エピック162【皇帝神域】
ジョンアイデルは先の部屋に進む。すると門がある。
「あれが皇帝神域への……入り口か」
目の前にそびえ立つのは、黒光りする金属と冷たい石で造られた巨大な門。高さは天井まで届き、表面には建国以来の歴史と、歴代の皇帝たちの名前が刻まれている。近づくほどに感じる、圧倒的な重圧と神聖な空気。まるで国そのものがここに凝縮されているかのようだ。フィリアがそっと横に立ち、説明する。
「ええ、それが最後の関門です。この門の先こそが、真の皇帝だけが足を踏み入れることを許された『皇帝神域』。そして今、その最深部には……あなたの最大の試練、ディザステトが待っています」ジョンアイデルは門に手をかける。冷たい感触が掌に伝わると同時、背後からカースの声が追いかけてくる。
「忘れるなよ。その門をくぐる者は、ただ力が強いだけでは不十分だ。民のために法を定め、国を導き、未来を守る——その覚悟と責任そのものが、お前の鍵となる」
「ああ、知ってる」ジョンアイデルは力強く頷き、先ほど自身が宣言した言葉を心に蘇らせる。障害を持つ者への救済、国民全員が安心して暮らせる仕組み、そのすべてを制定すると誓った、あの決意を。
「俺がこれから作り上げる国の姿、そして俺自身が皇帝として何を為すべきか……その答えは、もう俺の中にはっきりとある。だからこの門、俺の手で開かせてもらう!」彼は両手で門を押し広げる。きしむような重厚な音と共に、ゆっくりと扉が開き、眩いほどの光が溢れ出す。開かれた門の彼方、星々が瞬く広大な空間の奥深くから、ディザステトの低く澄んだ声が響き渡る。黒い靄のような体はその場から動かず、ただゆっくりと片手を広げて道を示す。
「さあ、奥まで来てみるがいい。この神域はただの広間ではない。一歩進むごとに、お前の内面、資質、そして運命を試す試練が待ち受ける」彼の声には、これまでの四天王たちのような敵意や嘲笑はなく、むしろ審判者としての厳かな重みが宿っていた。
「どんな試練が待っているかは、お前自身が足を踏み入れて初めて分かること。力、知恵、意志、信念……何が問われるかは俺にも定められん。だが、そのすべてをクリアし、この道のりを乗り越えてこそ、真の資格が認められる」ディザステトはマゼンタ色の瞳を輝かせ、ジョンアイデルの心の奥底まで見通すように見つめる。
「恐れることはない。お前がこれまで積み上げ、学び、誓ってきたものすべてが、お前を守り、導いてくれるだろう。さあ、真の皇帝となる覚悟があるのなら……俺のもとへたどり着くがいい」言葉が終わると同時、ジョンアイデルの足元から先、無限に続くかのように見えた道が柔らかく光り始める。左右の景色はゆっくりと形を変え、過去の歴史の断片や、これから訪れる未来の可能性が、霞のように浮かんでは消えていく。ジョンアイデルは剣を鞘に収め、胸元に手を置いて一度だけ深く頷く。教養の証明で固めた決意、そして自ら描いた未来の構想を心に刻み、まっすぐな瞳で道の先を見据えた。
「ああ、分かっている。どんな試練が待っていようと、俺は止まらない。俺の手でこの国を導き、必ず民が笑って暮らせる世界を作る……そのために、俺はこの道を進む!」フィリアは門の際まで見送り、静かに声をかける。
「行ってください、ジョンアイデル。この先は、あなた自身の心と力だけが頼りです。どんな困難があっても、あなたの信じる道を真っ直ぐに……」ジョンアイデルは再び一歩、力強く踏み出す。光の道が彼の足元から広がり、皇帝となる者だけが通る、最後の旅路が始まった。ハキハキと、試練の道が開かれる!その先に広がっていたのは、見上げるほどに高く、どこまでも続くような広大な空間。空には星々が輝き、地面には清らかな水が流れ、まるで神話の世界そのもの。だがその中心に、黒い靄のようなものが渦巻き、ゆっくりと形を成していく。
