『魔王で勇者なアークマーティン(第3章)』2:2:1
『魔王で勇者なアークマーティン(第3章)』2:2:1
アーク・マーティン……♂元魔王だが異世界転移して勇者になる。
クレア・ヘーゲル……♀女騎士で気の強い性格。強さに固執している。
フレンダ・コックス……♀魔法使いで口数が少なく、大人しめ。人間不信。
リアム・ガレット……♂ランサーで人当たりが良い。息子がいる。
ゾーン・ガレット……不問 リアムの息子。(フレンダ役かクレア役が兼ね役でも大丈夫です。その際、男として演じて下さい)
―過去―
ゾーン「父さん!僕、大きくなったら父さんみたいに強い人になる!強くなって、父さんも母さんも守れる勇者になる!」
リアム「はっはっは!生意気だぞ~このぉ!(ゾーンの頭をグリグリする)」
ゾーン「痛い、痛いよ父さん!」
リアム「ははは、じゃあ沢山食わないとな!腹が減っては戦は出来ぬ~!」
ゾーン「うん!沢山食べる!」
リアム「はっはっは!食べるのは良いが、ゆっくり食べないと……」
ゾーン「んぐっ!喉に……」
リアム「あぁ、ほら言わんこっちゃない!これを飲め!」
ゾーン「(水を勢いよく飲む)……ぷはぁ!……死ぬかと思った」
リアム「ぷっ……あはははは(笑う)」
-リアム笑い続けてる-
ゾーン「笑い事じゃないのに……ふふふ……(笑う)」
リアム・ゾーン「(笑い合う)」
間
リアムM「これは俺、ランサー“リアム・ガレット”の家族の物語である」
間
リアムM「第三章“ランサーの息子は小生意気”」
間
アーク「はっはっは……観念するんだな……こやつの命は、俺様アーク・マーティン様が貰った」
フレンダ「そんな……やめて」
アーク「もう遅い……お前はこやつを守ることが出来なかったのだ!」
フレンダ「おのれ……アーク……絶対に許さない!」
アーク「全てが遅過ぎたんだよ……フレンダ」
フレンダ「くっ……」
アーク「お別れの時間だ……はっはっはっはっ!(チキンを食べる)」
フレンダ「あっ!」
アーク「(チキンを食べながら)……うめぇぇ!」
フレンダ「最後のチキン……私も食べたかったのに!」
アーク「欲しかったなら早く取ればよかっただろ?」
フレンダ「だって……最後の一個って取り辛い」
アーク「それがお前の甘さだよ、フレンダ!」
フレンダ「この鬼!」
アーク「鬼じゃない」
フレンダ「魔王!」
アーク「あ、コラ!それは言わない約束だろ!?」
フレンダ「べー!」
アーク「この野郎!」
クレア「アーク!フレンダ!行儀が悪いわよ!ご飯くらいゆっくり食べなさい!」
フレンダ「ご、ごめん……」
アーク「ほーら、怒られた」
フレンダ「アークの所為……」
リアム「お前ら本当に仲良しだな!」
フレンダ「仲良くはない……」
リアム「でも、友達なんだろ?」
フレンダ「それは……うん」
アーク「ってか、仲良く無いけど友達って、成立するもんなのか?」
クレア「バカね……あれはフレンダの照れ隠しよ。そろそろあなたも、フレンダの性格を理解してあげなさい」
アーク「だぁ!もう分からん!人間って奴は本当に面倒くさい」
リアム「それにしても、急にアークとフレンダが友達になったって聞いた時は、正直驚いたぜ。二人とも友達作るには、ちょーっと難しい性格してるからなぁ」
クレア「うん、私も驚いた。フレンダがまさかアークなんかに心を許すなんて」
アーク「なんかとは何だ、なんかとは!」
フレンダ「そんなんじゃない……友達いなさそうだから、同情して友達になってあげただけ……」
アーク「おい!」
クレア「ほんと、素直じゃないんだから」
フレンダ「むぅ……」
リアム「まぁ、何にしても父さんは嬉しいぞ!」
アーク「父さん……?」
