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老いたる者は
多くの死の向こうを見ると、いろいろと考えさせられます。
時は思うよりも早く
人の思考よりも早く
わたしたちを遠ざける
拒絶することもできず
避けることもできない
あのふさぎ込んだ壁の向こう側に
あの老人は鏡
わたしの鏡
わたしが老いた時の姿
怪我も病気もなくとも
その精神には衰えによる
不毛な煙が立ち込めはじめる
若輩者は 若さゆえの愚かさを捨て
老後には 老いの憂いを払え
それが人の生き死にに
正しき価値を見出だしてくれる
探し求めた結末ではなくとも
揺るがぬ意思を持てば
死を前にしても
満足してその腕に身を任せ
死出の旅に向かえるだろう




