『魔王で勇者なアークマーティン(第1章)』2:2:1
『魔王で勇者なアークマーティン(第1章)』2:2:1
アーク・マーティン……♂元魔王だが異世界転移して勇者になる。
クレア・ヘーゲル……♀女騎士で気の強い性格。強さに固執している。
フレンダ・コックス……♀魔法使いで口数が少なく、大人しめ。人間不信。
リアム・ガレット……♂ランサーで人当たりが良い。息子がいる。
召喚者・カラステング1……不問
カラステング2→リアム兼ね役
カラステング3→クレア兼ね役
カラステング4→フレンダ兼ね役
アークM「ここは魔王城の最深部……俺様はこの世界を牛耳る魔王“アーク・マーティン”様だ。この俺様に敵う人間など、この世に存在しない……そう思っていた。だが……」
アーク「くっ……」
リアム「はぁ……はぁ……手間掛けさせやがって!」
フレンダ「……これで……終わり」
アークM「百戦錬磨の俺様ともあろう者が……生まれて初めて、追い詰められている。しかも、俺様を追い詰めているのは、たかだか三人組の雑魚パーティーだ。屈強な男ランサーに、無表情な魔法使い……そして女騎士」
アーク「この程度の奴らに、俺様が負ける事など……あるはずがない……あってはならないのだ!!」
クレア「魔王……私は貴方を絶対に許さない。どんな事があっても殺す……私がこの手で、殺してやる!!」
アーク「はっ……殺せるものなら殺してみろ!返り討ちにしてくれるわ!!」
アークM「俺様が負けるはずがない……こんな勇者もいないような弱小パーティに負けるはずがない!だが、口とは裏腹に体が思うように動かない……」
クレア「死ね……魔王!」
アークM「動け……動け、動け!女騎士が光り輝く剣を振り上げ、俺様に向かって振り下ろした。“死”……頭にその一文字が過った刹那、俺様の体を光が包み、女騎士の剣を弾き飛ばした」
全員「っ!?」
アーク「こ、これは……」
フレンダ「まさか……転移魔法?」
リアム「逃すな!!」
アーク「うわぁぁぁぁあ!!」
アークM「とてつもない轟音と共に、俺様の体は魔王城から姿を消した」
間
アークM「これは俺様、魔王“アーク・マーティン”が、異世界に飛ばされ、あろうことか勇者になってしまう、そんな物語である」
間
アークM「第1章“魔王が勇者になるって、そんな話”」
間
アークM「深い、深い眠りについていた……俺様は死んでしまったのだろうか。あの時、女騎士に斬られかけた俺様は、謎の光に包まれて……そこからの記憶がない。今は只ひたすらに、ゴールの無い暗闇を浮遊している感覚……一体俺様はどこへ向かっているのだろうか」
召喚者「おーい、そろぼち起きろー」
アークM「誰かが俺様を呼んでいる?もしかして、地獄の閻魔様って奴だろうか……だとしたら、やはり俺様は今、地獄へ向かってるらしい。まぁ、天国へ行けるだなんて、端から思ってはいないが……」
召喚者「起きろってば!!……なになになに?こんなに揺すっても起きない奴、久し振りだよ?え?反抗期?そういう年頃?学校行きたくないから布団の中で現実逃避しちゃおーみたいな、そんな年頃?」
アークM「ん?ところで閻魔と魔王ってどっちが偉いんだ?字面が格好いいのは閻魔だが…………うーん……いや、どう考えても俺様の方が偉いだろ……うん、俺様はこの世で一偉い筈だ!俺様は偉い!俺様は偉い!」
召喚者「え?なに?学校で虐められてんの?話聞いてあげよっか?ねぇ、話聞いてあげるから取り敢えず起きなさいって!……え?もしかして死んでる?」
アークM「あーでも、俺様今からあの世に行くんだ……あの世で一番偉いのは閻魔かもしれん……えー、俺様より偉い奴とかどうやって話せばいいか分からないな……敬語とか習ってないぞ……あぁ、こんな事なら義務教育受けとくんだったな……はぁ〜あ」
召喚者「ファイヤー……ファイヤー……ファイヤー……」
アークM「ん?…………ってか、なんか熱くね?」
召喚者「ファイヤー……ファイヤー……ファイヤー」
アーク「……んん……ん?」
召喚者「おぉ!やっと起きた!!」
アーク「……何してんの?」
召喚者「あぁ、これ?これはね〜あまりに起きないから死んだかと思って……燃やしてた、ト・コ・ロ♡」
アーク「も、燃やしてた?なにを?」
召喚者「キ・ミ・ヲ♡」
アーク「ん?」
