 素手で、俺の斧を……!?」ジョンアイデルは不敵な笑みを浮かべ、ハキハキと言い放つ。
「この程度の硬度で、俺の『個』を断ち切れると思ったか?」直後、ジョンアイデルが指先に力を込めると、メキメキという不気味な音が闘技場に響き渡る。鋼鉄の刃が、まるで乾いた粘土細工のように粉々に握り砕かれ、破片が地面に飛び散った。観客席のルナーロは身を乗り出し、興奮を隠せない様子でハキハキと叫ぶ。
「見たか! あの剛腕! 武器ごと粉砕するなんて、ジョンアイデル様のパワーは底が知れません!」セレスティアは恐怖を忘れて、思わず立ち上がりハキハキと応援する。
「ジョンアイデル様! そのまま一気に決めてください!」クレティアは砕け散る鉄片の煌めきをうっとりと見つめ、妖艶な笑みを深めてハキハキと囁く。
「ふふ、素敵……。圧倒的な暴力こそ、この階層には相応しい挨拶だわ」ジョンアイデルは武器を失い呆然とする巨漢の胸元に、容赦のない一撃を叩き込むべく拳を固めた。ジョンアイデルは、踏み込んだ勢いのまま、鋼鉄をも容易に貫くであろう鋭い正拳を巨漢の分厚い胸板へと叩き込んだ。
「あばよ、力自慢!」
ズドンッ! という、肉体同士の衝突音とは思えない凄まじい衝撃音が闘技場全体に轟く。巨漢の巨躯はまるで紙屑のように宙を舞い、数十メートル後方の防護フェンスへと一直線に激突した。ガシャーン! と金属のひしゃげる音が響き、巨漢はそのまま白目を剥いて崩れ落ち、ピクリとも動かなくなった。ジョンアイデルは拳を軽く振り、ハキハキと呟く。
「ふぅ……。ちょっと加減したつもりだが、それでも飛びすぎたか」観客席のルナーロは身を乗り出し、拳を突き上げてハキハキと叫ぶ。
「見たか! あの破壊力! まさに一撃必殺、ジョンアイデル様の拳に敵う者などこの階層にはいませんよ!」セレスティアは圧倒的な光景に呆然としながらも、安堵の表情でハキハキと言う。
「……すごいです。あんなに大きな方が、あんなに簡単に……。ジョンアイデル様、本当にお強いのですね」クレティアは妖艶な吐息を漏らし、ジョンアイデルの背中を熱い視線で射抜きながらハキハキと囁く。
「ふふ、野蛮で素敵だわ。アイデル、周りの連中が怯え始めてるわよ? 貴方の『王』としての格を見せつけるには、最高の滑り出しね」ノクスは腕を組み、倒れた巨漢を一瞥してハキハキと告げる。
「……当然の結果だな。さて、次だ。一人が沈んだことで、ようやく周りの連中も本気で殺しに来るぞ」ノクスの言葉通り、巨漢の敗北を見て一瞬静まり返った闘技場だったが、すぐさま他の参加者たちが武器を握り直し、ジョンアイデルを取り囲むように距離を詰め始めた。ジョンアイデルは、周囲の様子を窺いながら距離を詰めようとする残りの参加者たちを一喝した。その力強い声は、コロッセオの巨大なドーム状の屋根まで届くほどの覇気を帯びていた。
「おいおい、これじゃ肩慣らしにもならんぜ! 一人ずつ相手をするのは面倒だ、まとめてかかってこい!」ジョンアイデルはハキハキと不敵に言い放ち、挑発するように両腕を広げてその圧倒的な存在感を見せつける。
「俺を倒せる自信がある奴は、遠慮なく同時に来い! まとめて片付けてやるよ!」その傲岸不遜とも取れる言葉に、闘技場を埋め尽くす猛者たちの表情が、驚愕から怒り、そして狂喜へと変わっていく。一瞬の静寂の後、数多の武器の金属音が重なり合い、凄まじい殺気が爆発した。セレスティアは真っ青な顔をして、震える声でハキハキと叫ぶ。
「ジョンアイデル様! 全員を相手にするなんて、あまりにも無謀です!」
ルナーロは槍を構え、今にもジョンアイデルの加勢に入ろうかという勢いでハキハキと鼓舞する。
「ジョンアイデル様! その心意気、これこそ王の器! 全員まとめて吹き飛ばしてやってください!」クレティアは熱い吐息を漏らし、ジョンアイデルの背中を熱心に見つめてハキハキと囁く。
「ふふ、ゾクゾクするわね……。アイデル、貴方の『強欲』なほどの自信、大好きよ。さあ、最高の蹂躙劇を見せてちょうだい」ノクスは静かに腕を組み、騒然とする観客席を一瞥してハキハキと告げる。
