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エピック52【決勝戦の日】

格闘技大会6日目、朝の空に一際大きな雷号砲が打ち上げられ、轟音がコロッセオ全体に響き渡った。観客席は既に満員で、旗や声援プレートが波のように揺れていた。スピーカーからマルスの力強い声が轟いた。

「いよいよ、運命の決勝戦!さあてと、今回の選手は、ジョンアイデル選手とクレティア選手!」その言葉と共に、二人がそれぞれの入り口からコロッセオの中心近くまで歩み寄ってきた。クレティアはビキニ姿に輝く金銀の装飾を身につけ、金色の瞳に笑いを浮かべてハキハキと言った。

「やっぱり、君とか」ジョンアイデルは赤ラインの中性的な黒い格闘着ベースの服装に身を包みマントを装着して、額に汗の粒もないまままっすぐ彼女を見つめ、ハキハキと応えた。

「君が相手だろうと俺には関係ない!この試合も勝たせてもらう」二人の間には、昨日までの家族としての距離感は一時的に消え、代わりに格闘家としての鋭い張り合いが満ちていた。観客席からは「ジョン!」「クレティア!」と山鳴りのような声援が沸き起こり、雷号砲の残響と合わせて決勝戦の幕が華やかに開いた——今、二人が紡ぐ運命の一戦が始まるのだ。マルスは両手を広げてハキハキと言った。

「では、試合開始!」瞬く間にゴングと銅鑼の音が重なって響き渡り、決勝戦の時計が動き出した。最初は二人はまるで石像のように互いを睨み合い、それからゆっくりと摺り足で動き出し——円を描くように周り合い始めた。一歩一歩が慎重で、まるで互いの距離感を微細に測り続けているかのようだ。クレティアの紅い瞳は一吋もジョンアイデルから離れず、ジョンアイデルも目つきを鋭くして彼女の体の動きに神経を集中させていた観客席は一気に静まり返り、誰もが息を呑んで二人の最初の一撃を待ち構えていた。砂地には二人の影が長く伸び、朝の光が地面を照らすたびに、その影がゆっくりと重なったり離れたりを繰り返して——戦いの火薬庫が爆発する寸前の緊張感がコロッセオ全体に満ちていた。最初に動き出したのはクレティア。金色の瞳に一閃の光を宿らせ、摺り足から一気にスピードを上げてジョンアイデルに距離を詰めた。その体は狐のように機敏で、あっという間に彼のすぐそばにまで迫り、そのまま身体を密着させた。

「!」ジョンアイデルは体勢を崩さないように後ろに少し引くが、クレティアはその隙を突いて上半身に胸を押し付け——柔らかい感触が直に伝わった。

「どうかしらこの感触」と彼女はハキハキだが少し囁くような声で言うと、ジョンアイデルの顔が一瞬だけ緩みかけた。観客席からは驚きと笑いが混ざった声が湧き上がり、誰もが狐と夢魔の血を引く彼女の「色仕掛け戦法」が始まったことに気づいた。ジョンアイデルはすぐに意識を戻し、眉をひそめて「こんな手か…」と低く呟いたが、クレティアは体をさらに密着させて腰をひねるように動かし、彼の体勢を乱そうとしていた——最初の攻防は、彼女の誘導技から始まったのだ。ジョンアイデルは腰に力を込めて一気にクレティアを押しのけ、ハキハキと言った。

「こんなで隙をつくるつもりか?残念ながらそんな手には乗らない」彼女の体が後ろに反る瞬間、彼はすぐに足を伸ばして足払いを仕掛けた。クレティアはバランスを崩して体を前に傾けると、ジョンアイデルは肩を前方に突き出し——力強い肩パンを彼女の肩に繰り出した。

「グッ!」クレティアは小さな声を漏らし、体がさらに後ろに飛び出そうとしたが、狐の機敏さで足を地面に掴み、一歩後ろに引いて体勢を立て直した。

「なかなかだね…意識が乱れないんだわ」と彼女は微笑みを見せ、ジョンアイデルは肩を揉みながら「そんなの最初から分かってた」と応酬した。観客席は一気に沸き立ち、「ジョン!カッコ良い!」と声援が轟いた。砂地には二人の足跡が交差し、最初の誘導技をかわしたジョンアイデルが初めて攻撃の主導権を握った瞬間——戦いの様相が一変し始めていた。クレティアは体勢を立て直すと、金色の瞳を輝かせてハキハキと言った。「だが、まだ始まったばかりだよ」その言葉と同時に、彼女は腰に力を込めて体を回転させ——太く力強い尻尾が後ろに振れるようにしてヒップアタックを繰り出し、ジョンアイデルの顔にガシッと食らわせた。

