エピック29【ルミカの告白など】
ジョンアイデルは、リヴァイアサンとの秘密の盟約と、頭に宿る魔科学道具の存在を胸に、深く思案していた。今の自分に何ができるのか、そして、その力を何に使うべきなのかを彼は自問自答していた。そして、月明かりが差し込むワルプルギスの屋敷で、ルミカは一人、苦悩の色を浮かべていた。
「ワタクシは嘘はつきたくない。ワルプルギスの一員だが、この気持ちも嘘ではない。あの人が好きなのは…」 彼女の告白は、誰に届くこともなく、ただ静かに夜空に消えていった。そして、ジョンアイデルは、静かに目を閉じ、自らの心に問いかけていた。
「オレは選ばないといけないか…。オレは正直言ってクレティアのことは確かに好きだ。だが、ルミカもオレを好いてる。おそらくだが、好意は異性への恋愛感情…慕情であろう」 彼の言葉は、誰に届くこともなく、ただ静かに自室に消えていった。恋愛の悩みに加えて、ジョンアイデルの心には、救済すべき者たちの顔が浮かんでいた。
「それに救うべき存在もいる。一人はルクスリアことアスモディン。アイツはおそらく俺のことを好いてるし、そして、アヴァリティア。可能ならばアケディア、イリテュム、テリオンも救いたいな。リヴァイアサンはおそらく策略じみた行動をとってるから心配はいらんだろう」 彼の言葉は、彼が背負う運命の複雑さを物語っていた。クレティアは、ジョンアイデルのことを誰よりも愛していた。だからこそ、彼の理想が叶うことを願いつつも、彼自身が傷つくことを恐れていた。
「ジョン、ワタシは君を一番に思う。理想を叶えるのはいいけど、何かを犠牲にだけはしてほしくない。穢れてもいい、だけど、堕ちてほしくない」 彼女の言葉は、ジョンアイデルの心に寄り添うだろう。ジョンアイデルは、豪邸の庭に設置された郵便受けから、郵便物を取り出した。庭は広大で、手入れの行き届いた芝生が美しい。彼は郵便物を手に、屋敷の中へと戻ると、それを丁寧に整理し始めた。自分の宛名が書かれたもの以外は、それぞれの名前が記された壁掛けホルダーに収めていった。ジョンアイデルは、自分の個室に戻り、ほっとした表情を見せた。彼は机に座り自分の郵便物の封を切り始めた。中には、日常的な郵便物がほとんどだったが、その中に、彼の運命を左右するかもしれない重要な書類が紛れていることに気づいた。彼はそれらの書類を真剣な眼差しで見つめた。ジョンアイデルは、書類に書かれた内容に驚愕した。それは、特殊精霊の居場所を記した、極めて重要な情報だった。彼は急いでスマートフォンを取り出し、マップアプリを起動した。書類に記載された場所を一つずつ確認しながら、アプリに正確な位置情報を登録していった。ジョンアイデルは、マップアプリに表示された特殊精霊の居場所を、満足そうに見つめた。
「これで場所は見当ついたな」彼は自信に満ちた口調でそう言った彼の目は、すでに次の行動を見据えていた。一方、ルミカはマージフォンを手に取り、ジョンアイデルに宛ててメールを作成していた。彼女の指先はキーボードの上を滑るように動き、メッセージを打ち込んでいく。送信されたメールには、彼女の切実な想いが込められていた。
『今日の夕方、陰陽広場に来てください。そこで重要な話があります。ただし、一人で来てください』ジョンアイデルは、ルミカからのメールを読み終え、軽く目を見開いた。
「陰陽広場って、神秘の森を抜けた先にあるところだ。夜景も夕景も朝景も昼景も綺麗なところと言われてる。それに、恋愛の神:恋命の像がある…もしかすると、俺に気があるんじゃないのか…」彼は、ルミカの誘いに、期待と不安が入り混じった感情を抱いていたが、ルミカの真意を確かめるために、覚悟を決めた。ジョンアイデルは、ルミカからのメールに返信する前に、深呼吸をした。待ち合わせまで、まだ時間がある。
「時刻としては16時半に着けばいいかな。それまで、どのように時間つぶそうか…」彼は、陰陽広場へ向かう前に、やるべきことを整理しようと考えた。ジョンアイデルは、ルミカからのメールについて、何か引っかかるものを感じていた。
「とりあえず、今は正午過ぎだしな。しかし、ルミカのやつ、雑把に時間指定だなんて珍しい。アイツ、スケジュール管理とかしそうなんだがな」彼は、疑問を抱きつつも、返信を送ることにした。
