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エピック54【緑の神殿】

ジョンアイデルとクレティアは試練専用の小型船に乗り、恩羅院大陸の東に浮かぶ離島へと向かっていた。船は青い海原を静かに進み、やがて水平線の彼方から緑色の山々が見え始めた。

「あれが試練の島ね」クレティアは甲板に立ち、紺色の髪を風になびかせながら指差した。眼に入るのは一面の深い緑——島全体が厚い森林に覆われ、木々の茂る中からは何か神聖な雰囲気が漂ってくるようだった。ジョンアイデルは右腕を見つめながら甲板に佇み、「緑の神殿…森の中に隠されてるのか」とハキハキと呟いた。アンドロメスの移植後、腕には違和感はないが、その内部に眠る力が試練でどう発揮されるか、彼自身も知らなかった。

「アイデルの新しい腕、大丈夫?」クレティアは彼の隣に立ち、心配そうに問いかけた。

「うん、問題ない」と答えると、彼女は柔らかく微笑み、「それなら一緒に試練を越えようね。約束だから」船が島の岸辺に着くと、二人は上陸して森林の中へと踏み込んだ。木々の葉が陽を遮り、地面には緑の苔が生えていて足音がかすかに消える。奥深くには神殿の屋根の一部が木々の隙間から見え、試練の扉がそこで待っているのを感じさせた。森林の小道を進みながら、ジョンアイデルは周囲の緑豊かな風景を見つめ、ハキハキと言った。

「ここのガーディアンはアダムか、アダムは最初に作られた人間であり現人神だな」クレティアは隣を並んで歩き、木の枝に触れながらハキハキと応えた。

「さまざまな説があるね、最初の妻はリリスでその後、神の手によって同時期に作られたイブを娶ったとか、最初からイブを娶ったとか」

「リリス…それは『闇の母』と呼ばれる存在だろう」ジョンアイデルは眉を少し上げ、「アダムが現人神としてこの神殿を守っているなら、試練はそんなに簡単じゃなさそうだ」その時、森林の奥から神聖な鐘の音が鳴り響き、地面が少し震えた。前方には石畳の道が現れ、その先に緑の苔で覆われた神殿の扉が見え始めた。

「鐘の音…アダムが俺たちの到着に気づいたのか」クレティアは手を胸元に当て、緊張ぎみに声を落とした——緑の神殿の試練と、そこに待つ現人神アダム。二人の前に広がるのは、新たな未知の挑戦だった。鐘の音が鳴り続ける中、ジョンアイデルは腰に佩いていた二つの概念武装を取り出した——ラーミナルバルクムとクラウディウス。彼が両手でそれらを近づけると、突然強い光が発せられ、二つの武装が徐々に融け合い始めた。やがて光が収まると、そこには十字の杖の先に剣が一体化した姿の新たな武装が誕生していた——杖の部分は深い黒、剣身は銀色に輝き、十字の交わる部分からは虹色の光が漂っていた

「融合したか」ジョンアイデルはそれを手に取り、重さを確かめながらハキハキと言った。杖と剣が一つになったことで、扱いやすさも増し、体の中のアンドロメスの力とも繋がるような感覚がした。

クレティアはその奇麗な姿に目を輝かせ、「すごい…二つの概念武装が一つになるなんて、聞いたことがないわ」と驚いたように言った。ジョンアイデルは新しい武装を空中に掲げると、風が剣身を掠めて鳴りを上げた。

「アダムに会うための準備はこれでいいだろう」と言いながら、彼は神殿の扉の方へと一歩進んだ——融合した武装と新しい腕が、この試練で何を紡ぎ出すのか。その答えはすぐに明かされることになった。ジョンアイデルは手にした新たな武装を見つめ、杖と剣が交わる部分に浮かぶ緑の光を眺めながら、ハキハキと言った。

「この武器名は概念杖剣:フェルラ・グラディオだな」

「フェルラ・グラディオ…何て響きのいい名前かしら」クレティアはそばで頷き、剣身の銀色の輝きを見つめて微笑んだ。

「杖の力と剣の力が一緒になるからね、この名前がピッタリだわ」ジョンアイデルはフェルラ・グラディオを地面に軽く突き立てると、周囲の森の木々が微かに震え、緑のエネルギーが土の中から立ち上がって武器に吸い込まれた。