「ッ!」ジョンアイデルは顔を横に逸らそうとしたが遅く、体が一歩横に引っ張られる。クレティアはその勢いに乗じて体を連続で回転させ、「ドドドッ!」と連続ヒップアタックを打ち続けた。一撃一撃が狐の機敏さとドラゴンの力を兼ね備えており、ジョンアイデルはかわすたびに体勢を崩さぬように後ろに引かれていた。

観客席からは「ワオッ!連続でかかってくる!」と驚きの声が湧き上がり、彼女のコスチュームを利用したような機敏な攻撃に息を呑んでいた。ジョンアイデルは最後の一撃を肩で受け止め、腰に力を込めて「くっ…この攻撃密度は…!」と低く呟き、総攻撃の合間を見つけようと目を凝らしていた。クレティアが連続ヒップアタックの最後の一撃を振り出す瞬間——体が大きく後ろに反り、お尻がジョンアイデルの目の前に浮かび上がった。その隙を見逃さないジョンアイデルは、右足を地面に蹴りつけて一気に身を乗り出し——強い蹴りを彼女のお尻に込めて打ち込んだ。「ガシャッ!」と音が響き、クレティアの体は勢い良く前に飛び出し、砂地に手をついて体勢を立て直すのに一歩かかった。

「ッ…そんな所を…!」彼女は金色の瞳を少し大きく見開き、尻尾をピクリと動かしながら顔に少し紅潮を浮かべた。ジョンアイデルは蹴りの反動で後ろに一歩引き、ハキハキと言った。

「攻撃の裏は隙だ。そんなの最初から分かってた」観客席は一気に大きな笑いと声援に包まれ、「ジョンって冷たい!」「クレティアちゃんショックだね!」と声が飛び交った。砂地には二人の足跡がさらに複雑に交差し、攻防が交互に繰り返される中で、決勝戦の熱気はますます高まっていた。クレティアは尻尾をピクリと動かし、紅潮が残る頬にエッジのある微笑みを浮かべてハキハキと言った。「でも、アイデルがそんな感じか、だったら大きな動揺を誘ってあげるわよ」その言葉が終わる瞬間、彼女は狐のような凄まじいスピードで距離を詰め——ジョンアイデルの唇にパッと接吻をした。

「ッ!」ジョンアイデルは全身に電撃のようなショックを受け、目を大きく見開いて体が凍りついたように動かなくなった。その時間はわずか一秒かそこらだったが、コロッセオ全体が一気に静寂に包まれ、その後「ワオッ!!」と山鳴りのような叫び声が沸き起こった。クレティアはすぐに唇を離し、金色の瞳を輝かせて「どう?これは動揺した?」とからかうように言った。ジョンアイデルは顔が一気に真っ赤になり、口を開けても言葉が出ず、ただ後ろに一歩、さらに一歩引いていた——夢魔の血が宿る彼女の「究極の誘導技」が、果たして効いてしまったのだ。ジョンアイデルは力が一気に抜けかけるが、瞬く間に牙を食いしばり、腰に力を込めて体勢を立て直した。「さすがにこれは驚いたけどね」と言う声は少し震えていたが、目つきは既に元の鋭さを取り戻していた。その瞬間、彼は体をかがめてクレティアの脇をすり抜け、一気に背後に回り込んだ。彼女が驚いて体を向けようとする前に、両足を内側から彼女の足に引っ掛けてバランスを崩させ、同時に両手を彼女の肩から回して——チキンウイングの形で腕を絞り上げた

「ッ!腕が…!」クレティアは体をひねろうとするが、ジョンアイデルの掛け声と共に「ここで終わりだ!」と力を込めて絞りを強めると、彼女の体は前に屈み始めた。観客席は再び沸き立ち、「ジョン!ガッツだ!」と声援が轟いた。砂地の上では、誘導技で一時的に主導権を握ったクレティアだが、ジョンアイデルの冷静な対応で逆にホールドをかけられるという、攻防の逆転劇が繰り広げられていた。

「こんなところで終わらない!」クレティアは体を前に屈ませながら、尻尾で地面を掴んで体勢を固定し——後ろに向かって両足を一気に蹴り出し、ジョンアイデルの太ももにガシッと食らわせた。

