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エピック53【告白と新たな体】

格闘大会が終わり、1週間があっという間に過ぎた。ジョンアイデルの体に生えた触手は一時的に隠せるようになったものの、毎日違和感を抱きながら過ごしていた。そんな中、屋敷の南向きの部屋でクレティアは窓辺に佇み、外を見つめながらぼんやりと思いに耽っていた。

「アイデルのことを考えてるとドキドキする…これって恋だわ」彼女は手を胸元に当て、鼓動が早くなっているのを確かめるようにした。大会で負けた後も、彼は自分の側にいてくれて、傷の手入れをしてくれたり、無口だけど温かい言葉をかけてくれたり——そんな細かいことが一つ一つ心に刻まれ、ここ1年以上同居している間に、単なる戦いの相手以上の存在になっていたことに今さら気づいたのだ。

「ジョンアイデルに伝えたい…でも、どうしたらいいのかな」彼女は金色の瞳を細め、窓の外を通り過ぎる鳥を見つめながら唇を噛んだ。尻尾が不安そうに左右に動き、金銀の鱗が太陽の光を反射させて微かに輝いていた。今は彼が触手のことで悩んでいるのを知っているから、こんな時に告白して良いのか——そんな迷いも混じりながらも、胸の奥には「今しかない」という強い想いが膨らんでいたその時、ドアの向こうから足音が近づき、ジョンアイデルの声が聞こえてきた。

「クレティア、ちょっといいか?」

彼女は慌てて姿勢を正し、「は、はい!今から!」と答えると、胸の鼓動がさらに速くなって——告白のタイミングが、今、目の前にやってきたのだ。ドアが開いてジョンアイデルが入ってくると、クレティアは胸の鼓動を抑えきれず、顔が少し赤くなっていた。彼はテーブルに腰を下ろし、まっすぐ彼女を見つめてハキハキと言った。

「なあ、お前、最近、俺に対してなんか意識してるのか?」その一発めの言葉に、クレティアは慌てて目をそらし、尻尾を後ろに丸めながらハキハキと——でも少し震える声で答えた。

「べ、べ、別に!」

「ホントか?」ジョンアイデルは眉を上げて笑い、「昨日は俺のコーヒーを間違えて甘すぎるの作っちまって、今日は窓辺で俺のことばっかり見てたような気がするんだけど」

「そ、それは…偶然だわ!甘すぎたのは手が滑っただけ!」彼女は慌てて窓の方を指さし、赤い瞳が大きく開いている。胸のドキドキが耳に響きそうで、「別に」と言いつつも、その姿は誰から見ても「絶対に意識してる」としか思えない様子だった。ジョンアイデルは立ち上がって彼女の近くに行き、「へえ、偶然か…」と言いながら、彼女の赤い頬を指で軽く触れた。するとクレティアは体をガクッと震わせ、「ッ!な、なにするの!」と声を上げた——このままでは、隠しきれない気がしてしまうのだ。ジョンアイデルは彼女の震える体を見つめ、ハキハキと言った。

「なあ、お前、気持ちには正直になれよ、お前、可愛いんだしさ」その言葉を聞いた瞬間、クレティアの顔は真っ赤に燃え上がり、耳まで赤くなってしまった。

「い、いきなり、何言ってんのよ、バカ!」と彼女は手を顔に当てて照れ隠し、尻尾がピタピタと地面を叩いていた。

「へえ、バカって?」ジョンアイデルは笑いながら彼女の手をそっと取り上げ、「俺はマジで思ってるんだ。大会でぶつかってる時も、傷を治してる時も、お前は可愛いと思う」「ッ…な、なんだその…」彼女は目を伏せながら声が小さくなり、「そんなこと言っちゃって…ワタシがどうすればいいのか…」と呟くと、胸の鼓動がさらに速くなって、もう隠せないと思った瞬間——口から自然に言葉が溢れ出した。クレティアはジョンアイデルの手を握られたまま、胸の鼓動が頭の上まで轟いてきそうだと感じた。「あーもう、調子狂わね!」と彼女はハキハキと叫び、突然力任せに手を引き離して早足で部屋を出ていった。ドアはカタンと音を立てて閉まり、残ったのはジョンアイデル一人と静けきだけだった。

