エピック39【黄の神殿】
ジョンアイデルたちの視界に飛び込んできたのは、恩羅院大陸の西の島にそびえ立つ、奇妙な神殿だった。それは、ピラミッドのような三角形の形状をしていながらも、壁面には宮殿のような装飾が施されており、異質な美しさを放っていた。神殿の前に立ったジョンアイデルは、その構造の複雑さに気づき、ハキハキと言った。「これ、地下に進むのか地上階に進むのか分かりにくいかもしれないな。多分地上階を進んで地下階の可能性があるな」彼の言葉は、神殿の攻略が容易ではないことを示唆している。クレティアは準備万端であることを示し、ハキハキとした口調で言った。
「今回は2人で挑むからね。ルミカから予めガーディアン情報は入れてるけどね。ここのガーディアンはカインか。カインって確かアダムとイブの子供だしね」ジョンアイデルはカインに関する情報を整理し、ハキハキと語った。
「アベルとは双子だっけ。確か最初に殺しをしたものとしての伝承がある。その後はあまり伝承には記されてないが、一部の伝承の書類には殺されたはずのアベルは土の中に埋められが神の手によって新たなる命を与えられたとも。そして、二人はカルデア勢力に入ったと」彼の言葉は、今回の戦いの背景にある複雑な事情を示唆している。クレティアは疑問を抱きながら、ハキハキとした口調で言った。
「おかしいな、カインは裁きを受けて追放されたのに…。なぜ、ヤハウェがいるカルデアに入れるんだろう。その伝承は間違いかもしれん。まあ、カインやアベル本人に聞くしかないけど」彼女の視線の先には、神殿の出入り口前に立つ一人の男性がいた
ジョンアイデルとクレティアの前に現れた男性は、不敵な笑みを浮かべながら言った。
「よお、お前達この神殿に挑むか。俺はアベル、あのクソ兄貴ことカインに一度殺された双子の弟だ。カインは能力だけは優れてるためガーディアンをしてる。アイツの能力はかなりのモノだ、黄の概念とか言うがそれがどれほどかだよな」彼の言葉は、二人に警戒を促すものだった。ジョンアイデルはアベルの言葉に疑問を抱き、ハキハキと尋ねた。
「アベル、お前はカルデアに所属してるのか?」アベルは肯定し、挑戦者たちを挑発するようにハキハキと言った。
「そうだよ。そして、殺しをしたカインもな。人類の中から神にするための試練神として立ち塞がる。行け!あまり俺の目の前にいるな!人類の進化を促すための勢力だが俺は俺で勝手を許されてるからな」彼の言葉は、カルデアの目的と、アベル自身の立場を示唆している。アベルに見送られ、ジョンアイデルとクレティアは未知の試練が待ち受ける神殿の中へと進んでいった。殿のエントランスに足を踏み入れた瞬間、落とし穴が作動した。ジョンアイデルとクレティアは為す術もなく落下していく。ジョンアイデルの方が先に落ち、地面に叩きつけられた。その直後、クレティアが彼の体に覆いかぶさるように落ちてきた。クレティアは落下による衝撃が少ないことに気づき、ハキハキとした口調で言った。
「あれ、そんなにダメージはないようだが。ん!?」そこで初めて、彼女は自分が床ではなくジョンアイデルの身体の上に落ちたことに気づいた。さらに、ジョンアイデルの顔が自分の胸に当たっていることに気づき、驚いた表情を浮かべた。ジョンアイデルは顔に伝わる柔らかい感触に戸惑い顔を赤らめた。クレティアは我に返り、ハキハキと謝罪の言葉を口にした。
「うわぁ~、ご、ごめん」彼女の顔もまた、赤く染まっていた。クレティアは赤面しながらジョンアイデルから退いた。ジョンアイデルは少し間を置いて、ハキハキと状況を整理するように言った。
「まさか、俺が先に地面に着くとは思わなかったな」ジョンアイデルは周囲の状況を観察し、ハキハキと呟いた。
