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何かおかしくない?

「ようこそいらっしゃいました。どうぞこちらへ」


 翌日。


 ツァイ様のお屋敷をたずねた私たちは出迎えてくれた女性に連れられて屋敷の中へ。


「ほえ~」

「ホタル、きょろきょろするな!」

「あっ、ごめん。でも」


 前を行く女性に聞こえないように小声で注意するジェードに私も小声で謝る。


「さすがは港町フィアーノの領主様のお屋敷。素晴らしいシャンデリアですね」


 女性にそう話しかけるセレスタの言葉にぶんぶんと首を縦にふる。


 そうなのだ。シャンデリアだけじゃない。タキの町とは格が違うと聞いていたから豪華だろうとは思っていたけど、ここまでとは。


 外観こそ他の家並みと揃えて白い壁に水色の屋根だったけど、大きさは桁違い。門からお屋敷までも馬車がないと無理なんじゃないかってくらい遠かった。しかも、その長い道のりに溢れる色とりどりの花。一体、手入れにどれだけの労力がかかっているのやら。


 屋敷の中はさらに豪華。ふっかふかの絨毯は思わず靴を脱ぎそうになってジェードに無言で睨まれたし。壁には金ぴかの額縁にはまった大きな肖像画。そこここに置かれたキラッキラの置物たち。天井には巨大なシャンデリア。宝飾合成でアクセサリーが作られるこの世界だから、きっと置物もシャンデリアも宝飾合成なはず。一体、どれだけの宝飾師が宝飾合成をして造ったんだろう。


「ありがとうございます。このシャンデリアはお抱えの宝飾師たちの自慢の品なんです。彼らも喜びます」


 やっぱりシャンデリアも宝飾合成なのね。って、ん? なんか変なこと聞いた気が。

 

「えっ? お抱えの宝飾師?」

「はい。領主様とそのご家族、お屋敷の装飾のために専任の宝飾師が数名。お屋敷の敷地内にある工房で常に作業をしております」


 いや、そんな当たり前のように言うけど。


「失礼ながら、お抱えの宝飾師の方がいるのであれば、なぜホタルを?」


 そうなのだ。ジェードの言うとおり。宝飾師がいるなら私をわざわざ呼ぶ必要なんてなくない? それとも。


「思いを素材にする宝飾師の方がいないのですか?」

「いえ、おります」


 セレスタの言葉にも前を向いたままさらりと答える女性。


 いやいや、尚更意味がわからない。思いを素材にする宝飾師がすでにいるのになんで私を呼んだの?


 たずねようとすると女性が大きな扉の前で立ち止まる。


「この先にツァイ様がお待ちです。お付きの方は別の部屋をご用意しておりますのでそちらへ」

「えっ?」


 私が呼ばれた事情も不可解だし、ここから先は一人で、なんて、ちょっとおかしくない?


 同じように思ったのだろう。私が疑問を口にするより先にセレスタが口を開く。

 

「どういうことですか? 私たちも一緒に」

「いいえ。ツァイ様がお会いになるのはホタル様だけです。お二人はご遠慮願います」


 顔色一つ変えずにぴしゃりと言う女性にさすがのセレスタもムッとした顔になる。


「申し訳ないですが、そういったお話であれば帰らせていただきます」


 セレスタの言葉にジェードも目だけでうなずく。レナには申し訳ないけど、確かにこれはちょっと何かありそう。とりあえず仕切り直した方が。


 パンパンッ。


「えっ!」


 女性が無表情のまま手を叩くとどこに隠れていたのか物々しい格好の男性が数名。あっという間に取り囲まれてしまう。


「これはどういうことですか!」

「チッ!」


 抗議するセレスタの声にジェードの舌打ちが重なる。腰の剣を抜こうとして屋敷の入り口で預けてしまったことを思いだしたんだろう。


「無駄な争いはさけましょう。自分たちの主の顔に泥は塗りたくないでしょう?」

「なんだと! 武器などなくてもこの程度!」

「ジェード、駄目だ! 格が違うってわかっているだろ」

「セレスタ!」


 セレスタの言葉にジェードが悔しそうに唇をかむ。取り囲む男性たちとの格じゃない。タキとフィアーノ、町の格が違うのだ。


「大丈夫。宝飾合成して戻ってくるだけだから」

「ホタル」

「ホタルさん、ごめん」


 悔しそうな顔をするジェードとセレスタに大丈夫とうなずくと女性の顔を見る。

 

「賢い人たちで助かりました。ホタル様、どうぞこちらへ」


 うながされるままに私は部屋へと足を踏み入れた。

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