「……面白い。貴様がこの場の王であることを、たった今から証明させてもらうぞ」その瞬間、地を揺らすような足音と共に、数十人の戦士たちが一斉にジョンアイデルへと躍りかかった!ジョンアイデルは一人の戦士の襟首を掴み、そのまま軽々と持ち上げると、咆哮と共に勢いよく投げ放った。
「どけえッ!」投げられた戦士は弾丸のように宙を舞い、向かってくる数人の戦士たちを巻き込んで地面を転がり、凄まじい音と共に一気に戦闘不能に追い込んだのである。さらに、背後からマシンガンの銃声が響く。ジョンアイデルは目にも留まらぬ速さで身を翻し、銃口を向けた男の腕を捻り上げ、その武器を強奪した。
「悪いが、これは俺が使わせてもらうぜ!」ジョンアイデルは奪い取ったマシンガンを構え、残りの戦士たちに向けて掃射を開始した。ダダダダッ! という激しい銃声がコロッセオに響き渡り、火花が散る。セレスティアは耳を塞ぎながら、ジョンアイデルの破天荒な戦いぶりに圧倒され、震える声でハキハキと叫ぶ。
「ジョンアイデル様! 銃まで使いこなすなんて……! あんなに多くの敵を……!」ルナーロは身を乗り出し、拳を突き上げてハキハキと鼓舞する。
「これぞ現代の武人! 奪い、使い、殲滅する! ジョンアイデル様、最高ですよ!」クレティアは熱を帯びた吐息を漏らし、火薬の匂いと硝煙の中で戦うジョンアイデルの勇姿を見つめ、ハキハキと囁く。
「ふふ、野蛮で素敵だわ……。アイデル、貴方の『強欲』なほどの支配力、ますます惚れ直すわよ」ノクスは腕を組み、冷静に戦局を見据えながらハキハキと呟く。
「……効率的だな。武器を持たぬ者から、武器を持つ者まで。全てを支配下に入れるその手腕……。流石は、神を目指す男だ」ジョンアイデルは弾切れになったマシンガンを投げ捨て、最後の一塊となった戦士たちへと向かって再び拳を固めた。ジョンアイデルは立ち塞がる最後の一塊となった戦士たちを見据え、腰を深く落として全神経を右拳へと集中させる。彼の周囲の空気が、まるですべて吸い込まれるかのように一瞬で希薄になった。
「これで終わりだな! 喰らえ……『憤怒真空拳』ッ!」咆哮と共に突き出された拳。それは直接触れるまでもなく、凄まじい拳圧によって大気を圧縮し、超高温を帯びた「真空の弾丸」となって解き放たれた。ゴォォォォッ! という大気を引き裂く轟音と共に、目に見えるほどの熱波と風圧の壁が戦士たちを襲う。一塊になっていた猛者たちは、防ぐ間もなく木の葉のように宙へ舞い上げられ、熱を帯びた衝撃波に飲み込まれて次々と白目を剥き、地面に叩きつけられて沈黙した。ジョンアイデルはゆっくりと拳を引き、立ち昇る陽炎を振り払うようにハキハキと呟く。
「ふぅ……。ちょっと熱くしすぎたか。だが、これで全員お寝んねだな」
観客席のルナーロは、あまりの威力に椅子から転げ落ちそうになりながらハキハキと叫ぶ。
「なっ、何ですか今の技は! 拳一つで嵐と熱波を同時に引き起こすなんて……ジョンアイデル様、もはや人間業ではありません!」セレスティアは呆然と立ち尽くし、熱気が漂う闘技場を見渡してハキハキと言う。
「……すごいです。あんなに大勢いた戦士たちが、たった一撃で……。ジョンアイデル様、本当にお怪我はありませんか!?」クレティアは上気した頬を両手で押さえ、熱い吐息を漏らしながらハキハキと囁く。
「ふふ、最高だわ、アイデル……。あの熱気、私の肌まで届いたわよ。貴方の『憤怒』がこれほどまでに美しくて力強いなんて……」ノクスは静かに立ち上がり、静まり返ったコロッセオを見下ろしてハキハキと告げる。
「……決着だな。言葉通り、一塊にして葬り去ったか。ジョンアイデル、これでお前を侮る者は、この第七圏にはもう一人もいないだろうぞ」静まり返った闘技場に、ジョンアイデルの荒い呼吸の音だけが響き渡る。静まり返った闘技場に、パチッ、パチッ……と乾燥した、どこか小馬鹿にするような拍手の音が響き渡る。
「……誰だ?」ジョンアイデルは鋭い眼光を拍手の主へと向けた。そこには、忘れもしない、かつて彼が入学試験の際に引導を渡したはずの男、デュイオが不敵な笑みを浮かべて立っていた。