「なんだ?変なやつ」彼は面食らってドアの方を見つめ、肩をすくめた。先ほどまで赤くなって慌てていた彼女の姿が浮かび上がり、「まあ…疲れてるのかな?」と呟きながら、自分の手のひらに残った彼女の温もりを確かめるようにした。一方、廊下をどんどん走っていくクレティアは、尻尾を真っ直ぐに立てながら顔を両手で覆った。

「バカバカバカ!なんでそんなこと言うんだろう!」と小さく叫び、階段の角に隠れて自分の鼓動を整えようとした。でも胸の奥には、「今度は絶対に伝える」という想いが、さらに強く膨らんでいた。廊下を走り去るクレティアの様子を、舞華とゼレスが階段の上からちゃんと見ていた。舞華は手を口元に当てて微笑み、ハキハキと言った。

「クレティア嬢ちゃんじゃない、なんかいつもとは違う顔だけど」クレティアは慌てて顔を上げると、二人の姿に驚いて尻尾をピクリと動かした。「な、なによ…!?舞華、からかうつもり?」その声はまだ少し震えていて、赤い頬もなかなか収まらない様子だった。舞華は階段を降りて彼女のそばに来て、ハキハキと答えた。

「からかう?人聞き悪いよ、ねえ、相談に乗ろうか、そうだね、カフェをでも行ってさ」傍らのゼレスも静かに頷き、「俺もついてくるよ、気兼ねしないで」と言った。クレティアは二人の優しい目を見つめ、少し安心したように肩を落とした。「そうだね」と彼女はハキハキと言い、胸の中に溢れる迷いと鼓動を話し合える相手がいることで、少し勇気が湧いてきたのだ。アルカシティの中心街にある、ガラス張りの高級カフェに三人は入り、窓辺の席に並んで座った。外を通り過ぎる人々や、街並みの美しい景色が見える場所には、クレティアが自然と目を向けながら、勇気を奮い起こして最初に口を開いた。

「実は、ワタシ、アイデルのことを意識してるんだよ、そして、いつからか恋愛的に好きという感情になってたんだよ」言葉が全部溢れ出すと、彼女はすぐにコーヒーカップに口をつけて顔を隠そうとした。舞華はそんな彼女を見て、ハキハキと笑いながら言った。

「いいじゃないですか、それって素敵なことですよ、私も近いうちにゼレスくんに告るつもりだし」その言葉にゼレスはコップを口元から離し、驚いたように目を大きく開けた。

「ま、舞華ちゃん、そうなのか」その声には少し慌てたような調子も混じり、耳が少し赤くなっているのが見えた。クレティアはカップから顔を出して二人を見つめ、「え?舞華もそうなの?」と驚いたように言うと、舞華はゼレスの手を取って笑った。

「うん、だから一緒にがんばろうよ、クレティア嬢ちゃん。告白って怖いけど、後悔するよりはいいでしょ?」窓から差し込む柔らかい太陽の光が三人を包み、カフェの中は温かい空気に満ちて——クレティアの胸には、前よりもっと強い「伝える」という決意が芽生えていた。舞華はゼレスの手を握りながら、クレティアの顔を真剣に見つめてハキハキと言った。

「でも、ジョンアイデルくんのことだし、返事はすぐには出さないかもね、それに、彼、何かを失ってるんでしょ、感覚の一部などを」その言葉にクレティアは眉をひそめ、「失ってる…、君も気づいてたのね」と小さく呟いた。同居している間、彼は時々突然目をつぶって何かを探すような姿をしていたり、何かを言いかけてやめたりすることがあった——そんな細かい点が今、一つ一つ浮かび上がってきた。

