エピック4【入学試験三日目】
入学試験四日目、怜也達受験生は講堂に集まる。ざわめきが講堂に広がり、受験生たちの顔には、不安と期待が入り混じった表情が浮かぶ。
「全員揃いましたね、貴学専科の方はサバイバルの場所に飛ばします」アレイスターは、不気味な笑みを浮かべながら、ゆっくりと、そして、重々しく言葉を紡いだ。その後怜也達は氷雪水辺地帯に飛ばされる。凍える風が肌を刺し吐く息は白く凍りつく足元は凍てついた地面と融けかけた氷が混ざり合った不安定な足場だ。 遠くには雪に覆われた山々が連なりその頂上には、鋭い氷の牙が突き出している。凍った川面からはひび割れる音が絶え間なく聞こえてくる。
「氷雪水辺か、複雑すぎる地理条件だな」怜也達には入試用インベントリーを渡されてその中にはホットドリンク、採掘容器、アイスピッケル、シャベル、釣り竿が入ってる
「寒さねぇー、実は防げる裏技があるんだよね、ホットドリンクよりも効率よくね」怜也は赤薬、青薬、黄薬をインベントリーから一つづつ取り出し混ぜ合わせてボトルリキュールと一緒に飲む
「しかも、これは耐寒だけじゃなく筋力増強、滋養効果も発揮する薬を飲み干すと怜也の体がじんわりと温かくなり同時に、身に力がみなぎるのを彼は感じた。氷の上を軽快に動き回り怜也はまずは魚を釣り上げる例えば、1匹目の魚は50ポイント、2匹目は70ポイント… 怜也は次々と魚を釣り上げ、ポイント数は着実に増加していく。
「そこのすけこましたやつ、ワイと勝負や」そう言葉発されたあと後ろ足を地面に強く蹴り足を踏み鳴らす音が響く。衝撃で地面が震える。怜也は振り返ると三角眼で鋭い牙を剥き出しにした狼の耳と尻尾が生えた破れなどはない迷彩服を来た人間のような姿をした獣人は荒々しい、野太い声で、怜也に挑みかか。 その声には自信が満ち溢れている。
「そろそろ仕掛けてくる頃合いだと思ったよ」怜也は獣人の挑発に動じることなく冷静に状況を分析していた。表面上は冷静を装っていたが内心では激しい闘志が燃え上がっていた。獣人の圧倒的な力に怯えることなく、むしろ、その強さに興奮すら感じていた。それに伴い吹雪が舞い視界は白く霞み、獣人の姿は時折、吹雪の中に消えかかってしまう。 冷たい風が、肌を刺すように吹き付ける。地面は完全なる凍土であり予想以上に滑りやすく、一歩間違えれば転倒する危険性がある。 怜也は、足元を確かめながら、慎重に動き回る
「いくで!」狼の獣人の腕からはなんと想像斜め上を言うかのようにまるでガラス細工のように繊細で、それでいて鋭い透明な鎌の刃。その刃は、わずかに青白い光を放っている。
「な、なんだ!?あの鎌の刃は!?アイツ、混血か、それとも改造個体か?」怜也の目は、一瞬見開かれた。予想外の武器もしくは体の作りに彼の脳裏を一瞬瞬戸惑ったものの、その興奮が彼の血を掻き立て身体が自然と戦う姿勢を取った。
「くらいやがれ!エアスラッシュ!」狼の獣人は無数の鎌鼬が空気を裂く音を伴って鋭い風を切って怜也めがけて一直線上に飛び襲いかかる。その速度は目にも止まらぬ速さで怜也は、その攻撃をかわすのに必死だった
「うわっと!」怜也は瞬時に重心を後ろに移動させ上体を大きく反らせて鎌鼬の刃がギリギリで彼の肩をかすめる。その瞬間、冷たい風が彼の頬を撫でた。怜也は足を踏み出した瞬間、氷の上で靴が滑り、彼の心臓が一瞬止まるような感覚を覚えた。それでも彼はすぐにバランスを取り直し次の動きに備えた。周囲の受験生たちは、怜也と獣人の戦闘を固唾を飲んで見守り、その行方を注視していた。 吹雪が舞う中、彼らの視線は二人の戦いに釘付けになっていた。
「ほぉー、予想外な避け方をするな、普通は横移動して避けるけどな」獣人は避け方を見て面白いと言わんばかりの笑みを浮かべる。だが、その笑みは称賛と余裕からくるものである
「この状況と相手の特性を利用しなければ勝てないな!」怜也は分析しながら相手の隙をうかがう。弱点、地理条件などさまざまな要因に対してだ
