エピック35【レムリアナ】
ジョンアイデルとクレティアはSMOの副本部を訪れていた。ジョンアイデルは冷静に言う。
「次の任務はレムリアナ大陸か。転移前はオーストラリア大陸だった場所だな。そこにアケディアとイリュテムがいるのなら、ルミナとジョンテイルに同行を要請しよう」ルミナは笑顔で応える。
「ジョンアイデルと久しぶりに一緒に任務に行けるなんて、嬉しいな!ジョンテイルも一緒ならもっと楽しいね!」ジョンアイデルは慎重に言う。
「移動には移動船艦を選択する。空からの進入は敵に察知されやすく、危険が伴うからな」ルミナはジョンアイデルに身を寄せながら笑う。
「ジョンアイデルは相変わらずクールね。そこがいいんだけど」ジョンテイルは窘めるように釘を刺す。
「ルミナさん、浮気は厳禁ですよ。忍耐の大天使の血筋を引いているんですから、自覚を持ってください」ルミナは優しく言う。
「そんなに拗ねないでよ、ジョンテイル。ボクの愛情は君にしか向いてないんだから、安心して」準備万端、ジョンアイデル、クレティア、ジョンテイル、ルミナはレムリアナ大陸へと向かうため、移動船艦に乗り込んだ。ジョンアイデルは冷静に分析する。
「イリュテムは暗示の概念を司る存在だと考えられる。虚飾による欺瞞、力の増幅、そして投影による幻惑が得意なはずだ。一方、アケディアは流れの概念を操り、エネルギー操作やベクトル操作といった能力に長けているだろう」ルミナは思いを巡らせながら言う。
「ねえ、クリミナルデビルって、誰も彼も倒さなきゃいけないのかな?もしかすると中には更生の機会を与えられる者もいるんじゃないかって気がするんだ」ジョンアイデルは答える。
「改心の見込みがある者は確かにいる。そういった存在は極力、救いの手を差し伸べたい」ジョンテイルは言う。
「兄さんらしい答えだ。でも、どうしても救えない者もいるだろうね」ジョンアイデルは断言する。
「ああ、そうだな。オレが知っている限りでは、ルクスリア、すなわちアスモディンと、アヴァリティア、つまりマモーンは改心する可能性が高い。リヴァイアサンもそうかもしれない。アケディア、イリュテム、テリオンは分からないが、ビューネ、ベルゼブト、アスタロト、イーラは絶対に無理だ。ベヒモスとシズズも同様だろう」そして、移動船艦は目的の地、レムリアナ大陸へと無事に到着した。レムリアナ大陸は、息をのむほど雄大な自然と、最先端の技術を駆使した都市が点在する、多様な魅力に溢れた場所である。ジョンアイデルは的確に指示する。
「首都は夢解析都市、オネイロポリス。大陸の中心に位置している。SMO専用バスで向かうのが最適だろう」ジョンアイデル、クレティア、ルミナ、ジョンテイルの4人は、目的の地であるオネイロポリスへと向かうため、SMO専用バスに乗り込んだ。ジョンアイデルは興味深そうに尋ねる。
「ところで、テイル、ルミナとの関係は進展してるのか?」ジョンテイルは嬉しそうに答える。
「はい、勿論です。時々手に負えないこともありますが、それもまた良い経験です」ジョンテイルは探るように尋ねる。
「ところで、兄さんはクレティア様とはどんなことになっているんですか?」ジョンアイデルは驚くべき事実を語る。
「なんと、ミクスタッド国の皇位を継ぐために、彼女と競い合うことになったんだ」ルミナは驚愕する。
「アイデル、まさかミクスタッドの養子に?」ジョンアイデルは事実を認める。
「ああ、養子縁組をしたんだ」バスは快適な走行を続け、やがて一行は夢解析都市オネイロポリスへと到着した。オネイロポリスに到着し、バスから降り立った4人を迎えたのは、数多くの種類のヘルメットを装備した異形の騎士型モンスターだった。突如現れたデビルモンスターは高らかに叫ぶ。