『時刻は16時半〜17時でいいかな』
ジョンアイデルがルミカにメールを送ってから、少し時間が経ち、再びマージフォンが振動した。確認すると、ルミカからの返信だった。
『16時から17時半なら大丈夫だよ』
短いメッセージだが、ルミカの返信は簡潔で、無駄のない性格を表しているようだった。ジョンアイデルは、ルミカからの返信を読み終え、深呼吸をした。待ち合わせまで、まだ時間がある。
「3時間半前後は時間あるな。まずは昼ご飯を取ろう」彼はそう言い、リビングへと向かった。ジョンアイデルがリビングに入ると、そこには豪華な食事が用意されていた。テーブルには、様々な種類のパン、彩り豊かなサラダ、温かいスープ、そして香ばしいロースト肉が並んでいる。クレティアは、リビングの豪華な食事を無視し、ジョンアイデルに深刻な表情で語りかけた。
「やはり、ルミカはこの豪邸の中にはいないか。ワルプルギスの屋敷に居る可能性があるね。ワタシ達もワルプルギス所属だけど、恐らくアイツはもう…」ジョンアイデルは、クレティアの言葉を否定し、確信を持って言った。
「裏切ったとでも言う気か。少なくともそうは見えないと思う。ワルプルギスの目的は平等と共存。それは俺やクレティアと同じ目的だしね」クレティアとジョンアイデルは、リビングのテーブルに並んだ豪華な食事を囲み、それぞれの思いを胸に、昼食を取り始めた。そして、時刻は13時。ジョンアイデルとクレティアは、食事が終わり、それぞれの計画を実行に移すために、行動を開始した。ジョンアイデルは、クレティアに試すような口調で言った。
「なあ、クレティア、もしもの話だが、俺がミクスタッドの皇帝になりたいと言ったらどうなんだろうか?」
クレティアは、ジョンアイデルの言葉の真意を測りかねながらも、答えた。「それはワタシの一存では決めれない。継承者は皇族ってのは一般的だが、まあ、例外がないわけではないね。遥か昔だが皇族に継承者がいない時に先代女皇が目に着けた存在が後継者になるって話は聞いたことがある」場面変わってミクスタッド国のミクスタッド国の宮殿の一室。フィリアは神妙な面持ちで未来について語り始めた。
「龍眼で見たこの国の未来には、クレティアが皇位を継ぐ未来と、そして、ジョンアイデルが皇帝になる未来が見えた」その言葉を聞いたアンプは、驚きを隠せない様子でフィリアに問いかけた。
「フィリア、もしかして、ジョンアイデルにも継承権を与えるのか?」フィリアは、アンプの問いかけに、落ち着いた様子で答えた。
「相応しいと判断したら継承権を与える。今はまだだよ」アンプは、フィリアの言葉に納得し、冷静な口調で付け加えた。
「確かに今は時期が早い。クレティアからは話は聞くが、ジョンアイデルは祖龍の血を宿してるが、実績や教養が十分とは言えない。もし、皇帝になるならキチンとそれ相応の教養を身に着けてもらわないといけない」ジョンアイデルは、豪邸の書斎へと向かい、書物を探した。書斎には、様々な種類の書物が並んだ棚があり、その中に、ミクスタッド国の帝王学に関する書物があるのを見つけたのである。ジョンアイデルは、その中から一冊を選び、読みふけった。ジョンアイデルは、書物を読み進めながら、ミクスタッド国の歴史について理解を深めていった。
「なるほどね、ミクスタッド国は元々は竜の加護の国だったか。それが祖龍を信じる者のみの宗教団体が纏め上げて国家の礎を作ったと。それで祖龍の血を宿すものや引きし者が皇帝になる習わしがあるのか」ジョンアイデルは、ページを繰り、書物を読み進めながら、ミクスタッド国の統治の変遷について学んでいった。「なるほどね、ミクスタッド国に魔科学が入ったのは20世紀前だったのか。初代女皇が1世紀治めて、次は男性の皇帝、その次はまた女皇が治めた、今の女皇は12代目なのか」ジョンアイデルは、ページを繰り進め、ついに最後のページにたどり着いた。しかし、そこで彼は秘密の仕掛けに気づいた。なんと、本の裏表紙には、マイクロメモリーチップが隠されていたのだ。ジョンアイデルは、マイクロメモリーチップを手に取り、不審に思いながら観察した。
