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エピック43【潜入者との攻防】

夜の帳が学園を静かに包み込み、月光は石畳に青白い影の絵筆を走らせる。ジョンアイデル、クレティア、舞華、ゼレス――四つの魂は、それぞれの帰路である屋敷を目指していた。その静寂を破るように、闇の奥底から微かな足音が近づいてくる。

「……あっ、いたいた!」ルミカの無邪気な声が夜空に響き、ワルプルギスの仲間たちが姿を現した。ルミナは息を切らしながらも、真剣な眼差しで問いかける。

「最近、学園で妙な魔力のゆらぎがあるって話、聞いた?」アルは静かに頷き、吐息はまるで氷の刃のよう。「一ヶ月前から、校内の魔力流が乱れています。それは魔物の残滓に似ていますが、明らかに異なる、異質な力です」ジョンアイデルの心に、静かな嵐が吹き荒れる。──そう、一ヶ月前。アルテンとアヴィンが学園に潜伏してきた時期と、その魔力の乱れが始まった時期が一致する。クレティアは、隣に立つジョンアイデルを横目でそっと見た。彼もまた、その事実に気付いているのだろう。その瞳は、普段の穏やかさとは裏腹に、鋭い光を帯びていた。舞華が、静かに口を開いた。

「魔力の乱れって……その場所、具体的にはどこなの?」ジョンテイルが、魔導紙に描かれた学園の地図を広げた。地図には、いくつかの場所に印がつけられている。まずは購買棟の脇にある休憩所、次は旧校舎の三階廊下、そして三つ目は中庭の奥にある植物園の裏。最後に、倉庫付近。ノアは、低い声で付け加えた。

「そして……これらの場所すべてで、夜になると“人影が二つ”出入りしているのを目撃されています。」クレティアが息をのむ。舞華は、一歩前に踏み出した。

「あなたたち、その姿を見たの? どんな姿を……」ルミナはハキハキという。

「はっきりとは見えなかった。向こうの方も相当、気配を消していたから。でも……」ルミカは周囲を警戒するように見回し、小声で続けた。

「一人は、確実に男。そしてもう一人は、魔族特有の匂いがする女なの。」

ゼレスの表情が、わずかに険しくなった。

「(……また、魔族か。)」その時、ノアが指先をかすかに震わせた。彼女の鋭い視線が、中庭の奥へと向けられる。

「来る……」全員が、瞬時に臨戦態勢を取った。夜風の向こうから、二つの影がゆっくりと近づいてくる。アルテンことアスモディンと、アヴィンことマモーン。まだ距離はあるが、二人が確かにこちらへ向かっているのは明らかだった。ルミカが、小声で呟いた

「……あの二人、最近よく一緒にいるわ。授業にもちゃんと出るけど、どこか“学ぶ気がない”目をしてるのよね」ノアも同意するように続ける。

「それに、魔力の質もおかしい。普通の学生じゃないわ。」ジョンアイデルは、静かに頷いた。

「……俺たちが見張っていた二人だ。」

クレティアも、覚悟を決めたような表情で続ける。

「潜入者……確定ね。」ジョンアイデルは、確信を持って告げた。

「おそらく、紛れ込んでいるのはクリミナルデビルのルクスリア、アスモディンとアヴァリティア、マモーンだ。」ルミカは、驚いたように声を上げた。

「マモーンが!? あの子、結構苦しんでいたから、救えるなら救おうと思っていた対象だったのに……! それに、アスモディンって、クレティア姉さま、確か……」クレティアは、静かに頷いた。

「ええ、そうね。間違いないわよ。」ジョンアイデルは、力強く言った。「だったら、なおさらだ。これは、俺やクレティアだけの問題ではない。ルミカにも深く関わることだ。そして、ルミカが関わるとなれば、他のワルプルギスのメンバーとの連携も必要になる。」アルは、凛とした口調で答えた。

「私たちも協力しますわ。潜伏者を何とかして、罠にはめて捕縛するか、あるいは退散してもらいましょう。」ルミカは、アルの言葉に被せるように叫んだ。

「退散させたらダメ! 二人は、まずは捕まえるべきだよ!」同日、夜はすっかりと更け、学園の灯りは必要最低限のものだけが残されていた。中庭を吹き抜ける風は、まるで何かを囁くかのように冷たい。そんな中、学園内の一室──ワルプルギスが“緊急の作戦会議室”として使用している魔術研究棟の地下は、異様な静けさに包まれていた。円卓の上に広げられた学園地図。立体魔投影によって、購買棟、旧校舎、植物園、倉庫といった異常反応地点が、不気味な赤色で光り輝いている。ルミナが、長い髪を揺らしながら周囲を見渡し、重々しく口を開いた。

