episode4.無
パッと目が覚めた。
俺はソファで寝ていた。
あれ?と思いながらも体が痛み。
先程の屈辱が脳裏に蘇る。
「やっと起きたか。」
そう言われ横をみると【部長】がいた。
「部長、、、」
と言うと部長は手を前に「何も言うな」と
俺を制止した。
「こってんぱんにやられよって、、、情けない。」
そう言う部長は少し寂しげだった。
「すみません」
ただ一言の俺に部長は続ける。
「まさかお前、ウチに覚醒者事情を知らなかったのか?」
ん?どういうこと?ときょとんする俺に部長が言う。
「【ライフ不動産】全社員120名の中で覚醒済なのはお前を入れて102人だ。無論。俺もだ。」
衝撃の一言に頭がついて行かない。
ならなぜ、金になるハンターにならない。
なぜここにいる。疑問が疑問を呼んで???な俺。
「ハンターになれば金になる。だが、ハンターになれば命をかけなければならない。それがみんな怖いんだよ」心中を察したように続ける。
確かに、当たり前のことだ
お金で命はかえない。上位ジョブな【ヒーラー】でも
蘇生までできない。
当たり前のことだが、浮かれすぎていて忘れていた。
情けない。。。
「さっきの中本とのやり合いでわかったはずだ。どれだけ自分が無力なのか、、、だからなぁ、岡。ハンターは諦めろ」
まさか、部長からこんなことを言われるとは
思わなかった。先日退職を伝えた際も
「やめろやめろ!お前がいない方が幸せだ!」とか
言ってたくせにここに来て止めるのかよ。
だが、確かにいくら高い階級の高位ジョブだからと
言ってもあそこまでやられてしまうということは
そういうことなのだろう。
「確かにそうかもしれないですね。」
そういうと部長は1枚の紙を出してきた。
「ほら、生涯雇用契約書だ。特別に口聞いてやるからサインしろ。」
こくんと頷きペンを握る。
なぜだかそれが正しいと感じたのだ。
すると、1つの疑問が頭に浮かんだ。
「部長、部長も覚醒者だって言ってましたよね?」
「あ?あぁ。そうだが、なんだ?」
「ステータスウィンドウ見せてくださいよ」
途端に顔色が変わる部長。
「お前、まさか効いていないのか?」
明らかに焦っている。
「何がでしょうか?尊敬する部長の全てを知りたい。その上で尽くしていきたいというのも悪なのでしょうか?」
【売上】結果を残せば正義。ダメなら悪。
本来であれば、こんな奴の提案なんて聞く必要は
ないだろう。
だが、不思議なことに部長の機嫌はみるみるよくなる。そして、、、
「そうかぁ!お前もやっと気づいたか!それなら特別に見せてやる!」といいステータスウィンドウを開いた。
【田畑 剛】ランクC レベル34/120
【職業:クローザー※2次転職】
【スキル:審判の天秤A・交渉E・説得B・隠蔽B・すり替えC・締結A】
【ステータス:省略】
目を疑った。そして書面を再度見る。
重要点1.【乙は甲を主人と認め今後生涯を仕えることを誓う。】
重要点2.【乙は給与の80%を甲へ支払い。残りの2割も甲の緊急事態に備え置いておくものする。】
重要点3.【乙は弊社【ライフ不動産】にて生涯をかけて務めていく。その誠意として〇〇の物件を自身が購入しそれを【ライフ不動産】へ譲渡する。】
乙とは俺。甲とは部長のことだ。
何故こんな契約書にサインしようなどと、、、
部長を見るとみるみる不機嫌になっている。
「お前、まさか俺のスキルにかかっていないな?」
ドスの効いた声が個室に響く。
「なぜ?なぜ術にかからない?」
そんなこと知るか!?こっちが聞きたい!
だが、中本に殴られすぎたせいか細い声しか出せない。
「クソッ!」
痛む体を無理に動かし俺は逃げた。
「おいっ!そいつ捕まえろ!」
後ろから部長が怒鳴る。
「クソがァ!」フラフラになりながらも走る。
正直限界だ。
すると、「おいっ!大丈夫かよ!」
頭上で声がする。見上げると【松田】がいた。
何してんだよこいつ、、、
ツッコもうにも声が出ない。
後ろからは部長が来ている。
他の社員も部長の声を聞いてこっちに来るだろう。
俺は最後の力を振り絞る。
「逃げろ」そう言い残して
俺はまた、意識を失ってしまった。