「しかし、これ、地上に戻れる道はないか。これ、地下を進む方かな。地下神殿ってことか」彼の言葉は、今後の探索の方向性を示唆していた。クレティアは好奇心を抑えきれない様子で、ハキハキと呟いた。ジョンアイデルの苦悩を聞きつけたルミカが、彼の前に姿を現した。「ジョンアイデル、苦しいの?やっぱり感覚を失うのは耐えられないよね…、でも、試練をやめることはできない…、そんなことしたら、理想が叶わないから…、クレティア姉さんも悪気があって黙ってたわけじゃないわよ、でも、知ってたなら早く教えてもよかったのにでしょ…、クレティア姉さんはどこかきようじゃないんだよね」ルミカの言葉には、ジョンアイデルに対する同情と、試練を乗り越えてほしいという願いが込められていた。
「何階層あるんだろうね。だいたいは5階層とかが適度だと思うけどね」彼女の言葉は、探索への期待と不安を滲ませていた。ジョンアイデルは周囲の様子を観察しながら、ハキハキとした口調で言った。
「神殿には流石にクリミナル・デビルは入ってこないんだね。試練の神殿には穢れを弾く力があるのだろうか。まあ、俺も実は多少は穢れは体内にあるんだけどね」クレティアはジョンアイデルの告白を受け、彼の内面に迫るようにハキハキと尋ねた。
「アイデル、やはり、君の異様な気配の正体は穢れだったんだ。だけど、自我を保って肉体の変化もない。もしかして、その穢れの原因って差別や偏見を受けた苦しみから?」彼女の言葉は、ジョンアイデルの過去に触れようとしていた。ジョンアイデルは過去の辛い記憶を呼び起こし、ハキハキと語った。
「そうだよ。小さい頃に目を潰されて以降からだよ。俺は差別や偏見を受けてきた。そして、殆ど孤独に苛まれた。一人で悩んだ。その思いはいつからしかは…」彼の言葉は、心の奥底にある傷を露わにしていた。クレティアはジョンアイデルの言葉を受け止め、ハキハキとした口調で相槌を打った。
「疑問に変わった…ってことだね。分かるよ、その気持ち…」ジョンアイデルは少し苛立ちを滲ませながら、ハキハキと反論した。
「分かる?お前と俺は違うだろう。お前は元々から皇族、環境は恵まれてたんだろうが。だが、俺は違う。貴族の息子、そうだな、ジョースター家だが子供には何も影響は及ぼせない立場。俺は上を目指す。すべては分かり合うところを作るため」彼の言葉は、クレティアへの反発と、自身の目標への強い決意を示していた。ジョンアイデルは足早に先に進んだ。クレティアは彼の背中を見つめながら、心配そうに後に続いた。歩みを進めるうちに、二人は下に続く階段を見つけた。地下二層に到着した二人の目に飛び込んできたのは、輝きを放つ宝箱だった。宝箱を開けると、中にはメモリーと書物が入っていた。ジョンアイデルは宝箱から取り出したメモリーを読み取ると新たな力であるチェーンアームのアビリティを習得した。クレティアもまた、書物を読み解き、空を舞うフロートのアビリティを身につけた。ジョンアイデルとクレティアが辿り着いた先で、道は突然途切れてしまった。目の前には深い谷が広がり、絶望的な状況が二人に襲いかかる。しかし、よく見ると、その先の崖には何本かの杭が打ち込まれている。ジョンアイデルは静かに頷き、チェーンアームを発動させた。彼の腕から伸びた鎖は、正確に杭を捉え、ジョンアイデルは谷を越え、先へと進んでいった。階段を降りきった先に、一人の女性が待ち構えていた。彼女は一体何者なのだろうか。
ジョンアイデルとクレティアの前に現れた女性、ニトクリスは、静かに、しかし強い意志を秘めた声でジョンアイデルに問いかけた。
「私の名前はニトクリス。汝に問う、お主は何のために神を目指す」ジョンアイデルはニトクリスの目を真っ直ぐに見つめ、ハキハキと答えた。
「共存と証明のため」彼の言葉には揺るぎない決意が込められていた。ジョンアイデルの言葉を聞き終えたニトクリスは、表情を変えずにハキハキと言った。