「よくぞここまで来た……」低く、重く、すべてを飲み込むような声が響く。黒い渦の中心から、巨体を持つ存在が姿を現す。
「我はディザステト。この国の歴史の闇、過去の過ち、そして人の弱さが集まり、生まれた者……お前が真の皇帝となるには、我を倒し、すべての歪みを正さねばならない」ジョンアイデルは剣を抜き、まっすぐにディザステトを見据える。恐怖はない。ただ、これから始まる最後の戦いに向けて、心が高鳴っているだけだ。
「俺は倒してみせる。そして、この国を、民を、誰一人取り残すことなく、幸せにする。俺の理想も、理念も、全部この現実のものにしてみせるからな!」いよいよ最終決戦! ジョンアイデルVSディザステト、皇帝の座をかけた戦いが始まる!開かれた門の彼方、星々が瞬く広大な空間の奥深くから、ディザステトの低く澄んだ声が響き渡る。黒い靄のような体はその場から動かず、ただゆっくりと片手を広げて道を示す。
「さあ、奥まで来てみるがいい。この神域はただの広間ではない。一歩進むごとに、お前の内面、資質、そして運命を試す試練が待ち受ける」彼の声には、これまでの四天王たちのような敵意や嘲笑はなく、むしろ審判者としての厳かな重みが宿っていた。
「どんな試練が待っているかは、お前自身が足を踏み入れて初めて分かること。力、知恵、意志、信念……何が問われるかは俺にも定められん。だが、そのすべてをクリアし、この道のりを乗り越えてこそ、真の資格が認められる」ディザステトはマゼンタ色の瞳を輝かせ、ジョンアイデルの心の奥底まで見通すように見つめる。
「恐れることはない。お前がこれまで積み上げ、学び、誓ってきたものすべてが、お前を守り、導いてくれるだろう。さあ、真の皇帝となる覚悟があるのなら……俺のもとへたどり着くがいい」言葉が終わると同時、ジョンアイデルの足元から先、無限に続くかのように見えた道が柔らかく光り始める。左右の景色はゆっくりと形を変え、過去の歴史の断片や、これから訪れる未来の可能性が、霞のように浮かんでは消えていく。ジョンアイデルは剣を鞘に収め、胸元に手を置いて一度だけ深く頷く。教養の証明で固めた決意、そして自ら描いた未来の構想を心に刻み、まっすぐな瞳で道の先を見据えた。
「ああ、分かっている。どんな試練が待っていようと、俺は止まらない。俺の手でこの国を導き、必ず民が笑って暮らせる世界を作る……そのために、俺はこの道を進む!」白く輝く大理石の通路をゆっくりと進むジョンアイデル。壁も床も一つ一つが磨き上げられ、まるで永遠の時を刻むような荘厳な雰囲気に包まれている。
「通路は高貴な大理石みたいな感じだな……まさに皇帝に至る道、というわけか」そうつぶやきながら最初の広い空間へと足を踏み入れた瞬間、床の亀裂からどす黒い煙が噴き上がり、うめき声を上げながら無数のデビル兵の群体が姿を現した。剣や槍を手に、一斉にジョンアイデルへと襲いかかる。
「ふむ、最初の試練は数の暴力か。だが……」ジョンアイデルは身構えることなく、ゆっくりと両手を前にかざす。彼の体の内側から溢れ出すように、暖かくも鋭い光が湧き上がり、空間全体を包み込む。
「この光は、お前たちのような闇に属する者には届かぬ光……消え去れ!」ジョンアイデルが低く叫ぶと、光は一気に膨れ上がり、デビル兵たちへと降り注いだ。触れた瞬間、彼らは悲鳴を上げる間もなく、まるで砂が水に溶けるように次々と浄化され、黒い煙ごと跡形もなく消えていく。広間にはただ清らかな光だけが残り、大理石の床は一層輝きを増し、先へ続く道がまっすぐに伸びていた。
「……これで一つ目は終わりだ。だが、これが始まりに過ぎないことは分かっている」ジョンアイデルは再び歩き出す。先の見えない道のり、だが彼の足取りは少しも重くない。次なる試練へ、さらに奥へと進んでいく。
