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エピック50【第一準決勝の日】

格闘大会4日目の朝、学園のコロッセオ上空にドンッと雷号砲の音が轟き、会場に集まった大勢の観客たちが一斉に沸き立った。砂埃が舞うコロッセオの中央ステージにマルスが駆けつけ、マイクを掲げてハキハキとアナウンスした。

「さあ、格闘大会、第四試合、準決勝の第一試合は——ジョンアイデル選手とルミナ選手だ!」その言葉と同時に、東の入り口からジョンアイデルが颯爽と現れ、西の入り口からはルミナが明るい笑顔と共に歩み出した。コロッセオの観客席からは両者への声援が轟き、太陽が照りつけるステージには前所未聞の熱気が巻き起こっていた。クレティアは観客席の一角に座り、アスモディンとドミネストも隣に佇んで——次なる闘いの幕開けを見守っていた。ジョンアイデルはステージ中央に立ち、ルミナに向かってハキハキと声を上げた。

「女だからって手加減はしないよ」するとルミナは明るく笑い、胸を張って同じくハキハキと応酬した。

「手加減?そんなことしたらこのボクへの侮辱だからね!全力で来てくださいよ、ジョンアイデルさん!」

その言葉に観客席からは大きな喝采が沸き上がり、マルスも目を輝かせて「なんとまずい!両者とも全力で闘う覚悟だ!もちろん今回も武器使用・魔法なしの白兵戦!さあ、試合開始——!」と号令をかけて銅鑼が鳴り響く。瞬く間にルミナの体には力が込められ、柔らかな輝きは「力」へと変わっていき。ジョンアイデルも足腰を低くして格闘家然と体勢を固める——コロッセオの空気は一瞬にして緊迫し、準決勝第一試合がいよいよ始まった。

「先手必勝!テヤー!」ルミナはハキハキと叫びながら体を一気に前に乗り出し、速いスピードで膝蹴りをジョンアイデルの胴体に向けて繰り出した。その瞬間、ジョンアイデルは足元を動かさずに両腕を交差させて正面から防ぎ——ドッと重い音が響き、反動でルミナは少し後ろに跳ね返った。

「なかなかの速さだね!」ジョンアイデルはハキハキと声を上げると、今度は自分から進攻態勢に入り、低い蹴りをルミナの足元に打ち込んできた。コロッセオの観客たちは息を呑んで両者の攻防を見つめ、最初から緩急のある白兵戦に沸き立ち始めていた。ルミナはジョンアイデルの低い蹴りが届く寸前、軽やかに跳躍して避けた。空中で体をひねり、「ほらこれ!」とハキハキと叫びながら、力強い急降下キックを頭上から打ち下ろしてきた。


だがジョンアイデルはそのキックの軌道を見極め、瞬く間に手を伸ばしてルミナの足首をしっかりとつかんだ。

「速いけど、軌道は読めるよ」と声を上げると、体を回しながらその足を引き寄せ、ルミナの体を地面に向けてガシッとたたきつけた。ドスンッと地響きが起こり、砂埃が舞い上がり小規模な爆発が起こる。観客席からは一斉に驚きの声が上がるが、ルミナはすぐに体を丸めて地面に転がり、痛みをひしめかせながらも「クッ…やるじゃん!」と笑い混じりに声を上げて立ち上がった。ジョンアイデルもさらに攻撃を仕掛けるのではなく、少し頷いて「まだか?」と挑発的に問いかけ——攻防はますます激しくなっていった。ルミナは立ち上がって肩をすくめ、突然体をひねらせるようにして色っぽいポーズを取った。髪が風になびき、目元には媚びたような笑みを浮かべながら、ハキハキと声を上げた。「ねえ、こんなんでも読めるの?」その誘い込むような姿に、ジョンアイデルは一瞬だけ視線を逸らしたように見えたが、すぐに元の冷静さを取り戻して「誘いは悪くないけど、甘く見るわけにはいかないね」と応えただがその瞬間の隙を突いて、ルミナはポーズから一気に動き出し、体を低くかがめてジョンアイデルの足元に滑り込むように接近してきた——その色っぽさはただの演出ではなく完全に戦術の一つだったのだ。観客席からは「おおっ!」と沸き立ち、クレティアもほほえみながら「なんて機転の良い子だろう」とつぶやいた。ルミナの滑り込み攻撃はぴったりとジョンアイデルの足元に入り、彼は少し体勢を崩しながら「こういうこともしてくるか…クレティアと当たったときもしてきそうだから注意しておかないとな」と呟いた。その瞬間、ルミナは体を一気に跳ね上げて急にジョンアイデルの顔の上に跨り、両手でパンチの嵐を浴びせかけた。