「久しぶりですね、ジョンアイデルさん。そんなに驚いた顔をして……。入学試験が終わった時に、確かに貴方の手で死んだはずの男がなぜここに、って思っているのでしょう?」デュイオは一歩前に出て、全身から禍々しくも歪んだ魔力を放ちながらハキハキと告げる。
「確かに物界では貴方に殺されましたよ。ですが、運命は私を見捨てなかった! 肉体ごとこの階層へ転移し、ある御方に肉体を修復され、魂までもが強固に癒着したのです」彼は自身の胸に手を当て、狂気に満ちた瞳を剥き出しにしてハキハキと叫ぶ。
「そして、今の私の二つ名は……『暴虐』! 暴虐のデュイオだ! 貴方に受けた屈辱、その全てをここで倍にして返して差し上げますよ!」ジョンアイデルは驚愕の色を一瞬だけ浮かべたが、すぐさま冷静さを取り戻し、ハキハキと応じる。
「……なるほどな。執念で這い上がってきたってわけか。デュイオ、お前、しぶといな。だが、前と同じ結果になるだけだぜ。二つ名が変わったところで、俺の『個』は揺るがねえ!」セレスティアは真っ青な顔をして、震える声でハキハキと叫ぶ。
「デュ、デュイオ!? 生きていたのですか……! それに、あの不気味な魔力は何ですか!」ルナーロは槍を構え、かつての強敵との再会にハキハキと鼓舞する。
「ジョンアイデル様! 二度も三度も、アイツの首を叩き折ってやってください!」クレティアは妖艶な微笑みを浮かべつつ、デュイオの歪んだ魔力を品定めするようにハキハキと囁く。
「ふふ、蘇ったゾンビがまたご主人様に噛みつきに来たってわけね。アイデル、今度こそ完全に黙らせてあげましょう?」ノクスは静かに腕を組み、デュイオの背後に潜む「ある御方」の影を感じ取りながら、ハキハキと呟く。
「……やはりか。仕組まれた復活……。ジョンアイデル、気をつけろ。奴の力は以前とは比べ物にならんぞ」デュイオは咆哮を上げ、真っ赤に染まった大地を蹴ってジョンアイデルへと肉薄した!デュイオは顔を歪ませ、狂気に満ちた叫びを上げながらハキハキと言い放つ。
「ハハハ! 驚くのはまだ早いですよ、ジョンアイデルさん! この力……スペルヴィア様から直接授かった、『殺戮』と『拒絶』の大罪因子の力を見せつけてやりましょう!」その瞬間、デュイオの全身からどす黒い魔力の奔流が噴き出した。彼の周囲の空間がガラスが割れるようにひび割れ、近づくもの全てを物理的に弾き飛ばす『拒絶』の障壁が展開される。同時に、その手には赤黒い血の滴るような、見る者の精神を蝕むほど禍々しい『殺戮』のバイブルブレードと銃口が付いたグローブが形作られた。ジョンアイデルは、その圧倒的なプレッシャーを正面から受け止め、ハキハキと応じる。
「スペルヴィア……傲慢の王か。あいつ、わざわざ死人を掘り起こしてまで俺の邪魔をしたいらしいな。だが、大罪因子を積んだところで、お前自身の器が変わらなきゃ意味ねえんだよ!」セレスティアは、その悍ましい力に身震いし、ハキハキと叫ぶ。
「大罪因子……!? 人の身でそんなものを取り込むなんて、正気ではありません! ジョンアイデル様、気をつけてください!」ルナーロは槍を強く握り締め、デュイオの変貌ぶりに唾棄するようにハキハキと言う。
「殺戮と拒絶か。随分と物騒なものをもらいましたね。ですが、我らが王の『個』を拒絶しきれると思わないことです!」クレティアは、デュイオから漂う傲慢な魔力に鼻を鳴らし、妖艶な笑みの中に冷徹な光を宿してハキハキと囁く。
「ふふ、借り物の力で威張るなんて、まさに『傲慢』の差し金ね。アイデル、その歪んだ因子ごと、綺麗に粉砕してあげて?」ノクスは腕を組み、スペルヴィアの名を聞いて目を細め、ハキハキと警告する。
「……傲慢の王スペルヴィア。あいつが動いたか。ジョンアイデル、その二つの因子が重なれば、攻防一体の厄介な力になるぞ。一瞬の隙も与えるな」デュイオは地を蹴り、拒絶の波動を纏いながら、殺戮の刃を振り下ろしてジョンアイデルへと肉薄した!ジョンアイデルは迫りくる紅黒い刃に対し、避けるどころか自ら踏み込み、鋭い旋回蹴りをその側面に叩き込んだ。
「そんなナマクラで、俺の歩みを止められるとでも思ったか!」凄まじい衝撃音と共に、殺戮の魔剣はガラス細工のように粉々に粉砕され、四方へと飛び散った。だが、デュイオは動じず、不気味な笑みを浮かべてハキハキと叫ぶ。