リアム「おう!このパーティじゃあ俺が一番の年長者だからな。お前らは俺の子どもみたいなもんだ」
フレンダ「リアムがお父さんって」
クレア「うん、ちょっと嫌かも」
リアム「おい、そんなこと言うなよ!!まぁ、世間の年頃の娘って奴は父さんを嫌うもんだと聞くからなぁ……これも仕方ない事なのかもしれない……うんうん」
アーク「父さん……」
リアム「ん?」
アーク「え?あ、いや……」
リアム「どうした?」
アーク「いや……なんでもねぇ。さて、デザートデザートっと……あれ?俺様のデザートは?」
フレンダ「うぅん、美味しい……」
アーク「あ、俺様のデザート……」
フレンダ「アーク……食べ物の恨みは……恐ろしい……」
アーク「俺様のデザート!!」
間
-過去-
リアム「駄目だ!」
ゾーン「なんでだよ……父さん」
リアム「お前はまだまだ未熟だ……今行っても、犬死するだけだ」
ゾーン「そんな事……」
リアム「兎に角、駄目だ!お前まで死んだら……誰が母さんを守る」
ゾーン「死なない……俺は死なない……それに、ここで待っていてもどうせ世界は魔王に支配されて、皆んな殺される。俺が、魔王を倒すんだ……だから!」
リアム「……」
ゾーン「……」
リアム「そうか……ならば」
ゾーン「……」
リアム「ならば俺を……」
間
-現代-
リアム「……っ!!あぁ……夢か……」
リアムM「懐かしい夢を見た……あの日から、毎日のように見ていた夢。決して忘れる事は許されない、俺の罪。でも……ここの所、俺はその事を忘れていた」
アーク「んん……(眠っている)」
-ペンダントを見つめてる-
リアム「ゾーン……お前は今どこに……」
間
リアムM「次の日の朝、俺達はアークの日課になっている剣の稽古に付き合っていた。まぁ、俺はアークがクレアにボコボコに負かされている所を見ているだけで、別段何をする訳でもないのだが……」
リアム「ふぁ~(欠伸)」
―ペンダントを見つめるリアム―
リアム「……」
アーク「お~い、リアム!」
リアム「アーク、どうした?」
アーク「クレアが……クレアが!」
クレア「アーク!こら、逃げるな!」
アーク「いや、ちょい休憩を……」
クレア「ダメ!まだ始めたばかりでしょ!」
アーク「いや、まぁ、そうなんだけど……」
クレア「まったく……フレンダを少しは見習いなさいよ」
リアムM「クレアの視線の先では、フレンダが魔法の練習をしていた」
フレンダ「ホーリーブレイク!」
アーク「うわっと、危ねっ!!」
フレンダ「ちっ、外した……」
アーク「完全に俺様の事狙っただろ!」
フレンダ「ふい……」
アーク「この野郎……都合が悪くなるとすぐ無視しやがる」
リアム「それにしても、最初に比べると、フレンダは相当成長したなぁ」
フレンダ「ヘヘン!」
クレア「フレンダも戦えるようになった今、アークにはもっと強くなって貰わないと困るんだから」
アーク「それは……そうだけど」
フレンダ「サンシャイン――」
アーク「あっ、ちょ!その魔法は駄目!ここら一体を焼け野原にするつもりか!」
フレンダ「むぅ……ケチ」
クレア「ほら、行くわよ!」
アーク「り、りあむぅ~!!」
リアム「まぁまぁ、息抜きは必要だし、な?」
アーク「りあむぅ!」
クレア「リアムはアークに甘すぎ!」
リアム「お?やきもちか?」
クレア「キモ……」
リアム「照れ隠し!」
クレア「はぁ……じゃあ、五分だけ!」
アーク「助かった~」
クレア「休憩終わったら覚悟してなさいよ……いつもの倍以上厳しく行くからね」
アーク「お、おぉ……」
リアム「ははは……(ペンダントを見つめる)」
アーク「そう言えばリアム、たまにそのペンダント見てるよな?なんか大事な物なのか?」
リアム「ん?あぁ、これか?これはな……俺の宝物だ」
アーク「宝物?」