「ひっかけたね!」とハキハキと叫びながら、速いスピードでパンチがドドドッとジョンアイデルの防御に叩きつけられ——観客席からは大きな喝采が轟き起こった。ジョンアイデルは両腕で顔を守りながら体を後ろに引き、「速すぎる!」と声を上げると、足で地面を蹴って体を横に転がしてルミナの跨りを逃れようとした。だがルミナはその動きを読み取ってすぐに追いかけ、さらにパンチの連続を続ける——攻防は瞬く間にルミナ主導へと変わっていった。

「このまま劣勢のままではいられん、ならば!」ジョンアイデルはハキハキと声を轟かせ、パンチが届く寸前に体をひねらせてルミナの両腕をしっかりと取り押さえた。

ルミナは「えっ?」と驚いた声を上げるが、もう遅かった——ジョンアイデルは腰を低くかがめて体を回し、力強い巴投げを繰り出した。両者の体は空中をぐるりと回り、ルミナはドスンッと地面に叩きつけられた。地面からは小規模な爆発が起こる、観客席からは一斉に「おおっ!」との声が沸き上がった。ジョンアイデルはすぐに体を起こして体勢を固め、「これで一つ!」と叫ぶ一方、ルミナも痛みを堪えながら「クッ…やるじゃん、ジョンアイデル!」と笑い混じりに声を上げ、ゆっくりと立ち上がってきた。緊迫感は一層高まり、コロッセオ全体が両者の一進一退に息を呑んでいた。

「でも、まだこのくらいは序の序、ボクには狐の獣人の力と天族の力があるからね、そのぐらいじゃ、物足りない!」ルミナはハキハキと声を上げ、立ち上がると同時に体から薄い風のような気配が溢れ出した。だがジョンアイデルはその言葉を聞くや否や、次の瞬間に体を一気に前に飛ばし——喉元めがけて力強い正拳突きを繰り出した。

「そんな力を見せてもらう前に、まずはこれを受けてみろ!」ルミナは獣人の鋭い感覚でその突きを察知し、危機一髪で頭を横に避けた。正拳は耳元をかすめて空を切り裂き、風切り音が鳴り響いた。「ひゃっ!危なかった!」とルミナは驚いたように声を上げつつ、狐の尻尾を使って体勢を立て直し、今度は自分から速い蹴りをジョンアイデルの脇腹に打ち込んできた——両者の力が徐々に全開に近づき、コロッセオの熱気はもう抑えられないほどになっていた。だが、ルミナの蹴りがジョンアイデルの脇腹に届いた瞬間、ガチッと金属のような音が響いた——そこには黒緑と金が混ざり、白銀のラインが美しく走るドラゴンの鱗が生えていたのだ。


「えっ!?」ルミナは蹴りの反動で後ろに跳ね返り、目を丸くしてハキハキと叫んだ。「鱗が…ジョンアイデルさん、ドラゴンの血を引いてるの!?」ジョンアイデルは脇腹を撫でるようにして、ハキハキと応えた。「まあ、そんな感じだ。全力で打ち込んできたのに痛くもないよ。さあ、次はもっと力強い攻撃を見せてくれないか?」鱗が輝くジョンアイデルの姿に、観客席からは大きな驚きの声が沸き上がり。ルミナも尻尾をピクリと動かし、「へえ…なんだかもっと興奮しちゃった!」と笑いながら、狐の獣人としての俊敏さを全開にして再び進攻に乗り出した——今度は鱗の隙間を突くように、細やかな攻撃を繰り出し始めたのだ。ルミナが指先で鱗の隙間を突こうと身を乗り出した瞬間、ジョンアイデルの腰後ろから黒緑と金が混ざったドラゴンの尻尾が一気に伸びてきた。白銀のラインがピカリと光り、彼はそれを鞭のように激しく撓らせてルミナの体にぐしゃっと打ちつけた。

