エピック10【高貴なるものの心得など】
Sクラスの教室は、活気に満ちていた。生徒たちは、皆楽しそうに話し合ったり、勉強したりしていた。怜也とクレティアは隣同士、舞華とゼレスは隣同士に座り、時折、笑顔を交わしていた。残りの生徒たちが、空いている席に静かに着席していった。教室には、静かな緊張感が漂っていた。そのとき、教師である萌佳と那月が教室に入ってきた。生徒たちは、皆、立ち上がって敬礼した。
「皆さん、今回は初授業です。今から学ぶことは基本中の基本、高貴なる者の心得についてです」萌佳の言葉は、厳格な雰囲気を醸し出していた。彼女の鋭い視線は、教室の生徒たち一人一人を捉えていた。生徒たちは、皆、真剣な表情で、萌佳の言葉に聞き入っていた。
「まず、高貴なる者がどうあるべきか、分かるものはいますか?」萌佳の鋭い視線が教室を巡る。静寂が流れ、誰も発言しない。 その時、怜也がゆっくりと手を挙げた。その静寂を破る、小さな動作に、教室の空気が変わった。
「怜也くん、答えなさい」那月の言葉は、怜也への期待感を込めていた。怜也は、一瞬の沈黙の後、自信に満ちた表情で答えた。
「高貴なる者は誇り高き者である、自分の矜持を貫くものである」彼の言葉は、教室に響き渡り、他の生徒たちの心に深く刻まれた。
「確かにそれは言えてますね。怜也くんの言う通り、高貴なる者は誇り高き者、矜持を貫く者です。しかし、矜持、つまりプライドは、権力者や王族、貴族だけのものではありません。どんな立場の人間にも、自分自身の誇りを持つことはできます」萌佳の言葉は、冷静で、論理的だった。彼女の言葉は、怜也の答えを肯定しつつ、新たな視点を提示した。
「ほかには?」那月の言葉が教室に響き渡る。 静寂が流れ、誰も発言しない。僅かな間が過ぎた後、クレティアがゆっくりと、しかし確実に手を挙げた。
「クレティア、答えなさい」那月の言葉には、少しの期待と、少しの温かさがあった。クレティアは、穏やかな表情で、しかし確固たる信念を持って答えた。
「高貴なる者は、社会の模範となる行動を取り、自発的に他者のために尽くすべきだと思います」彼女の言葉には、穏やかな説得力があり、周囲の生徒たちの共感を呼んだ。
「そうだな、クレティアの言う通りだ。高貴なる者は、社会的模範となる行動を取り、自発的な無私の活動をすることが重要だ。それは、まさに高貴なる者の本質と言えるだろう」那月の言葉は、クレティアの答えを的確に要約し、その重要性を改めて強調した。彼女の言葉は、教室の生徒たちに、深く納得感を与えた。
「社会的な地位や富、権力を持つ者は、その恵まれた立場を利用して、社会の弱い立場の人々を助け、貢献する道徳的責任を負うべきなのです。これは、単なる善意ではなく、彼らが享受してきた恩恵に対する当然の返済と義務とでも言えるでしょう。そして、それは真の高貴さを示す一つの指標となるのです。」萌佳の言葉は、冷静で、論理的だった。
「そのことを踏まえて、目の前に貧しい人がいます。その人にはどのようなことをするのか?」那月の言葉は、教室に緊張感をもたらした。 生徒たちは、真剣な表情で考え込んでいる。そんな中、舞華がゆっくりと、しかし確実に手を挙げて次のように答える
「貧しい人には、ただお金を渡すだけでは不十分です。経済支援と住処の提供に加え、その人に合った仕事を見つけるための支援、そして、生活スキルを身につけるための教育も必要です。例えば、職業訓練校への入学支援や、生活習慣の改善指導なども考えられます。具体的な支援策を考え、実行していくことが重要です。」舞華の言葉は、実践的で、具体的な提案に満ちていた。
「素晴らしい考えだ、舞華。しかし、それだけではない。貧しい人を切り捨てるような考えを持つ者は、この授業にはふさわしくない。社会に貢献する意思のない者は、この先も、高貴なる者と呼ばれる資格はない。これから、より厳しい議論などが待っていることを覚悟しておけ。」那月の言葉は、厳しく、しかし生徒たちへの期待感が込められていた。彼女の言葉は、教室に緊張感をもたらし、今後の議論への真剣さを促した。
「さてと、授業はこれにて終了です。クレティアと怜也、二人には少しお話があるので、特別教室に来てください。ゆっくりと、落ち着いて来てくださいね。」萌佳の言葉は、穏やかで、しかし、二人の緊張感を和らげる効果はなかった。その言葉に、クレティアと怜也は、静かに特別教室に向かった。怜也とクレティアは特別教室に着いた。
「えっと、萌佳先生、私とクレティアを呼んだのはどういうことですか?」怜也の言葉は、やや緊張感を含んでいた。萌佳は、少し間を置いてから、静かに口を開いた