「メットットット!我こそはヘルメットデビラーであーる!」ルミナは涼しい顔で言う。
「デビルモンスターね。想定内よ。簡単に片付けてあげるわ!」液体金属を槍の形にして投げるが、ヘルメットデビラーには微動だにしない。ヘルメットデビラーは得意気に言う。
「メットットットット!無駄だ!我のヘルメットはミスリル製!その程度の攻撃では傷一つ付かないのであーる!」ジョンアイデルは自信を持って言う。
「ミスリルか。問題ない。攻略法は見えている。最強の金属はヒヒイロカネ、オリハルコンだ。ミスリルはその域には達しない」ルミナはいたずらっぽく笑う。
「ボクの力はまだまだあるわよ。雷の魔法も使えちゃうんだから!」ルミナが手を高く掲げると、天から強烈な雷が落ち、ヘルメットデビラーに致命的なダメージを与えた。ヘルメットデビラーは体を震わせながら立ち上がり、怒りを露わにする。
「小娘ごときが!覚悟するであーる!」次の瞬間、手の先のヘルメットが強化魔導樹脂製のものに変わる。
「受けてみろ!ロケットヘルメットパンチ!」手の先が勢いよく飛び出す。それこそがロケットパンチだった。しかし、ロケットパンチはジョンアイデルが冷静に対処する。
「残念だったな、それは通用しないである!返してやるである!」ジョンアイデルはロケットパンチを見事に掴み、投げ返した。ジョンアイデルが投げ返したロケットヘルメットパンチは、的確にヘルメットデビラーの体に命中し、凄まじい爆発を巻き起こした。ヘルメットデビラーは激昂する。
「小癪な真似を!…ん?何だ〜、貴様、よく見れば最強の概念体の候補に挙がる、3つの概念を抱く複合概念体ではないか!」ジョンアイデルは気にも留めず言う。
「それが何だというんだ?」ヘルメットデビラーは興奮を隠せない様子で言う。
「複数の概念を同時に有する存在などありえない!どうやってそれを実現した?まさか、再び根源に触れた上に接続したのか?」ジョンアイデルは警戒しながら言う。
「確かにそうだが、何が目的だ?何を探っている?」ヘルメットデビラーは企みを秘めた目で言う。
「この情報はテリオン様とリヴァイアサン様の研究に新たな可能性を開くだろう。録音は完了した」小型ヘルメット2つを空間の裂け目に投げ込み、その行き先はテリオンの研究所とリヴァイアサンの研究室だった。ジョンアイデルは頭を抱える。
「しまった!敵に余計なことを喋ってしまった!オーマイガー!なんてことだ!」クレティアは決意を込めて言う。
「仕方ない。彼の質問も無駄ではなかったかもしれない。でも、今は彼を倒すことが最優先よ」クレティアは静かにヘルメットデビラーに触れる。可能性の概念を操り、老朽という未来を植え付ける。ヘルメットデビラーの体は瞬く間に朽ち果てていく。ヘルメットデビラーは苦痛に顔を歪める。
「く、動け…ない!」ルミナは好機を見て叫ぶ。
「今だわ!」液体金属を槍の形にし、ジョンアイデルが熱を帯びた雷を纏わせる。ルミナはその槍を投げ放ち、ヘルメットデビラーの胸を貫く。
「クリミナルデビル、栄光あれ!ばんざーい!」絶叫とともに、ヘルメットデビラーの体から瘴気と穢れが噴出し、肉体は砂のように崩れ去る。残されたのは、異様な色をしたコアだけだった。ジョンアイデルは注意深くコアを拾い上げる。
「このコア、まさか…デビルフィクターとデビルクリスタルをベースに作られたものなのか?」ルミナは決意を込めて言う。
「国立科学館に行って、この謎を解き明かしましょう」ジョンアイデルたち四人は、謎の解明のため国立科学館へと急ぐ。国立科学館に到着すると、そこには多くの人が倒れていた。そのほとんどは、仲間同士で争った末の果てのようだ。アケディアは眠そうな声で言う。