「っくっ!」ルミナは避ける手立てもなく肩に直撃され、砂埃を上げながら数メートル先に吹っ飛んだ、そして、吹き上げギミックで空中に吹き上げられた、だが彼女は着地と同時に体を丸めて転がし、すぐに立ち上がって目をキラキラさせながら叫んだ。

「すごい!尻尾まで隠してたんだね!これでドラゴンの姿がほとんどそのままだわ!」ジョンアイデルは尻尾を空中でぐるりとまわしながらハキハキと答えた。

「これで攻撃範囲も広がる。今度は逃がさないぞ」その声に応えるように、ルミナは天族の力で体に風を纏い、スピードを最大限に上げて尻尾の攻撃をかわしながら再び接近。今度は狐の獣人特有の瞬発力で、ジョンアイデルの正面から一気に膝蹴りを打ち込んできた——コロッセオ全体が両者のド派手な攻防に沸き立ち、熱気は頂点に達していた。ルミナの膝蹴りがジョンアイデルの胴体に直撃するも、鱗の守りでダメージはまったく入らなかった。

「これでは…!」と彼女が驚いた瞬間、ジョンアイデルは咄嗟に体を前に倒し、ルミナの肩にガブッと噛み付いた。

「きゃっ!痛っ!」ルミナは体を後ろに引こうとしたが、ドラゴンの牙はしっかりと掛かっていて動けない。「ジョンアイデル、噛み付くのは反則じゃないの!?」とハキハキと叫ぶと、彼はゆっくりと牙を離して笑った。

「大会ルールに『噛み付き禁止』って書いてなかったよ。何でもありだろ?」その手強さにルミナは尻尾をピクリと動かしながらも、目を輝かせて「へえ…意外な手だね!でもボクも負けない!」と言い、狐の獣人の嗅覚でジョンアイデルの呼吸の乱れを察知して、すぐに踵を地面に蹴りつけて体を横に飛ばし、背中から突然羽根のような風を生み出して空中に浮かんだ——天族の力、それは今まで見せなかった真の姿だった。その空中に浮かんだルミナの動きが、ふと鈍くなった。羽根のような風が揺らぎ、彼女は眉をひそめながら肩を撫でると、「クッ…体が重い…なんだこれ…」と小さく呟いた。ジョンアイデルは尻尾をふりながらハキハキと言った。「さっきの噛み付きの時、ドラゴンの牙から瘴気を流し込んだんだ。一時的に動きを鈍らせるだけだけど、これで勝負はつくぞ」ルミナは体を支えながら空中でグラつき、それでも目を閉じて深呼吸をした。「瘴気…か…でも…ボクは…まだ…」と声はかすれても、狐の獣人の生命力と天族の力が体中に巡り始め、肩の傷口から薄い光が漏れ出して瘴気を焼き払い始めた。観客席からは「頑張れルミナ!」との声援が轟き、クレティアも握っていた拳を少し緩めながら「その不屈の心は…萌愛にも似てるな」とつぶやいた。ルミナの動きはまだ完全には戻らないものの、徐々に元のスピードに近づき始め——今度は瘴気を跳ね返すように光り輝く蹴りをジョンアイデルに打ち込んできた。ルミナの光り輝く蹴りが近づいてくる瞬間、ジョンアイデルの体から突然、強烈な闇の気配が溢れ出した——頭部は獣耳と尖った角が生えたドラゴンの姿に変わり、体全体には黒緑と金の鱗が混じり、白銀のラインが走る毛が生え始めた。完全に魔竜化した姿は圧倒的な存在感を放ち、コロッセオの空気まで凍りつくようになった。