大理石の道をさらに進むと、視界が大きく開け、次なる広間へと足を踏み入れる。中央には、天へ向かってまっすぐにそびえ立つ巨大な黒いモノリスが佇んでいた。表面には見たこともない紋様や文字が刻まれ、淡い紫の光がゆっくりと脈打つように流れている。周囲には何もなく、ただこの巨岩だけが空間全体を支配するように存在し、重厚で厳かな空気が満ちていた。
「これが……次なる試練か」ジョンアイデルは剣を構えず、ゆっくりとモノリスへと近づく。近づくほどに、そこから発せられる力強い波動が体中に伝わり、まるで自分の心の内側を探られているような感覚に包まれる。距離が十歩ほどになった瞬間、モノリス全体が強く輝き始め、低く荘厳な声が頭の中に直接響き渡った。
『ここに至る者よ。お前が皇帝となる資格を問う——この試練は「真実」。己の弱さ、迷い、欲望……すべてを晒し、受け入れ、それでもなお進む覚悟があるか』声が消えると同時、モノリスの表面に映像が浮かび上がる。それはジョンアイデル自身の過去、選んできた道、そして心の奥底に秘めた不安や恐れ……目を背けていた自分の一面までもが、ありのままに映し出されていく。
「俺の……すべてだというのか」胸元に手を置き、じっとその映像を見つめる。苦しかったこと、迷ったこと、間違えたこと……すべてが明らかになり、まるで審判を受けているような緊張感が走る。だが、ジョンアイデルは目をそらさない。むしろまっすぐに見つめ返し、静かに、しかし力強く宣言する。
「そうだ。これが俺だ。弱さも迷いも全部含めて、これが俺自身だ。だが俺は——この俺こそが、この国を導き、民を守る皇帝になる! 過去も今も未来も、すべてを背負って進む。それが俺の選んだ道だからだ!」言い終わると、モノリスの紋様が一斉に黄金色へと変わり、重かった空気が一気に晴れ渡るように清らかな光が溢れ出す。
『……真実を受け入れ、己を信じる心。それこそが、統べる者に必要な資格。試練、合格——道は開かれる』
モノリスはゆっくりと左右に割れ、その奥からさらに続く道が現れる。先へと伸びる通路は、これまでよりも一層輝きを増し、ジョンアイデルを次なる場所へと誘っていた。
「よし……次へ進もう」ジョンアイデルは再び歩き出す。己のすべてを認め、受け入れた今、その足取りは最初よりもずっと軽く、確かなものになっていた。大理石の通路をさらに奥へと進み、大きな扉をくぐると、そこにはこれまでで最も広い空間が広がっていた。そして、中央にそびえ立つその巨体――ジョンアイデルは息を飲み、足を止めた。
「……まさか。これは……」身長は十メートルを超えようかという巨躯、岩のように硬く厚い皮膚、太い四肢に、見開かれた赤い瞳。かつて自らの手で倒し、砕けて消えたはずのゴライアスが、今まさにそこに存在していた。傷一つなく、以前よりもさらに禍々しく、力強い気を放ちながら、じっとこちらを見据えている。
「俺が倒した。あの時、確かに完全に滅ぼしたはずだ……なぜ、またここにいる?」ジョンアイデルは剣を抜き、構えを取る。だがゴライアスは襲ってくることもなく、低く、地鳴りのような声を響かせた。
『……お前は俺を倒した。だがそれは、力のみで打ち砕いたに過ぎない。俺はお前の中にある「恐怖」と「未練」から生まれた、もう一つのお前自身なのだ』
「何だと……?」
『神域の試練とは、外敵を倒すことではない。己の心に潜む弱さ、克服したと思い込んでいる過去、それらすべてと再び向き合い、完全に乗り越えること。俺がここにいるのは、お前がまだ俺を、そして自分自身を許していないからだ』ゴライアスが一歩踏み出すと、床が大きく揺れる。体からはかつての闇の力だけでなく、ジョンアイデル自身の心の闇が渦巻き、黒いオーラとなって立ち上っているのが見えた。