「ウワハハハ〜! 無駄ですよ、ジョンアイデルさん! この剣は『殺戮』の因子そのもの。周囲に転がる敗者たちの血と精気がある限り、何度でも蘇るのです!」その言葉通り、地面に倒れた魔族たちの傷口から鮮血と魔力が吸い寄せられ、砕けた刃の破片へと凝集していく。シュルシュルと音を立てて肉が編まれるように、魔剣は一瞬で元の、いや、以前よりも禍々しさを増した姿へと再生した。セレスティアは、そのおぞましい光景に顔を背けながらハキハキと叫ぶ。
「なんて悪趣味な……! 倒れた人たちの命を糧にするなんて、許せません!」ルナーロは槍を構え直し、再生し続ける武器に苛立ちを露わにしてハキハキと言う。
「チッ、ゾンビが持つに相応しい執念深さですね。叩き壊しても無駄なら、根こそぎ消し飛ばすしかありませんよ!」クレティアは金銀のメッシュが入った髪を揺らし、再生の理気を見極めるように黄金の瞳を細めてハキハキと囁く。
「ふふ、『殺戮』の権能ね。周囲の死をエネルギーに変えるなんて、まさにこの第七圏にふさわしい呪い。アイデル、供給源ごと断たないと、キリがないわよ?」ノクスは腕を組み、再生する刃の脈動を冷静に分析しながらハキハキと告げる。
「……血の吸い上げが早い。ジョンアイデル、奴の『拒絶』の壁を突破し、その核である大罪因子そのものを叩き潰せ。長期戦は奴の思う壺だ」デュイオは再生した刃を大きく振りかぶり、周囲の血を吸ってさらに巨大化した一撃をジョンアイデルへと叩きつけた!デュイオは不気味な笑みを浮かべ、懐から漆黒に脈動する球体のカプセルを取り出した。それを右腕のガントレットに力任せに叩き込むようにはめ込む!
『シャドウ! ウワーハッハッハッ!』禍々しいシステム音声がコロッセオに響き渡ると同時に、デュイオの全身から底なしの闇のような黒いモヤが噴き出し、彼自身の肉体を飲み込んでいく。
「これぞ絶望の色……! スペルヴィア様より賜った、影の真髄を見せてやりますよ!」デュイオはハキハキと狂気に満ちた声を上げ、黒いモヤを纏ったまま実体と影の境界を曖昧にさせながら、ジョンアイデルの周囲を高速で旋回し始めた。ジョンアイデルは、その異質な闇の気配を真っ向から見据え、ハキハキと応じる。
「シャドウ……? 面白い、今度は影遊びか。だが、どんなに黒く塗りつぶしたところで、俺の『個』の輝きまでは隠せねえぜ!」セレスティアは、そのおぞましい変貌に顔を強張らせ、ハキハキと叫ぶ。
「あの黒いモヤ……触れるだけで精神が削られそうな、嫌な予感がします! ジョンアイデル様、近づかないでください!」ルナーロは槍を構え直し、捉えどころのない影の動きに目を凝らしてハキハキと言う。
「実体がない……!? 厄介な能力をいくつも重ねてきますね。ですが、影があるということは、それを照らし出す光に弱いということではありませんか!」クレティアは覚醒した淫魔の翼を微かに震わせ、闇の中に潜むデュイオの本質を探るようにハキハキと囁く。
「ふふ、面白いわね。光を拒絶し、影に沈む……。アイデル、あのモヤに捕まったら、影の迷宮に引きずり込まれるわよ?」ノクスは腕を組み、漆黒のカプセルがもたらした変容を冷静に分析しながらハキハキと告げる。
「……影の因子か。実体を持たぬ攻撃は、物理的な防御を透過する恐れがある。ジョンアイデル、奴の『拒絶』の壁と、この『影』の流動性……同時に相手にするのは骨だぞ」デュイオは黒いモヤの中から、殺戮の魔剣を影の触手のように伸ばし、四方八方からジョンアイデルを串刺しにせんと襲いかかった!ジョンアイデルは迫りくる影の触手を鋭い眼光で捉え、懐から黄金色に輝く太陽の紋章が刻まれたメモリーを取り出した。
「影で覆い隠せると思うなよ! 闇を切り裂く真実の光を見せてやる!」ジョンアイデルがそのメモリーを左腕のガントレットに叩き込むと、闘技場全体を震わせるような神々しいシステム音声が響き渡る。
『ククルカン!』その瞬間、ジョンアイデルの全身から、まるで地上に太陽が降り立ったかのような強烈な黄金の光が溢れ出した。背後には巨大な翼を持つ光り輝く大蛇の幻影が揺らめき、デュイオが纏っていた不気味な黒いモヤを一瞬で焼き払う!