「――彼らの動きは、明らかに“学園内の構造と結界”を探っているわ。」アルが、ルミナの言葉を補足するように言った。

「結界の綻び、監視の穴、魔力の通りやすい導線……。彼らの狙いは、間違いなく学園内部への侵攻路の確保にある。」ジョンアイデルは、さらに付け加えた。

「それともう一つ、科学室や俺の研究所も危険な可能性があると思われます」ゼレスが、短い言葉で同意を示した。

「奴らの雰囲気からして、“観察段階”ではない。既に、計画は固まりつつあるのだろう。」ルミカは、地図を指し示しながら、明るい声で言った。「私たちの目的は、こうだよ!」舞華が、静かに手を挙げた。「私たちが前に出るのは、危険ではないでしょうか? あの二人は……ただの魔族ではないはずです。」ルミナは、自信に満ちた笑みを浮かべた。

「ええ、だからこそ“本物の罠”が必要なの。」その時、ノアの感応石がゆっくりと脈動し始めた

「……もう、動き出した。魔力の波が、確かに変わった。」ジョンアイデルは、ルミナに問いかける。

「“罠”とは、具体的にどのようなものなんだ?」その問いに答えたのは、ルミカだった

「――わたしたち、おとり役を三つに分けて設置したの。」ルミナが、説明を続ける。

「第一段階:購買棟の周辺で、“結界の揺らぎ”を意図的に作り出す。奴らは、必ずそれを探りに来るはず。」ノアが、静かに付け加える。

「第二段階:旧校舎に“魔力反応”をこっそりと仕掛ける。あたかも、そこに古代の魔術装置があるかのように見せかけてあるの。」アルが、冷静に説明する。

「第三段階:植物園の奥に、結界の“核”があるように見せかける。実際はダミーだが、奴らは必ず食いつくはずだ。」

ジョンアイデルは、頷きながら言った。

「そして、倉庫にも罠を仕掛けてある。……そして、最後に来るのは、俺の研究所か植物園だな。」アルは、冷静に分析する。

「確実に、ジョンアイデルさんの魔科学は狙ってくるでしょう。罠を仕掛けるのに最適な魔科学発明品は、何かお持ちなのでしょうね?」ジョンアイデルは、自信を持って答えた。

「その魔化学兵器は、シャウラさんに頼んで既に運んでもらった。目立つものと、裏をかくもの、両方のタイプをね。」ルミナは、きっぱりと言った。「捕らえるのは難しいでしょう。ですが、学園でこれ以上好きにさせないことが、何よりも重要です。」舞華が、確認するように問いかける。「あとは、あちらにうまい具合に“疑念”を抱かせれば、それで十分なのでしょうか……?」アルは、冷静に答えた。

「その通りです。そうすることで奴らの計画を遅らせ、学園への興味を削ぎ、そして“学園は完全に監視されている”と錯覚させるのです。」 ゼレスは、腕組みをして呟いた。

「心理戦、か……。」ジョンアイデルの顔に、自信に満ちた笑みが浮かんだ

「へへ〜っ、そういうのは、結構得意な方だぜ。」しかし、ノアは深刻な表情で言った。

「ただし――問題があります。」その言葉に、円卓を囲む空気が張り詰めた。ノアは、続ける。

「アルテンとアヴィン。二人とも、“色欲”と“強欲”の権能を完全に隠しているのです。変身も、匂いも、魔力の波形も、普通の生徒そのもの。」舞華は、驚きを隠せない。

「そんなこと……できるのですか?」

ルミナは、厳しい表情で答えた。

「普通なら、ありえない。大罪の権能だからこそできる、特殊な芸当でしょう。」ジョンアイデルは、ゆっくりと息を吐き出した。

「……奴らは、“潜伏”に特化している、ということか。」クレティアが、静かに言った。

「だからこそ、私たちが“動いた瞬間”を見逃さないように、注意しなければならない。」アルは、地図上の植物園とジョンアイデルの研究所に、それぞれ印をつけた。アルは、冷静に告げる。