「俺が……お前を残していた? 俺はもう、あの時のような弱い俺ではない!」ジョンアイデルは光を剣に集め、一気に斬りかかる。だがゴライアスは軽く腕を振るだけでその一撃を弾き返し、逆に巨体から放たれた闇の波動が彼を襲う。光で防ぐものの、その衝撃で後ろへ下がる。
『力だけでは、何も解決できぬ。お前は俺を倒したことを誇りに思っているが、その一方で「また現れるのではないか」と恐れ、「完全に消せなかったのでは」と疑っている。その心の隙間から、俺は何度でも生まれるのだ』ジョンアイデルははっとする。確かに、あの戦いの後、心のどこかにわずかな不安が残っていた。もしまた同じような強大な敵が現れたら……自分に勝てるのか、と。それが形となって、このゴライアスとして目の前に立っているのだ。
「……そうか。お前は敵ではなく、俺自身の一部だったのか」剣をゆっくりと下ろし、ジョンアイデルは目の前の巨体をまっすぐに見つめる。恐怖も、疑いも、すべて自分の中にあるものだ。それらを否定して排除しようとするから、いつまでも消えずにいたのだ。
「だが、もう恐れない。お前が俺の一部なら、俺はそれも含めて受け入れる。倒した過去も、抱える不安も、全部俺の道のりだ。俺はもう、何も恐れずに進める」ジョンアイデルは剣を鞘に収め、両手を広げ、体いっぱいに光を放つ。その光は、敵を滅ぼすためのものではなく、自分自身を照らし、癒すための優しく強い光だ。
「俺はお前を倒した。だが今度は、お前を俺の中に受け入れる。共に進もう、俺の一部よ」溢れる光がゴライアスを包み込む。すると巨体は徐々にその形を崩し、黒い闇は光へと変わり、やがてジョンアイデルの体の中へとゆっくりと吸い込まれていく。
『……受け入れ、解き放つ。それこそが真の強さ。お前は、本当の意味で俺に勝った……』最後の声が響き、ゴライアスの姿は完全に消え去った。空間には清らかな光だけが満ち、先へ続く道が、より明るく、まっすぐに伸びていた。ジョンアイデルは胸に手を当てる。体の内側からは、かつてないほどの力と、穏やかな自信が満ちている。
「……これで、本当の意味で過去を乗り越えた。さあ、次こそ最後の場所へ」彼は新たな力を得て、さらなる高みを目指し、再び歩き始めた。長い階段を一段も休むことなく駆け上がり、白い光の通路をまっすぐに突き進む。風のような速さでたどり着いた次なる広場――そこは水のせせらぎが響き、辺り一面が深い青と紺色に染まった空間だった。だが次の瞬間、床や壁の亀裂、天井の闇の部分から、ぬるり、ぬるりと異形の者たちが這い出てきた。
水棲の特徴を色濃く残し、鱗に覆われた体、尖った牙、湿った皮膚からは生臭い気配を漂わせるディープワンたち。一匹、二匹……と数える間もなく、瞬く間に数百、数千という群れとなり、広場一面を埋め尽くすほどに膨れ上がる。
「これほどの数か……だが!」ざわめき、一斉に襲いかかろうとする彼らを前に、ジョンアイデルは一歩も退かない。先ほどゴライアスとの対話で己の弱さを受け入れ、真の強さを得たその心に、迷いや恐れの欠片など微塵も残っていない。彼は天を仰ぐように両手を大きく広げ、全身から黄金にも似た輝きを解き放つ。
「光あれ!」短く、力強い一言。その声を合図に、ジョンアイデルを中心として空間全体が眩い光に包まれた。清らかで、あらゆる闇を浄化する力に満ちたその輝きは、まるで太陽そのものが出現したかのよう。押し寄せるディープワンの群れは、光に触れた瞬間から悲鳴を上げる間もなく、まるで雪が陽だまりに溶けるように、あるいは闇が夜明けに掻き消されるように、次々と粒子となって消滅していく。一匹残らず、一切の抵抗も許さず、広場にいた異形の者たちは跡形もなく浄化され、ただ清々しい空気だけが残された。ジョンアイデルはゆっくりと手を下ろし、まっすぐに前方を見据える。
「試練はまだ続く……だが、俺の行く手を遮るものは、もはや何もない」