「まずは怜也、今の君の名前、神無月怜也…、それは本当の名前ではない。君は、本当の名前を受け入れていないから、あえてそれを名乗っているのだ」萌佳の言葉は、怜也に衝撃を与えた。その場に、静寂が流れ込む。
「ちょっと待ってください、それ知ってるのは一部の人間だけのはず…、何故、萌佳先生が…?」クレティアの言葉には、驚きと疑念が混じっていた。萌佳は、小さくため息をつき、静かに答えた。
「私と那月先生は、統括理事長から直接聞かされているのよ。怜也…、いや、ジョンアイデルと言った方が良いかしら? あなたは、ジョンアイデルという名前を受け入れるまで、そう呼ばないように決めているのよ。」萌佳の言葉は、衝撃的な事実と、秘密の共有を意味していた
「受け入れてないから怜也と呼ぶのは分かります。でも、もし、怜也が本当の名前、ジョンアイデルを受け入れたら…、どうするんですか?」クレティアの言葉には、未来への期待と、少しの不安が混じっていた。萌佳は、優しく微笑みながら答えた。
「その時は…もちろん、ジョンアイデルと呼ぶわ。そして、彼自身の意思を尊重し、彼自身が決めた名前で呼ぶようにするわ。」萌佳の言葉は、未来への希望と、怜也への深い敬意を示していた。このシーンは、未来への期待と、萌佳の決意を強調します。怜也は静かに口を開いた。
「そして…俺のクローンの存在にも、気がついているんですよね?」彼の言葉は、静かに、しかし確実に、空気を重くした。萌佳は、わずかにうなずき、静かに答えた。
「そうだね。そして、そのクローンはおそらく、ジョースター家の本家の屋敷にいる。…怜也、いや、ジョンアイデル。君はどうするつもりなのかしら?」萌佳の言葉は、怜也に、重大な決断を迫るものだった。怜也は、冷静なトーンで言った。
「クローン…ですね。当然、決着をつけます。同じヒトが二人いる必要はありませんから」彼の言葉は、感情を抑え冷静さを保っていた。しかし、その言葉の裏には、強い意志が感じられた。萌佳は、怜也の冷静な決意に、静かにうなずいた。萌佳は、意味深な表情で言った。
「クローンとの決着…簡単なことではないわ。赤の神殿の試練、SMOの任務、ワルプルギスの集いが待ってます、どれも容易ではない試練よ。…しかし、君なら乗り越えられる。…全てを終わらせて、自分自身と向き合うの。」萌佳の言葉は、険しい道のりを示唆し、怜也の覚悟を問うものだった。怜也は、その言葉に、強い決意を新たにした。
萌佳は、怜也の決意を認めつつも、静かに、しかし力強く言った。
「クローンとの決着…そのためには、いくつかの試練を乗り越える必要があるわ。…だが、まずは、ワルプルギスの集いね。あれが最初の課題よ。」萌佳の言葉には、強い意志と、怜也への期待が込められていた。怜也は、既に知識を持っていることを示唆しながら、確認するように尋ねた。
「ワルプルギスの集い…生徒会メンバーと、高位の天使の血筋を引く者、あるいは、それに匹敵する力を持つ者たちの集まり…と認識していますが、間違っていませんか?」彼の言葉には、自信と、同時に、慎重さも感じられた。萌佳は、彼の認識の正しさを確認した萌佳は、複雑な状況を示唆するように説明した。
「ワルプルギスの集い…、怜也くん、クレティアさん、舞華さん、ゼレスくん…、彼らは、それぞれ独自の思惑を持っているわ。…そして、怜也くんはアルさん、ルミカさん、ルミナさんからも注目されているわね。…これは、非常に複雑な状況ね。…今後の展開が読めないわ。」萌佳の言葉は、複雑な状況を示唆し、今後の展開への期待感を高めるものだった。萌佳は、怜也との会話を終え、何かを感じ取ったように呟いた。
「いるんですよね…サンダルフォンのルミカさん…」その瞬間、萌佳の背後から、静かに、しかし確実に、存在感が増していった。そして、柔らかな声が響き渡った。
「あら、バレました?」ルミカは、まるでそこに居たのが当然であるかのように、隠蔽魔法を解きながら現れた。ルミカは、怜也を興味深げに見つめながら、静かに言った。
「はじめまして、怜也さん。私はルミカ、サンダルフォンの異名で呼ばれているわ。…あなたの異名はカマエル…この意味は神を見る者…、どんなふうに進むか…とても興味深いわ。」彼女の言葉は、怜也への強い興味を示していた。怜也の心拍数は、ルミカの鋭い視線に反応して、急激に上昇した。彼は、自分の隠された感情が、ルミカには見透かされていることを悟った。
「な、なんだ…この人に見られると、隠し事はできない…しても、バレる…」怜也は、小さく呟いた。ルミカは、怜也の動揺を察知し、はっきりと告げたルミカは、そんな怜也を興味深げに見つめ、ゆっくりと口を開いた。