「そうか、お主は迷いはないか。そこの女は迷いはほぼない!」彼女の言葉には、ジョンアイデルの決意を認めつつも、何か含みがあるようだった。そして、クレティアの迷いのなさを指摘した。ジョンアイデルは覚悟を示すように言った。「迷いなんかないよ、自分の感覚などを多少は犠牲にしてでも」ニトクリスは彼の言葉に興味を示しつつも、冷徹に言い放った。
「犠牲の上で何が残るか、お前は真の意味で神になれるか。まあ、観物だ、先に行け」ニトクリスの言葉を受け、ジョンアイデルとクレティアは再び階段を降り始めた。そして、その先に待ち構えていたのは、なんとアベルだった。驚愕の展開である。階段の先に現れたアベルは、ジョンアイデルとクレティアを見据え、ハキハキとした口調で言った。
「ここまで進むか、ならばやるべきことは一つだ」彼は手に持ったシェパードクルークと片手鞭を構え、戦闘態勢に入った。アベルが鞭を勢いよく打ち付けると、その衝撃で岩や砂が巻き上がり、無数の羊の形を象った石像が具現化した。目の前に現れた羊の群れを見て、クレティアは感心したように言った。
「やはり元々が羊飼いだからか」ジョンアイデルは冷静にブラックホールを作成し、羊の群れを一瞬にして消滅させた。アベルはシェパードクルークを武器にジョンアイデルに
襲い掛かったが、ジョンアイデルはラーミナルバルクでそれを防ぎ、アベルの攻撃を封じた。ジョンアイデルのラーミナルバルクによる防御を目の当たりにしたアベルは、信じられないといった表情でジョンアイデルを見つめ、ハキハキと言った。
「お前の力、ランクB以上いや、EXか」彼の言葉には、ジョンアイデルの底知れぬ力に対する驚愕と畏怖が込められていた。アベルはジョンアイデルの真意を確かめるように尋ねた。
「ジョンアイデル、お前、神になってどうする?」ジョンアイデルは力強く答えた。
「差別や偏見を少なくし多種族が分かり合えるようにする。そして、新たなる勢力を作る、ノウムカルデアという勢力をな。カルデアはヒトの文明や技術などの発展を助けるなら、ノウムカルデアは今までの神を超える存在超神計画を進める。その一段階として今までの常識を覆すことをする。古い歴史を知りそして、変革を起こすべきなところには新たなる芽を入れる」ジョンアイデルの壮大な計画を聞き終えたアベルは、興味深そうに言った。
「そうか、なるほどな、やはりお前は面白い。ならば試練をクリアしなくてはならん。俺は認めるが問題はほかの神々がどう思うかだよな。そのためにはお前はまずはミクスタッド国の皇帝になることは確実だな、神になってなおさらだ。そして、今の神は穢れを否定的に見てるものが多いがお前はその穢れも受け入れるっていうことか」アベルはジョンアイデルの決意を信じ、道を譲ることにした。
「先に進め、お前の信念は曲がらないだろう、おそらく」アベルは武器をしまい、ジョンアイデルとクレティアは階段を降り、さらなる試練が待ち受ける地下へと向かった。階段を降りた先に待っていたのは、豪華な宝箱だった。宝箱の中には、十個の指輪がはまるように設計された腕輪と、アンドラスのシジルが刻まれた指輪が納められていた。ジョンアイデルは、今まで指にはめていたバアエルの指輪、ボティスの指輪、アスタロトの指輪、そして新たに見つけたアンドラスの指輪を腕輪の窪みにはめ込んだ。すると、腕輪はまるで彼の腕に吸い込まれるように、ジョンアイデルの左手にぴったりと嵌った。腕輪がジョンアイデルの左手に嵌った次の瞬間、彼のインベントリー内にあった金色の魔導書が激しい光を放ち始めた。そして、光が収まると、そこにはアンドラスが姿を現した。
アンドラスは、ジョンアイデルの内に秘められた力を見抜き、契約を持ちかけた。
「知識と知恵の魔精を総べ、新たなる神を目指すものよ、わが名はアンドラスだ。お前とは契約を交わしてやる。お前に宿る力は虚構と因果と共栄、虚構の方を伸ばすことは簡単にできる。因果とは何か教えおかないとな、因果とは過去と未来、過程と結果のこと。つまり、過去を知ることで未来を決めることも出来るだがお前の場合は過去を変えることも可能だ」アンドラスの説明を聞き終えたジョンアイデルは、その意味を理解しようとするように、ハキハキとした口調で言った。