「うん、前からそんな風に感じてたの。試練のクリアって、何かの代償があるのかもしれないし…」舞華はコーヒーを一口啜り、「だから急がなくていいんだよ。彼が自分のことをちゃんと受け止められる状態になるまで、待っててもいいし、一緒に探してあげてもいいんだ」ゼレスも頷きながら「舞華ちゃんの言う通りだ。アイデルは表面的にはハキハキだけど、心の中には迷ってることも多いんだ」と補った。クレティアは二人の言葉を聞いて、胸の中の不安が少し和らいだ。

「そうね…急がなくていいんだね」と彼女は微笑み、太陽の光を浴びる窓辺から、屋敷の方向を思い浮かべた——彼が今、何をしているのか、少しだけ気になった。場面が一転、屋敷のジョンアイデルの部屋。彼はフィジカルオーブを手に取り光にかざしながら、独り言のように呟いた。

「俺はいまだ、分からない、殆どを孤独で過ごしてきたから、特に人を好きになるとかは」指がオーブの表面をなでるように動き、彼はクレティアが慌てて部屋を出ていった姿を思い出した。

「でも、クレティアのことを思うと…」言葉が途切れ、彼はオーブをテーブルに置いて窓の外を見つめた。孤独だった日々、彼女が突然現れて同居するようになってから——部屋がにぎやかになり、食事も一緒に食べるようになり、戦いの後も誰かが側にいてくれるようになった。そんな感じが、以前にはなかった温かさとして胸に広がるのを、彼は確かに感じていた。

「好き…ってどんな感じなんだろう」

手元に残った彼女の温もりを思い出し、彼は少し首をかしげた。表面的にはハキハキだけど、心の中は舞華たちが言ったように、迷いと未知の感情に満ちていたのだ。場面が移り、アルカシティの北側にある人気の少ない広場。夕暮れの光が木々を染め、風がそっと落ち葉を舞わせていた。そこには舞華とゼレスが佇み、カフェから来た後、二人だけの時間を過ごすことにしていた。最初に口を開いたのは舞華だった。彼女はゼレスの目を真っ直ぐ見つめ、少し緊張するように手を握りしめて言った。

「改めて伝えるわ、ゼレス、君のこと好きです、恋愛としての意味として、大事な仲間として、異性として」その言葉を聞いたゼレスは、少し頬を赤らめながらもハキハキと答えた。「分かってたぜ、舞華、俺もきちんと伝える!君のことは好きだぜ!そりゃ、もちろん同じ意味だ」舞華はそう聞くと、嬉しそうに目を細めて笑い、自然にゼレスの手を取った。「やっぱり!安心したわ」

「なあに、俺だって前から君のことをそう思ってたんだ。ただ口に出せなかっただけだ」とゼレスは照れながら言い、二人の手はしっかりと結ばれた。夕暮れの空がオレンジ色に輝き、広場は静かで温かい空気に満ちていた。舞華は頭をゼレスの肩に寄せ、「クレティア嬢ちゃんにも、こんな幸せな気持ちを届けてあげたいね」と囁いた。ゼレスは頷き、「ああ、彼女もきっと大丈夫だ」と柔らかく応えた——二人の告白が、遠くクレティアの勇気になるように、そんな祈りが込められていた。屋敷の庭に佇むクレティア。夕暮れの光が彼女の紺色の髪を微かに輝かせ、尻尾がゆっくりと左右に動いていた。

「焦らなくてもいいのは分かってる、だけど、早めに伝えておきたい、この気持ちは」彼女は手を胸元に当て、舞華とゼレスが告白した様子を思い出した。二人の幸せそうな姿が、自分の胸の中の想いをさらに強くさせて——「今、この気持ちを隠していたら、いつか後悔するかもしれない」という声が頭の中で鳴り響いた。遠くにジョンアイデルの部屋の明かりが点いているのを見つけ、彼女は少し深呼吸をした。