「この杖剣、森の力を受け取ってるようだ」と低く呟き、再び手に取ると、以前より一層力強い重みを感じた。神殿の扉がその時、鐘の音と共に緩やかに開き始めた。暗がりの中から神聖な光が溢れ出し、誰かの足音が聞こえてくる——現人神アダムがそこに待っているのは明らかだった。ジョンアイデルはフェルラ・グラディオを構え、「いざ、行くぞ」とハキハキと言うと、クレティアも隣に佇んで決意深い表情を見せた。ジョンアイデルとクレティアが神殿の扉に手をかざすと、そこから緑の光が二人の手に当たり、扉はスムーズに左右に開いた。二人はエントランスに踏み込むと、目の前に広がる光景に少し驚いた。天井や壁には濃い緑の蔦が絡みつき、自然光が木漏れ日のように射し込んでいるのだが、蔦の間からは銀色の金属フレームや発光するパネルが覗いていて——どことなく古の神聖さと近未来的な機械美が不思議な調和を見せていた。

「なんて不思議な場所だわ…森のようで、でも機械のようで」クレティアは壁に沿って生える蔦に指を触れ、ハキハキと言った。

ジョンアイデルはフェルラ・グラディオを構えながら周囲を見つめ、「アダムが現人神だから、過去と未来が混ざってるのかもしれない」と呟いた。床には透明なガラスのような素材が敷かれていて、下からは緑の光が浮かび上がり、二人の足元を照らしていた。奥へと続く通路からは神聖な雰囲気が一層強く漂ってきて、アダムの気配が近づいているのを明確に感じた。ジョンアイデルは右腕——アンドロメスに力を込め、「ここからが本番だ」とハキハキと言うと、クレティアも頷き、二人は一緒に通路の奥へと進んでいった。ジョンアイデルは先頭に立って通路を進み、額から緑の光を放つ「魔皇の目」を発動させて壁や床、天井を丹念に見つめた。光が蔦の間や金属フレームの隙間まで届き、内部の構造を透かして見るようになる。 少し間を置いて、彼はハキハキと言った。

「罠とかはこの部屋にはなさそう」

クレティアは後ろからその光を見つめながら安心そうに吐き出し、「それはよかったわ。でもアダムが直接試練を与えてくるのかもしれないから、油断はできないね」ジョンアイデルは魔皇の目を解き、フェルラ・グラディオを手に構えたまま一歩進んだ。透明な床の下からは緑のエネルギーが脈打つように光り、近未来的なパネルからは静かな電子音が鳴り響いていた。

「確かに罠はないけど、この場所自体が試練の一部かもしれない」通路の奥には大きな広間へと続く扉が見え、そこからは一層強い神聖な光が溢れ出していた——現人神アダムがその先で待っていることは間違いなかった。通路を進みながら、クレティアは壁に絡む蔦を指差し、ハキハキと言った。「神になるためには福音書なる書物も入手しないといけないらしいね、赤、青、黄色、緑、黒、白のね」ジョンアイデルは先を見つめながら頷き、ハキハキと応えた。

「6や7、8、11、12という数字には何らかの意味があるからね、しかも、色合いにもね」

「数字と色…神格の試練の鍵が隠されてるのかしら」クレティアは手を頬に当てて考え込み、「緑の神殿なら、緑の福音書がここにあるのかも?」ジョンアイデルは魔皇の目を再び発動させて周囲をスキャンし、「色ごとに場所が決まってるのは確かそうだ。数字は福音書の数か、あるいは試練の段階か…」と低く呟いた。その時、大広間への扉が完全に開き、神聖な光の中に現人神アダムの姿がゆっくりと浮かび上がってきた。