「わ…わお…これが…真の姿…!」ルミナは蹴りの勢いを弱め、目を丸くして呟いた。その瞬間、ジョンアイデルは魔竜の尻尾を一撃撓らせ、蹴りを弾き飛ばすと同時に、角をつき出してルミナに迫ってきた。

「これで終わりだ」と声はもう人間の声ではなく、低く轟くドラゴンの鳴き声のようだった。だがルミナは瘴気も薄れ始め、天族の光を全身に纏いながら「でも…ボクは…まだ諦めない!」と叫び、最後の力を込めて羽根のような風を生み出し、魔竜の攻撃に向かって一気に突進してきた——二つの力が激突する瞬間、コロッセオ全体に閃光が走り、大きな爆発音が響き渡った。閃光の中から、魔竜化したジョンアイデルの巨大な前足が伸びてきて、ルミナの体をしっかりとつかんだ。「うっ…放して…!」と彼女が掻き乱しても、その力はどうしようもなく強く、すぐに体を動かせなくなった。するとジョンアイデルは大きな翼を広げ——それまで見えていなかった黒緑の翼が風を切り、体を一気に浮かび上がらせた。

「これで終わりだ」と轟く声と共に、彼は空中で激しく旋回飛行を始めた。ルミナは遠心力に掻き回され、視界が回転して地面の姿がぼやけていくのを感じた。

「きゃっ…回る…!」と声を上げる彼女だが、それでも天族の光を体に抱きしめ続け、ジョンアイデルの前足に掛かっている力を探ろうと指先を動かしていた。コロッセオの観客たちは頭上を見上げ、旋回する二つの姿に息を呑み、「ルミナ!」「ジョンアイデル!」と交互に声援が轟いた。クレティアも立ち上がって見上げ、その壮絶な光景に言葉を失っていた——これが真の準決勝の結末なのか。

「そーれー!」魔竜化したジョンアイデルの轟く声が空中に響き、旋回する体勢から一気に翼を縮めて地面に突き落とすように——掴んだルミナをコロッセオの砂地にガシャッと叩きつけた。ドスンッと地鳴りが起こり、それと同時に小規模爆発が起き噴煙が上がりそして砂埃が大きな雲となって空に舞い上がり、会場全体が一時的に見えなくなった。観客席からは一斉に驚きの叫び声が上がり、マルスもマイクを握りしめて息を呑んでいた。砂埃が少し落ち着くと、ジョンアイデルの前足は地面についたまま、ルミナを掴んだ手を少し緩めていた。彼女は体を地面に敷き詰め、天族の光もかすかになっていたが、唇からは小さくて力強い声が漏れた。

「…まだ…立てる…」ジョンアイデルは魔竜の目で彼女を見つめ、低い声で答えた。

「…お前は本当に手強いな」その瞬間、マルスの声が轟き始めた——

「判定を待つまでもない!ジョンアイデル選手の勝利だ!」コロッセオには喝采と悲鳴が混ざった声が湧き上がり、ジョンアイデルはルミナをそっと地面に置いて翼を広げ、魔竜の姿から徐々に人間の姿に戻り始めていた。ルミナは地面に座り込み、砂埃をまとった体をそのままにハキハキと声を上げた。

「ま、負けた…、そ、そんな…、ボクが…」声には少しかすれが混じっているのに、目には涙は一つもなく、むしろ少し輝いていた。彼女は手を地面について体を起こし、ジョンアイデルが人間の姿に戻って近づいてくるのを見つめながら、さらに言った。