「アイデルには、孤独で過ごしてきたことがあるんだから…この気持ちが、彼の心を少しでも温めてくれるのかもしれない」そう呟きながら、彼女は足元に力を込めて屋敷の方に向かい始めた。顔はまだ少し赤いけれど、瞳には以前にない明確な決意が宿っていた——今度こそ、逃がさない、この気持ちをちゃんと伝えるのだ。ジョンアイデルは部屋の窓辺に立ち、外に沈む夕日を見つめながら、低く独り言を吐いた。

「俺は…、どうすれば…、今の俺は欠けたまま、そんな俺が人を好きになっても」手を窓ガラスに当て、彼は自分の指先から少しだけ触手が伸び出すのを確かめた。試練クリアの代償で失った感覚、そして今目覚め始めた深淵の因子——これらが「欠けた自分」を作り上げているのだと、彼は心の底で思っていた。

「クレティアが俺のことを…」と言いかけて途切れ、彼は眉をひそめた。孤独だった日々を変えてくれた彼女の存在、そして最近彼女が慌てる様子から、何かを感じ取っていたのに——「欠けた俺が、彼女の気持ちに応えられるのか?」その時、ドアの前から柔らかい足音が聞こえてきた。誰かがドアをノックし、少し震えるような声で呼んでくる——「アイデル?今、いますか?」クレティアの声だった。彼は慌てて触手を隠し、「ああ、入っていいよ」と答えた——その声には、自分でも気づかないほどの期待と不安が混じっていた。ドアが開いてクレティアが入ってくると、彼女はまっすぐジョンアイデルを見つめ、ハキハキと言った。

「この気持ち、やっぱり伝えたくてね、アイデル、君のことが好きです、大切な存在として、そして、恋愛的な意味で」その言葉が部屋に響くと、ジョンアイデルは静かに息を吐き、ハキハキだけど少し悲しげな声で答えた。

「ごめん、今ははっきりと返事出来ない、俺はやはり今は欠けた部分がある、すべてが戻ったら返事したい」クレティアはそう聞いても、顔に落胆の色は見せず、むしろ柔らかく微笑んだ。

「そうね、分かってるわ。急いで返事をしなくてもいいんだよ」と彼女は前に一歩進み、「ただ、この気持ちを伝えたかっただけ。君が欠けていると思っても、今の君で十分大切だと思うんだ」ジョンアイデルは彼女の言葉に胸が締めつけられるような感じがし、「クレティア…」と呟いた。夕暮れの光が二人を包み、部屋の空気は温かく、そして少し切ないものになっていた。クレティアはジョンアイデルの目を真っ直ぐ見つめ、ハキハキと声を上げた。

「ねえ、ジョンアイデル、知ってると思うけど、君とワタシは神格の試練に挑んでる、だが、君は何かを失うけど取り戻せる、そのときはワタシの力は必ず必要だから、だから、君は絶望に飲まれないで、いや、絶望に飲まれそうになっても引き上げるわ」

その言葉にジョンアイデルは目を少し大きく開け、胸の奥に温かなものが広がるのを感じた。神格の試練——それは二人が共に進む道であり、彼が失ったものを取り戻すための鍵だった。

「クレティア…」と彼は低く呟き、彼女の姿に以前にない力強さを見つけた。ハキハキな言葉の裏には、決して折れない想いと、二人で歩んでいくという確かな約束が宿っていた。

「だから、今はそんなに責めないで自分をね」クレティアはさらに一歩近づき、指で彼の手のひらに軽く触れた。「欠けている部分があっても、君は君のままでいいんだ。ワタシは待ってるから」夕暮れの光が彼女の紺色の髪を輝かせ、部屋の中はそんな彼女の言葉で満たされ、ジョンアイデルの心には長い間なかった希望の種が芽生え始めていた。ジョンアイデルは彼女の指が触れる手のひらの温もりを感じながら、ハキハキと言った。「欠けた部分は戻ってくるんだろう、ただそれはすべての神格の試練をクリアしたあとに、とある場所に行かなきゃならんだろう」その言葉にクレティアは頷き、「その場所、ワタシも一緒に行くわ」とすぐに答えた。