「ムニャ〜…やっぱりお出迎えしちゃった。ボクはダイアのアケディア、本当の名前はベルフェだよ」イリュテムは冷徹な声で言う。
「我はナイトのイリュテム、真の名はベリアル…覚悟せよ!」ジョンアイデルは単刀直入に尋ねる。
「テリオンの手下だな。何が狙いだ?」イリュテムは冷たく言う。
「我々はテリオン様の意志のままに動く。テリオン様は孤独という闇に閉ざされている。聞けば、貴様らは多生児だと?アイデル、早く生まれただけで長男を気取るとは滑稽だな」ジョンアイデルは反論する。
「出産順で長男が決まるのは当然の理だ。それに文句を言うのは現実否定だぞ。世界の秩序を乱す行為だ」ベルフェは言う。
「生まれた順番なんて重要じゃない。それよりも、君はテリオン様の心の叫びを聞いたことがあるのか?テリオン様は長男の君に対して強い劣等感を抱いていたんだ。君は誰もが羨む才能を持っているからね」ジョンアイデルは不快感を露わにして言う。
「そんなこと、知る由もない。俺はクローンとしてジョースター家に預けられていた身だ。才能に甘えていたわけじゃない。誰よりも努力してきたんだ」ベリアルは断言する。
「だが、貴様はクローンと一つになったのだろう!記憶は確かに存在するはずだ!」ジョンアイデルは冷たく言う。
「だからといって、口に出さない本音まで理解できるわけがないだろう」ジョンアイデルは確信を込めて言う。
「それとベリアル、貴様も偽りの仮面を被っているのだろう。暗示の概念に選ばれたということは、本心とは裏腹の言葉を発している証拠だ」ベリアルは怒りに震える。
「黙れ!私の何を知っているというんだ!私の苦しみを、貴様に理解できるはずがない!孔雀の鳥人というだけで迫害された、私の痛みを!」ジョンアイデルは確信を込めて言う。
「隠しても無駄だ。貴様は魔族の血を継いでいるのだろう」ベリアルは嘲笑する。
「魔族の血、か?くだらない!一体何を根拠にそんなことを言っているんだ!」ジョンアイデルは淡々と語る。
「実は俺も魔族の血を引いている。魔族の血は共鳴し、互いの存在を認識できるんだ」ベリアルは縋るように問う。
「では、貴様は私を」ジョンアイデルは優しく答える。
「ああ、受け入れよう。貴様の気持ちが悪から善へと向かう希望があるならばな」ベルフェは遮るように言う。
「ちょっと、待って!ボクもベリアルも、ただの善悪だけで動いているわけじゃないんだ。ボクも出来れば君とは戦いたくない。だって、君はすごくかっこいいから」ジョンアイデルは核心を突く。
「ベルフェ、貴様は実は女性なのではないか?」ベルフェの姿は変貌し、女性の姿となる。
「半分は合ってるけどね、中性だよ、これがボクの真の姿さ。普段は魔科学の技術を用いて姿を偽っているんだ。理由は推測できるよね?クマの獣人と亜人間の血を引いているから、そして、ボクも魔族の血を引いてる。しょっちゅう狙われて捕獲されていたんだ。中性の魔族や珍しい種族の女性ならどんな使われ方をされるか、想像するだけで恐ろしいでしょ?」ジョンアイデルは絶望した表情で言う。
「まさか、性奴隷にされるのか…?だが、そんなことは国際法でも断固として禁止されているはずだ!」その瞬間、空間に歪みが生じ、テリオンが現れる。
「禁止されていようが、やる奴はやるんだよ。水面下でな」ジョンアイデルは驚きを隠せない。
「テリオン、貴様はそんなことまで知っていたのか?」テリオンは答える。
「ただ貴様の才能を羨むだけでは、クリミナル・デビルに加わることはなかった。だが、世界の悪しき慣習を知った時、心に誓ったんだ。汚れた世界を徹底的に浄化すると」ジョンアイデルは諭すように言う。