-アークにペンダントの中身を見せる-
アーク「……こいつは」
リアム「俺の息子だ。どうだ?俺に似て男前だろ?名前はなぁ……」
アーク「ゾーン……ガレット」
リアム「え?」
アーク「あ、いや……」
リアム「今……なんて言った?……なんで……なんで、俺の息子の名前を……」
アーク「……」
リアム「アーク……俺の息子の事を、知ってるのか!?」
アーク「いや、何のことか……」
リアム「惚けるな!知ってるんだろ?俺の息子は今どこにいる!どこにいるんだ!」
アーク「落ち着けって!リアム!」
クレア「どうしたの!?大きな声出して」
フレンダ「……」
リアム「アーク、教えてくれ……息子は……ゾーンは、どこにいるんだ」
アーク「それは……」
リアム「……」
アーク「……」
リアム「頼む……正直に教えてくれ」
アーク「……」
リアム「……」
アーク「ゾーンガレットは……もういない」
リアム「っ!?」
アーク「魔王城で……」
リアム「……死んだのか?」
アーク「……あぁ」
リアムM「思考が停止した……体の力が抜け、その場にしゃがみ込む。目の前が真っ白になり、気が遠くなっていくのを感じる……俺の大切な息子が……死んだ?……そんな事が……」
リアム「くっ……」
クレア「それって……何かの間違いじゃないの?」
アーク「間違いじゃない」
クレア「でも」
アーク「間違いじゃないんだよ!!……そいつを殺したのは」
リアム「アーク、殺した奴の事も知ってるのか!?」
アーク「……」
リアム「アーク!」
アーク「……そいつを殺したのは」
リアム「……誰なんだ」
アーク「……」
フレンダ「魔王に……殺されたんだよ!」
リアム「なに?」
アーク「フレンダ……」
フレンダ「魔王に……殺されたんだよ」
リアム「……」
クレア「フレンダ……?」
フレンダ「……」
リアム「お前に聞いてるんじゃない……俺は……アークに聞いてるんだ」
フレンダ「……っ!?……ごめん」
リアム「……」
―気まずい空気が流れる―
リアム「悪い……頭冷やしてくる」
―リアムが走って行ってしまう―
クレア「リアム!」
―リアムを追いかけるクレア―
フレンダ「アーク……」
アーク「ごめん……」
フレンダ「なんで謝るの?」
アーク「ごめん……」
フレンダ「アークは……魔王じゃない……」
アーク「……」
フレンダ「アークは……魔王じゃない……魔王なんかじゃ、ないよ」
間
クレア「リアムっ!」
リアム「……」
クレア「えっと……大丈夫?」
リアム「……」
クレア「ごめん……大丈夫な訳ないよね」
リアム「……」
クレア「……」
リアム「俺は……最低だ」
クレア「え?」
リアム「俺は、ゾーンを行かせるべきじゃなかった……あいつは弱い……まだまだ未熟で、魔王に勝てる訳が無かったんだ……あの時、俺はあいつを……止めないといけなかったんだ……死んでも……止めないといけなかったんだ……」
間
―過去―
リアムM「親にとって、子どもと言うのは、いつまで経っても子どもなんだろう……」
ゾーン『父さん!(幼少期のゾーン)』
リアムM「俺にとっても、それは例外じゃない。ゾーンは、いつまで経っても、俺の大事な一人息子だった……」
ゾーン『父さん!俺父さんみたいに強くなる!(幼少期のゾーン)』
リアムM「だから、俺が死んでも守らないといけなかったんだ……」
ゾーン『ごめん…父さん……ごめん……ごめんなさい……ごめんなさい……(青年期のゾーン)』
リアムM「その筈だったのに……」
間
ゾーン「俺……魔王討伐のためにパーティーを組んだ……」
リアム「なに?どういうことだ?」
ゾーン「そのままの意味だよ……俺が魔王を倒す」
リアム「馬鹿なことを言うんじゃない!お前を、戦場へ送り込む訳にはいかない!」