「福音書のことは後で考えよう」ジョンアイデルはフェルラ・グラディオを構え直し、「今はこの試練を越えることが先だ」階段の頂上に立つアダムの姿が、緑の光に包まれながら徐々に変化していく——やがてそこには優しい表情の女性が立っており、ハキハキと声を掛けた。

挿絵(By みてみん)

「やあ、わたしはイブ」

「イブ…アダムがイブに?」クレティアは驚いて口を開けたまま、女性の姿を見つめる。ジョンアイデルはフェルラ・グラディオを構えたまま、目を細めて観察しながらハキハキと言った。

「アダムとイブが一体だったという説もあったな」

イブは緑の衣装を整えながら微笑み、「そうよ。最初の人間はアダムでもイブでもなく、ひとつの存在だったの。神が二つに分けたと言われてるけど…実は自分で選んで分かれたのよ」部屋の天窓から射し込む光が彼女の周りに輪郭を描き、地面には緑のエネルギーが花のように広がり始めた。「この緑の神殿の試練は、選択を問うものなの。それを理解して、本体との試練に挑めるかしら?」ジョンアイデルはフェルラ・グラディオを構えたまま、ハキハキと言った。「選択ねぇー、何を問おうってか?」


イブは緑の瞳を輝かせ、ハキハキと問いかけた。「ジョンアイデル、君は性別は何!?」


その問いに対し、ジョンアイデルは少しもためらうことなく、力強くハキハキと答えた。

「俺は男であり女だ、中性、両性具有だ」イブは満足そうに頷き、手を広げて笑った。

「それが正解なの!最初の人間はそうだったのよ。分かれたのは神の意思ではなく、人間が『違い』を求めて選んだこと。だけど本当の力は『全てを受け入れる一つ』にこそ宿るの」

部屋の中央から緑の光が大きく湧き上がり、書物が現れる

「試練はここから本番、これはワタシとの試練をクリアしたから、渡されるもの、緑の福音書、トマスが記したもの」、奥の扉が開き、二人は次の部屋へと進んだ。すると部屋の中央には、緑の光を放つ宝箱が浮かぶように置かれていた。


「宝箱か…試練の報酬かな」ジョンアイデルは近づいて宝箱を開けると、中にはサレオスのシジルが精緻に描かれた銀色の指輪が輝いていた。彼が指輪を取り上げるやいなや、右腕のアンドロメス近くに装着してる腕輪のくぼみにはまる。その瞬間、ジョンアイデルのインベントリーから金色の本が浮かび上がり、自らページを開いた。

挿絵(By みてみん)

「わが名はサレオス、私は君たちの行く末を見守る」本のページから聞こえる清らかな声と共に、腕輪から緑と金の光がジョンアイデルの体に流れ込み、何処か遠くにいるサレオスとの繋がりを感じるようになった。

「パスが…つながった」ジョンアイデルは腕輪を見つめ、ハキハキと呟いた。クレティアは驚きながら本のページを見上げ、「見守ってくれるなんて…これからの旅が少し安心だわ」

本のページには次の試練のヒントらしき文字が浮かび始め、サレオスの声が再び響いた

「緑の福音書は君の中に宿った。次なる試練でその力を引き出せ」二人は金色の本をインベントリーに収め、部屋奥に現れた螺旋階段を登り始めた。階段は先程よりも幅が広く、壁一面にはアダムの生涯が描かれた壁画が緑の光で浮かび上がっていた。やがて頂上に達すると、そこは天窓から満天の星が見える開放的な部屋で、緑色の衣装をまとったアダム本体がその中央に立って待ち構えていた。

「君たちはサレオスの加護を受けたようだな」アダムはハキハキと言い、手に緑の光を宿らせた。

「だが試練はまだ終わっていない。君が本当に『全てを受け入れる力』を持っているか、最後の試しをしよう」ジョンアイデルは腕輪から流れるエネルギーを感じながら、フェルラ・グラディオを構え、「待ってたぜ。今こそ力を試す時だ」とハキハキと応えた。クレティアは彼の後ろに立ち、全身で力を込めて見守る準備をした——緑の神殿最後の試練が、いよいよ幕を開けた。アダムは手元に浮かぶ緑の光を掴み上げると、機械の骨格に緑の植物が絡みついた杖が現れ、それを構えてハキハキと叫んだ。