「こんなものを仕込むとは一体?」彼は、自分の肉体にメモリーチップを接続できる部分があることに気づき、そこにチップを接続した。すると、ジョンアイデルの脳内に、龍神プログラムがインストールされ、彼の知識と能力を飛躍的に向上させた。龍神プログラムがインストールされたジョンアイデルは、続けて二冊目の書物、ミクスタッド国と祖龍について書かれた本に手を伸ばした。彼はそのページをめくり、読み取った情報を口にした。
「ミクスタッド国に崇め祀られてる祖龍はルーツドランと金の祖龍、銀の祖龍、黒の祖龍、白の祖龍か」ジョンアイデルは、二冊目の本のページを読み進め、ミクスタッド国の創世記について理解を深めた。
「ミクスタッド国になった土地は祖龍に守られた土地である。そして、迫害されし者は藁にもすがる思いで祖龍に縋った。そして、祖龍は人間との間の子に自分の土地を治めることを託し、発展させて国にした。そして、今のミクスタッド国のように多種族繁栄に至った」ジョンアイデルは、二冊目の本を読み終え、念のため裏表紙を確認した。すると、そこにもマイクロメモリーチップが隠されているのを発見した。ジョンアイデルがそのチップをはめ込むと、今度は彼の脳内に虎龍プログラムがインストールされた。ジョンアイデルは、自身の身に起こった変化に戸惑いを感じながら疑問を口にした。
「龍神プログラムに虎龍プログラムか、何の狙いでこんなものを」ジョンアイデルは、書斎に閉じこもり、徹底的にミクスタッド国や祖龍に関する書物を読み漁った。午後3時。ジョンアイデルは外出のため、まずは身支度を整えることにした。そして、必要なアイテムを整理し、忘れ物がないか確認した。ジョンアイデルは、時間を確認しながら独り言を呟いた。「16時から17時半に陰陽広場に着けばいいか。今は15時過ぎだし、まあ、そろそろ出かけるか」ジョンアイデルは豪邸を後にし、携帯移動ポータルを起動させると、地上エリアへと転移した。クレティアは、ジョンアイデルの行動を把握するため、気づかれないように彼の後を追跡した。ジョンアイデルは、方向感覚を頼りに呟いた。
「まずは神秘の森だな。確か東側か」ジョンアイデルは、東の方角へ向かい、神秘の森を目指した。やがて、彼の視界に神秘の森が広がり始めた。クレティアは、ジョンアイデルに怪しまれないよう、注意深く尾行を続けた。ジョンアイデルは、ワクワクした表情で呟いた。
「この森を少し探索してから陰陽広場に向かうか」ジョンアイデルは、神秘の森の探索を開始した。森に生える木の葉は虹色に輝き、樹の実の色は様々で、まるで楽園のようだったジョンアイデルは、神秘の森に生えている珍しい植物に興味を惹かれ、虹色の木の葉や、不思議な形をした木の枝、色とりどりの樹の実を拾い集めた。神秘の森での探索を切り上げ、ジョンアイデルは陰陽広場へと進路を取った。ちょうど時刻は16時だったジョンアイデルは、広場の中央で立ち止まり、待ち合わせ相手に不満を抱きながら言った。
「ルミカのやつ、一体何のようだ? オレをここに呼び出して」すると、まるで彼の言葉に応えるかのように、ルミカが現れた。ルミカは、ジョンアイデルを見つけると、ホッとした表情で言った。
「ごめん、待たせた?」ジョンアイデルは、無表情で、淡々と答えた。
「今着いたところだけど」ルミカは、ジョンアイデルに近づき、耳元で囁くように言った。
「ごめんね、突然呼び出してね。しかも、一人で来させて。どうしてもジョンに伝えたいことがあってね」ジョンアイデルは、ルミカの言葉に驚き、戸惑いながら尋ねた。
「その伝えたいことは、クレティアに聞かれたらまずいことか?」ルミカは、ジョンアイデルの顔色を窺いながら、慎重に答えた。
「確かにある意味、クレティアに聞かれたらまずいことだね」ジョンアイデルは、少し身構えながら、短く言った。
「まあ、聞くだけは聞く」ルミカは、少し照れながらも、ジョンアイデルに勇気を出して告白した。
「ありがとう。実はワタクシ、ジョンアイデルのことが好きです。それは一人の男として、恋愛感情の意味でです」ジョンアイデルは、顔を赤らめながら、どもるように言った。
「ちょっと待て、今のってもしかして告白か…、待て…、整理が追いつかないな」ルミカは、少し頬を赤らめながら、ジョンアイデルに可愛らしく答えた。
「そうだよ、愛の告白ってやつだよ」ジョンアイデルは、ルミカの告白に戸惑いつつも、冷静さを保ち、現実的な問題を指摘した。