「試練も一緒に挑んだんだから、最後まで一緒に行くのが当たり前じゃない?」ジョンアイデルは彼女の確かな言葉を聞いて、少し笑顔を見せた。

「ああ、そうだな。一緒に行くなら、どんな場所でも怖くないな」と彼は手を握り返し、「試練をクリアして、欠けた部分を取り戻したら…その時はきちんと答えるよ」夕暮れの光が二人の結ばれた手を照らし、部屋には過去にない明るい空気が満ち始めていた。神格の試練の先に待つ場所、そしてそこで待つ二人の未来——そんな想いが、今はまだ曖昧だけど、確かに心の中に紡がれていた。ジョンアイデルは彼女の指が触れる場面が一転、クリミナルデビルの地下研究所——冷たい青い光が照らす実験室には、リヴァイアサンとテリオンが佇んでいた。巨大な開発装置の前に並び、そこには銀色に輝く義手の素体が浮かんでいた。


リヴァイアサンは装置のスクリーンを見つめ、ハキハキと言った。「テリオン、君と一緒に開発してるゴッドマテリアルとライブマテリアルを使った生命体義手:アンドロメスはどんな感じ?」


テリオンは白い白衣をまとい、手元の操作パネルを叩きながらハキハキと答えた。

「あぁー、順調だよ、それを移植させるのはやはり」言葉が途切れると、リヴァイアサンは唇を引き裂いて薄い笑みを浮かべ、ハキハキと続けた。

「決まってるでしょ、ジョンアイデル、彼奴は気づいてない、自身の右腕が壊れかけてることに」スクリーンにはジョンアイデルの右腕の内部構造が映し出され、細かな亀裂が脈打つように光っていた。

「アンドロメスを移植すれば、彼の力はさらに覚醒するし…俺たちの『深淵計画』にも繋がる。一石二鳥だな」テリオンは笑いながら言い、装置のスイッチを入れると、義手の素体が一層強く輝き出した。冷たい実験室の空気に、二人の陰謀が静かに膨らんでいく——ジョンアイデルが知らない間に、新たな危険が彼を狙い始めていた。リヴァイアサンはスクリーンに映るジョンアイデルの右腕を見つめ続け、ハキハキと言った。「テリオン、移植場所の手配を、私はジョンアイデルをおびき寄せる」

「了解だ。地下空洞の第7実験室にするか?そこならどこからも干渉も少なく、装置も万全だ」テリオンは操作パネルを速く叩きながら答え、「移植のタイミングは?彼の右腕が完全に壊れる前が最適だろう」

リヴァイアサンは暗き瞳を細め、「そうだ。即座に誘い込むつもりだ。『欠けた部分を取り戻す鍵がそこにある』と伝えれば、彼は必ず来るだろう」装置の中のアンドロメスが銀色の光を放ち、実験室に異様な波動が広がっていた。

「彼が気づく前に、アンドロメスを体に溶け込ませれば…彼の力は俺たちのものになる。深淵計画の完成が近い」リヴァイアサンの笑い声が冷たい空気に混ざり、二人の陰謀はいよいよ動き出そうとしていた。実験室のドアが静かに開き、ベルフェが軽やかに入ってきた。白衣を少し大きめに着ていて、頭を少し傾げながらテリオンに向かって言った。

「テリオン様、だけど、本拠点にはメンバーのみしか入れない、だから、ボクが連れてきましょうか」テリオンは操作パネルから目を上げ、ベルフェの姿を見て頷いた。

「へえ、君がやるのか?確かに本拠点の警戒は厳しいから、外部の人間を直接誘い込むのは難しいな」リヴァイアサンもベルフェに向けて視線を移し、薄い笑みを浮かべた。「君は表向きは中立な立場を装ってるから、ジョンアイデルにも疑われにくいな。いい案だ」