「だがコレだけではない」狼の獣人は噛みつきを仕掛けるため怜也との距離を一気に詰めようとする。その動きは、まるで猛獣が獲物に向かって突進するかのような、圧倒的な速さと力強さを持ってる怜也は、凍った地面から雪を掴み、瞬時にその質感を感じ取る。彼は獣人の目を狙い、力強く雪を投げ放つ。雪は空中で白い弾道を描きながら、獣人の視界を遮るてる。獣人の目に飛び込むと、彼は驚きの声を上げ、思わず動きを止める。 その瞬間、怜也は獣人の隙を見逃さない
「すきあり!」怜也は獣人の視界が遮られた瞬間を逃さず一瞬にして獣人の懐に飛び込む。その動きはまるで影が動くように素早くそして正確だった。怜也は、獣人の腹部に拳を叩き込む。 その衝撃は獣人の体を揺るがし、彼から驚きの声が漏れる。 獣人は一瞬怜也の攻撃に驚き動きが鈍る
「やってくれるな!」獣人は怒りの咆哮を上げその声は周囲の雪を震わせる、ドス黒いオーラが体から吹き出す。人の体から吹き出すドス黒いオーラは、まるで闇そのものが具現化したかのように、周囲の空気を重くし、怜也の肌に冷たい恐怖を感じさせる。
「このくらいで倒れるわけないよな」彼の心には冷静さが宿っていた。彼はこの戦いが自分の成長のための試練であることを理解していた。怜也は構えを解かない。次の瞬間地割れが2人を襲い、2人とも転倒しかける。地割れが収まると
「ちぇー、狙い通りにならなかったか」その人物は、黒髪が不規則に切りそろえられ、どこか野性的な印象を与える。紺色の服は動きやすそうだが、どこか不気味な雰囲気を醸し出している。 赤いズボンは彼の存在感を際立たせ、周囲の雪景色の中で目を引く。表情は不満げである
「乱入者か、珍しくはないな」怜也は獣人、乱入者、どちらとも協力はしない体制である。乱入者には少し驚いたが、すぐに冷静さを取り戻す。 彼は、過去の経験から、他人の助けを期待することは無意味だと知っていた。 どちらの側にも加担しないことで、自らの道を貫く決意が固まっていた獣人は怜也の冷静な態度に少し苛立ちを覚える。彼は、乱入者の存在が、自分にとっての新たな脅威であることを理解しつつも、怜也が協力しない理由に疑問を感じていた。
「我が名はザビード」乱入者は声高らかに名乗る。ザビードは、巨大な槌斧を振り下ろした。 その勢いは凄まじく、周囲の空気を切り裂く音が響き渡る。槌の面が地面に叩きつけられた瞬間、地面が激しく震え、氷の柱が地面から次々と出現した。怜也は、ザビードの槌斧が地面に叩きつけられる瞬間、閃光のような光を感知しそのわずかな隙を捉え、驚異的な反射神経で横に跳躍し氷の柱を回避した。獣人は、氷の柱を避けようとしたが、その動きは遅かった。 氷の柱が、獣人の体を貫き、彼は悲鳴を上げながら倒れた。 彼の体からは、血が流れ出し、雪の上に赤い染みが広がっていき、気を失う
「 一体、排除」ザビードは獣人が気を失ったことに確証を持ち冷淡に言い、怜也に視線を向ける。吹雪は強まり視界はかすむ
「地面からの氷の柱…あの速度と規模から、単なる冷気属性の魔法ではない。 地属性の魔法で地中を震わせ、そのエネルギーを冷気属性で結晶化させている…複合属性の使い手だ。」怜也は攻撃からザビードの属性を推測する
「さあ、次はお前だ!」ザビードは鋭い眼光を迸らせるまるで氷の彫刻のように冷たく、鋭く光っていた。 その眼光には、殺意が宿っており、怜也の全身を凍りつかせるほどの威圧感があった。彼の言葉は冷酷でそして、絶対的な自信に満ち溢れていた。
「お前、能力の真髄を知らぬようだな」突然、落ち着いていてそれでいてどこか威厳のある女性の声が、怜也の脳内に直接響き渡ったそれは、まるで耳元で囁かれているかのような非常にクリアでそして、神秘的な声だった。
「バアエルか」怜也は、その声に驚きながらも、安堵の気持ちを感じたと 同時に彼は自身の弱さそして、潜在能力への恐れを自覚した。バアエルの言葉は彼の心に深く突き刺さり彼の内なる葛藤を揺さぶった。