「ならば、俺達と敵対する意味はないはずだ。世界の汚れを浄化するという大義があるのなら、尚更俺達と共闘するべきだろう」テリオンは躊躇しながら答える。
「だが、一度組織に身を置いた者として、そう軽々しく裏切ることはできない。誘いはありがたいが、今は応じることはできない」ジョンアイデルは期待を込めて言う。
「だが、いつかは」テリオンは決意を込めて答える。
「忠義を完全に果たすまでは、組織を裏切ることはない」テリオンは、ベルフェとベリアルを連れて、戦線を離脱する。周囲を見ると、球体状の魔科学兵器が転がっている。ルミナは言う。
「これが件の魔科学兵器か」ジョンテイルはルミナに身体能力を向上させる魔法をかける。
「狐獣人格闘技、奥義、狐拳!」ルミナは手の先を狐の爪に変え、一撃で魔化学兵器を破壊する。そして、誰も気づかない地下の底で、釘が無数に打ち込まれた球体の魔科学兵器が、静寂を切り裂くように起動を開始する。全ての任務を終えた彼らは、SMO支部に帰還し、任務の完了を正式に報告する。そして、地下などの潜在的な危険性を秘めた場所の調査を行う専門調査チームと、万が一の事態に対処するための特別機動部隊の編成を上層部に要請する。ジョンアイデルは笑いながら言う。
「観光と洒落込むか。まずは腹ごしらえだ、美味いレストランでも探して行こう。腹が減ってどうにもならん」一行は、格式高いレストランへと向かう。ジョンアイデルは贅沢にローストビーフとローストラムの両方を注文し、野菜の盛り合わせ、焼きたてのパン、濃厚なスープも追加する。クレティアは手軽なハンバーガーセット、ジョンテイルは軽めのサラダと定番のフィッシュアンドチップス、ルミナは肉と乳製品を中心としたボリューム満点のセットを注文する。ジョンテイルは驚いた様子で言う。
「兄さん、意外と食べるんだね。そんなにたくさん頼んで大丈夫?」ジョンアイデルは笑いながら答える。
「そうかもな。天族の力を受け継ぎ、魔族、吸血鬼、人間の血を引き、さらに祖龍の血まで宿しているんだ。普通のヒトよりエネルギーが必要なんだよ」クレティアは分析するように言う。
「確かに、祖龍の血を宿している及び引いてる場合、生命維持だけで他の種族を圧倒するエネルギーが必要になるから、食事量が多くてもおかしくないわ、現実的な話、ワタシがそうだから」ルミナも知識を披露する。
「天族は基本的に食事は不要だけど、楽しむために食べることはあるわ。でも、混血の場合は食事が必須で、エネルギーを補給するため他の種族より多めに食べる傾向があるって聞いたことがあるわ」ジョンアイデルは食べながらふと思いついて尋ねる。
「半天族を自分に憑依させることは可能かな?」ルミナは考えながら答える。
「それはね、血の濃さで決まるわ。天族の血が濃ければできる可能性はあるわ。でも、聖なる力を持つ他の人との天依はボクとは相性が悪いのよね。ボクは血の濃ゆさが半分半分だから、力が干渉し合っちゃうの」ジョンテイルは少し興奮気味に言う。
「その天依ってやつ、天族の力を受け継いでるとか、聖なる力を持っている人なら誰でもできる技法なの?実は僕もエーテルを操れるんです。エーテルを使える人は天依の素質があるって聞いたことがあるんですが」ルミナは嬉しそうに言う。
「ええ、できるわよ!だって、ジョースター家は天族と繋がりの深い特別な家系だもん」美味しい料理と楽しい会話を楽しんだ一行は、満腹になり店を後にする準備を始めた。ジョンアイデルは明るい声で言う。
「よし、次はウルル台地に行ってみよう!あそこは天族と魔族に深い関係があるパワースポットらしいから、何か分かるかもしれない」期待と共に、一行は神秘に包まれたウルル台地へと向かった。一行が麓に到着すると、小麦色の肌をした老人が進み出てきた。