ゾーン「止めても無駄だよ」
リアム「どうしたって言うんだ!?何で急に……」
ゾーン「母さんの病気」
リアム「え?」
ゾーン「母さんの病気って……魔王軍がこの村に放った呪いが原因なんだろ?」
リアム「それは……」
リアム「……」
ゾーン「ある日……村全体に呪いが広がった……母さんはヒーラーだ……回復魔法を得意とする魔法使い……呪いを解く事の出来る人間は、この村には母さんしかいなかった」
リアム「どこでその話を……」
ゾーン「全ての村人を救い、母さんは英雄となった……でも、母さんは倒れてしまった……母さんも呪いに掛かっていたんだ……でも、母さんの呪いを解ける人間は、この村にはいなかった……いや、どこにもいなかった」
リアム「やめろ……」
ゾーン「全部が手遅れだった……母さんは自分の命を削りながら、村の人達を助けていたんだ……自分も呪いと戦いながら!」
リアム「やめろ!」
ゾーン「母さんは一人で魔王と戦っていたんだ……俺も……魔王と戦いたい!」
リアム「駄目だ!」
ゾーン「なんでだよ、父さん!」
リアム「お前はまだまだ未熟だ……今行っても、犬死するだけだ」
ゾーン「そんな事……」
リアム「兎に角、駄目だ!お前まで死んだら……誰が母さんを守る」
ゾーン「死なない……俺は死なない……それに、ここで待っていてもどうせ世界は魔王に支配されて、皆んな殺される。俺が魔王を倒す……だから!」
リアム「……」
ゾーン「……」
リアム「そうか……ならば」
ゾーン「……」
リアム「ならば俺を……殺していけ」
ゾーン「なっ……」
リアム「俺を殺せ……もし、俺を殺すだけの力があるなら、認めてやる」
ゾーン「父さん……」
リアム「どうした?魔王は強いぞ……こんな所で怖気付いてる様じゃ、到底倒せない……大人しく……っ!?」
-ゾーンが剣を構える-
ゾーン「父さんを倒せば……本当に認めてくれるんだな?」
リアム「ゾーン……」
ゾーン「手加減はしない……殺す気で行くぞ!」
リアムM「ゾーンは本気で俺に刃を向けてきた。その剣には確かに殺気が篭っていた……本気で、俺の事を……」
ゾーン「オアァァァァァァア!」
リアム「くっ……ゾーン……ウワアァァァァァァ!」
間
リアムM「俺は手加減することができなかった……目の前にはボロボロになった息子が倒れている。実の息子を……俺は……」
リアム「はは……最低だな……」
リアムM「俺は力なく倒れるゾーンに背を向けた。現実から目を背けるように……だがその時」
リアム「うっ……ガハッ!」
リアムM「自分の腹から赤く染まった剣の先が顔を出す。一瞬、何が起きたのか分からなかった」
リアム「ゾーン……ゴホッ(吐血)」
ゾーン「ごめん……父さん……ごめん……ごめんなさい……ごめんなさい……」
リアムM「遠ざかる意識の中、震える声で何度も謝る息子の声を聞きながら、俺はゆっくりと目を閉じた」
間
―現在―
リアム「目を覚ました時、俺はベットの上で横になっていた……どこを探しても、ゾーンの姿は見つからねえ……ゾーンの母親も、その年に亡くなった……」
クレア「リアム……」
リアム「俺は、ゾーンを探す為にこの旅を始めたんだ……なのに」
クレア「……」
リアム「ゾーン……ゾーン……うぅ……くっ(涙を流す)」
リアムM「胸が苦しい……もう二度と、俺の息子は……帰って来ない」
間
―夜の宿―
フレンダ「リアムの様子はどう?」
クレア「相変わらず、部屋に一人で閉じ篭ってる」
フレンダ「アークはアークで、考え事しながらどっか行っちゃうし……大丈夫かな?」
クレア「どうだろ……」
-クレアの視線を感じるフレンダ-
フレンダ「ん?」
クレア「……」
フレンダ「クレア?どうしたの?」
クレア「フレンダは……何か知ってるの?」