「何を臆してる?それほど自身の力が恐ろしいと思ってるのか?」バアエルの声には、怜也を励ますような優しさ、そして、同時に、彼の潜在能力への期待が感じられた。彼女の言葉は、怜也の心に新たな決意を芽生えさせようとしていた。
「俺の能力の真髄は概念そのもの…ならば、例えば…時間の流れ、空間の歪み、存在の消滅…そういった概念を操ることが出来る…だったら…」怜也は、自身の能力の可能性に気づき、興奮と恐怖を同時に感じていた。
「何をブツブツ言ってやがる!」ザビードは斧槌の斧の刃の面を振り下ろすが、刃は透明な壁に阻まれたように、それ以上は振り下ろせなくなる。それは、怜也が“空間”の概念を操作して作り出した、目に見えない障壁だった
「うまくいった!」怜也は嬉しそうに笑った。 彼の能力によって、ザビードの斧槌は、空間の障壁に阻まれ無力化されている
「何しやがった」ザビードは、唸り声をあげながら、斧槌を地面に叩きつけた。 彼の顔には、怒りだけでなく驚きと困惑が入り混じっていた。怜也の能力は、彼の予想をはるかに超えるものだった。
「よーし、これもいけるぞ」怜也は、目の前に爆発するイメージを思い描き、掌を前に突き出した。すると、彼の手からは、まるで何かが具現化するかのように、眩い光が放たれ、次の瞬間衝撃波がザビードに向かって迸った。ザビードは、その衝撃に全身が吹き飛ばされ、地面に叩きつけられた。彼の目には驚愕が浮かび、これまでの自信が一瞬にして崩れ去る。
「な、なんだこの力は…!」ザビードは慄く。その衝撃波が周囲の空気を震わせ、地面が揺れ、周囲の木々が揺らぐ近くにいた他の受験者たちは驚き、怯えた表情で二人の戦いを見守っていた。次の瞬間怜也は、空間を歪ませながら、ザビードに近づいていった。 彼の周囲の空間は、ゆらゆらと揺れ動き、ザビードに重圧を与えていた。 ザビードは、その異様な空間の歪みに、恐怖を感じた。
「こ、降参だ!」ザビードは、恐怖に震える声で叫んだ。 彼の顔には、絶望の色が濃く影を落としていた。 これまで絶対的な自信を持っていた彼が、怜也の圧倒的な威圧感の前に、完全に屈服した瞬間だった。
「概念の能力…“虚飾”と名付けよう。」 怜也は、静かに微笑んだ。この能力は、実体のない概念を操るそれは、まるで空虚な飾り物のよう。しかし、その飾りによって、現実を自由に操ることが出来る。 “虚飾”という名は、その二面性を表している。
別視点、吹き荒れる寒風の中、入試フィールドの氷の崖の上には、灰色フードをかぶった人物が立っていた。体型は標準的だった。彼は、ゆっくりと深呼吸をし、白い息を吐き出した。その息は、瞬く間に凍りつき、消えていった。遠くで聞こえる受験者たちの戦いの音は、彼には届いていないようだった。
「目覚めたか、正義の虚飾」彼は低い声で呟いた。すると、彼の周囲の空気が一瞬、重くなり、静寂が訪れた。
「受験終了です」アレイスターの声が空間に響き、怜也を含む合格者たちは、講堂へと送り返された。 解放感と疲労感が入り混じった、複雑な感情が、彼らの表情に表れていた。 中には、涙を流して喜ぶ者、放心状態の者、そして、明日への不安を募らせている者もいた。
「貴学専科志願者では現在合計60人通過しました…」アレイスターは、冷淡で機械的な口調で告げた。 彼の表情は、感情を表すことなく、ただ事実を淡々と伝えているだけだった。時刻は12時彼の言葉には、容赦のない厳しさが漂っていた。3日間で150人もの受験者が脱落し、残されたのはわずか60名。その数字は、彼らの努力と生き残った奇跡を物語ると同時に、明日からのさらに過酷な試練への不安を掻き立てた。1日50人。その冷徹な事実が、彼らの心に重くのしかかっていた。怜也はホテルの個室に戻ると、机の上に目を向けた。そこには、宝石がはめ込まれたブローチが5つ、整然と並べられている。 それぞれのブローチには、きらびやかな宝石が輝いていた。中央にはダイヤモンドが、その隣には鮮やかな赤のルビー、青いサファイア、深い緑のエメラルド、そして、優雅な真珠があしらわれている。 ブローチの形は、まるで薔薇の花のように優美で、プラチナ、金、銀といった高級素材が巧みに組み合わさっている。それらは、ただの装飾品ではなく、何か特別な意味を持つように感じられた。近くには、虫眼鏡や顕微鏡などの研究用の道具が散らばってる、怜也が準備したものである怜也はブローチを解析した。