「申し訳ないが、ここから先は一般の方や未熟な考古学者の立ち入りは禁じられている。ここから先は神聖な地だからな」ジョンアイデルは躊躇なくマージフォンを操作し、SMOの所属を証明するIDを見せた。老人は驚いた様子で所属証を確認し、深々と頭を下げた。
「SMOの方々でしたか、大変失礼いたしました。探索は許可いたしますが、くれぐれも土壌や植物など、自然を大切にしてください。無闇に荒らすようなことは絶対に避けてくださいね」ジョンアイデルたちがウルル台地に足を踏み入れると、老人は背中に向かって呟いた。その顔は、悪だくみに満ち溢れていた。
「フフフフフフ、愚かな連中め。あそこには危険な虹蛇が潜んでいる。虹蛇の餌食になるのがオチだ」ジョンアイデルたちがウルル台地の探索を始めると、早速、不気味な光景が目に入ってきた。それは、まるで虹を砕いたような、色鮮やかな蛇の鱗だった。ジョンアイデルは鱗を手に取り、確信する。
「これは確かに虹蛇の鱗だ。まさか、あの老人は俺たちが食い物にされるのを期待して、ここに誘導したのか…!」ジョンアイデルたちが息を切らしながら頂上に辿り着くと、突如と、空模様が変わった。空は淀んだ薄灰色の雲に覆われ、視界を遮る。そして、彼らの前に姿を現したのは、想像を絶する巨大な虹色の蛇だった。頭には角が生え、背中には翼が生え、怒りに満ちた表情で尻尾を地面を叩きつけていた。虹蛇は大きく口を開け、牙を剥き出しにする。
「待ち焦がれた餌だ!最近は碌なものが来なかったからな。我はワナムビ、貴様らの命を喰らう者だ」ジョンアイデルは分析するようにワナムビを見つめ、結論を口にする。
「あれは元からあの姿で生まれた存在のようだな。だが、不可解だ。魔族と天族の力が同時に存在するなんて、ありえない」ワナムビは遠い目をして語り出す。
「我は元々、神聖なる竜として、この地の守り神として崇められていた。昔は人々から感謝の印として、多くの供え物を受けていた。だが、数年前の物魔大戦で魔族を喰らった時から、我の運命は変わってしまったのだ」ジョンアイデルは得意げに言う。
「物魔大戦なら詳しいぞ。魔獄界の一部の連中が物界に攻め込み、自分たちの世界に染めようとした大戦だな。マレブランケと名乗る12人の魔族が物界に肩を貸して、勝利したんだよな。5年間も続いた大きな戦いだったな」ワナムビは意外そうに言う。
「ほほう、貴様は色々と知っているんだな。そんな賢い者を食べてしまうのは惜しい。代わりに美味い餌を持ってくるなら、貴様たち4人を見逃してやってもいい。何か望みがあるなら言ってみろ」ジョンアイデルは腹を括り、インベントリーからとっておきの大きな肉塊や新鮮な野菜、貴重な茸などを取り出し、ワナムビに丁重に捧げた。ワナムビはジョンアイデルが捧げた食材を豪快に食べ始める。
「おお~、これはこれは美味なる味ではないか」ジョンアイデルは力強く言う。
「なあ、お前は元々蛇神なんだな。神界に戻るべきだ」ワムナビは思案する。
「神界か…。食糧事情は改善されるだろうな。しかし、どの勢力に加わるべきか。邪神連合は趣味が悪すぎる、ネメシア勢力は相性が悪すぎる、ガイア連盟は興味が湧かない。どうするか…」ジョンアイデルは提案する。
「カルデア勢力しかないだろう。カルデア勢力は人々の進化や文明の発展を支援する神々で構成されている。お前の力を発揮できるずだ」ワムナビは言う。
「カルデア勢力か。確かルーツドラン様が盟主及び勢力長を治めているな。えっと、お主の名前は?」ジョンアイデルは答える。
「俺はジョンアイデルだ。こっちは仲間のクレティアだ」クレティアは微笑む。
「よろしくね、ワムナビ」ワムナビは満足そうに頷き、言う。
