昔と今と、詩と心
「時代は変わった」しかし、変わらないものもある。
あるいは昔よりも切実に求められることも。
昔の人はスマホも ネットもない時代に生き
それでも幸福だった
満たされていた
あんなにも自然を 文化を愛し
また、激動の時代を眺めて
それを言葉にした詩人たち
彼らの残した言葉には
人の心にある、確かな真実を映し出す
木の枝をしならせる柿に
そよぐ風に
流れる川に
生き物に
ほんのちょっとの慰みと
心に浮かぶ郷愁を残す
それらは現代を生きるわたしたちに
無縁のものなんかじゃない
むしろわたしたちは
それを取り戻すべきなんだ
便利な道具を手に入れて
失われてしまった心の機微
まるで機械の一部になってしまったかのような
不毛な人々の虚ろな影
荒んだ、空しい、不誠実な喜び
そんなものに捕われて
どこまで歩こうとも
そこは不毛の大地
誰かと競い合うつもりでいる
たった独りの 孤独なる競争者
そこには対する人がいると思い込んで
また意味のない言葉を吐き散らかす
誰もが自由で 価値のない享楽を手に入れた
科学の勝利だ!
人類は衰退し
その魂は錆ついた
ついには鏡の向こうにいる人と話しはじめた
人類はどこに向かっていくのだろう?
悪辣な精神的病が広がり
人は争うばかり
「わたしが勝利者だ」と
敗北宣言をする者たち
虚像を見つけて
「神はいませり!」と
狂乱する信仰者の影
わたしは虚ろな影を眺めては
人知れず涙をこぼす
人の心に浮かぶ塵芥を
誰が取り除けるのだろう?
病に冒された心で
自分勝手な夢を見る人々
その足下で──
自分からこぼれ落ちた良心が
踏みつぶされていると知らずに