「なるほど、過去を変えて結果を変えたり決定事項にしたりも可能か」ジョンアイデルの理解に満足したアンドラスは、さらなる成長を促すように言った。
「そうだ、もっと経験や知識を深めろ!そうすれば道は開ける」アンドラスから力を授かったジョンアイデルとクレティアは、次の試練が待つ地下へと、階段を下りて進んでいった。階段を降りた先に待ち受けていたのは、ジョンアイデルたちの行く手を阻むガーディアン、カインだった。
カインは、ゆっくりとした動作で、まるで儀式を行うかのように言った。「ヒトは罪を背負う、汝らはそれ知ってる、だが、他の奴らは知ってても知らぬフリ或いは知らずうちに罪を背負う」クレティアはカインの言葉を遮り、核心に迫るように尋ねた。
「なにを今更当たり前すぎることを言うね、何を試すの?」カインは、その問いに答えるように、静かに告げた。
「君たちに精心と実力だよ」カインの言葉を受け、ジョンアイデルは決意を新たにしたように、ハキハキとした口調で言った。
「そうだな、俺は神になり自分の理想を叶える!それは変わらない!そのためなら自分の一部を犠牲にしても構わない、犠牲にしてもそれが戻らないと決まったわけじゃないから」カインは、ジョンアイデルの奥底にある感情を見透かすように、静かに語り始めた。
「ジョンアイデルとか言ったけ、君は分かってるんだね、自分の状態が、一部の感覚などの喪失を…、だが、確信してないが取り戻せると思ってるのか…、それは正解だよ、だが、手掛かりを握ってるのはそうだな」カインは、視線をクレティアに向け、指差した。
「そう、ソイツは知ってる、手掛かりと言わず答えそのものをな、そして、そのためには、精神の神、愛の神、そして、夢魔の力が必要、それはどういうことか分かるか?」カインの言葉を受け、クレティアは、まるで答えを知っていたかのように、ハキハキとした口調で言った。
「やはり、アスモディンの力は必要か」彼女の言葉は、ジョンアイデルたちが、新たな力を得るために、さらなる試練に立ち向かわなければならないことを示唆していた。クレティアは少し不満そうに、しかしハキハキとした口調で言った。
「これから先も喪失するものがあるなら纏めて取り戻すつもりだから、今は言わなかったのに…」するとジョンアイデルは、決意を新たにしたように言った。
「確信に変わったよ、喪失しても戻せるなら試練を安心してクリアすることが出来る」カインの表情が引き締まり、空気が張り詰めた。彼は、ジョンアイデルとクレティアに向かって、挑戦的な口調で言った。「さあ、今度は実力を示してもらうよ」その瞬間、彼の手に握られていたのは、ハルバードと片手多節棍である。それは、これから始まる激しい戦いを予感させるものだった。ジョンアイデルは、カインが構えた武器を冷静に分析し、ハキハキとした口調で言った。
「片手ハルバードか、鎌と斧の中間の武器か、そして、片手ヌンチャクか、元農民らしいね」クレティアは、状況を打開するために提案した。「ここは2人で協力して」しかし、ジョンアイデルは、クレティアに対する不信感をあらわにし、拒絶した。
「お前、取り戻せる方法知ってて今まで隠し事してたかよ!そんな奴と連携?笑わせないでほしい」クレティアは、誤解を解こうと弁明した。「本当は隠すつもりは…」しかし、ジョンアイデルは、クレティアの言葉を信じようとせず、問い詰めた。
「カインから指摘されるまで喋らなかったんだろう、別に話すタイミングは早くてもよかった、いつから知ってた?」クレティアは、正直に答えた。
「本当は味覚を失ったあと書斎を調べてからだよ、だが、言えば」ジョンアイデルは、クレティアの言葉に失望し、怒りをあらわにした。