ワムナビは念押しするように言う。
「うむ、ジョンアイデルとクレティア、名前は確かに覚えたぞ」ワムナビはジョンアイデルとクレティアに別れを告げる代わりに、静かに空を見上げると、自らの力で空間を捻じ曲げ、神々しい光に包まれながら神界へと戻って行った。ワムナビが去った後、ジョンアイデルたちは静かに山を下り始めた。麓までの道は長いが、心は軽かった。麓には皺だらけの顔をした老人が立っていた。
「今ごろ、あの四人はワムナビ様に食われてるであろう」ジョンアイデルは怒りを露わにして言う。
「誰が食われてるって!? 」老人は呆然とした様子で言う。
「ええ〜〜…!そんな事があり得るのか?一体、何が起こったんだ?」ジョンアイデルは堂々と言う。
「俺たちは武力じゃなく、話し合いで解決したんだ」老人は納得がいかない様子で尋ねる。
「ワムナビ様はどうされたんだ?まさか、放置して逃げ出したわけじゃないだろうな?」クレティアは笑いながら答える。
「安心して。ワムナビは自分の意思で神界に帰ったわ。実はね、ワムナビは最初から悪い神様じゃなかったの。ウルルに降りてきたのは、様子を見るためだったんだと思う。人々が捧げ物をしていた頃は穏やかだったんだけど、物魔大戦で捧げ物が途絶えて、仕方なく魔族を食べて生き延びていたの。それで心が荒んで、入ってくる者を無差別に襲うようになった。でも、アイデルが特別な食材を用意して、ワムナビの体と心を癒やしてあげたら、元の優しい神様に戻ってくれたのよ」ジョンアイデルは神妙な面持ちで言う。
「神を敬うのは当然だが、それが度を超えると、神を苦しめる事になる。今回の件を肝に銘じ、神との健全な関係を築いてほしい」ジョンアイデルはまるで聖職者のように説教する。老人は頭を深く下げ、畏まって答える。
「わ、分かりました」そして、ジョンアイデルたちはその場を静かに立ち去った。ジョンアイデルは前を向き、力強く言う。
「次はマジェドベベ遺跡に行こう。そこは超古代遺跡のはずだ」超古代文明の謎が眠るマジェドベベ遺跡を目指し、ジョンアイデルたちは旅を続けた。マジェドベベ遺跡に足を踏み入れた一行は、目を疑った。転移前の遺跡の名残はあるものの、そこには機械仕掛けの構造物や、近未来を思わせる装飾が施されていた。まるで古代と未来が混ざり合ったような、奇妙な光景が広がっていた。ジョンアイデルは腕を組み、考え込むように言った。
「文献によると、この遺跡は元々、自然の素材を活かした古代の建造物だったはずだ。転移によって、こちらの世界の技術や歴史が混ざり合ってしまったんだろうか」好奇心と警戒心を胸に、ジョンアイデルたちはマジェドベベ遺跡の深部へと向かった。ルミナは周囲の空気を感じるように言った。
「ココ、神々しい気配がする。神格のコインが隠されている可能性もあるかもしれない」ジョンアイデルたちは、遺跡の構造を確認しながら、ゆっくりと探索を進めた。通路や部屋には、機械の残骸や壊れた装置が散らばっており、ジョンアイデルは何かの手がかりになるかもしれないと考え、それらを慎重に回収した。遺跡の奥から、異臭とともに不気味な気配が迫ってきた。現れたのは、穢れに汚染されたタスマニアデビルだった。その姿は見るも無残で、ジョンアイデルたちに対して敵意を剥き出しにしていた。ジョンアイデルは悲しそうな表情で言った。
「転移してきた生き物も、この世界の穢れに染まってしまうなんて…」危険を察知したルミナは、躊躇うことなく液体金属の槍を振りかぶった。槍は鋭い輝きを放ちながらタスマニアデビルの胸を貫き、命を奪った。ルミナは倒れたタスマニアデビルに向かって静かに言った。