「ッ!」ジョンアイデルは絞りを一瞬緩める隙が生まれ、クレティアはその瞬間に体をひねり、腕を抜き出すようにしてチキンウイングから脱出した。彼女は着地と同時に一歩後ろに引き、翼が少しだけ現れて体勢を立て直し、金色の瞳に挑発的な光を宿らせて「逃がしちゃったわね、アイデル」とハキハキと言った。ジョンアイデルは太ももを揉みながら「切ないところだった」と低く呟き、再び彼女に向かって身構えた。観客席からは「クレティア!すごい脱出!」と大きな声援が湧き上がり、二人の攻防がますます凄まじくなって——決勝戦はまだ誰にも勝敗が分からない展開になっていた。

「ねえ、アイデル、君のことだからいろんな手を使うと思うよ、反則にならない手段ならね」クレティアがそう言うと、ジョンアイデルはハキハキと応えた。

「そうだよ、それにジョースター家は汚れたこともする貴族」その言葉が出る瞬間、彼は体を一気に前に飛び出し——クレティアの目元に向かって速い張り手を繰り出した。彼女は「ッ!」と驚いてかわそうとしたが、そのスピードが速すぎてまともに食らい、体が後ろに反り返った。

「グッ…」クレティアは手を目元に当て、一歩後ろに引いて視界を戻そうとした。ジョンアイデルはその隙を突いてさらに迫り、「だからな、君の誘導技よりも、素早い一撃の方が確実だ」と言い放った。観客席からは「ジョン!すごい速さ!」と声援が轟き、張り手が当たった瞬間の静寂の後、会場は再び熱気に包まれた。クレティアの金色の瞳には少し驚きの色が残っていたが、すぐに笑みを戻して「なかなかだわ…これがジョースター家の力か」と呟き、再び身構えた——戦いはもう遊び心の域を超え、真剣な闘いへと深まっていた。次の瞬間、ジョンアイデルは体をかがめて一気に身を乗り出し——クレティアの急所に向かってローブローを繰り出した。彼女は目元の痛みが残って視界が少しぼやけていたせいか、またもくらい、体がクシャクシャに屈みながら小さな声を漏らした。

「ッ…ダーティーファイトまでするとは…」彼女は手を急所に当ててしゃがみ込み、尻尾が地面にたれていた。ジョンアイデルは一歩後ろに引き、ハキハキと言った。

「反則じゃないだろ?君が言ったじゃない、反則にならない手段なら何でもいいって」観客席からは驚きと喝采が混ざった声が沸き上がり、「ジョンって本気だ!」「汚れた手と言っても、ルール内だからな!」と声が飛び交った。クレティアは少しずつ体を起こし、金色の瞳に怒りではなく、さらなる闘志の光を宿らせて「…そうだわ、言った通りだね。じゃあ、ワタシも本気を出しちゃうわね」と呟いた瞬間、金銀の鱗が彼女の肌に瞬くように現れ始めた——ドラゴノイドの真の力が、ついに覚醒しようとしていた。ジョンアイデルはクレティアの鱗が現れるのを見つめ、唇を引き裂いてハキハキと言った。「ならば、俺も答えよう!魔竜化!」


その声と共に、彼の体から黒緑色の鱗が一気に湧き出し、その鱗の表面には金色のラインが蛇のように這い巡った。背中からは小さな翼が伸び、頭部には黒い獣耳と鋭い角が生え、一瞬でドラゴンと獣人が融合したような姿に変貌した。

「ワオッ!!両方が竜化した!」観客席からは歴然とした驚きの声が轟き、コロッセオ全体が凍りつくような緊張感に包まれた。クレティアは金銀の鱗が全身に広がり翼を大きく広げ、紅い瞳でジョンアイデルの魔竜姿を見つめて「なんて…君にもそんな力があったるんだわ」と低く呟いた。二人の間には、今までにないほどの強力な気圧が渦巻き、砂地が風に吹かれて砂埃が舞い上がった。ジョンアイデルは角を立てて「これで、本当の戦いが始まる」と声を轟かせ、クレティアも爪を研ぎ澄ませて「待っていたわ、アイデル!」と応えた——決勝戦の最高潮が、ついに訪れたのだ。二人の声が重なる瞬間、それぞれ角を前に突き出して一気に駆け寄り——力強い頭突きをぶつけ合った。