「そもそもだが、君はワルプルギス所属で、陪審員の役割を持っているんだよね。きっとこのことを知られるとまずいんじゃないか?」ルミカはジョンアイデルの目をじっと見つめ、力強く言った。
「役割とかは関係ないよ」ジョンアイデルは、ルミカの言葉に戸惑い、自分の未熟さを自覚しながら、苦悩を吐露した。
「オレには分からないよ…。オレは…、まだ、何か実績も収めてない。むしろ神格の試練をしている最中だ。その中で失うものもある…。そんなオレを恋愛的に好きと言われても…」ルミカは、ジョンアイデルの目をじっと見つめ、強い決意を込めて言った。
「それでも、ワタクシは君が好きです」ジョンアイデルは、ルミカの目をじっと見つめ、真剣な表情で言った。
「オレは実績を収めて課題をクリアしたら返事したい。長く時間を置くかもしれない。それでも、返事は待っててほしい」ルミカは、ジョンアイデルの言葉に覚悟を決め、彼の唇に自分の唇を重ね、強く抱きしめた。ジョンアイデルは、ルミカのキスに少し抵抗を感じながらも、拒むことができず、いくらかの性気を奪われた。突然のキスは終わり、ジョンアイデルはルミカから解放された。彼の唇にはルミカの感触がまだ残っていた。ジョンアイデルは、頬を赤らめながら、動揺を隠せない声でルミカに言った。
「い、いきなり、何をしてるのよ」クレティアは、二人の様子をずっと見守っていた。そして、キスを目撃した瞬間、抑えきれない感情が爆発し、ルミカに平手打ちを食らわせた。ルミカは、頬をさすりながら、信じられないといった表情で言った。
「痛ぁー!なんでクレティア姉さんがここにいるのよ!」クレティアは、腕を組み、ジョンアイデルを庇うようにルミカに言い放った。
「ジョンのことが心配でついてきたんだよ」クレティアは、ルミカを睨みつけながら、激しい口調で責め立てた。
「あんた、信じられない。返答を待ってほしいと言った相手にキスをして、しかも、性気まで奪って何をする気だったの?」ルミカは、クレティアの言葉に感情を逆撫でされ、声を荒げながら言った。
「アンタには関係ないでしょう。しかし、アンタはいいよね、次期女皇なんだし、恵まれすぎてるんだよね。それとも、ジョンアイデルのことを所有物か何かと勘違いしてる?」クレティアは、ルミカの言葉に衝撃を受けながら、冷静さを保ち、分析するように言った。
「やっぱり、ワタシのことを何処かで妬んでたんだね。前時、家族だのなんだの言ってたが、しょせんはどこかで劣等感を覚えてた。それって本質的にはアスモディンと同じじゃない」ルミカは、クレティアの言葉に激昂し、声を荒げながら反論した。
「今なんて言った?アスモディンと同じ?家出して犯罪組織に加担してるアイツと同じ?ずいぶんとバカにしたような事を言うね。私が、私が、どんな思いで神格者になったかも知らないでさ!」クレティアは、ルミカの言い分に耳を傾けず、事実を突きつけるように言った。
「今のルミカはジョンの気持ちを一番に考えてない!そう言うことでは言われても仕方ないじゃん。返事を待ってほしいと言った相手の唇を奪うとか、普通はしないよ」ルミカは、自信を失い、消え入りそうな声でジョンアイデルに尋ねた。
「私は、私は、結局何も手に入らないの?ジョンアイデル、ねぇ~、どうすればいいの?」ジョンアイデルは、ルミカの頬を優しく撫で、励ますように言った。
「俺には分からないな。手に入れるには努力をしないといけない。手に入らないで諦めるルミカは見ていられないなぁー、悪いがそんなルミカを側に置くのは危険だな…」クレティアは、ジョンアイデルの手を握り、力強く促した。
「ジョン、行こう。ルミカ自身が変わらなければ、どんなに言葉をかけても無駄だよ。手を差し伸べるのが優しさとは限らないから」クレティアはジョンアイデルを優しく導き、二人は静かに陰陽広場を去っていった。クレティアとジョンアイデルが去った後、陰陽広場には静寂が訪れた。ルミカは一人立ち尽くし、降り始めた雨に打たれていた。その雨は、彼女の涙のようにも見えた。陰陽広場に一人佇むルミカの前に、突然空間の歪みが生じてルクスリアが現れた。ルクスリアは、楽しげな声で言った。
「あーあー、やってしまったね、ルミカ。君は焦りすぎたんだよ」ルミカは、泣き叫びながらルクスリアに詰め寄った。
「お前に!お前に何がわかる!」ルクスリアは、ルミカの目をじっと見つめ、冷たい口調で言った。