フレンダ「え?」
クレア「ずっと気になってた……なんでアークがリアムの息子さんの事を知っていたのか……なんで、亡くなった事を知っていたのか」
フレンダ「それは……」
クレア「何となくだけど……フレンダは何か知ってるんじゃないかと思って」
フレンダ「……」
クレア「あぁ、ううん……(首を横に振る)私には言えなくても言い……でも何か知ってるなら、リアムには教えてあげて欲しいな……」
フレンダ「私は……」
クレア「お願い……フレンダ」
フレンダ「……」
クレア「……」
フレンダ「わ、私は……」
クレア「……」
フレンダ「な、何も知らない……ザマス」
クレア「ザマス?」
フレンダ「えっと……」
クレア「……」
フレンダ「ごめんなさい!」
クレア「え?」
フレンダ「きっと……アークの口から言わないと、意味が無いと思うから……」
クレア「……そっか」
フレンダ「それより、お腹すいた……夜ご飯にしよう!」
―フレンダが去る―
クレア「あっ、ちょっとフレンダ!もぉ……」
間
クレア「はぁ……リアム……アーク……私はどうすれば……」
間
リアムM「その日の夜、俺は皆が寝静まったのを確認すると、部屋を出た。宿のどこを探してもアークの姿はない。俺に気を使ったのか、気まずくて顔を合わせ辛いのか……」
リアム「ゾーン……今、お前の所に行くからな……だがその前に」
間
アーク「……」
リアム「アーク……こんな所にいたのか?宿屋の近くにもいないから、探すのに苦労したぞ」
アーク「リアム……悪い……ちょっと、風に当たりたくて」
リアムM「アークは俺の顔を見るなり、気まずそうに顔を逸らした」
アーク「……」
リアム「アーク……別れを言いに来た!」
アーク「は?」
リアム「俺はこれから、魔王を倒しに行く……」
アーク「な、何言ってんだよ……一人で行くって言うのかよ」
リアム「あぁ、今まで世話になったな!」
アーク「リアム……」
リアム「お前は強くなれる!クレアにもっともっと鍛えて貰え!」
アーク「リアム……」
リアム「フレンダも、難しい奴だけど……まぁ、仲良くしてやってくれ」
アーク「リアム」
リアム「あいつらになんか言われたら――」
アーク「リアム!!」
間
アーク「やめろよ……」
リアム「……俺が行かないと、駄目なんだよ」
アーク「……」
リアム「……」
アーク「一人で行って……勝てるわけ無いだろ!」
リアム「……そうだな」
アーク「……死ぬ気か?」
リアム「ゾーンの仇は……俺が討たないといけないんだ」
アーク「行かせねぇぞ……」
リアム「止めても無駄だ」
アーク「行かせねえ!」
リアム「アーク……頼む……」
アーク「行く必要は……ない!」
リアム「なに?」
アーク「お前の仇は目の前にいる……」
リアム「どう言うことだ……」
アーク「俺様が……魔王だ」
リアム「なっ……」
リアムM「そんな言葉、信じられる筈もない……俺を引き止める為に言ったハッタリだ……その筈なのに……なのに……ほんの一瞬だけ、アークの言葉が本当な気がしてしまった」
アーク「俺様が……お前の息子を殺した」
―殺伐とした空気―
リアム「ははは……アーク……冗談でもそういう事は言うもんじゃねえ……」
アーク「生憎、冗談を言えるほど賢くない」
リアム「なら……俺はお前を、許す訳にはいかないな」
―リアムランスを構える―
アーク「俺様も、はなから許されるつもりはない……ただ」
―アークも剣を構える―
アーク「悪いが……魔王として戦う以上、簡単に死んでやる訳にもいかない」
リアム「おもしれぇ……容赦はしねえ!殺す気で行くぞ!!」
-ランスで突っ込む-
リアム「うぉぉぉおお!」
アーク「ぐっ……がはっ!」
リアム「どうしたアーク!毎朝の稽古はお遊びか?」