「……っ!? な、なんだこの光は……! 私の影が、溶けていく……!?」デュイオはハキハキと驚愕の声を上げ、あまりの眩しさに顔を背ける。ジョンアイデルは光り輝くオーラを纏い、ハキハキと言い放つ。
「ククルカン……豊穣と光を司る翼ある蛇の力だ。お前の薄汚い影など、この一閃で塵一つ残さず蒸発させてやるぜ!」
セレスティアは思わず目を細めながらも、その神々しい姿にハキハキと歓喜の声を上げる。
「すごいです……! ジョンアイデル様が、まるで太陽そのもののようです! あの邪悪な影を完全に圧倒しています!」ルナーロは槍を掲げ、黄金の光に照らされながらハキハキと叫ぶ。
「これこそが、我が主の真骨頂! 闇に沈む卑怯者など、その光で根こそぎ焼き尽くしてやってください!」クレティアは指先で唇をなぞり、黄金に輝くジョンアイデルの横顔をうっとりと見つめてハキハキと囁く。
「ふふ、眩しいわ……。影を許さない絶対的な光。アイデル、貴方のその『神』に近い輝き、独り占めしたくなっちゃうわね」ノクスは腕を組み、ククルカンのメモリーがもたらした膨大なエネルギーを冷静に観測し、ハキハキと呟く。
「……ククルカンか。古代の神性を宿したメモリー……。ジョンアイデル、その光の出力なら、奴の『拒絶』の壁ごと貫通できるぞ」ジョンアイデルは黄金の光を右拳に収束させ、逃げ場を失ったデュイオへと向かって真っ向から踏み込んだ!デュイオは黄金の光に焼き焦がされそうになりながらも、狂気に満ちた手つきでマゼンタ色のカプセルをガントレットに装填した。
『ガン! ウワーハッハッハッハー、バンバンバンバーン!』軽薄で暴力的なシステム音声が響き渡ると同時に、彼の左腕が異様な音を立てて硬質な銃身へと変形する。デュイオはその銃口をジョンアイデルへ向け、ハキハキと狂い叫ぶ!
「光がなんだ! 物数で圧倒してやりますよ! 蜂の巣になりなさい、ジョンアイデルさん!」ババババババッ! と、凄まじい発射音と共に、魔力を帯びたマゼンタ色の光弾が無数に放たれた。それは単なる弾丸ではなく、着弾と同時に『殺戮』の因子を撒き散らす呪いの弾幕だ。ジョンアイデルはククルカンの黄金のオーラを全身に纏わせ、迫りくる弾丸の嵐をハキハキと一喝する。
「小細工の連発だな! そんな豆鉄砲、この太陽の加護を貫けると思うなよ!」ジョンアイデルは黄金の輝きをさらに強め、飛来する光弾をその身に受けるそばから蒸発させていく。一歩、また一歩と、弾幕を割りながらデュイオへと確実に歩み寄る。セレスティアは激しい銃声に耳を塞ぎながらも、ジョンアイデルを信じてハキハキと叫ぶ。
「ジョンアイデル様! そのままです! 悪しき弾丸など、貴方の光には届きません!」ルナーロは槍を回し、弾かれた光弾の破片を叩き落としながらハキハキと鼓舞する。
「ははは! まるで夕立の中を歩いているようですね! ジョンアイデル様、その銃口ごと握り潰してやってください!」クレティアは飛び散るマゼンタの火花を冷ややかに見つめ、黄金に輝くジョンアイデルの背中にハキハキと囁く。
「ふふ、無駄な足掻きね。アイデル、あの銃身を真っ赤に熱して、二度と引き金が引けないようにしてあげて?」ノクスは腕を組み、マゼンタの光弾が放つ魔力特性を冷静に分析し、ハキハキと告げる。
「……ガン・カプセルか。速射性は高いが、ククルカンの高密度な光子障壁を抜くには出力が足りん。ジョンアイデル、一気に間合いを詰めろ!」ジョンアイデルは黄金の拳を振り上げ、銃弾を弾き飛ばしながら、デュイオの眼前へと肉薄した!デュイオは黄金の光に焼かれながらも、狂気に満ちた手つきで黄色のカプセルをガントレットに叩き込んだ。
『ウルフ! ウワーハッハッハッハッハ! ウォーン、アオォーーーン!』 野性味溢れる遠吠えのようなシステム音声がコロッセオに響き渡ると同時に、デュイオの肉体が激しく脈動し、その四肢が強靭な狼の脚へと変貌していく。口元からは鋭い牙が突き出し、全身から黄金の光すら撥ね退けるほどの、凶暴な獣の魔力が噴き出した。