「焦って行動するとでも言いたいのか?それって結局は俺をそんなに信用してない証拠だろうが」カインは、二人の言い争いを面白がるように、ハキハキとした口調で言った。
「おやおや、仲間割れかな?だが、そんなことは関係ない」そう言いながら、彼は片手多節棍を勢いよく振り回し、ジョンアイデル達に叩きつけて攻撃した。ジョンアイデルは辛うじて回避したが、クレティアは咄嗟に多節棍の一部を掴んだ。カインは、クレティアを狙って片手ハルバードを振り下ろし、衝撃波を飛ばした。衝撃波はクレティアに直撃したが、その隙をついて、ジョンアイデルはカインの背後に回り込み、渾身の蹴りを叩き込んだ。カインは、ダメージを受けたクレティアを気にも留めないジョンアイデルを見て、皮肉っぽく言った。
「ほおー、片方がダメージを負ってもお構い無しか、随分なことだね」ジョンアイデルは、カインの言葉を無視し、怒涛の勢いでカインを地面に叩きつけ、腕を決めた。すると、カインは突然、冷静な口調で言った。
「ジョンアイデル、君の実力は測れた、合格だよ」ジョンアイデルは、まるで何事もなかったかのように、台座から黄色のコインを一つ取った。クレティアは、ショックを受けた様子で、ハキハキとした口調で言った。「嘘でしょ、前までならワタシがダメージ受けたら気に留めてたのに、今回は」カインは、クレティアの様子を見て、冷静に分析した。
「君は思ったよりも思い上がってた、君が勝手に信頼や信用を築けてるように思ってたってだけ、君はこのまま落ちるのか?それとも」クレティアは、怒りに任せて腕をドラゴンの腕に変え、カインを殴りつけた。カインは、攻撃を受けながらも、冷静に言った。
「実力は分かった、合格、だが、君は今一度自分を見つめ直すべき、でないとジョンアイデルの失ったものを取り戻すことはできない」カインの言葉が終わると同時に、ジョンアイデルとクレティアの体を優しい黄色の光が包み込んだ。光が消えた後、ジョンアイデルは痛みを全く感じなくなっていた。痛覚を失ったジョンアイデルと、自問自答するクレティアの前に、突然、美しい黄色の天使が現れた。
黄色の天使は、優雅な声で言った。「私はウリエル、君たちはこれで3つ目の試練をクリアした。神に少しづつ近付いてる、残りの試練もクリアしなさい」ウリエルが去った後、ジョンアイデルはバランスを崩し、壁に頭を強くぶつけた。しかし、彼は全く痛みを感じなかった。その様子を目の当たりにしたクレティアは、ハキハキとした口調で、悲痛な思いを込めて言った。
「今度は痛覚が失ったのか…、アイデル、君はドンドン失ってる、いずれのことだが取り戻したい、その為には、やはりね、アイデル…」ジョンアイデルが痛覚を失った瞬間、クレティアだけでなく、異形の存在もまた、その光景を目撃していた。それは、うさぎの耳とヤギの角、そしてサソリの尻尾を持つ、奇怪な蝙蝠だった。ジョンアイデルの異変を監視していた蝙蝠の映像は、クリミナルデビルの研究所に届けられた。モニターに映るジョンアイデルの姿を見たアスモディンは、深刻な事態を悟り、呟いた。
「アイデルの痛覚がなくなってる…。黄色のコインを入手してからか、ってことはもしかしてほかの感覚もなくなってるの?見てると辛い」ジョンアイデルの身に起きた異変を目の当たりにしたアスモディンは、何かを決意したかのように空間を歪ませ、その場を後にした。ジョンアイデルとのすれ違いに苦悩するクレティアは、アルカシティの広場で一人、自問自答を繰り返していた。
「ワタシ、結局はアイデルの気持ちに寄り添えてるつもりでいただけなの…、だったら気持ちは一方通行なのね…」その時、空間の歪みが現れ、アスモディンが姿を現した。
「お姉さま、これは個人的な質問だけどさ」久しぶりに“お姉さま”と呼ばれたクレティアは、警戒心を抱きながら尋ねた。
「アスモディン、そう言えば、あんたの口からワタシをお姉様って呼ぶのは久しぶりだね、質問って?」アスモディンは、単刀直入に尋ねた。
