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詩集 ~世界とわたしと、人々と~  作者: 荒野ヒロ


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放火魔の憂鬱(ゆううつ)

たびたびニュースになる、車を傷つけたり、火を付けたりする犯罪者。

こうした「なんの利益にもならない」ことをしている奴というのは、劣等感からそうした無意味な行動をしていると気づくべき。最後は自分で自分を否定することになるから。


放火魔とか、はっきり言ってクズですね。(この詩はあくまでフィクションです)

 いらいらした日には


 燃え上がる炎に群がる連中を見て笑う


 燃え上がる炎が建物の間から揺らぐのを感じ


 恍惚こうこつとした気持ちになって にやにや笑う




 小さな火種を使って燃やし


 大きな火を作り出すと


 俺は偉大な支配者になった気分で


 それを遠くから眺める


 ウ──ウ──と鳴り響くサイレン


 火事を見ようと集まる愚民ども




 その様子を遠くから見て にやにや笑う


 愉快な気持ちだ


 置かれた自転車のサドルやバイクに火を付けて


 燃え上がれよ 燃え上がれよ


 活気あふれる炎が 暗い夜空を明るく照らす


 最高の気分だ




 火が鎮火すると


 俺はただの通行人だ


 水を浴びた燃えかすみたいに


 空虚で無価値


 おれはなんで火を付けたんだっけ?




 そうだ──からっぽのおれにできることは


 火を付けて


 誰かも知らぬ連中を呼び集めて


「おれが火を付けたんだぞ!」


 と心の中で吠えること


 ただそれだけ


 意味なんてない


 おれと同じ、意味も価値もない




 意味がないんだ!


 おれにも


 あらゆるものにも


 意味なんてない


 価値なんてない


 くそ、くそだ!


 おれは腹の底からわき上がる炎にいぶられ


 また火を付けにいく


 価値のないおれにできるのは


 火を付けてまわることだけ




 そして最後は


 おのれの命を


 地獄に落とし


 業火の薪となるだろう

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