アーク「くっそ……調子に乗るな!」
リアム「遅い!(アークの剣をかわす)」
アーク「なっ」
リアム「はぁぁぁぁ!(アークの腹を蹴る)」
アーク「ぐっ!」
リアム「(鼻で笑う)……ん?」
アーク「捕まえた……」
リアム「なっ」
アーク「おらぁぁぁ!」
-足を投げ飛ばす-
リアム「ぐっあぁぁ!」
アーク「クレアの稽古は……伊達に厳しくないぞ」
リアム「くっ……そうみたいだな……舐めて掛かってすまなかった……」
アーク「それは……」
-光り輝くランス-
リアム「相手は魔王……だったな」
アーク「ランスが……光った」
リアム「魔王相手に、もう油断なんてしねぇ……」
アーク「……」
リアム「死ね……魔王ぉぉぉぉぉお!!」
アーク「ぐぁぁぁぁあ!!(光を受け止める)」
リアム「無駄だ、砕けろ!」
アーク「なっ……剣が砕け……」
リアム「終わりだ……アーク」
アーク「がはっ……くっ……そぉぉぉ……」
リアム「……っ!?」
アーク「がはっ……ゲホッゴホッ」
リアムM「なんてザマだ……俺は息子だけじゃなく、大切な仲間まで……」
リアム「すまねえな……アーク。急所は外した……すぐに治療すれば命は助かる……」
アーク「ま……て……」
リアム「っ!?」
アーク「いか……せない……」
リアム「やめろ……」
アーク「まだ……俺様は……生きてるぞ!」
リアム「やめろ!」
アーク「あぁぁぁぁぁぁあ……(殴りかかる)」
リアム「やめろぉぉぉ!」
アーク「がふっ!くっ……まだまだ!」
リアム「ぐっ!(頬を殴られる)」
アーク「はぁ……はぁ……行かせない……死んでも……行かせない……ガハッ!(腹を殴られる)」
リアム「何で……倒れねえ……ぐふっ!(頬を殴られる)」
アーク「お前が……俺を殺さないからだ!がふっ(顔を殴られる)」
リアム「殺すぞ……本当に……殺しちまうぞ!がはっ!」
アーク「殺せよ……お前の可愛い息子を殺したのは……この俺様だ!ごふっ!」
リアム「やめろ!それ以上……魔王の名前を語るな……お前は、魔王じゃない……あいつらの仲間だろ……俺がいなくなったら、あいつらを守れんのは、勇者であるお前だけだ」
アーク「だったら、お前の事も守らせろ!!」
リアム「なっ……ぐっ(腹に重い一撃が入り膝をつく)……ガハッ……(咳き込む)」
アーク「お前も……俺様の仲間だろうが……俺様の事を殺せないなら、せめて……お前の事も守らせてくれよ」
リアム「ぐっ……」
アーク「死にに行く仲間を……見殺しになんて出来ねぇ」
リアム「……へへっ……魔王らしくねぇ、言葉だな……」
アーク「お前らに教わった……仲間ってのはそういうもんだって」
リアム「俺が……決着つけなきゃならねえんだよ……例えそれで、俺が死んだとしても……ゾーンの為に、俺が戦わないと――」
アーク「ふざけんな!!……なにがゾーンの為だ……お前が死んでも、お前の息子は絶対に喜ばねぇ」
リアム「お前に何が分かる!!」
アーク「ゾーン・ガレットは勇敢な騎士だった!!……よく、覚えてる……死ぬ最後の瞬間まで、両親が生き抜く事を望んでいた……」
ゾーン『ごふっ……(心臓に剣が突き刺さる)俺は……ここで、死ぬのか……母さんは……元気かな……父さんは……ごめんなさい……俺の分まで……生きて……くださ……』
間
アーク「自分ではなく、両親が生きることを望んだ、立派な騎士だ!!」
リアム「ゾーンが……そんな事を……」
アーク「俺様を殺して仇を討つか……それが出来ないならせめて……ゾーンの望みを、俺様に叶えさせてくれ……それが、俺様に出来る償いだ」
リアム「くっ……ゾーン……ごめん……ごめんなぁ……ごめん……うぅ(泣き崩れる)」
リアムM「あぁ~あ……いい歳こいたおっさんが……なんてザマだ……でも、今日だけは許してくれ……」