「このブローチには術式が刻まれてるな」怜也は呟きながら、彼はさらに注意深く観察を続けた。拡大鏡を使って宝石をじっくりと見つめると、それぞれの宝石には、目に見えるほどの大きさの幾何学的な模様が描かれていることに気づいた。
「この術式、似てるんだよな…そうだ、オラクル法国で使われる術式だ。幽閉魔導術式…、オラクル法国は、古代から伝わる強力な魔法の体系を持つ国でな。幽閉魔導術式は、その中でも特に強力で、対象を空間ごと封じ込めることができる禁断の術式なんだ。しかし、これほどまでに似ているなんて…まさか、こんな場所で出会うとはな。」怜也はさらに解析しする
「そういえば、脱落者はどこかに消えてるしな。 まるで跡形もなく、消え去ったように…。しかも、形は同じじゃなくても、媒体とやり口が似すぎてるんだよな…、遺体すら見つかっていない者もいる。 まるで、この世から完全に消し去られたかのように…、ていうか、アッシュ、オラクル法国出身だしな、これに気づいてはなさそうだしな…、しかし、このブローチの秘密を解き明かすことが、脱落者たちの謎を解き明かし、そして、このサバイバル入試の真実にたどり着く鍵になるかもしれない。 まずは、アッシュに接触してみるか…」怜也は、アッシュの部屋を訪ねた。
「アッシュ、ちょっと話があるんだ。」 アッシュは、怜也の言葉に、警戒の色を浮かべた。
「なんだ、急に。」アッシュは警戒をとかない
「ねえ、断罪のブローチって知ってるかな」怜也は、アッシュの肩に軽く手を置き、低い声で尋ねた。彼の目は、真剣そのものだった。
「それ自体は知ってるが、何故その話を今する」アッシュは、怜也の真剣な態度に、若干の警戒感を抱きながら答えた。
「もしこの入試に使われてるブローチがそれの改良品だとしたら…」怜也は、思考を巡らせながら続ける。
「つまり、あの断罪のブローチの力が、さらに強化されたものだとしたら、我々はただの試験を受けているのではないということになる。」アッシュは、眉をひそめ、考え込む。
「それはないだろう。あの技術はオラクルの外には出してないはずだ。仮に改良できるとしたら、教皇やその関係者のみがアクセスできるはずだ。」彼の言葉には、自信とともに、明らかな警戒感が漂っていた。怜也は、アッシュの反応に少し不安を覚えた。
「しかし、脱落者が消えているのは事実だ。何かが起きている。これを無視するわけにはいかない。」怜也は強い口調で言った。彼の心の奥には、真実を突き止めたいという強い思いがあった。アッシュは、怜也の目をじっと見つめ、深いため息をついた。
「君が何を考えているのかは分かる。だが、もし本当にそのブローチが改良されたものであるなら、我々が手を出すのは危険すぎる。」彼は、怜也を止めるような口調で言った。
「危険だからこそ、今動く必要があるんだ!」怜也は、アッシュの慎重な態度に苛立ちを覚えた。
「君は、ただの受験生だと思っているのか?この試験は、私たちの命がかかっているんだ。何かを見逃せば、次は自分が消えるかもしれない。」怜也はハキハキと言う
「今やるべきことはブローチを調べることかよ!?怜也!」アッシュは、そう言い放つと、急に表情を変えた。彼の目は、冷たく鋭く輝き、口角は鋭く引き締まっていた。彼は、怜也の腕を掴み、強い力で部屋から押し出した。怜也は、アッシュの力の強さに驚き、抵抗する間もなく、部屋から放り出された。
「このサバイバル入試、何か思惑がありそうだ、アッシュ…、お前はそれでいいのか?それじゃ昔と変わらないぞ」怜也は、アッシュとの過去の出来事を思い出しながら、苦々しく呟いて自室に戻る
「俺は俺のやるべきことをやる!因縁に終止符をうち、陰謀を暴く!もう、誰にも犠牲になってもらうもんか!」その後、怜也はベッドに寝る