「さあ、見せてみろ!」杖の先からは緑のエネルギーが脈打ち、地面には瞬く間に巨大な植物の蔓が生え延びてきた。ジョンアイデルはフェルラ・グラディオを振りかざし、腕輪から金の光が流れ込み、杖剣に緑と金の光が纏わりついた。

「覚悟しろ!」ジョンアイデルはハキハキと応え、地面を蹴って一気に前に駆け出した。フェルラ・グラディオの剣身で蔓を切り裂き、アダムの杖とぶつけると激しい光が散りばめられた。アダムの杖からは機械の刃が突き出し、植物の毒も撒き散らすが、サレオスの指輪の力がそれらを防いでくれる。「これが俺の全ての力だ!」ジョンアイデルは右腕のアンドロメスと杖剣、腕輪の力を一体化させ、緑と金の大きな光弾を放った——アダムも杖に全身の力を込めて迎え撃ち、二つの光が激突した瞬間、部屋全体が輝きに包まれた。激突する光の中で、クレティアが前に踏み出してハキハキと叫んだ。

「イフリート!」その声と共に、炎の精霊イフリートが赤い炎を纏って現れ、大きな手に宿した灼熱の拳をアダムに向けて打ち下ろした。焼き尽くすような炎が神殿の空間を赤く染め、周囲の植物もパチパチと焦げ始めた。だがアダムは慌てる様子もなく、杖を振りかざすと瞬く間に水分をたっぷり含んだ厚い植物の葉が何層にも重なり、盾のように身を守った。炎が葉に当たると大量の水蒸気が立ち上がり、イフリートの攻撃はすぐに収まってしまった。

「水を含んだ葉で防いだか…」クレティアは唇を噛み、イフリートに次の攻撃を仕掛けさせようとするが、アダムがハキハキと言った。

「炎は効かない。この神殿の植物は全て私と繋がっているのだ!」

その言葉と共に、地面から新たな蔓が這い出し、イフリートの足元を締め上げようとする。ジョンアイデルはフェルラ・グラディオで蔓を切り裂き、「クレティア!炎だけじゃなく他の力も使えるか!?」とハキハキと叫んだ——今度こそ、二人の力を合わせてアダムの防壁を崩さなければならない。アダムは杖を強く地面に叩きつけ、「喝!」と声を上げると、太い植物の根が地面から次々と突き出し、クレティアとジョンアイデルを貫こうとした。

「危ない!」ジョンアイデルはクレティアの肩を掴んで後ろに跳び、根が地面を突き破る音が耳元で響く。クレティアも体をかわしながら着地し、ハキハキと叫んだ。

「雷よ、我らに仇なす者に裁きを!ヴォルト!」青い雷光が空から落ち込み、雷の精霊ヴォルトが稲妻を纏って現れた。ヴォルトは両手から太い雷撃を放ち、アダムとその周囲の植物に直撃させた。電流が植物の繊維を伝い、地面に張り巡らされた根の網までがヒシヒシと光り出す。

「うっ!」アダムは水分を含んだ葉の盾で防ごうとしたが、雷は水を伝いやすいため、ややこつれた様子で杖を振り上げた。

「雷か…これは困った」ジョンアイデルはその隙を突いて駆け込み、フェルラ・グラディオに緑と金の光を纏わせてアダムの杖へと打ち込んだ。

「今だ!クレティア!」

「いでよ!風の長!シルフのエアイレ」クレティアは両手を広げてハキハキと叫ぶと、風の渦が部屋に舞い込み、銀髪が束ねられたシルフの長・エアイレが現れた。それと同時に、三姉妹の他の二人も現れ、風の力を一つにまとめていく。


ジョンアイデルもフェルラ・グラディオを振りかざし、ハキハキと呼びかけた。

「ウォム!チリー!」ウォム、チリーが応召し、三姉妹はジョンアイデルに風の力を授ける。その後、エアイレ率いるシルフ三姉妹の風の力が彼に集まり、身体全体に透明な風の防壁がまとわりついた。