「この二点が、最も重要な拠点となります。そして、今回はあえて、ジョンアイデルさんの研究所のセキュリティレベルを一時的に下げてもらっています。」ジョンアイデルは、自らの役割を確認するように尋ねた。

「俺とクレティア、舞華、ゼレスは、どう動くんだ?」ルミカが、力強く答える。

「あなたたちは――最終段階の“止め”の役割を担います。」ルミナが、補足する。

「ワルプルギスの罠で奴らの動きを鈍らせる。その瞬間、あなたたちが“正面からぶつかる”のです。」ジョンテイルは、やや険しい表情で言った。「全員揃っているとはいえ、これは簡単な作戦じゃないぞ?」その時、ノアの感応石が再び強く光り始めた。ノアは、静かに告げた。

「……来た。」全員が、固唾を呑んで見守る。アルテンとアヴィンが――“研究所の罠”に、足を踏み入れた。ルミカが、高らかに声を上げた。

「全員! 配置につくわよ!」ジョンアイデルは、覚悟を決めたように短く答えた。

「……行こう。これが、“学園潜入編”の、最初の分岐点だ。」ジョンアイデルの研究所。その静寂を破るように、微かな魔力振動が空間に広がり始める。アルテンとアヴィンの姿が、一瞬揺らめいた。二人は、警戒の色を濃くする。

「……おや、妙だね」アルテンことアスモディンが、低い声で呟いた。

「周囲の魔力が、不自然に蠢いている。」 アヴィンことマモーンも、周囲を注意深く観察する。

「警戒はしているが、仕掛けの兆候が全く見えない……。」二人の目に、罠魔法陣の光はまだ映らない。完璧な隠蔽が施されているのだ。その刹那。ルミカの声が、風に乗って遠くから響き渡った。

「――来たわね! 仕掛けの時間よ!」その声が合図となり、ジョンアイデルが仕掛けた魔科学が、一斉に作動を開始する。アルテンとアヴィンは、その危険を瞬間的に感知するも、時すでに遅し。魔力の奔流が二人を拘束し、同時に幻覚結界が視界を覆い隠す。しかし、アルテンとアヴィンは、その程度の魔科学などものともせず、たちどころに拘束を打ち破り、次の目的地である植物園へと向かった。ルミカたちは、アルテンとアヴィンを追うように、瞬時に転移魔法を発動させ、植物園へと急行した。ジョンアイデルは、周囲にいる仲間にだけ聞こえるように、冷静な声で言った。

「ここを突破されるのは、最初から織り込み済みだ。問題ない。」植物園に到着した、アルテンとアヴィン。その静寂を切り裂くように、ルミカの声が風に乗って遠くから響き渡った。「――来たわね! 第二の仕掛けの時間よ!」その声が合図となり、周囲の木々の影から青い光が一斉に走り出し、瞬く間に魔法陣の網が形成される。アルテンとアヴィンは、その危険を瞬間的に感知するも、やはり時すでに遅し。魔力の奔流が二人を拘束し、同時に幻覚結界が視界を覆い隠す。ルミナが、優雅に指を鳴らした。

「幻覚結界、展開! 逃がさないわよ。徹底的に感覚を狂わせるの!」

木々の間を飛び交う魔力の弾、幻覚を引き起こす妖しい魔光線、風の音に混じって聞こえる不気味な囁き……。二人は、“欲望と色欲の象徴的な幻覚”に、容赦なく翻弄される。アヴィンは、苦悶の表情を浮かべながら翼を広げ、強引に攻撃体勢に入ろうとするが、魔法陣の強大な力によって動きが鈍らされる。

「……くっ、邪魔をするな!」幻覚のせいで距離感が狂い、本来の攻撃射程も半分ほどにまで縮んでしまっている。アルテンは、焦燥を隠せない表情で杖を構え、力任せに振るう。

「アタシを、騙そうったって、そうはいかないわよ!」しかし、幻覚の中で彼は、もう一人のアルテンの影を目撃する。その影はまるで敵意を持っているかのように、容赦なく攻撃を仕掛けてくる。

「!? 何だ……、これは!」 その瞬間、背後からルミナがふわりと浮かび上がった。

「ここよ、アルテン! 幻覚に惑わされている間に、拘束の陣を喰らいなさい!」アルテンは咄嗟に反射的に杖振るうが、杖が魔法陣に触れた瞬間に、体が宙に浮かされ、強烈な力で押さえつけられる。アヴィンも同様に、背中の翼を広げて必死に反撃を試みるが、拘束と幻覚によって、繰り出される攻撃はすべて空を切る。ルミカが円陣の中央に立ち、両手を広げて魔力を高めていく。