「でもね…すごく楽しかった!魔竜化した姿も瘴気も尻尾も…全部すごくカッコ良かったよ!」ジョンアイデルは彼女の前に立ち、少し笑顔を浮かべて「お前も手強かった。天族の光と狐の力、その組み合わせはなかなかだった」と応えた。その時、観客席からは「ルミナ!」「最強!」との声援が再び沸き上がり、彼女は胸を張ってその声に向けて大きく手を振った——負けたのに、まるで勝者のような輝きだった。ルミナは砂の上から立ち上がり、服についた砂を払いながらハキハキと声を上げた。「ウリエル家の名折れにならないようにこれから先はまだまだ修業をする、そうしないと、将来は安定しないわけだし」その言葉にジョンアイデルは頷き、「ウリエル家…それは天族の名家だろ?お前がそんな家の人なんだとは知らなかった」と驚いたように言った。するとルミナは尻尾をピクリと動かして笑い、「だからね!だからこそ甘えちゃダメなの!ジョンアイデルさんも油断しちゃダメ!」観客席からは「ルミナ!修業頑張れ!」との声援が轟き、マルスもマイクを掲げて「なんと立派な意地だ!ウリエル家のルミナ選手、この試合で見せた不屈の精神は忘れられない!」と大きく讃えた。ルミナはその声に応えるように胸を張り、コロッセオの入り口に向かって颯爽と歩み出していった——その背中には、将来への強い決意が宿っていた。ルミナとジョンアイデルが手を伸ばして握手しようとする瞬間——ルミナの背後、観客席の陰から不気味な影が蠢いた。その人物は黒いマスクをしており、両手で大きなスナイパーマスケットを構え、銃口をルミナの背中にぴったりと合わせていた。

「ルミナ!危ない!」ジョンアイデルが反射的に声を上げ、手を伸ばしてルミナの肩を掴んで横に引き寄せた。その瞬間、大きな銃声がコロッセオ全体に響き、弾丸はルミナのかつていた場所をかすめて砂地に打ち込まれ、塵埃が舞い上がった。観客席は一気にパニックに陥り、叫び声が轟き始めた。ルミナは体を引き寄せられてビクッとし、「な、なんだったの!?」と驚いて背後を振り返ると、その黒い影は既に観客の混乱に紛れて姿を消していた。ジョンアイデルはルミナを守るように体を張り、魔竜の気配を少しだけ放ちながら周囲を警戒し、「誰かが狙っていた…大丈夫か?」と低い声で問いかけた。出入り口で姿を潜めようとした黒い影は、呟くように言い放った。「クソ!しくじった、アイツを殺せばジョースター家に膨大な穢れを生ませる算段だったのに」するとその場に突然立っていたアルが、冷たい声で問いかけた。

「貴方、クリミナルデビルの差し金ですね」

挿絵(By みてみん)

影の人物はマスク越しにアルを見つめ、ハキハキと声を上げた。

「クリミナルデビル?あんなやつらと一緒にするな…、我こそはクラディスの一員、戦禍のプグナ!」その名前を聞いたアルは眉をひそめ、手に隠していた短剣を抜いて体勢を固めた。

「クラディス…戦争を生み出す凶悪な組織の一員か。ルミナさんを狙う理由はジョースター家だけじゃないだろう」プグナはスナイパーマスケットを肩に掛け、「そんなことはどうでもいい。今回は手遅れだが…次は必ず仕留める」と言い放つと、周囲の混乱を利用して壁際の隙間から一気に逃げ出した。アルは追いかけようと一歩踏み出すが、コロッセオ内は既に警備員たちが慌てて動き出しており、彼は一旦ルミナたちの元に戻ることを選んだ——新たな敵の存在が、今回の試合以上に重い影を落とし始めていた。観客席の方から、ハキハキとした男の声が混乱の中に響いた。

「今の狙撃、奴らか、クラディス、余計なことをしおって!」見上げると、スペルヴィアが席から立ち上がって手を叩き、眉をひそめて不満そうな顔をしていた。周囲の観客が慌てて逃げ出す中、彼だけが落ち着いてその場に立ち続け、銃声の鳴った方向を鋭く見つめていた。