「うん、ボクが『欠けた部分を取り戻すための情報を手に入れたよ』って伝えれば、きっと信じてくれると思うよ」ベルフェは手を合わせて嬉しそうに笑い、「そして、自然に第7実験室まで連れていくから、リヴァイアサン様とテリオン様は準備をして待っててね」冷たい実験室の中に、ベルフェの明るい声が少しだけ温もりを与えるように響いた——だがその笑顔の裏には、どんな思惑が隠されているのか、誰にも知られていなかった。ジョンアイデルの部屋で、マジフォンがピピッと音を立てて情報を受信した。彼はテーブルに置かれたフォンを取り上げ、画面に表示された文字を読み上げるように呟いた。「なんだって『欠けた部分を取り戻すための情報を知ってる』か、送ってきたのはベルフェか、どっちとも言いづらい奴からだな、多分嘘かもだけど何か思惑あってだろう、いいだろう、乗ってやる、場所は魔霊帝国の中立観光都市イヤトーブにて合流、そして、絶対条件として一人で来ることか」彼は唇をかみしめ、クレティアのことを一瞬思い浮かべたが、すぐに決断を固めた。窓を大きく開け、背中から黒いフレームで透明の皮膜の翼を大きく展開させて飛び立った。夜空に舞い上がる姿は、暗闇の中で一筋の影のようだった。彼は東の港町まで一気に飛び、そこに佇む白銀色の大型船に降り立った——それはジョースター家のプライベートシップだ。船長が「ジョンアイデル様、待っていました」と挨拶すると、彼はただ頷き、甲板から魔霊帝国の方向を見つめた。船はすぐに帆を上げて港を出し、暗い海原を静かに進み始めた——ベルフェの誘いが何なのか、イヤトーブで待っているのは希望なのか危険なのか。それはまだ誰にも知られていなかった。プライベートシップが魔霊帝国の港に着くと、ジョンアイデルは甲板から降りて入管管理所へと向かった。蛍光灯が照らす冷たいロビーで、審査官が彼に顔を上げて言った。

「聞いてますよ、ジョンアイデル・ジョースター様、ですが、手続きは形式上とは言えさせていただきます。」ジョンアイデルは胸ポケットから証明書を取り出して見せ、ハキハキと行き先を言った。

「イヤトーブに行く」審査官は証明書を確認した後、スタンプを押して返した。

「入国審査は終わりました、もしかして、ベルフェの手引きですね」その言葉にジョンアイデルは眉を少し上げ、「ああ、そうだ」と短く答えた。ベルフェが既に入管に連絡していたのか——それは誘いが計画的に進められていることを意味していることは明らかだった。彼は証明書を収め、管理所の出口へと歩み出した。外は魔霊帝国特有の暗めな街並みで、遠くにイヤトーブの灯りがちらついているのが見えた——そこには、ベルフェと、その背後に隠された真の目的が待っていた。イヤトーブの中央広場——中立都市らしく、人種も様々な人々が行き交う中、ベルフェは噴水の横に佇んでいた。白衣をゆるく着こなし、髪を少し乱れさせたまま、見上げてくるジョンアイデルの姿を見つけると、元気だけど気が抜けたような声で言った。

「待てたよ、ジョンアイデル」ジョンアイデルは広場を横切って彼の前に立ち、「情報は?」とハキハキと問いかけた。周りの人混みをちらっと見つめながら、警戒心を解かない様子だった。