広場の正面には、これまでのどの扉よりも大きく、荘厳な光の扉が姿を現していた。その扉の向こうからは、強大だがどこか穏やかな、ディザステトの気配がはっきりと伝わってくる。いよいよ最後の扉。この先こそが、真の皇帝となる者が立つべき、最終の舞台――。ジョンアイデルは力強く一歩を踏み出し、光の扉へと近づいていく。ハキハキと、群れの試練も一瞬で突破! いよいよ最終決戦の間へ!そして、その中心に――待ちわびていたかのように、ディザステトがゆっくりと立ち上がった。
「ここまでたどり着いたな!」その声は、これまでよりも遥かに力強く、それでいてどこか懐かしい響きを帯びている。マゼンタ色の荘厳な衣装は変わらず身にまとっているが、彼の体と顔つきが徐々に変化していく。
「その褒美に……私の正体を見せてやる!」ゆっくりと歪みが解けるようにその姿が明らかになったとき、ジョンアイデルは思わず息を飲み、足を止めた。顔かたちが、まるで鏡で見るようにジョンアイデル自身とそっくりなのだ。だが、その体には彼にはないものが備わっていた。腰元からは力強く長い竜の尻尾が生え、背中には大きな竜の翼が広がり、マゼンタ色の鱗が神秘的に輝いている。瞳の色も同じだが、その奥に宿る光は、破壊と創造、闇と光、すべてを併せ持つような深みがあった。
「……どういうことだ? なぜ、お前が俺と同じ顔をしている?」ジョンアイデルが剣を構えながら問いかけると、ディザステトはまるで自分自身が話しているかのような口調で、低く笑いながら答える。
「フフフ……驚くことはない。ジョンアイデル。私はお前であり、お前こそが私なのだ」彼はゆっくりと翼をはためかせ、空気を大きく揺らす。
「私はこの国の歴史そのものであり、建国の理念と、それが叶わなかったすべての過去、そしてお前の中にある『もう一つの可能性』……すべてが集約されて生まれた存在。つまり、お前が皇帝となる道を歩むことで、生まれたお前の半身なのだ」ディザステトは竜の尻尾をくるりと巻きつけ、ジョンアイデルを真っ直ぐに見据える。
「お前は力を証明し、知恵を証明し、己の弱さも過去もすべて受け入れた。だが最後に、お前自身が最も知らねばならない真実がある。皇帝とは、この国のすべてを背負う者。栄光も理想も……そして、闇と過ちさえも、丸ごと統べる者なのだということを!」彼の周囲に、マゼンタ色の強大なオーラが渦巻き始める。それは破壊の力であり、同時に国を造り上げる創造の力でもあった。
「私が竜の姿を持つのは、お前が祖龍の意志を継ぐ者だから。私がお前と同じ顔をしているのは、私がお前の内なるすべての側面を映し出す鏡だからだ」ディザステトは両手を広げ、最終試練の始まりを告げる。
「さあ、ジョンアイデル。これが最後の試練だ。お前が目指す『完全なる理想の国』を造るというのなら、私を超え、私を統べ、この国のすべてを受け入れてみせろ!お前の中にある理想だけでなく、現実の重さ、闇の深さ、それらすべてを抱えてなお、皇帝として立てるかどうか……それを今、ここで見せてもらうぞ!」ジョンアイデルは目の前にいる、自分自身の姿をした最強にして最後の敵を見据える。その剣に、これまで以上に強く、そして温かな光が集まっていく。
「……分かった。お前が俺の半身であり、この国のすべてなのだというなら、俺は俺の手でお前と向き合う!」ジョンアイデルは誓いを胸に、宣言する。
「俺は理想だけを見ているのではない。現実を知り、闇を知り、その上でそれらすべてを包み込み、乗り越えて、最高の国を造る。俺が皇帝になるということは……お前をも従え、この国の真の王となるということだ!」ジョンアイデルが二振りの龍刀を低く構え、地を蹴って一気に距離を詰める。左の刀が紫電のように閃き、右の刀が渦巻くように斬り込む——だがディザステトは微動だにせず、背中から抜き放った二振りの漆黒の剣で正確に受け止めた。
ガキィィン!