「ねぇ~、ストレートに言うわ、怜也、いや、ジョンアイデル。君は絶対に決めないといけない、本来の名前を受け入れるのはどうする?」ルミカの言葉が、静寂を切り裂いた。怜也は、一瞬言葉を失った後、強い意志を込めた表情で答えた。
「今問いますか、でも、俺はもう迷わない!本当の名前は受け入れるつもりですよ!」彼の瞳には、迷いがなく、強い光が宿っていた。その瞬間、部屋の空気が変わったように感じた。緊張感が解け、静寂の中に、新たな決意が満ちた。ルミカは、ジョンアイデルの決意を認め、新たな呼び方を提案した。
「そうか、ならばワルプルギスのメンバーはジョンアイデルと呼ぶことにする。…君は、どうする?」彼女の言葉には、新たな始まりを告げるような力強さがあった。怜也は、迷いなく、自分の本当の名前を宣言した。
「ジョンアイデル・ジョースターを名乗る!」彼の声は、自信に満ち溢れ、力強く響き渡った。ルミカとのやり取りを終えた直後、突如としてアレイスターが現れた。彼の視線は、ジョンアイデルを鋭く射抜いた。
「本当にいいのか?ジョンアイデル…それは…」アレイスターの言葉には、ジョンアイデルへの懸念が隠せない。ジョンアイデルは、アレイスターの懸念を理解しつつも、揺るぎない決意を込めて答えた。
「もう迷いませんよ。俺は俺です。名前が怜也であろうと、ジョンアイデルであろうと…、魂は変わりません!」彼の言葉は、力強く、そして、自信に満ち溢れていた。ジョンアイデルの脳の表面を張り巡らせていた、網目のようなものが、光り輝き始め、そして、バラバラと解けて消え去った。その瞬間、彼の意識は、鮮烈な記憶に満たされた。ジョースター家の面影、そして、忘れかけていた記憶が、彼の心に蘇ってきた。彼は、自分のアイデンティティを確信し、力強い声で宣言した。
「思い出した!そうか…俺はジョースター家で生まれたんだ!そうだ!俺はジョンアイデル・ジョースター!…その名前を、誇りにする!」彼の瞳には、確かな自信と、強い誇りが宿っていた。怜也、クレティア、アレイスターがSクラスの教室に入ると、生徒たちは一斉に視線を向けた。アレイスターは、落ち着いた声で告げた。
「皆さん、重要な発表があります。」 彼は、深呼吸をしてから、衝撃的な事実を告げる。アレイスターは、ジョンアイデルに促した。
「怜也くん、いや、ジョンアイデルくん、自分の口から言いなさい。」 ジョンアイデルは、Sクラスの生徒たちをゆっくりと見渡した。Sクラスの教室は、静まり返っていた。ジョンアイデルは、深呼吸をして、力強く宣言した。
「皆さん、俺の本当の名前は神無月怜也ではなく、ジョンアイデル・ジョースターです。怜也を名乗っていたのは、術式のせいです。だが、それが解け、真実を思い出しました。」 彼の言葉は教室内に衝撃の波紋を広げた。生徒たちは、驚きと困惑の色を顔に浮かべていた。マニスは、優雅に微笑みながら言った。
「まあ、知ってたわよ、神無月怜也くんがジョンアイデル・ジョースターだってことは。ジョースター家の人って、あの独特の気品と、首筋の星の痣があるでしょ?…何度か、さりげなく確認しちゃったわ。」 彼女は、鋭い観察眼と、女性ならではの繊細な洞察力で、ジョンアイデルの正体を見抜いていた。ジョンアイデルは、自分の首筋を触りながら言った。
「無意識のうちに、首襟や首飾りで隠してたんだけどね…、見たってことは、もちろん色も分かるんだよね…」マニスは、鋭い視線でジョンアイデルを見つめながら、静かに言った。
「黒だよね。」 その瞬間、ジョンアイデルの右肩と両手の甲に、星型の光が輝き始めた。三つの星の痣が出現したのだ。クレティアは、ジョンアイデルの肩に現れた星の痣をじっと見つめ、驚きと確信を込めた声で言った。
「ジョンアイデル、お前…自分の記憶と誇りを戻したことで、星の痣が…現れたのか…」 彼女の言葉には、驚きと同時に、何かの確信が感じられた。ジョンアイデルは、自分の肩の星の痣を指さしながら、静かに、しかし力強く言った。
「星か…。ジョースター家の本家の屋敷には行かないとね。自分のルーツ、そして、この痣の秘密を知るには、そこに行かなければならない。」 彼の言葉には、強い決意が感じられた。ジョースター家の屋敷は、静寂に包まれていた。その静寂を破るように、クローンのジョンアイデルは、静かに、しかし力強く宣言した。
「オリジナルが、覚醒したか…。ならば、私も動くべきだな。」 彼の言葉には、冷酷さと、強い決意が感じられた。