「うんうん、ちゃんと手に入れたよ」ベルフェは手を頭にかけて笑い、「ただ、ここでは話せないから、ちょっと奥の方にある廃墟まで来てね。そこに『欠けた部分を取り戻す鍵』が隠されてるって聞いたんだ」その言葉にジョンアイデルは眉をひそめた。廃墟という場所は陰謀には格好の舞台だ——だけど、彼は既に乗ってきた以上、引き返すつもりはなかった。「行くよ」と短く答えると、ベルフェは嬉しそうに手を振って「こっちだよ~」と先に歩き始めた。イヤトーブの明るい街並みから、だんだん暗くなる小路を進んでいく二人——ベルフェの気が抜けた笑顔の裏に、果たして何が待っているのか。ジョンアイデルの右腕が、その時に微かに違和感を感じさせた。暗がりに包まれた廃墟に二人がたどり着くと、壁に崩れかけた石が風に揺れる音だけが響いていた。ジョンアイデルは周囲を警戒しながら、ハキハキと問いかけた。

「んで、情報は?」ベルフェはその問いに対し、いつものように気が抜けたような声だけどハキハキと答えた。

「分かってるんでしょ、そんなものは本当持ってないってことに、代わりに君には必要なことを受けてもらうためにね」その瞬間、ジョンアイデルの右腕が突然激しい痛みを感じ、彼は眉をひそめて手を押さえた。

「必要なこと…?」と低く呟くと、ベルフェは後ろに一歩引き、「さあ、リヴァイアサン様とテリオン様が準備している『プレゼント』を受け取ってね」と笑いながら指を廃墟の奥に向けた。

すると、暗闇の中から銀色の光が輝き始め、巨大な装置がゆっくりと現れた——そこには、先ほど研究所で見せられた生命体義手「アンドロメス」が浮かんでいた。「君の右腕はもう壊れかけてるんだよ?これを移植すれば、欠けた部分も…っていうか、新しい力が手に入るんだ」ベルフェの声が暗闇に混ざり、装置から異様な波動がジョンアイデルに向かって迫ってきた。ベルフェは装置から輝くアンドロメスを見つめながら、ハキハキと言った。「だけど、それは身体の一部として機能させるもの、ボクが誘おう、手術の場所に」ジョンアイデルは右腕の痛みを抑えつつ、ベルフェの姿に冷たい視線を送った。

「手術の場所…クリミナルデビルの本拠地だろ?」とハキハキと問い返すと、ベルフェは少し首をかしげて笑った。

「うん、正解!地下空洞の第7実験室だよ。そこじゃ装置も万全だし、テリオン様が直接手伝ってくれるから安心してね」装置から放たれる波動が強まり、ジョンアイデルの右腕の亀裂がさらに広がるような違和感がした。彼は翼を少し広げて構えを崩さず、「誘われる側じゃないぞ」と言うと、ベルフェは手を合わせて「えー、そんなに頑張らなくてもいいのに」と気が抜けたように答えた。

「でも君の腕はもう待てないよ?今すぐ手術しないと、完全に壊れちゃうんだよ」ベルフェは一歩前に進み、「ボクは強制的に連れてくるわけじゃないから、自分で決めてね。欠けた部分を取り戻すために…それとも腕を失うために…」暗闇の廃墟で、銀色の光が二人を照らし、ジョンアイデルの心には選択の重みが押し寄せてきた。ジョンアイデルは右腕の違和感を噛みしめながら、ハキハキと言った。

「治らない体の代わりに受け取るか」

その言葉を聞いたベルフェは嬉しそうに手を叩き、「やった!それなら一緒に行こうね」と気が抜けた声で答えた。二人は廃墟の奥に隠された秘密通路を通り、ワープ装置を使いクリミナルデビル本拠地の地下空洞へと進んでいった。通路は暗くて狭く、滴る水の音がひびき、ジョンアイデルは警戒心を解かずに周囲を見つめ続けた。やがて、明るい青い光が見え始め、巨大な実験室の扉がその前に現れた——それが第7実験室だった。ベルフェが扉を開けると、テリオンが操作パネルの前に立ち、リヴァイアサンが装置に浮かぶアンドロメスを見つめていた。

