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2話 大きな天使

朝、目覚めると、妙に温かかった。

髪に一本の羽が乗っていることに気が付く、


なんだ、なんの羽だ。


その羽は凄く白く綺麗だった。


「ん?」

なにやら俺の腹の上でモフっとしたような肌触りを感じた。

妹がイタズラで人形でも詰め込んできたのか、

おそるおそる、掛け布団を開け確認する。


デカい白い翼が俺の体に乗っていた。

不思議と重さは感じなかったが、

なんだこれは、身に覚えのないものに、

少し怖くなってきた。


目線を変えると、

隣には金髪の少女がいた、

不覚にもトキめいてしまいそうだった。

すると少女も起きたようで、


「おはよう、貧相」


どこかで、聞いたことのある声だ。

いや、優華とまるっきり一緒だ、


「優華?」

「なに~」


ご本人様だった。

トキめきがザワめきに変わってしまった。


「何してるの」

「見てわかんないの」


分からねぇよ。


「何でいるの」

「今日も起こしにきた」


違ぇよ。


「今日土曜日だし、なにその金髪と羽は、

似合ってはいるけど、ハロウィンまで半年ぐらい先なんだが」


そういえば、昨日始業式やらで完全に忘れていたが、俺は今日で17歳になる。

誕生日だから好きにして良いよってことか。

俺は、貧乳派だから、そんなコスプレしても、

なびくわけがない、残念だったな。


「え、なんで私の変身が解けてるの」


変身?ついに脳みそのエネルギーまで胸に、

吸われ始めたのか、


「いやコスプレだろ」


パタパタと翼が騒いでいる。


「バレたのならしょうがない」

「わたしの初めてをあげる」


え。

何がバレたか知らんが、

嘘だろおい、心の準備ってものが、

そもそも俺は貧乳派でありだな。


紳士な狼が、帽子を脱ぎただの獣になろうとしていた。


俺はベットに押し倒され、

ありのままを受け入れようとしたら。


「はい、わたしの羽」

「これからずっと一緒ね」


羽を一枚渡された。

は?と心では思ってしまったが、

同時に安心もしてしまった。


「ありがとう」


素直に受け取ってしまった。

これが運の尽きだったのだろう。

今になってそう思う。


羽を眺めていたら、

金髪の優華は、俺の目の前でいつもの優華に戻った。

背中から生えていた翼も消えていた、

ただ手に持っている羽だけは、消えてはいなかった。


「え、マッジクまで手が込んでるな、はは、」


恐れいったよ。マジで、


「え?気づいてたよね。私が天使だってこと」


存在まで大きくなるな、

天使って胸も体も小さいものじゃねーのかよ。

その二個のデカいスイカをつけたまま、

どうやって飛ぶんだ。無理だろ、飛べないだろ、


「胸が邪魔で神様の元に帰れなくなったのか」

「そんなわけないでしょ馬鹿貧相」


違ったようだ。


「秘密よ大馬鹿」

足を思いっきり踏んできた。

「痛いなやめろよ」


本当に天使なのだろうか。

こんな暴力天使の親玉である神は、

とんでもない化け物であるのは間違いない。


「そういえばなんで、起こしに来たんだ」

「今日誕生日でしょ、麻里と3人で祝ってあげようと思って」

「そんなことしなくてもいいのに」


こんなこと言ってるが俺は内心凄く嬉しい。

家族から祝って貰えるのも嬉しいが友人だと、

心なしか2倍くらい気持ちが昂る、


「だけど嬉しいです」

「なんで、敬語になるの」

「気持ち悪いわね」


笑いながら言ってきた、

天使でもなんでも優華は俺の大事な友人なのだ。

もちろん影郎も麻里もだ、


「出かけるんだろ」

「着替えるから下で待っててくれ」

「分かってるわよ」


うっきうきで着替え、下に降りると、

麻里が妹と会話をしていた。


「先輩になにあげたら喜ぶと思いますか?」

「うん、何でも喜ぶと思いますよ、お兄ちゃんはポンコツなので」


後輩からのプレゼント、例え道端の土でも花のように愛でれそうだ。


「なんでもは困りますよ」

「うん、それなら日用品でもあげたらどうでしょうか」

「筆記用具とかそろそろ新学期も始まりますのでちょうど良いのでは?」

「参考にさせてもらいます」

「優華先輩は何をあげるんですか?」

「私の初めてを」


なに言ってるんだこのマジシャン羽女!


「何を言ってるんですか優華先輩」

「えっ」

絶句して妹はドン引きである。


「なんならさっきあげてきた」

「は!?」

今まで聞いたことのない麻里の声が聞こえた。

急いで誤解を解きに、降りていった。


「待て、違うだろ俺はそんなの貰っていない」

「いや、渡したでしょ羽」


確かに渡された、だが羽だけで初めてを、なんて言うな、どれだけの男がその言葉で失う物が多くなるか考えろ。

少なくとも可愛い後輩と妹の信頼が砕け散るところだったぞ。


「羽ですか、貧相先輩」

「もちろん、それ以外はなにもない俺の命、賭けれるぞ」

「お兄ちゃん、最低だよ」


誤解なんだよ、なにもねぇよあったらいや、

あるわけがない。


「俺ら、なにもしてないよな」

「私は初めてをあげたのに」


おい、まじかよ。

火に油を注ぎやがって、

あんな5分ぐらいの間でできるわけねぇだろ。


「なんでそんな誤解するような言い方するんだよ」

「羽貰っただけなのに」

「私からしたら大事な羽なの、馬鹿貧相」

「それは、ごめん。もちろん俺も大事にする」


おっと誤解はどうやら勝手に解けそうだ。

良かった麻里の表情はいつも通り和やかに戻っている気がする。

妹は俺をいつもより嫌悪した目で見てくるが。

てか、あの羽根どうやって保存もしくは使用するか。


「はぁ、誤解なら良いですよ。優華先輩も変なこと言わないでください」

「本当に初めてだったのに」


待てよおい、なぜまた争いを仕掛ける!


「最悪だよ、お兄ちゃん」


もうヤダ、


「まぁ、いろいろ考えてくれてありがとうな3人とも」

「貧相先輩、ありがとうまでは早いですよ。誕生日のエンディングで言わないと」

「別にお兄ちゃんのためじゃなくて、麻里先輩に聞かれたから答えただけだよ、自惚れるなボケ」


俺なんかしたのか。いつもより傷口に塩を多く塗られてる気がする。むしろ傷口をナイフか何かで広げられてる方が正解かもしれない。


「私もまだ渡すのあるから」

「羽だけでも凄く嬉しいよ」

「本当?」

「もちろん」


何か想いを込めて貰ったものというのは凄く嬉しいものだ。嬉しくないわけがない。

ただこれ以上、優華から何かを貰ったら代償か何かで、大切な物が失っていきそうだが。


「ではそろそろ行きましょうか」

「そうね」

「どこに行くの」


なにも聞かされていない。

「今日は3人でデート紛いのことでもしましょう」

「いつものことじゃないか」

「貧相先輩これは違うんです」

「貧相、私達のおごりで食べれるのだから全然違うでしょ」


いや、なんか悪い気がする。主に麻里にだが、

優華だけだったらいつもの2倍ぐらいは食べれそうだ。


「いや悪いよ」

「いつもお世話になっていますので」

「そうよいろいろありがとうね」


ここで遠慮するのは逆に失礼に当たるかもしれない。


「じゃあ、遠慮なく食べるね」

「はい、いっぱい食べて下さい」

「財布は気にしなくていいわ」


その一言で俺は気にしちゃうよ。

主に麻里の財布事情をだけど。


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