「ハハハ! 調子に乗るんじゃねぇぞ、ジョンアイデル! この『ウルフ』の敏捷性と破壊力……貴様の鈍い光で捉えられるかな!」デュイオはハキハキと獣じみた咆哮を上げ、四足歩行の姿勢から爆発的な加速を見せる。一瞬でジョンアイデルの視界から消え去り、死角から鋭い爪を振り下ろした。ジョンアイデルはククルカンの光を背後に集中させ、ハキハキと応じる。
「狼だと? だったら、その牙ごとへし折ってやるよ! 獣に堕ちたところで、俺の『個』は揺るがねえぜ!」 セレスティアは、その獣化の凄まじいスピードに目を白黒させながら、ハキハキと叫ぶ。
「速すぎます……! ジョンアイデル様、後ろです! 避けてください!」
ルナーロは槍を握り締め、自分と同じ獣の力を宿したデュイオを睨みつけてハキハキと言う。
「ふん、借り物の獣性で粋がるなよ! 真の獣の誇りを知らぬ者に、ジョンアイデル様の背中は取らせません!」クレティアは黄金の瞳を細め、影のように動くデュイオの軌跡を冷静に見極めながらハキハキと囁く。
「ふふ、追いかけっこね。アイデル、あのワンちゃん、少し躾が必要みたいよ? 逃げ場を失くして、じっくり焼き尽くしてあげて」ノクスは腕を組み、ウルフ・カプセルによる身体能力の向上を冷静に分析し、ハキハキと告げる。
「……直線的なスピードは驚異的だな。だが、ジョンアイデル、ククルカンの重力場を展開しろ。速いだけの獣など、地面に這いつくばらせればいい」ジョンアイデルは背後に迫るデュイオの殺気を感じ取り、黄金のオーラを衝撃波として一気に解放した!ジョンアイデルは背後に迫るデュイオの殺気を完全に読み切り、ククルカンの黄金のオーラを爆発的な高密度重力波として一気に解放した。
「逃がさねえと言ったはずだぜ、デュイオ! 太陽の重力に跪け!」ドォォォォン! という、空間そのものがひしめき合うような轟音が響く。ジョンアイデルを中心に半径十メートルの地面が円形に陥没し、その範囲内の重力が数十倍へと跳ね上がった。狼の俊敏さを得ていたはずのデュイオは、空中から叩きつけられるように地べたへと這いつくばらされる。
「な、なんだ!? これ……! くっ、体が……重すぎて、動けん……ッ!」デュイオはハキハキと驚愕と苦悶の声を上げ、四肢を震わせながら必死に顔を上げようとする。だが、ククルカンの神性な光を宿した重圧は、彼の大罪因子すらも押し潰さんばかりに荒れ狂っていた。セレスティアは、その圧倒的な制圧力に安堵し、ハキハキと叫ぶ。
「すごいです……! 速さも力も、ジョンアイデル様の重力の前では無意味なのですね!」ルナーロは槍を地面に突き立て、動けぬ獣を憐れむように見下ろしてハキハキと言う。
「ははは! まるで重石を乗せられた子犬のようですね! ジョンアイデル様、そのまま引導を渡してやってください!」クレティアは上気した顔で、絶大な力を行使するジョンアイデルを陶酔の眼差しで見つめ、ハキハキと囁く。
「ふふ、素敵……。地を這う姿がお似合いよ、デュイオ。アイデル、その動けない獲物をどう料理するのかしら?」
ノクスは腕を組み、重力場の出力を冷静に観測しながらハキハキと告げる。
「……ククルカンの真価、重力制御か。どんなに素早い獣であっても、物理法則そのものを書き換えられては抗いようがない。ジョンアイデル、今だ。その喉元を貫け」ジョンアイデルは動けないデュイオの眼前まで悠然と歩み寄り、黄金に輝く右拳を静かに振り上げた。ジョンアイデルは、黄金の重圧に押し潰され悶絶するデュイオを見下ろし、その瞳に一切の慈悲を排した峻烈な光を宿してハキハキと言い放つ。
「罪を認め贖罪する気が少しでもあったなら、俺はお前を救えたかもしれない。だがお前は、物界ではヒトの尊厳を弄び、この魔獄界に落ちてなお、他者の命を己の糧として弄び続けた!」
ジョンアイデルの右拳に、ククルカンの太陽の火炎と、彼自身の揺るぎない「個」の意志が凝縮され、眩いばかりの光球と化す。
「生きて償う資格など、お前にはもう残されていない! 死んで、その腐り果てた魂は冥府神と閻魔神の御前で、永遠に裁きを受け続けるがいい!」
「死ねッ! 太陽の裁定!!」
