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祈り
絶望的な状況に
彼はただ祈っていた
わたしは彼の祈りの無意味さを呪ったが
それはわたしのものの見方が
彼の心境にある
神への帰依を理解できないからだ
弱い心を救うには
もはや祈るくらいでしか守れない
このわたしも 弱い人間のひとりなのだ
それでもわたしは 自分の尊厳も理性も
神仏に丸投げしようとは思わない
祈る暇があるのなら
覚悟を決めて戦えよと
おのれを鼓舞して 立ち上がる
困難に立ち向かい
ゆっくりでもいいから
再生への道を探すのだ
そうした意志の出所こそが
神仏にもっとも近いのではないのか
ただ縋るより
おのれの意志を貫いて
恐怖も苦難も 受け入れる
たとえ弱くとも
その覚悟だけは失いたくない