「アイデルは感覚を失ってるの?何を失ってるの?」クレティアは、覚悟を決めたように答えた。
「赤の試練で味覚、青の試練で疲労感、黄の試練で痛覚を失ってたんだよ」アスモディンは、クレティアからジョンアイデルの状況を聞き、驚きながらも、希望を捨てずに言った。「そうなの…、なんとなくと他のヒトと違うと思ってたが、でも、取り戻すすべはあるってことだよね」クレティアは、アスモディンの言葉に同意しつつも、複雑な思いを抱えながら、答えた。「スピルダンジョンってところに行けばいい、だが、喪失するものはまだまだある可能性ある、だから、言っちゃなんだが喪失するものをすべて失ってからにしたほうがいいんだよね、だから、アイデルにはスピルダンジョンのことは本当はまだまだ先に言うつもりだったんだけどアイデルには逆効果になったわね」クレティアの言葉には、ジョンアイデルに対する深い愛情と、彼を苦しみから救いたいという強い願いが込められていた。アスモディンは、ジョンアイデルを救うために、クレティアに協力を申し出た。「だったら時期になったら皇族念話を使って呼んでほしい、アテシはアイデルのためならどんなことでもする、敵だが好きな人を救いたいのは同じのようだ、そして、全部がうまく行けば…」クレティアは、アスモディンの決意を尊重し、優しく語りかけた。
「分かったよ、いつかは戻って来るんでしょ、クリミナルデビルに所属してるけど、それもいつかは区切りはつけれるんでしょ、忘れてはいけないよ、ワタシはアタナとルミカの姉だからね」クレティアの優しさに触れたアスモディンは、自身の心の奥底に眠る感情を呼び起こされ、呟いた。
「そこまで言われるとアテシは…、本当にアイデルといい、姉さまといい、なんで、そんなに優しいのかしら」そう言うと、彼は空間を歪ませ、クリミナルデビルの本拠点へと帰還した。場面は変わり、一人佇むジョンアイデル。
「俺はヒトらしさを失ってる、でも取り戻せる、ならば、早く言ってくればよかった…、なのに…なのに…クレティアは黙ってた…、クレティアは俺のことをどう思ってたんだよ…、分かんないよ…、分かんないよ…、でも…、なんで…、クレティアのことを思うと…」ジョンアイデルは、自身の状況に対する絶望と、クレティアに対する複雑な感情がないまぜになった、やるせない思いを吐露した。彼の言葉は、物語の新たな局面の幕開けを告げるかのようだった。ジョンアイデルの苦悩を聞きつけたルミカが、彼の前に姿を現した。
「ジョンアイデル、苦しいの?やっぱり感覚を失うのは耐えられないよね…、でも、試練をやめることはできない…、そんなことしたら、理想が叶わないから…、クレティア姉さんも悪気があって黙ってたわけじゃないわよ、でも、知ってたなら早く教えてもよかったのにでしょ…、クレティア姉さんはどこかきようじゃないんだよね」ルミカの言葉には、ジョンアイデルに対する同情と、試練を乗り越えてほしいという願いが込められていた。ルミカの言葉は、ジョンアイデルの心に火を灯した。彼は、迷いを振り切り、決意を新たにした。
「俺は進むべき方向に進む、ただそれだけ、ならばやることは決まってる、実績を収めて神になる!」ジョンアイデルの言葉には、神になるという強い意志が込められていた。彼の言葉は、物語の新たな展開を予感させるものだった。場面はクリミナルデビルの研究所へ。リヴァイアサンは、ルクスリアとマモーンに新たな任務を言い渡した。「ルクスリア、マモーン、学園の方に向かうわよ、君を学生として潜り込ませるよ」アスモディンは、その計画の危険性を危惧し、異議を唱えた。「そんなことしたらマズいんじゃ」しかし、リヴァイアサンは、自信に満ちた表情で答えた。
「そこはうまく誤魔化すわよ」リヴァイアサンの言葉は、学園を舞台にした新たな陰謀の始まりを告げるものだった。