「欲望の力を使うほど、幻覚はより強くなる……つまり、あなたたちの力が増せば増すほど、私たちの巧妙な罠に、より深くハマっていくというわけ。」アルテンは、激しい息遣いをしながら、辛うじて立ち上がった。

「くそ……、こんなはずじゃ……計画が狂った……!」アヴィンも、咆哮を上げながら強引に魔力を解放しようとするが、幻覚結界がさらに強化され、思考を混乱させ、魔力の制御を阻害する。その時、ジョンアイデルとクレティアが、静かに木々の影から姿を現した。

「アルテン、アヴィン。ただ動きを封じるだけでは意味がない。心理的にも徹底的に追い詰める。」ジョンアイデルが、冷酷な声で囁く。

「逃げ道はない……。さあ、覚悟しなさい。」クレティアは、両手を広げ、聖なる光の結界を二人に向け、ゆっくりと展開する。

「アルテン、アヴィン。この学園は、あなたたちの好き勝手に暴れまわるための、遊び場ではないのよ!」アルテンは、焦りを隠せないまま杖を振るい、クレティアの放つ神聖な光を打ち消そうと試みる。だが、魔法陣と幻覚の完璧な連携により、繰り出される攻撃は虚空を切るばかり。アヴィンもまた、強大な魔力を放つが、ルミナの操る拘束魔法によって力が半減させられてしまう。アルテンは、歯を食いしばり、悔しさを滲ませながら呟いた。

「……学園、侮りがたし……!」アヴィンも、肩を震わせ、怒りを押し殺すように言った。

「……ぐぬぬぬぬ……次は……、次こそは……、必ず……!」ルミカは、満足そうな笑みを浮かべた。

「えぇ、今回はこれで十分よ。本格的な行動は、まだ少し先に延期することにしましょう。」クレティアは、ジョンアイデルの隣で静かに頷いた。

「学園を守るためには、常に先手を打つことが重要。奴らはまだ計画段階だったから、ワタシたちに捕まるのは、ある意味当然の結果ね。」ジョンアイデルは、静かに、しかし強い決意を込めて言った。

「……次は、絶対に逃がさない。」月明かりの下、植物園にはまだ微かに魔力の残滓が揺らめいていた。しかし、アルテンとアヴィンの存在は、完全に消えたわけではなかった。二人の潜入者の影は、学園のどこかで静かに息を潜め、次の機会を虎視眈々と狙っていた――。とある高層ビルの一室。アスモディンは、苛立ちを隠せない口調でまくし立てる。

「どうするのさ、学園のほうは警戒が強まっちまって動きが取りづらいじゃない!」マモーンも、焦燥を滲ませながら答える。

「こうなったら、ちっとばかり奥の手を使うしかないだろうな。」マモーンは、どこからか奪ってきた人形型の魔科学を取り出した。アスモディンは、驚いたような声を上げる。

「それ、アイデルが開発した魔科学道具じゃん! それを、まさか数体も使うつもり?」マモーンは、ニヤリと笑う。

「その通りやで。魔科学は、開発した者が一番その恐ろしさを理解しているって言うからな。ホムンクロイドを、せやな……、5体投入するとしよう。」マモーンは、ホムンクロイドの背中に取り付けられたスイッチを押し、5体を一斉に起動させた。すると、ホムンクロイドたちは、無機質な足取りでジョンアイデルの研究所へと向かっていく。ホムンクロイドたちは、いとも簡単に研究所の内部に侵入することに成功した。そして、内部に侵入すると、次々と研究データをメモリーにコピーしていく。データのコピーを終えると、次に学園のコンピュータールームへと移動し、学園の機密情報を抜き取る。さらに、資料室へと侵入し、保管されていた重要資料を記録させていく。ホムンクロイドたちは、任務を終え、アスモディンとマモーンが待つビルへと戻ってきた。マモーンは、早速ホムンクロイドから回収したデータをコンピューターに移し、解析を始める。