ドォォォォン!! という衝撃波と共に、ジョンアイデルの拳はデュイオの胸部を正面から、一切の抵抗を許さず一撃で貫いた。黄金の光がデュイオの体内を駆け巡り、不浄な大罪因子と影のモヤを内側から焼き尽くしていく。
「あ……がはっ……! スペルヴィア……様……ッ!?」デュイオは血を吐き出しながら絶叫しようとしたが、その声は光に飲み込まれた。心臓を貫かれた衝撃と太陽の業火により、彼の肉体は炭化する間もなく、極小の塵となって大気中に霧散していく。セレスティアは思わず目を閉じ、祈るように杖を握りしめてハキハキと叫ぶ。
「……終わったのですね。ジョンアイデル様の正義が、あの邪悪な執念を打ち砕きました!」ルナーロは槍を天に掲げ、主君の圧倒的な勝利を称えてハキハキと雄叫びを上げる。
「ははは! 見事です、ジョンアイデル様! 二度目の死、これでもう二度と這い上がってこれぬよう、魂の根元まで焼き払われましたね!」クレティアは熱い吐息を漏らし、黄金の光の中に立つジョンアイデルの背中を、恍惚とした表情で見つめてハキハキと囁く。
「ふふ、素敵……。罪を断じるその苛烈なまでの光。アイデル、貴方こそがこの世界の真の法ね」ノクスは腕を組み、消え去ったデュイオの残滓を一瞥してハキハキと告げる。
「……終わったな。だが、スペルヴィアの大罪因子をこれほど鮮やかに消し去るとは。ジョンアイデル、貴様の『神』への階梯、また一つ確実に登ったぞ」静まり返った闘技場の中心で、ジョンアイデルは静かに拳を引き、黄金のオーラを霧散させた。ジョンアイデルは消えゆくデュイオの残滓を見つめ、自身の掌を握りしめながら、静かだが力強い声でハキハキと言い放つ。
「罪を背負うこと自体が悪だとは思わない。……だが、大事なのは罪を背負ったその後に、どう生きるかだ! 俺の体にも、今や全ての大罪因子が宿り、魔皇としての力が目覚めている。だが、俺はこの『罪』から逃げはしない。全てを背負って進む!」
彼は顔を上げ、闘技場を包む熱気と静寂に向かって、己の覚悟を刻み込むようにハキハキと続ける。
「だがな……同じ過ちだけは、二度と繰り返させない! 力を溺れさせ、命を弄ぶような『傲慢』や『暴虐』などの罪の悪意……そんなものは、この俺が、この力で叩き潰してやる!」その言葉が響き渡ると同時に、ジョンアイデルの全身から、先ほどのククルカンの光とはまた違う、深く重厚な紫黒の魔皇のオーラが立ち昇った。それは全ての罪を飲み込み、統べる覇者の波動だった。セレスティアは、その圧倒的な覚悟に打たれ、潤んだ瞳でハキハキと叫ぶ。
「ジョンアイデル様……。罪を背負い、それでも正しくあろうとするそのお姿、本当に尊いです! 私も、どこまでも貴方に付いていきます!」ルナーロは槍の石突きを地面に力強く叩きつけ、主君の宣言に呼応してハキハキと吠える。
「ははは! 罪すらも自らの血肉とし、王道を往く! これぞ我が主、ジョンアイデル様だ! その背中、一生守り抜いて見せましょう!」クレティアは妖艶な微笑みを浮かべつつも、その瞳には真摯な敬愛の色を宿してハキハキと囁く。
「ふふ、罪深い男ね……。でも、その全ての業を抱えて神になろうとする貴方が、たまらなく愛おしいわ。アイデル、貴方の創る新世界、ワタシに特等席を用意しておいてね?」ノクスは腕を組み、魔皇の力が完全に馴染んだジョンアイデルを見据え、満足げにハキハキと告げる。
「……言ったはずだ、貴様は『頂点の神』になると。罪を力に変え、理を統べる……。ジョンアイデル、その覚悟があるならば、第七圏の主すらも貴様の足元に跪くことになるだろう」
コロッセオの闘技場に、割れんばかりの大歓声が巻き起こる。観客たちは、圧倒的な力で「暴虐」を粉砕し、すべての罪を背負うと宣言したジョンアイデルの姿に、真の「王」の再来を見たのだ。無骨な審判が、恭しく一つの箱を捧げ持ってきた。それは、この苛烈なバトルロワイヤルを制した者のみが手にできる至高の賞品だった。
「ふん、これが優勝賞品か……」ジョンアイデルが箱を開くと、そこには鈍い銀光を放つ、独特な形状の武具が収められていた。重厚な円形の盾の中央から、結晶化された魔力を宿す精緻な杖真っ直ぐに伸び、一体化している。