金属がぶつかり合う衝撃音が神域に響き渡り、衝突のたびにマゼンタ色の火花が弾け飛ぶ。ジョンアイデルはさらに斬り上げ、薙ぎ払い、突きを繰り出す。素早く軌道を変え、上下左右から波状に攻め立てるが、そのすべてをディザステトは同じような動きで防ぎ返す。まるで鏡に映した自分自身と戦っているかのようだ。
「速い……だが、まだ足りん!」ディザステトが低く笑い、逆に二振りの剣で反撃に転じる。竜の翼で風を起こし、尻尾で地を叩きながら、ジョンアイデルと全く同じ型の連撃を放つ。斬り合いは徐々に激しさを増し、両者の刃は一秒ごとに何度も交錯。空間が歪み、足元の地面がひび割れ、周囲の光と闇の境界線が震えるほど。
ガキーンガチガチガチガキーンキンキンキンキンキンキンガガガキーン…!
攻防の速度は限界まで高まり、残像が残るほど。どちらも一歩も引かず、同じ技をぶつけ合い、同じ力で押し合う。龍刀と漆黒の剣が噛み合い、力比べになる瞬間もあれば、すれ違いざまに互いの衣装が裂けるほどの斬撃が走ることも。
「俺の力……俺の技……なぜ同じものを使う!?」 ジョンアイデルが叫びながらさらに力を込める。
「私はお前の半身だからだ! お前が得た力、技、経験……すべて私のものでもある!」 ディザステトの声は自分自身の声と完全に重なり合う。何度も何度も激突するたび、互いの力がぶつかり合い、どちらも傷つき、どちらも倒れない。まさに自分自身との戦い——ジョンアイデルが今まで積み上げてきたすべての力と技が、今、自分自身に向けられているのだ。
「だが……同じだけではないはずだ!」ジョンアイデルが一瞬隙を作り、龍刀に己の信念と理想を込めて、渾身の一撃を放つ——!ジョンアイデルは鋭く、はっきりと声を張り上げた。
「確かにお前はある意味鏡、だけど、それでも、俺は立ち止まるわけには行かない!」
言い終わるや否や、彼の全身から猛烈な光が迸り、周囲の空気がざわめき、地脈から天まで、あらゆる元素の気配が一斉に呼応する。炎が彼の左半身を赤々と照らし、水が右腕に流れるように纏わり、風が足元から舞い上がって体を軽やかに包み、土が両足に力強く根を張る。さらに雷が背後で轟き、氷が刃の軌跡を凍らせ、木々の生命力が肌にみなぎり、闇と光の精霊たちもそれぞれの輝きを添えて彼の元に集う。全属霊依——発動!