「なるほどね……。やはり、クロニクル学園には、何らかの『鍵』が存在するようやな。これからの作戦は、少し変更する必要がありそうや。アスモディン、君は引き続き学園の観察を続けてくれ。ワイは、今すぐにでも地下室を調べてみる。」マモーンは、そう言い残すと、一人でビルの地下室へと向かった。マモーンは、ビルの地下通路を抜け、隠されたルートを辿り、EXクラスのメインクラスルームの真下へと向かった。地下通路を抜けた先に待っていたのは、予想外の人物、ジョンアイデルだった。マモーンは、驚きを隠せない様子でジョンアイデルに問い詰める。

「なんでアンタがこんなところにいるんや?」 ジョンアイデルは、マモーンの問いには答えず、静かに言った。「やはり、お前の狙いは『鍵』か。」マモーンは、隠すことなく、ニヤリと笑いながら答えた。

「せや。ワイの狙いは、その『鍵』や。」ジョンアイデルは、冷静に告げる。

「残念だが、鍵はお前たちにすべて渡ることはない。鍵は、俺とクレティアとルミカがそれぞれ持っているからな。」その言葉が終わると同時に、ジョンアイデルの背中に、何かが迫る柔らかい感触が走った。なんと、ジョンアイデルの背後に忍び寄っていたのは、アスモディンだった。アスモディンは、その豊かな胸をジョンアイデルの背中に押し当て、挑発的な笑みを浮かべた。ジョンアイデルは、動じることなく冷静に言い放った。

「アスモディン、お前の目的は鍵ではないのだろう。恐らくだが、俺自身だろう。俺の性別を確信に変えることだろう。」アスモディンは、隠すことなく妖艶な笑みを浮かべた。

「あーら、そこまで分かってたのねぇー。そうよ。君は性別が男とも女ともつかないからさぁー、だから、調べているのよねぇー。君がどちらの性別の性質を持つ性、いわゆる中性なのかをね。」ジョンアイデルは、冷静に問い詰める。

「お前たちは一体何がしたいんだ? これもやはり、お前らのボスの命令なのか?」アスモディンは、ジョンアイデルの問いを否定した。

「スペルヴィアは関係ないわ。これは、リヴァイアサン様の研究の一環なの。そのために、アテシとマモーンは動かされたのよ。それに……観察するたび、やはり君に惹かれるわ! アイデル、君が男であろうと中性であっても構わない。アテシは君が好きだから。だから、アテシのものにしたい。」ジョンアイデルは、アスモディンの言葉を拒絶するように言い放った。

「何を言っているんだ? お前だけのものになる気など、さらさらない。」アスモディンは、ジョンアイデルの拒絶の言葉にも動じることなく、むしろ興奮したように身を震わせた。

「アタシ、もう我慢できない……。君のことを思いすぎると、胸が昂り、体が火照るんだよ〜!」その様子を見ていたマモーンは、慌ててアスモディンを制止しようと割って入った。

「あかん、やめぃ! そんなことしたら、取り返しがつかなくなる! アスモはん、やめぃ!」アスモディンは、マモーンを邪魔者扱いするように、手荒く突き飛ばした。

「邪魔よ! あぁー、ジョンアイデル、アテシは、ただアテシを受け入れてほしいだけなのよ……。」マモーンは、舌打ちをして吐き捨てた。

「クソ! 計画が台無しだ!」そう言うと、マモーンは空間に歪みを作り出し、その中に飛び込んで撤退していった。マモーンが撤退した後、アスモディンはジョンアイデルを逃すまいと、壁まで追い詰めた。そして、ジョンアイデルを激しく抱きしめ、その体を密着させた。ジョンアイデルは、アスモディンの強すぎる力で抱きしめられたことで、苦痛に顔を歪めた。アスモディンは、ジョンアイデルへの想いを言葉にした。

「好き……。ん~……、ちゅっ。」そう言うと、アスモディンはジョンアイデルの唇を奪い、強引に舌を絡ませた

アスモディンは、ジョンアイデルの舌に自分の舌を何度も絡ませ、激しく刺激した。その行為は、ジョンアイデルを翻弄し、快楽と苦痛がないまぜになった感覚を味わわせた。ジョンアイデルは、アスモディンに舌を刺激されるたび、抵抗することもできず、顔がとろけるように蕩けていった。ジョンアイデルの唇を激しく貪った後、アスモディンは彼の首筋に狙いを定め、ゆっくりと舌を這わせたアスモディンに首筋を舐められると、ジョンアイデルは全身から力が抜け、アスモディンに身を委ねるしかなかった。アスモディンは、ジョンアイデルの抵抗できない様子を見て、面白がっている。もっとジョンアイデルを翻弄したい、もっと彼の奥底にある感情を引き出したいと考えている。アスモディンは、ジョンアイデルの耳元で囁いた。