リアム「うぅ……ぁぁぁあ!!(子供のように泣く)」
アーク「リアム……うっ……あぁ……やべぇ……」
-アーク倒れる-
リアム「アーク……?おい、アーク!しっかりしろ!おい!」
リアムM「張り詰めていた糸がぷつりと切れたように、アークは倒れた……」
間
アーク「んん……」
―目覚めるアーク。それの横で椅子に座りながら眠るクレア―
クレア「すぅ……すぅ……」
アーク「ん?クレア?」
クレア「ん……あれ?……起きた……アークが……起きた!!」
アーク「あぁ……おはよ?」
クレア「おはようじゃ無いわよバカ!!」
アーク「うっ……」
クレア「死んだかと思った……リアムと戦うなんて……無茶苦茶だよ……バカ!」
アーク「ごめん……」
クレア「仲間同士で戦うなんて……本当にバカだよ……」
アーク「ごめん……ごめんな」
クレア「うぅ……バカ……」
アーク「あぁ、そう言えばリアムは?」
クレア「リアム?リアムなら多分……」
アーク「ん?」
間
―草原。石にペンダントを引っ掛けたお墓に手を合わせているリアム―
リアム「……」
アーク「リアム!」
リアム「おう、アーク!怪我はもういいのか?」
アーク「お陰様で……リアムの攻撃なんざ、これっぽっちも堪えてねえよ」
リアム「その割りに、二日間しっかり眠ってたな!」
アーク「うっせ!」
リアム「ははは……」
アーク「お墓か?」
リアム「あぁ、魔王討伐に出て死んだ人間ってのは、墓にも入れない奴らばかりだ……せめて、息子には墓を作ってやりてぇ……」
アーク「そっか……」
リアム「……」
アーク「……」
リアム「……」
アーク「本当に……俺様を殺さなくていいのか?」
リアム「なんで、お前を殺すんだ?」
アーク「それは……俺様が魔王だから」
リアム「ふっ……フレンダがな、俺の所に来たんだ」
アーク「え……?」
リアム「アークは……魔王じゃない……」
フレンダ『アークは魔王じゃない!だから……もう戦ったりしないで!』
リアム「そう言って、何度も何度も頭下げてきた。元からアークを殺す気なんてこれっぽっちも無かったんだけど……なんか俺が悪者みたいで、あまりいい気はしなかったな」
アーク「フレンダ……」
リアム「クレアも、お前の事を心配して、眠らずに看病してたよ」
アーク「あぁ、なるほど……だから」
リアム「なんでお前がゾーンの最後を知っていたのか、お前は本当に魔王なんじゃないか……結局何度考えても分かんなかった……でも、一つ確かに分かる事がある」
アーク「ん?」
リアム「お前は俺達の仲間だ」
アーク「リアム……」
リアム「死んでも、なんて言わない……だけど、絶対に守ってやる。だから、全員で生き抜こう」
アーク「あぁ!」
リアム「(笑う)」
アーク「……よし、決めた」
リアム「ん?何だ?」
アーク「俺様も絶対に強くなる!強くなって、リアムも、クレアもフレンダも、全員を守れる勇者になってやる!」
リアム「……」
ゾーン『僕、大きくなったら父さんみたいに強い人になる!強くなって、父さんも母さんも守れる勇者になる!』
リアム「……っ」
アーク「ん?どうした?」
リアム「ふっ……はっはっは!生意気だぞ~このぉ!(アークの頭をグリグリする)」
アーク「ちょ!痛い痛い!傷口開く、傷口開くから!ま、マジでやめろぉ~!」
間
リアムM「ゾーン、見てるか?ごめんな……父さんはまだ、お前の所にはいけない……魔王を倒すのもしばらく先になりそうだ……でも、必ず生き延びて、仲間たちと共に魔王を倒してやる。次に会う時は父さんの武勇伝を沢山聞かせてやるから……それまで」
リアム「母さんと二人で……楽しみに待っててくれ!」
間
リアムM「次回“騎士の弱さ”」
end