精霊の力が一つに溶け合い、ジョンアイデルの二振りの龍刀は虹色に輝き、刃先から空間を裂くような威圧感が溢れ出す。力が高まるたびに地面が波打ち、風が渦巻き、まるで世界そのものが彼の覚悟に応えているかのようだ。
「これが俺の本気だ! 鏡として同じ技を真似られても、この力に込められた想いまでは再現できない!」彼は大地を強く蹴り、今度は一振りごとに元素の嵐を伴って斬りかかる。炎の斬撃が漆黒の剣を焼き払おうとし、水の刃が衝撃を吸収しつつ貫き、風の速さが軌道を読ませず、土の重みが防御を砕きにかかる。雷が瞬く間に隙を突き、氷が動きを封じ、木の力が回復と攻撃を両立させ、光と闇が相殺しつつも新たな角度から襲いかかる。何度も何度も交わる刃。だが今度の衝突は、先ほどとはまるで違う。ディザステトの漆黒の剣が、全属性の重なり合った力に押し戻され、火花が濁り、腕に微かな痺れが走る。
「ほう……複数の属性を同時に扱うとは……だが、力の量だけなら私も負けん!」ディザステトも闇の力をさらに濃くして対抗しようとするが、ジョンアイデルの攻撃は単なる力のぶつけ合いではない。精霊たちとの絆、守りたいと願う心、そして前に進もうとする意志が、それぞれの属性に独自の働きを与え、鏡のような模倣では追いつけない厚みと変化を生み出していた。
「真似事では届かない——俺の歩んできた道は、お前の映した世界だけじゃない!」ジョンアイデルは二振りの龍刀を大きく交差させ、全精霊の力を一点に収束させる。次なる一撃が、鏡の均衡を打ち砕く——!ジョンアイデルが放つ全属霊依の重みと緻密な連撃を受け、ディザステトは思わず声を上げる。
「な、なんだ!? この力は……緻密で重い! それに……これは単なる力の強さではない!?」
模倣できる技や属性の配分を超え、信念と絆が織りなす力の質の違いに、彼は初めて明確な衝撃を覚えた。防御の隙間が生まれた瞬間——ジョンアイデルは体を沈め、虹色に輝く二振りの龍刀を一直線に突き出す。
「終わらせてやる!」
ズザァアアッ!
二振りの刃は、ディザステトの胸元、その存在の核ともいえる場所に深く突き刺さった。だがジョンアイデルはそれで止まらない。
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラーー!!」
怒涛の勢いで叫びながら、刀の柄の部分を拳で次々と強く打ち込み、さらに奥へ、さらに深くと押し込んでいく。
バンッ! バンッ! バンッ!
打撃ごとに全精霊の力が刃を伝って流れ込み、ディザステトの体の内側から均衡が崩れていく。彼の顔に驚愕と受け入れの色が浮かぶ中、ついに——
ブシュウウウッ!
二振りの刀が背中側まで完全に貫通し、マゼンタ色の光が噴き上がる。
「ああ……これが……お前の選んだ道の力……」ディザステトはゆっくりと力なく剣を落とし、瞳から力が抜けていく。体は鏡のように細かな光の粒子へと砕け始め、それは闇でもなく破片でもなく、柔らかな輝きへと変わっていく。
「私はお前の半身であり、国の歴史の闇と可能性だった……だがお前は、否定も拒絶もせず、力ずくではなく『受け入れて進む』道を選んだ……」
ディザステトの声は優しく、安らかな響きに変わっていく。
「これで……真にお前はこの国のすべてを背負う資格を得た……歴史も理念も闇も未来も……全部を抱えて、導いていくがいい……」光の粒子はジョンアイデルの周囲を舞い、ゆっくりと彼の体へと吸収されていく。竜の翼と尻尾の力、歴代の想い、過去の過ちと理想——すべてが彼の内側に溶け合い、一つとなっていく。最終的にディザステトの姿は完全に消え、神域の空間は柔らかな黄金色の光に包まれた。中央には、荘厳な玉座がゆっくりと出現し、その背後にはミクスタッドの未来を照らすような紋章が輝いている。ジョンアイデルは刀をゆっくりと引き抜き、鞘に収める。全身にはこれまでにないほどの大きな包容力と、確固たる統治者としての重みが満ちていた。
「……ああ。俺がこれから背負うもの、全部、受け止めてみせる」彼はまっすぐ玉座へと歩き出す。ここに、真の皇帝となる者の道が、ついに完成したのだ。ハキハキと、最終試練突破! ジョンアイデル、皇帝としての資格を完全に得る!