「言葉で伝わらないのなら、体を重ねて交わろうか。」アスモディンは躊躇なく服を脱ぎ捨て、自らの肉体を露わにした。そして、ジョンアイデルにも同じように服を脱がせ、裸にした。その後、アスモディンはジョンアイデルの肌に自らの胸を押し当て、優しく撫でるように刺激を与えた。そして、熱を帯びた体を重ね合わせ、更なる快楽へと誘った。二人の間には、言葉では言い表せない、激しく、そして甘美な時間が流れた。時が止まったかのように、互いの存在だけが世界のすべてになった。肌と肌が触れ合うたび、魂が共鳴し、快楽と陶酔が二人を包み込む。求め合う唇、絡み合う指、高鳴る鼓動。その瞬間、二人は永遠に結ばれたのだ。激しい時間の後、アスモディンは満足げな表情で既に衣服を身につけていた。その顔には、ジョンアイデルを完全に手に入れたという自信と、まだ何か企んでいるような狡猾さが入り混じっていた。アスモディンは涼しい顔で言い放った。

「アテシの中に出したんだしね…、まあこれでアテシの方は計画の1段階以上は進んだ。」アスモディンはジョンアイデルに近づき、優しくキスをした。

「君には助けられてたんだからね、あの時にね。君は優しい、そんな君は好きだよ。」その言葉は、先ほどの冷酷な態度とは裏腹に、どこか切なく、そして本心からのように響いた。アスモディンは満足げに微笑むと、空間に歪みを生じさせ、そのまま姿を消した。残されたジョンアイデルは、精気を吸い取られたようにぐったりとしていた。しかし、その表情には、どこか満たされたような、複雑な感情が入り混じっていた

静寂に包まれた鍵の保管された地下室。クレティアは、そこで信じられない光景を目にする。裸のまま、意識が朦朧としているジョンアイデルが、力なく横たわっていたのだ。クレティアは、その光景を目の当たりにして、ハッとしたように呟いた。

「アスモディン、ここまでするのか…これは、ただの挑発行動なんかじゃない…!」彼女の脳裏には、アスモディンの真の目的が、より鮮明に浮かび上がってきた。クレティアは迷わず、ジョンアイデルにそっと衣類を着せ始めた。その手つきは優しく、まるで壊れ物を扱うかのようだった。彼女の心には、ジョンアイデルに対する深い同情と、アスモディンへの怒りが渦巻いていた。空間の歪みが消え、アスモディンがビルに戻ると、そこには怒りをあらわにしたマモーンが待ち構えていた。

「アンタ、えらいことやってもうたな…!まさか、既成事実を作るとは…」マモーンの言葉には、アスモディンに対する強い非難の意が込められていた。マモーンの怒りなどどこ吹く風と、アスモディンは悪びれる様子もなく肩をすくめた。

「別にこれ、遅かれ早かれしてたことだからさ。」その言葉には、ジョンアイデルを利用したことへの罪悪感など微塵も感じられなかった。マモーンは、やり場のない怒りを押し殺しながら、アスモディンに詰め寄った。

「ジョンアイデルはんの気持ちを考えてるん?救いを求めてる君を救おうと行動してたのに、そんな無粋な真似をしたら、手を差し伸べなくなるで!」マモーンの言葉には、ジョンアイデルへの深い同情と、アスモディンの身勝手さに対する強い憤りが込められていた。マモーンの言葉を遮るように、アスモディンは涼しい顔で言った。

「そんなに怒ることかな…?それより、アンタ、鍵を手に入れたの?」アスモディンの関心は、ジョンアイデルの気持ちよりも、計画の進捗状況にあるようだった。マモーンは、苛立ちを隠せない口調で答えた。

「ワイがやる必要は省けたで。なんせ、鍵が宿ったのは君だから。本当はワイに宿らせる計画やったけどな。」マモーンの言葉には、計画の変更に対する不満と、アスモディンへの皮肉が込められていた。アスモディンは、まるで他人事のように呟いた。

「これ、偶然とはいえ、鍵はアイデル、姉さま、そして、ルミカに宿ったか。何の因果かは分からないけど。」その言葉には、運命に対する諦めのようなものが感じられた。

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