「戦禍のプグナ…、クラディスの中でも特に好戦的な奴の一つだな」と彼は呟き、さらに大きな声で叫んだ。

「ルミナちゃん、大丈夫か!奴らはただの撹乱者だ、気にしちゃダメだよ!」コロッセオのスピーカーからは警備員の指示が流れ始めたが、スペルヴィアの声はそれをも抑えるようにはっきりと届き、ルミナも驚いて頭を上げて彼の方を見つめ、少し頷いて手を振り返した。その瞬間、スペルヴィアの目には平時の明るさとは違う、鋭い光が宿っていた——クラディスの名前には、彼にも何かしらの因縁があるのかもしれない。ジョンアイデルは砂地に打ち込まれた弾丸のあたりにしゃがみ、指で拾い上げると——その弾には穢れと瘴気が渦巻くような不気味な気配が漂っていた。

「これはクリミナルデビルとは似てるがどこか違う…」と彼は低く呟き、弾を手のひらで見つめながら続けた。「クリミナルデビルはこんなところで騒動起こすほど愚かではない。それに、ルミナを狙撃したってことは…天族絡みのことか、あるいはミクスタッドの権力の転覆か」その言葉を聞いたアルが近づいてきて、弾を覗き込み「確かに…クラディスの術式の臭いがするけど、天族を標的にする理由は?」と問いかけた。するとジョンアイデルは弾を砂地に戻し、立ち上がってルミナの方を見つめながら「ウリエル家は天族の名家だし、ミクスタッドでも力を持つ家系。奴らが狙うのは『穢れを生み出す』ことだったって言ってただろ?天族に穢れを染めさせるか、あるいは権力層に混乱を与える…どちらにしても、これは単なる撹乱じゃない」と口にした。ルミナもその方向に耳を澄ませ、尻尾をピクリと動かしながら「天族絡み…ボクを狙う理由がそんなに大きなことなんだね…」と少し驚いたように呟いていた。駆け足でコロッセオ内に飛び込んできたノアが、すぐにアルの方に近づき、息を弾ませながらハキハキと声を上げた。

「大変です、各国で疫病や飢饉、犯罪者の脱獄、反乱などが急激に一斉に起きてます!」 その言葉を聞いたアルは眉をひそめ、ハキハキと答えた。「クラディスの仕業…」周囲の警備員たちもその声を聞いて顔色を変え、ジョンアイデルは魔竜の気配を再び強めて周囲を見つめ、「一斉に起きるなんて…明らかに計画的な撹乱だ。ルミナを狙ったのも、その一環だったのか」と低く呟いた。ノアは汗を拭きながら続けた。

「通信網も一部切断されていて、状況が把握しきれないんです!どこから手をつければ…」ルミナも立ち上がってその場に近づき、目を輝かせてハキハキと言った。

「ボクも手伝う!ウリエル家の名にかけて、こんな悪さをするクラディスを止めなきゃ!」スペルヴィアも観客席から飛び降りてきて、「そうだな!余計なことをしおってる奴らには、ちゃんと教えてやらなきゃな」と声を合わせた——一つの狙撃事件が、世界規模の危機へと繋がっていくことを、彼らはその瞬間に実感した。スペルヴィアは地面に着くとすぐに胸を張り、ハキハキと声を轟かせた。「俺と四大幹部レムレスと側近でクラディスを潰してくる!ジョンアイデルたちは格闘大会などに集中しろ!アヤツラが好き勝手に動くのは気に入らんなあ!」その言葉に誰もが驚いて彼を見つめ、彼はさらに力強く続けた。