「来たな、ジョンアイデル」リヴァイアサンは薄い笑みを浮かべ、ハキハキと言った。

「アンドロメスは君のために調整し終わった。さあ、手術台に座れ」銀色の義手が輝く装置の前で、ジョンアイデルは一歩踏み出した——この選択が、彼の未来を変えることになることを、彼はその時既に感じていた。ジョンアイデルは手術台に座り、身体に取り付けられた固定具にためらいなく手を伸ばした。テリオンは操作パネルを叩きながら、ハキハキと言った。「お前は元々からサイボーグ化されてるな、だが、それはオラクル由来というより元々は我らが開発したゴッドマテリアル製の部品、つまり、あの時から仕組んでたのさ」


その言葉にジョンアイデルは瞳を少し細め、ハキハキと問い返した。「去年のデッドリーシンズ一斉出撃作戦の時か」

「正解だ」テリオンはスクリーンに映るジョンアイデルの体内構造を指さし、「あの戦いでお前が重傷を負った時、我々がオラクルに部品を渡して密かに介入して、ゴッドマテリアルの部品を埋め込むように仕向けた。アンドロメスとの相性が良いのは、それが理由だ」

隣に立つリヴァイアサンが笑いを漏らし、「つまり、お前は最初から『深淵計画』の一員だったんだ。今回の移植は、ただそれを完成させるだけだ」装置からアンドロメスが緩やかにジョンアイデルの右腕に近づき、銀色の光が彼の体に絡み始めた。去年の戦いの記憶がフラッシュバックし、ジョンアイデルは「仕組まれてた…か」と低く呟いた——自分の人生が、こんなにも早い段階から陰謀に巻き込まれていたことに、少しだけ驚きを覚えた。ジョンアイデルはアンドロメスの光が腕に触れるのを感じながら、ハキハキと言った。

「重傷?そんなもんは負ってはおらん、ただの改良を受けただけ」その強気な言葉にリヴァイアサンは唇を引き裂いて笑い、ハキハキと答えた。

「私はただ、魔科学の普及が出来ればいい」テリオンは操作パネルのボタンを押しながら、ハキハキと続けた。

「深淵計画はもともとは私とその配下のみで行う予定だが、リヴァイアサンと手を組んだことで合同に行うことになった」装置から放出される波動が強まり、アンドロメスが徐々にジョンアイデルの右腕に溶け込み始めた。銀色の光が彼の体中を走り、右腕からは以前にない力強さが湧いてくるような感じがした。

「魔科学の普及…それが君たちの目的か」ジョンアイデルは額に汗を浮かべながら言い、リヴァイアサンは「そうだ。世界を魔科学で変えるんだ。お前の力がそのキーになる」とハキハキと応えた。実験室の青い光が二人の姿を照らし、アンドロメスの移植がいよいよ最終段階に入っていた——ジョンアイデルがこの力で何を成し遂げるのか、それはまだ誰にも分からなかった。装置の光が徐々に弱まり、アンドロメスの移植が終わった瞬間——ジョンアイデルは右腕を見上げ、ハキハキと言った。

「確かに違和感らしいものはなくなったな」

肌の色も質感も、以前の腕と何ら変わらない。指を曲げたり伸ばしたりしてみると、滑らかに動き、痛みも完全に消えていた。さらに手を握ると、以前にはなかった圧倒的な力強さが手のひらに集中するのを感じた。テリオンは操作パネルの数値を確認しながら笑い、「当然だ。ライブマテリアルが君の体細胞と完全に融合したから。外見は同じだけど、内部は完全に新しいものになってる」

リヴァイアサンも近づいてジョンアイデルの腕を見つめ、「これでお前の力は覚醒する。深淵計画の第一歩は成功した」とハキハキと言った。ジョンアイデルは腕を空中でぐるりと回し、風切り音が聞こえるほど速く動かした。違和感はないけれど、体の中に流れる未知のエネルギーが、彼に今までとは違う存在であることを教えていた——この新しい腕が、彼を希望へと導くのか、それとも絶望へと突き落とすのか。その答えは、今から始まる未来に宿っていた。

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