「ガシャーンッ!」


鱗同士が激しく衝突する音がコロッセオ全体に響き渡り、砂地が二人の足元から陥没して砂埃が大きく舞い上がった。今のところは互いの力が均衡を保ち、誰も一歩も引けない互角の状態だった。ジョンアイデルの黒緑の鱗から金色の光が漏れ、クレティアの金銀の鱗からは赤い輝きが放たれ、二つの光が交差するように渦巻いていた。

「クッ…力が…相当だ」ジョンアイデルは歯ぎしりをしながら低く呟き、クレティアも額に汗を浮かべて「君も…違和感なく…魔竜化してるわね」と声を震わせながら応えた。観客席は誰も声を出せないほどの緊張感に包まれ、二人が頭突きでぶつかり合う姿に息を呑んでいた。砂埃が晴れ上がると、両者の角がまだ密着したまま、力を込め続けている姿が見え——この攻防がどちらに傾くのか、誰にも予測できない展開になっていた。互角の頭突きが続く中、ジョンアイデルは腰に力を込めて体を少しひねり——鋭い黒い爪をクレティアの肩に向けて突き出した。


「ッ!」クレティアは角に力を込め続けながら、尻尾を後ろから一気に振り上げてその爪をガシッと弾き飛ばした。尻尾の先には金銀の鱗が生えており、一撃の力は想像以上に強く、ジョンアイデルの爪が擦れて小さな火花が散った。

「クッ…尻尾まで武器になるのか」ジョンアイデルは体勢を少し崩すが、すぐに角を押し返して均衡を取り戻した。クレティアは尻尾を空中でカタカタと鳴らしながら「狐の尻尾は機敏さ、ドラゴンの力を持つわ。甘く見ないでね」とハキハキと言った。砂埃が再び舞い上がり、二人は頭突きを継続しながらも、爪や尻尾を使った小さな攻防を交互に繰り返していた。観客席からは時折驚きの声が漏れ、二人体が持つ全ての部位を武器にした戦いに、誰もが見入っていた。互いの角が押し合う狭い距離で、ジョンアイデルは突然頭を横に逸らし——クレティアの首元に向かって鋭い牙を剥き出して噛み付いた。


「ッ!」クレティアは体を痙攣させるような痛みを感じ、角への力が一瞬緩んだ。ジョンアイデルの牙は金銀の鱗の間を突き刺し、彼女の体を引き寄せるように力を込めた。「クッ…これで…動けなくなれ!」


彼女は尻尾で彼の体を叩こうとしたが、距離が近すぎて力が入らず、翼を羽ばたかせて体を浮かせようとした。だがジョンアイデルは噛み付きを強め、黒緑の鱗から金色の光がさらに強く漏れて——彼の力が一気に高まった。


観客席からは「ワオッ!噛み付くのか!」と大きな声が沸き上がり、誰もがこの突発的な攻撃に驚いていた。クレティアは紅い瞳に痛みと闘志が混ざり、「…甘いわ!」と低く叫ぶと、首元から赤い光が湧き出してジョンアイデルの牙を弾き返そうとし始めた——攻防の趨勢が、今また一変しようとしていた。クレティアの首元から赤い光が湧き出す瞬間、ジョンアイデルは機敏に牙を離し、体を後ろに跳び退いた。その勢いを利用して尻尾を空中に大きく振り回し——「ドドドッ!」と連続テールアタックを繰り出した。


鋭い鱗が生えた尻尾は風を切り、数発がクレティアの顔にガシッと直接当たった。「ッ!」彼女は体を後ろに反らし、赤い瞳が一瞬閉じるが、すぐに翼を羽ばたかせて体勢を安定させようとした。


「これでどうだ!」ジョンアイデルは尻尾を振り続け、さらに一発を彼女の頬に打ち込んだ。クレティアの頬には小さな傷が残り、少し血が滲み出すが、彼女は唇を引き裂いて笑い「なかなか…こんなに連続で打てるんだわね」とハキハキと言った。観客席は熱狂の渦に巻き込まれ、「ジョン!連続攻撃!」と声援が轟き続けた。砂地には尻尾の攻撃痕が散らばり、二人の魔竜化による戦いは既に人間の格闘を超え、生き物同士の本能的な闘いへと変わりつつあった。クレティアは翼を大きく広げて一気に空中に浮かび上がり、「これで!」と叫ぶように体を丸めて——ジョンアイデルに向かってフライングボディプレスを繰り出した。