「我の目的は差別や偏見をなくす、そして、世界の頂点に立つこと。我が支配する世界でこんな危険因子がいたら溜まったもんではない」ジョンアイデルは眉をひそめながら「世界の頂点…か。確かに今は各国が混乱していて、俺たちが大会に集中しないと余計に手を回せないけど…奴らを潰せる自信があるのか?」と問いかけた。するとスペルヴィアはニヤリと笑い、「四大幹部(レムレス)の力を見れば分かるさ。今から側近たちを呼び寄せて作戦を立てる。お前たちはお前たちの道を行え」ルミナは尻尾をピクリと動かしながら「でもボクも…」と言いかけたが、スペルヴィアは手を横に振って「いいだろ。大会でウリエル家の名を輝かせるのも一つの力になる。それが俺の支配への道標にもなる」と言い放ち、すぐに携帯を取り出して側近たちに連絡を始めた——その背中には、ただの自信以上の、絶対的な支配欲が宿っていた。スペルヴィアと四大幹部は観客席から一気に立ち上がり、混乱している人混みをかき分けてすぐさま去っていった。その後ろ姿を見送ったジョンアイデルは、ハキハキと声を上げた。「クリミナルデビルも信用ならん、けど、こちらもやらなければ行けない。本当はクリミナルデビルに任せるのは気に入らないが仕方ない」アルが近づいて「クリミナルデビルに任せる…って、何を言ってるのですか?」と問いかけると、ジョンアイデルは弾丸が落ちていた砂地を指差し「この弾の穢れ、俺たちとクリミナルデビルも手を焼く種類だ。私たちは大会に集中しなきゃならないけど、世界の混乱を放置するわけにもいかない。そこはクリミナルデビルに一任するしかない——ただ、あの奴らが自分たちの利益のために動くのは分かってるが」ルミナは頷きながら「でも、それでも一緒に敵を倒す仲間になれるのかな?」と呟き、ノアも「通信網が戻ったら、クリミナルデビルとの連絡を試してみましょう」と提案した。ジョンアイデルは深呼吸をして「まあ、そうするしかないな。さて、大会はまだ終わってないんだ。次の試合に備えるぞ」と言い、体を引き締めた——危機が迫る中でも、彼らには必ず貫かなければならない道があった。一方、コロッセオから遠く離れた暗い場所——湿った空気と腐敗の臭いが漂う洞窟の奥に、スペルヴィアと四大幹部と側近は立っていた。地面にはプグナを含む三人の亡骸が転がり、その真ん中には黒い石で作られた禍々しい玉座が佇んでいた。

挿絵(By みてみん)

玉座には骸骨の男が座り、乾いた骨がカタカタと音を立てながら頭を上げてスペルヴィアたちを見つめた。

「スペルヴィア…来たな。プグナは失敗してしまったが、それでも計画は進んでいる。各国は既に混乱の渦に落ちている」スペルヴィアは眉をひそめ、ハキハキと声を上げた。

「俺はクラディスを潰すと言っただろ?玉座に座ってるお前も含めて」骸骨の男は骨の指を玉座の肘掛けに置き、低く笑うような音を発した。「愚かな。クラディスは一つの組織じゃない…戦争そのものだ。お前が世界の頂点に立つためには、俺たちを利用するしかない——そうだろ、スペルヴィア?」ベヒモスが前に踏み出し「主、そんな話は無駄です。この男を始末しましょう」と言うと、スペルヴィアは手を伸ばして止めた。その目には玉座の男を見つめる鋭い光が宿り、「利用?それは俺の台詞だ。お前たちの力を奪い、俺の支配する世界を作るんだ」と言い放った——洞窟の中には、二つの野望がぶつかり合うような重圧が満ち始めていた。その後、骸骨の男はハキハキと声を上げた。「いいだろう、厄災のカラミティタスさまが相手してや…」言い終わる前に、スペルヴィアは体を一気に飛ばし、骸骨の男の胸元に突き立てた手から強烈な光が溢れ出し——カラミティタスの核がガシャッと崩れ壊れた。

「厄災…、お前ごときがか、笑わせるな!」スペルヴィアは骸骨の男を見下ろし、声を轟かせた。

「本当の厄災の概念を宿した俺様の前で厄災など名乗るな!ムシケラが!」骸骨の男は骨の体がガクガクと震え、核が壊れたことで黒い煙が体から溢れ出していた。

「ク…クソ…そんな力を…」と乾いた声が漏れると、体は徐々に崩れ落ち始めた。シズズはその光景を静かに見守り、一人が「主、これでカラミティタスは消滅した。だがクラディスの残党は…」と問いかけると、スペルヴィアは禍々しい玉座にゆっくりと座り込み、「残党は全部狩り尽くす。側近たちに任せる!俺の支配する世界に、戦争を呼ぶクズどもは一枚もいらない」とハキハキと言い放った——玉座から放たれる彼の気配は、今まで以上に絶対的で、真の厄災のようだった

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