「風の防壁か…攻撃も防御も強くなったぜ!」ジョンアイデルは体を回して風の流れを確かめ、アダムに向かって一歩踏み出した。

エアイレが風の太刀を形成し、ヴォルトが雷を纏わせ、ウォムが地面を揺るがし、チリーが炎を撒き散らす——全ての精霊の力が二人に結集し、アダムの周囲は風が吹き荒れる

「これが俺たちの全力だ!」ジョンアイデルとクレティアが声を合わせて叫び、総力攻撃を仕掛けた。元素の力が一体となってアダムに襲いかかると、彼は杖を前に突き出して防ごうとしたが、風の太刀が植物の盾を切り裂き、雷と炎が機械部分を蝕み、土の力が根の網を崩し——ついにアダムは苦悶の声を上げた。


「ドワーー!認めよう!主らの力を!」


アダムの体から緑の光が溢れ出し、機械と植物が融合した杖が地面に落ちる。その瞬間、部屋全体が輝き、天窓からの星の光が彼の体に降り注ぎ始めた。

「君たちは『分かれたものの調和』を理解した…」アダムは立ち直り、表情が穏やかになりながらハキハキと言った。

「緑の福音書は既に君の中に宿っている。サレオスの加護と共に、次なる試練へと進め!」話し終えると、アダムの姿は光に包まれて神殿の壁に融合し、代わりに部屋の奥に新たな扉が現れた。扉の先からは次なる大陸の景色が微かに見え、風が希望のように吹き込んできた。部屋の奥に現れた台座の上には、緑色に輝くコインが静かに置かれていた。ジョンアイデルとクレティアがそれぞれコインを手に取ると、コインから温かな光が二人の体に流れ込んだ。


「天技を4つも習得した、1つ目がアンゲルエッジ、2つ目はジャジメント、3つ目はセフィロト、4つ目がリヴァイヴ」ジョンアイデルは手のひらに浮かぶ光を見つめ、ハキハキと言った。

その時、緑の光が部屋に満ち、長い翼を持つ天使が現れた。緑の衣服に身を包んだ彼女は優しく微笑みながら話しかけた。

挿絵(By みてみん)

「私はラファエル、そなたらは緑の試練をクリアした」

天使の周りから溢れる緑色の光に包まれると、ジョンアイデルは耳の奥がピリッとし、遠くの小さな音まではっきり聞こえるようになった——鳥のさえずり、風が木々を抜ける音、さらには遥か彼方の試練場から伝わる鼓動までもが聴こえてくる。

「聴覚が…鋭くなった」ジョンアイデルは驚きながら周囲の音に耳を澄ませ、クレティアも自分の体に流れる力を確かめていた。ラファエルはその様子を見て頷き、「これは緑の試練の証。次なる場所では、この力が君たちを導いてくれるだろう」と声を残し、光と共に姿を消した。クレティアはジョンアイデルの様子を見つめ、ハキハキと尋ねた。「アイデル、今度はどんな変化が?」


ジョンアイデルは耳元に手を当てて少し顔をしかめながら、ハキハキと答えた。「聴覚が鋭くなった、聞こえなくてもいい音声まで拾ってしまうのが難点だな」

「それはちょっと大変だわ…でも戦闘では敵の気配を遠くから察知できるから、役に立つはずよ」クレティアは頷きながら、台座の周りを見回した。

するとジョンアイデルは突然耳を澄まし、「遠くで何かの扉が開く音がする…次の試練場所の方かもしれない」と言い、先程現れた扉の方を指差した。「早く慣らさないと、この敏感な聴覚が邪魔になるぜ」場面は一転、クリミナルデビルの研究所へと移る。冷たい金属の壁に囲まれた部屋で、巨大な水槽の前に立つ女性リヴァイアサンが、艶やかな声でハキハキと言った。


「深淵計画を進めるにはやはり、ジョンアイデルの性別をキチンと定着させる必要がある、今のジョンアイデルは男でありながら女、だが、キチンと定まってない、セクスレギオンの鍵を渡すか」