だがジョンアイデルはその軌道を瞬く間に読み取り、体を横にサッとズレて回避した。クレティアは砂地にガシャッと体を叩きつけ、体勢を崩す瞬間——彼は尻尾を地面から一気に掻き上げるようにして薙ぎ払いをし、彼女の背中にガシッと当てた。

「ッ!」彼女は体が前に飛び出し、砂埃を巻き上げながら手をついて立ち直そうとした。ジョンアイデルは尻尾を地面に叩きつけて「逃がすつもりはない」とハキハキと言い、再び彼女に迫ってきた。観客席からは「回避がカッコ良い!」「尻尾の薙ぎ払いがピタリだ!」と喝采が飛び交い、二人の攻防が一秒たりと休むことなく繰り広げられていた。クレティアは背中の痛みをしのぎながら紅い瞳を輝かせ、「君の反応速度…本当に驚くわ」と呟き、再び翼を羽ばたかせて空中に浮かんだ——今度はどんな攻撃を仕掛けてくるのか、誰もが息を呑んで待っていた。クレティアが翼を羽ばたかせて空中に浮かんだ瞬間、ジョンアイデルは足元に力を込めて一気に跳び上がり——彼女の身体を両足でしっかりと握りしめた。


「ッ!なんで…!」彼女は驚いて体をひねろうとするが、彼の足の締め付けは強く、逃がせない。そのままジョンアイデルは背中の小さな翼を大きく羽ばたかせて空中に飛び立ち、「クッ…これでどうだ!」と声を轟かせながら旋回飛行を始めた。


二人はコロッセオの上空をカクカクと旋回し、遠心力でクレティアの体が外に引っ張られるようになった。「ま…まどわされる…わけじゃ…ない!」彼女は牙を剥き出してジョンアイデルの足に噛み付こうとしたが、旋回のスピードが速すぎて狙いが定まらなかった。


観客席からは「空中戦だ!」「ワオッ!二人が旋回してる!」と山鳴りのような声援が沸き上がり、誰もがこれまでに見たことのない光景に見入っていた。ジョンアイデルは旋回をさらに速め、「このまま地面に叩きつけるぞ!」と言い放つが、クレティアは尻尾を彼の翼に巻き付けて「そんなところで…終わらせるわけじゃない!」と叫んだ——空中での攻防が、今にも決着を迎えそうな緊迫感に満ちていた。だが、旋回が最も速くなった瞬間、ジョンアイデルの魔竜化した体から突然機械のような金属片が現れ始めた。黒緑の鱗の間から銀色の鋼鉄が這い上がり、体のいたるところに配線のようなものが張り巡らされ——バチバチと電流がほとばしった。


「機魔竜化、発動!」


その声は機械音が混じって轟き、彼の力が一気に数倍に高まった。クレティアの尻尾が翼に巻き付いていたが、電流が流れる瞬間に彼女は身震いをして締め付けが緩み——ジョンアイデルは彼女を掴んだまま一気に地面に急降下し、砂地にガシャーンッと強烈に叩きつけた。


地面からは大きな衝撃波が広がり、砂埃がコロッセオの半分以上を覆い隠した。観客席からは驚きと恐怖混じりの叫び声が沸き上がり、誰もが砂埃の中の様子を見届けようと息を呑んでいた。衝撃波が収まると、ジョンアイデルは機械と竜が融合した怪奇な姿で立っており、その足元にはクレティアが砂の中に埋もれて動かないように見えた——決勝戦の結末が、今、明らかになろうとしていた。砂埃の中から、クレティアの痩せた体がガクリと動き出した。「まだまだ!このくらいでは…」と彼女は低く叫び立ち上がろうとするが、金銀の鱗が一瞬で消え去り——竜化は解けてしまった。体には傷が数々残り、足元もふらついていた。ジョンアイデルは機械の関節がカタカタ鳴りながら前に進み、ハキハキと言った。

「終わらせてやる!」彼はクレティアの肩を鉄のように硬い手で掴み、背中の機械翼を大きく羽ばたかせて一気に空中に飛び立った。そしてさっきよりも数倍速いスピードで旋回飛行を始め、遠心力で彼女の体がぶら下がるようになった