「そうだね~、分からないわよ、ルミカのことなんか。結局、ルミカはどこかで自分のエゴを閉ざしてるんだからさ」ルミカは、苦悶の表情を浮かべながら、自分の心の内を語り始めた。
「私は陪審員。陪審員なら自分の欲をさらけ出すのはいけない。だが、やはり恋愛感情や何かが好きってのは抑えきれない」ルクスリアは、ルミカの肩に手を置き、優しく微笑みながら言った。
「好きを抑えきれない、やりたいことはやりたいは別に持ってていいものだけどね。どんなに清らかな人でも持つもの。理想理念、それはヒトの原動力の一つだから」ルクスリアは、ルミカの耳元で囁くように、しかし力強く言った。
「理性だけじゃやっていけないよ。自分に素直になりなさいよ。今はジョンに拘るべきではないわ。手に入れたいものは手に入れる。そして、叶えたいことは叶えたいと強く思うこと」ルミカは、ルクスリアの言葉を反芻し、ゆっくりと頷いた。
「アスモディン姉さん、君に大切な物を教えてもらうとはね。そうか、ワタクシは理想理念を持っていいんだね。なんか吹っ切れたよ」ルクスリアは、そっけない口調で言った。
「別に礼とかは言わなくていい。アテチは当たり前のことを言っただけだからさ。ただ一つ言えるのは、ジョンアイデルがどんな答えを出しても、自分の根本の理想理念は曲げちゃダメだよ」ルミカは、長年の葛藤から解放されたように、心の底から笑みをこぼした。その笑顔は、まるで春の陽光のように暖かく、周囲を明るく照らした。同時に、空は劇的に変化し、雨雲は消え去り、まばゆい太陽が顔を出し、希望に満ちた虹が空を彩った。その頃、クレティアとジョンアイデルは、陰陽広場から見下ろせる丘の上で、遠くの空を見つめていた。クレティアは、ジョンアイデルに苦笑しながら言った。
「まったく、ジョン、単独行動はあんまりよろしくないね。こんなことに巻き込まれるからね」ジョンアイデルは、少しムッとした口調で言った。
「今回の件は俺は悪くないだろう」クレティアは、ジョンアイデルの意図を探るように問いかけた。
「ところでさ、ジョン、ミクスタッド国の書物を書斎で読み漁ってたんだよね。もしかして、卒業後はミクスタッド国に定住するつもりなの?」ジョンアイデルは、少し得意げに言った。
「定住するつもりだよ。あわよくば皇帝になってみたいけどね」シーンは切り替わり、ワルプルギスの屋敷へ。薄暗い照明が、屋敷全体を不気味に照らし出し、ワルプルギスの妖しい雰囲気を際立たせていた。ルミナは、鋭い眼差しでルミカを射抜き、言い放った。
「ルミカ、アンタ、陪審官としてあるまじき行動を取ったみたいだね」ルミカは、視線を逸らさず、きっぱりと言った。
「確かにふしだらなことはしてしまったかもね。でも、自分のエゴも大切にしたい」アルは、腕を組みながら、淡々と言い渡した。
「まあ、いいよ。だが、暫くはジョンアイデルとの接触は禁止だよ、あの豪邸への立ち入りは禁止だし、学園でも話しかけては駄目だよ!」ゲルドは、拳を握りしめ、熱い視線を送った。
「ジョンアイデルか。手合わせしてみたいな」萌愛は、何かを確信したように、力強く言った。
「そうね。あの子、ただの半魔精とは思えないし、いろいろ調べてみたけど、フォンセだけじゃないわね。あの子の正体、あれは一種の星の意思だよ。究極の一の一体だよ」ステラは、真剣な眼差しで、その特性について問い詰めた。
「つまり、どのようなことをしても殺せないし、死ぬことも老いることもない、とね。だが、子孫は残せるのか?」萌愛は、確信に満ちた表情で頷いた。
「そういうことだよ。しかも、星の守護者:ステラであり、ヒトの守護者:ホモーであり、そして、人類愛の候補」アルは、冷静に状況を判断し、未来を予測するように言った。
「今はまだ未覚醒か。だが、神界に行ったらおそらくね」クレティアは、ジョンアイデルを抱きしめ、その肩に顔をうずめた。瞳からは、静かに涙がこぼれ落ちる。
「ジョン……。君がどんな風になろうと、ワタシは見捨てない。たとえ、世界中が君を敵に回しても……」クレティアは、ジョンアイデルの服を強く握りしめ、震える声で続けた。
「失ったとしても、必ず取り戻せるからね。ワタシが、君を信じているから……。だから、君は試練をクリアして。どんな絶望に打ちひしがれようとも、必ずもとに戻す」