「ほう、盾と杖が一体化しているのか。守りと魔法の起点、両方を兼ね備えた業物だな」ジョンアイデルはハキハキと感心した声を上げ、その武器を手に取った。ずっしりとした重みがありながら、彼の魔皇の魔力に共鳴するように、微かに拍動している。セレスティアは、その武器の放つ清浄な、それでいて力強い魔力に目を輝かせ、ハキハキと叫ぶ。
「すごいです! 盾で身を守りながら、同時に強力な魔法を放つことができる……。ジョンアイデル様の万能な力に、これ以上なく相応しい武器ですね!」ルナーロは、その頑強そうな盾の造りを指先で確かめ、満足そうにハキハキと言う。
「いいですね、実戦的です! 攻防一体、まさに戦場を支配するための道具。ジョンアイデル様が持てば、鉄壁の要塞も同然ですよ!」クレティアは盾に刻まれた緻密な装飾をなぞり、妖艶な笑みを浮かべてハキハキと囁く。
「ふふ、攻めるだけじゃなくて、守ることも忘れない……。アイデル、貴方の優しさが形になったような武器ね。これで私を守ってくれるのかしら?」ノクスは腕を組み、武器に宿る魔力の回路を冷静に鑑定し、ハキハキと告げる。
「……それは『アイギスの戒律』と呼ばれた伝説の武具の雛形か。ジョンアイデル、その盾で敵の攻撃を吸収し、杖の先端から倍以上の威力で魔法を撃ち出すことが可能だ。貴様の位相力とも相性がいい」ジョンアイデルは盾杖を軽く振り、空気を切り裂く感触を確かめると、不敵に笑ってハキハキと言い放つ。
「よし、気に入った! この盾で仲間を守り、この杖で道を切り拓く。次は第八圏か……。行くぜ、野郎ども!」新調した武器を背負い、ジョンアイデルはさらなる深淵へと続く道を見据えた。ジョンアイデル一行は、第七圏の熱狂が渦巻くコロッセオを後にし、岩壁にぽっかりと口を開けた巨大な洞窟へと足を踏み入れた。湿った冷気と、どこからか漂う焦げ臭い匂いが混ざり合う中、彼らは一段ずつ、重厚な石階段を降りていく。
「いよいよ、第八圏か……。これまでの階層とは、放つプレッシャーの質が違うぜ」ジョンアイデルは新調した盾杖を握り直し、ハキハキと警戒を促す。階段を降り切った瞬間、彼らの目の前に広がったのは、およそ一言では言い表せない「地獄の縮図」だった。左手には、ドロドロと煮えくり返る溶岩を噴き上げる巨大な火山がそびえ立ち、右手には、罪人の叫びを飲み込むかのような禍々しい血の池が広がっている。さらに進めば、一歩踏み外せば全身を貫く針の山が連なり、その先には全てを凍りつかせる極寒の氷原。そして中央には、巨大な鎖で吊るされた、グツグツと音を立てる巨大な茹で釜がいくつも並んでいた。
「……なるほど。ここは、あらゆる苦難と刑罰が凝縮された、文字通りの『魔獄』の本質か」
ジョンアイデルはハキハキと周囲を見渡し、魔皇としての覇気を纏わせてその過酷な環境を撥ね退ける。セレスティアは、あまりにも凄惨で多様な光景に顔を強張らせ、震える声でハキハキと叫ぶ。
「なんという場所でしょう……! 火山に氷原、血の池まで……。ここを通り抜けるだけでも、並大抵の精神では耐えられません!」
ルナーロは槍を構え、極寒の風と火山の熱気がぶつかり合う異常な大気に身を震わせながら、ハキハキと吠える。
「ははっ、これは厳しい! ですが、これこそが真の試練。ジョンアイデル様、この地獄を丸ごと踏破してやりましょう!」クレティアは、茹で釜から立ち昇る不気味な湯気を扇ぎながら、妖艶な瞳に冷徹な光を宿してハキハキと囁く。
「ふふ、悪趣味なデコレーションね。でも、アイデルが歩けば、ここもただの通り道に変わるわ。貴方の光で、この地獄を塗り替えてあげて?」ノクスは腕を組み、階層全体を流れる歪んだ魔力の奔流を冷静に分析し、ハキハキと告げる。
「……第八圏、通称『万魔の処刑場』。ここは環境そのものが侵入者の『個』を削り取ろうとする。ジョンアイデル、その盾杖に魔皇の力を込め、この理不尽な理をねじ伏せろ」ジョンアイデルは不敵な笑みを浮かべ、目の前の針の山へと堂々と最初の一歩を踏み出した。