「ごめんね。こうするしかなかったの。あなたは元々強い生き物だったけど、穢れに負けてしまった。でも、あなたの魂は、きっと安らかに眠れると信じているわ」ジョンアイデルたちは、先ほどまでの出来事を胸に刻みながら、上へと延びる階段を登り続けた。階段の先に待っていたのは、何もない殺風景な部屋だった。しかし、ジョンアイデルは見逃さなかった。部屋の隅に、古びた祭壇が置かれているのを。
「この祭壇に、ラーミナルバルクを捧げることで、更なる力が得られるかもしれない」石版の紋様に導かれるように、ラーミナルバルクをそっと置いた瞬間、石版とラーミナルバルクが一体化した。ラーミナルバルクの刃は研ぎ澄まされ、強度が格段に上昇した。さらに、全体の形状が変化し、十字を模した優美な片手杖へと生まれ変わった。刃の色は金色で、柄と鍔の部分は黒色である。
石版から光が消え、ジョンアイデルは新しい武器となったラーミナルバルクを手に取った。刃の付いた片手十字杖へと変貌した姿に、思わず声を漏らした。
「まさか、こんな形に変わるとはな…しかも、色まで…」ラーミナルバルクの金色の刃は、まるで魔法のように現れたり消えたりした。ジョンアイデルは、新しい武器の可能性に胸を躍らせた。ラーミナルバルクの変化に触発され、ジョンアイデルは大胆な仮説を口にした。
「考えてみれば、概念刀剣のグラディウスを強化できる場所があっても不思議じゃないな」ジョンアイデルたちは、ラーミナルバルクの新しい力を信じ、先へと進むことを決意した。再び現れた階段を、躊躇なく登り始める。階段の上に置かれた宝箱は、黒を基調とし、金色の線が上品に輝いていた。ジョンアイデルが宝箱を開けると、金色の縁取りが施された黒いマントが現れた。ジョンアイデルはためらうことなくマントを装着した。ジョンアイデルたちは、互いに顔を見合わせ、頷き合った。そして、新たな階段を見つけ、迷うことなく上へと向かった。ジョンアイデルのマントが、彼らの進むべき道を示しているかのようだった。階段の上には、夢のような光景が広がっていた。様々な形や大きさの宝箱が、そこかしこに置かれている。ジョンアイデルは、興味を惹かれた宝箱を開け、中に入っていた赤いオパールと青いオパールを見つめた。ジョンアイデルがオパールを持ち上げた瞬間、中から光が溢れ出し、宝石は指輪に変形した。指輪はひとりでに動き出し、ジョンアイデルの首飾りに加わった。同時に、赤い光と青い光が渦を巻き、それぞれの色をしたシルフが現れた。
クレティアは目を丸くして言った。
「シルフ!?私と契約した精霊と同じ種族…?」赤いシルフは勢いよく言った。
「なるほど、姉さんであるエアイレは、このヒトと契約したのか。私はウォム、熱を操る精霊だ!」青いシルフも続けて言った。
「そして、冷風を操る精霊、チリー!」二人はジョンアイデルに視線を向け、口を揃えて言った。
「あなたと契約してもいい? 」ジョンアイデルは凛とした声で言った。
「よく聞け!私はジョンアイデル。種族の壁を越え、相互理解を深めることを願っている!」ジョンアイデルの声が響き渡る中、ウォムと赤いオパール、チリーと青いオパールは互いに呼応するように輝き始めた。そして、二組の間を繋ぐ光の架け橋が現れ、魔力を伝える経路が確立された。ウォムとチリーがジョンアイデルとの契約を終えた後、クレティアは次は自分の番だとばかりに宝箱を漁り始めた。そして、念願の龍玉を含むドラゴノイドの遺産を発見し、満悦の笑みを湛えた。残りのメンバーも、めったに手に入らない希少な素材を見つけ、戦力アップに繋げようと意気込んでいた。ジョンアイデルたちは、手に入れたばかりのアイテムを吟味しながら、アルカシティへの帰路を急いだ。次に何が待っているのか、期待と不安が胸の中で交錯していた。