話しながら彼女は赤い爪先で手元のタブレットを操作し、スクリーンに映し出されたジョンアイデルのデータを狐のように細めた瞳で見つめる。研究所の床には巨大な魔法陣が描かれており、水槽の中には暗い液体が蠢いているのが見える。

「定着させることで、彼の持つ『全て』の力を制御できる可能性がある。だが鍵を渡せば、計画の主導権が…」と囁くように呟き、タブレットから浮かび上がる銀色の鍵型の物体を指でつまんで空中に掲げた——セクスレギオンの鍵が今、選択の分かれ道に立っていた。ジョンアイデルとクレティアは神殿の扉を抜けると、緑の芝生が広がる開けた空間に出た。「裏庭かな」クレティアは周囲を見回しながらハキハキと言った。


すると彼女の視線が遠くの一角に釘付けになり、「あそこにドラゴンのオブジェクトがある、しかも、ミクスタッドの紋章があるな、クレティアと共鳴してる」ジョンアイデルもその方向を見ると、銀色のドラゴン像が闘うポーズで造られており、その胸元に刻まれた紋章から青い光が流れ、クレティアの体にゆっくりと繋がっているのが分かった。

「共鳴か…君と何か関わりがあるのかもしれない」ジョンアイデルは聴覚を研ぎ澄ませ、ドラゴン像から微かな鼓動のような音がするのを感知した。クレティアは手を胸に当てて感じ取りながら、「この紋章、私の血筋に刻まれてるものと同じ模様よ…近づいてみよう」と言い、ドラゴンオブジェクトの方へと歩み始めた。クレティアがドラゴンオブジェクトへと近づいていくと、ジョンアイデルの足元から突然銀色の光が湧き上がり——気が付くと、機械の塊が無数に浮かぶ海のような不思議な空間へと飛ばされていた。そこには女性リヴァイアサンが立っていた。

「招き入れたのは私だ、お前にはキチンと試練を受けなればならん、性のな、セクスレギオンでのね」リヴァイアサンはハキハキと言い、周囲の機械がゆっくりと回転し始めた。

ジョンアイデルはフェルラ・グラディオを構えながら、ハキハキと応えた。「そうか、でも、行くにはアイテムが必要なんだろう」

「分かってるな」リヴァイアサンは手を広げると、♂と♀と☿のマークが描かれた虹色の宝玉を取り出し、ジョンアイデルに渡した。宝玉からは温かな光が流れ、彼の腕輪と共鳴しているのが分かる。

「これがセクスレギオンへの入り口鍵だ。試練は『性の在り方』を問うものだ——お前が本当に自分の全てを受け入れられるか、見せてもらう」ジョンアイデルは虹色の宝玉を手に取り、ハキハキと言った。「一人で行けってことか」


リヴァイアサンは頷きながら、ハキハキと応えた。「そうだな」


話し終えるやいなや、機械の海の空間から銀色の光が巻き起こり、ジョンアイデルは瞬く間に神殿の裏庭へと戻された。


クレティアはドラゴンオブジェクトの前で彼の姿を見つけると、慌てて走ってきた。

「アイデル!急に消えちゃってどこ行ったの!?」ジョンアイデルは手のひらに浮かぶ虹色の宝玉を見せながら、「少し話があったんだ。一人で次の試練に行かなきゃいけないみたいだ」クレティアはジョンアイデルの腕を掴み、少し顔をしかめながらハキハキと言った。

「絶対無茶だけはしないでね!」

「分かってるさ」ジョンアイデルは微笑みながら彼女の手を握り返し、「今まで培った力とサレオスの加護があるんだ。絶対に戻ってくる」

クレティアは頷きながら、ドラゴンオブジェクトの方を見た。「私はここでこのオブジェクトの秘密を調べるから…もし何かあったら、必ず呼んでくれるよね?」虹色の宝玉がそっと輝き、ジョンアイデルの聴覚にはクレティアの速い鼓動まで伝わってきた。

「大丈夫だ、俺の聴覚が君の声を遠くからでも拾ってくれるから」

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