「ブレイジングデスクラッシュ!轟音のような叫び声と共に、ジョンアイデルは急降下を始めた。機魔竜の体からは赤い炎が巻き起こり、二人は流星のように地面に突き落とされる——「ガシャーンッ!!」と衝撃音がコロッセオ全体を揺るがし、大きなクレーターが砂地に刻まれた。砂埃が晴れ上がると、ジョンアイデルは機魔竜姿のまま立っており、その足元にはクレティアが静かに倒れて動かなくなっていた。スピーカーからマルスの声が震えながら響き渡った。「…ジョンアイデル選手!勝利だ!!」ブザーとゴングが鳴り響く瞬く間に観客席からは山鳴りのような喝采が沸き上がり、旗が波のように揺れた。ジョンアイデルは機魔竜化を解き、人間の姿に戻ってクレティアの側にかがみ込み、低く呟いた。

「…お疲れ様だ、クレティア」クレティアは地面に横たわりながら、唇に弱い微笑みを浮かべてハキハキと言った。「負けちゃったわね、でも、なんか清々しいよ」その声は少し小さかったが、決して落ち込んでいる様子はなく、むしろ心から安らいでいるようだった。


ジョンアイデルは彼女の額に手を当て、「そうだな…俺もなんかすっきりした」と柔らかく応えた。


その時、スピーカーからマルスの力強いアナウンスが響き渡った。「さあて、これにてエピック52決勝戦は終了!優勝したジョンアイデル選手には、黄金製のトロフィーと、王国から授与される特別勲章を贈呈いたします!」観客席からは「ジョン!ジョン!」との声援が轟き続け、花束がコロッセオの中心に雨のように降り注いだ。スタッフたちが黄金色に輝く大きなトロフィーを抱えてやってきて、ジョンアイデルは立ち上がってそれを受け取った。太陽の光がトロフィーに反射し、コロッセオ全体を金色に染め上げる——6日間にわたる格闘技大会は、ここに美しい幕を閉じたのだ。会場の熱気がまだ冷めやらない中、フィリアが優雅に歩みを進めてジョンアイデルのもとにやってきた。「おめでとう、ジョンアイデル、君は皇位を継ぐのにふさわしいかもね」と彼女は柔らかく微笑み、その視線には確かな信頼が宿っていた。


ジョンアイデルはトロフィーを片手に抱え、ハキハキと言った。「判断するのはまだ早いですよ」その声には謙虚さもあれば、何か大きな決意を抱いているような重みも感じられた。


フィリアはそう聞くと、手元から赤く輝く小さなオーブを取り出して彼に渡した。「これはフィジカルオーブ、格闘大会を制し優れた肉体を持つものに与えられる」オーブは手に取ると温かさが伝わり、内部から赤い光が脈打つように輝いていた。


周りの人々はそのオーブを見て驚きの声を漏らし——誰もが知っている、王国随一の至宝の一つが今、ジョンアイデルの手に渡ったことを理解した。クレティアも少し体を起こしてその光景を見つめ、「なんて立派なもの…君に似合ってるわ」と低く呟いた。トロフィーと赤いオーブを抱えたジョンアイデルは、コロッセオ全体を見下ろしながら、今後何が待っているのかという思いを胸に秘めていた。熱気に包まれる会場から、クリミナルデビルのメンバーたちは言葉一つ交わさず、影のようにすぐさま去っていった。黒い外套を翻しながら彼らは暗闇に溶け込み、誰の目にも留まることなく目的地へと向かった。


そして、地下深くに隠されたマモーンの研究所。冷たい蛍光灯の光が照らす実験台には、数々の試験管と機械装置が並び、ジョンアイデルの戦闘風景を撮影したスクリーンが壁一面に広がっていた。マモーンは白い白衣をまとい、スクリーンに映る機魔竜化の姿を鋭く見つめながら、低く呟いた。「やはり、F計画にはジョンアイデルの因子が必要か」その声には冷たい算段の色が満ち、指は試験管の口元をなでるように動いていた。傍らに立つ部下が「今回の大会で彼の能力の全貌が分かりました。魔竜化だけでなく機械との融合能力…これを手に入れれば計画は一気に前進します」と報告すると、マモーンは薄い笑みを浮かべて「そうだな。優雅に取り込む方法を考えるか…それとも、力ずくで奪うか」と言葉を続けた。実験室の空気は一気に重苦しくなりF計画の暗い陰謀が、今まさにジョンアイデルを標的に動き出そうとしていた。マモーンはスクリーンに映るジョンアイデルの姿を見つめ、突然ハキハキと言った。「因子は手に入ってる、これを培養してクローンを作る、それと、クレティアの因子とルミカの因子も使うか、楽しみや」その言葉と同時に、彼は実験台から三つの小さな試験管を取り出した——一つはジョンアイデルの因子が入った青い液体、一つはクレティアのものが入った赤い液体、もう一つはルミカのものらしき銀色の液体が輝いていた。

「三つの因子を融合させれば…どんな存在が生まれるのかな?」マモーンは試験管を光にかざし、薄い笑みがさらに深まった。部下は尋ねるように「ルミカ様の因子を入手するのは…」と言うと、彼はハキハキと答えた

「もう手配しているで。彼女も大会の観戦に来ていたんだから、隙はいくらでもある。F計画の完成はもう遠くないんや」冷たい実験室の中で、三つの試験管が無言で輝き、マモーンの陰謀がさらに深い闇の中へと進んでいくのを見守っていた。別の地下研究所——そこはマモーンのものとは違い、深い海のような青い光が満ち、巨大な水槽が壁一面に並んでいた。水槽の中には未知の生物たちが緩やかに泳ぎ、泡の音が静かに響いていた。


リヴァイアサンは黒い長衣をまとい、水槽の前に佇みながらスクリーンに映るジョンアイデルの戦闘風景を見つめていた。「ジョンアイデル、彼の力は凄まじい、うまいぐわいにいけばこちらの計画を進めれる」その声は低く、海の底から聞こえてくるような重みを持っていた。


傍らに立つ助手が「マモーン様も彼を標的にしているとの情報が入っています」と囁くと、リヴァイアサンは唇を引き裂いて薄い笑みを浮かべた。「それが面白い。マモーンのF計画と、我々の『深淵計画』…どちらが先に彼を手に入れるのか、競争になると思うな」


青い光が彼の顔を照らし、その目にはマモーンとは違う種類の、深遠な算段の色が宿っていた。水槽の生物たちが一斉に水面に浮かび上がり、リヴァイアサンは手を水槽にかざしながら低く呟いた。

「彼の機魔竜の力…深淵の力と融合させれば、新たな世界が開けるだろう」

静かな研究所の中に、二つの陰謀が交差する予感が漂い始めていた。会場から離れ、屋敷に戻ったジョンアイデル。自分の部屋にトロフィーとフィジカルオーブをテーブルに置き、鏡の前で自分の姿を見つめると——口元から細い黒い触手がひそかに生え始めているのに気づいた。

「ッ…なんだこれは」彼は指で触手に触れると、冷たくて粘り気のある触感が伝わった。鏡の中の自分は、普段のまっすぐな顔つきとは違い、触手が口元から蠕動する様子が不気味で、まるで別人のようだった。体には特に痛みもないのに、何か異物が体の中に入り込んでいるような奇妙な違和感がした。クレティアが廊下から声をかけて入ってくると、彼は慌てて口元を手で覆った。

「アイデル、大丈夫?顔色悪いわよ」「…ああ、ちょっと疲れただけ」と言いかけながら、触手が手の間から少し出てしまいそうになり、彼はさらに力を込めて押さえた。何かが体の中に侵食されているのか——それともフィジカルオーブの影響か——それとも誰かの仕業か——疑問が膨らみ始める中、触手は徐々に長く伸びていき、鏡に映る自分の姿は益々怪しくなっていた。場面が一転、雲が地を這い、光も影もはっきりと分からない混沌とした神界。そこには巨大な暗き球体が浮かんでおり、その周りを無数の未知の存在が漂っていた。ラブクラフトはその球体の前に佇み、人知を超えた異形の姿ながらも、ハキハキと言葉を発した。「ジョンアイデル、深淵の因子も目覚めた」その声は空間自体を震わせ、周りの未知の存在たちが一斉に動き出した。ラブクラフトは手を広げ、混沌の中からジョンアイデルの口元に触手が生える姿を浮かび上がらせると、「魔竜の因子、機械の因子、そして今は深淵の因子…三つが集まれば、『それ』が蘇る時が近づく」と続けた。暗き球体が一層輝きを増し、空間に異様な波動が広がっていく。

「マモーンもリヴァイアサンも、自分たちが何を呼び覚まそうとしているのか知らないのだろう。楽しみだ、この世界がどう変わるか」ラブクラフトの笑い声が混沌の中に響き渡り、ジョンアイデルの体の中に眠っていた隠された真の力が、今まさに目覚めつつあった。

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