アークM「首だけ動かして辺りを見渡す。すると布素材で出来たベットがメラメラと赤い炎に包まれて……」
アーク「あっつ!!!!!!!」
召喚者「おぉ!元気だね!」
アーク「元気だね!じゃねえよ!!殺す気か!」
召喚者「そんなそんな、殺すとかそんな事考える訳ないじゃん!ちょーっと、火葬しようかなーって……テヘペロ!」
アーク「テヘペロとか今時流行っていないぞ!」
召喚者「ぴえん……」
アーク「よーし、分かった。俺様が今からお前の事を火葬してやる……」
召喚者「え?」
アーク「俺様を侮辱した事、もがき苦しみながら後悔するんだな……」
召喚者「え?えぇ?」
アーク「ふっふっふ……」
召喚者「な、なんかやばい雰囲気が……これはまさか……」
アーク「死ね……ダークフレイム!!!」
-何も起きない-
アーク「あれ?ダークフレイム!!!」
-何も起きない-
アーク「ダークフレイム!!!」
-何も起きない-
召喚者「えっと……何も起きないね」
アーク「何も……起きないな」
間
召喚者「取り敢えず……お茶でも飲む?」
アーク「うん……」
アークM「目覚めた俺様は、魔王としての力の全てを……失っていた」
長めの間
アーク「……はぁ」
召喚者「まぁまぁ、そんな落ち込まないで、ね?異世界に転移して来た人が皆んなチート能力持ってると思ったら大間違いだから!ね?初期能力にしては中々強めだから!ね?元気出して!」
アーク「訳が分からん……」
召喚者「え?」
アーク「訳が分からん!!」
召喚者「おぉ、元気になった!」
アーク「もう一度問う……ここはどこだ!」
召喚者「ベルナルド王国の中にある小さな村で御座います」
アーク「その……ベルナルド王国って言うのはラナーシャ王国からどの程度離れている!」
召喚者「何回も言いますけど、アークの旦那は俺っちがこの世界に召喚したの!つまり別の異世界から転移してきたのね?だから、ラナーシャ王国って言う国はこの世界には存在しないの!」
アーク「じゃあ、どうすれば元の国に帰れる!」
召喚者「そりゃ、魔王を倒したら帰れると思うよ?……知らんけど」
アーク「だから……魔王は俺様なんだって、さっきから言ってるだろ!!ぶち殺すぞ!」
召喚者「いやいや、アークの旦那のステータスじゃ俺っちには勝てないから!そこん所よろしく」
アーク「くっ……」
アークM「このインチキ召喚者の話を纏めると、俺様は異世界に召喚されたらしい。そして、この世界にも魔王が存在しており、その魔王を倒す事で、元の世界に戻れるかもしれないとの事……俺様のステータスは並みの人間に少し毛が生えた程度の物で、魔王どころかダンジョンにいる中ボスすら倒せないくらいだと言う……どおりでこの世界に来てから、体が軽いと思ったよ……これでは本当にただの人間だ」
召喚者「まぁ、弱いもんは仕方ない!これから頑張ろう!勇者、アーク・マーティン殿!」
アーク「ゆ……勇者?」
召喚者「そう!勇者!!」
アーク「……ふざけるな……ふざけるな、ふざけるな、ふざけるな!!」
召喚者「何々なんだよ急に大きな声出して」
アーク「俺様は仮にも魔王だぞ……勇者などと呼ばれてたまるか!!」
召喚者「それは別の世界での話でしょ?現にアークの旦那は光属性の力を持ってる。魔王が光属性の魔法なんて、それこそあり得ないでしょ!」
アーク「それは……」
召喚者「ね?観念しよ?早く魔王倒せば、それだけ早く自分の世界に帰れるんだから」
アーク「……くっ」
召喚者「じゃあ、旦那のパーティーメンバー呼んでくるから!そこで待っててね!」
アーク「パーティーメンバー?」
アークM「そう言って召喚者は部屋を出て行ってしまった。未だに現実を受け入れられない……なぜ魔王である俺様が勇者などやらねばならんのだ。考えれば考える程苛々してくる」
アーク「はぁ……」
アークM「まぁ、腹を立てても状況は変わらない……俺様は仮にも魔王だ。異世界の魔王とはいえ、俺様より強い筈がない。俺様は最強なのだから……サクッとこの世界の魔王を倒して、元の世界に帰るのだ」
アーク「そして今度こそ、あのクソ生意気な女騎士どもを……」
クレア「失礼します」
アーク「ん?」
クレア「初めまして、騎士をしています。クレア・ヘーゲルと申します。これからパーティーメンバーになると言う事で、よろしくお願いします」
アーク「お、お前は……女騎士!!」
クレア「え?は、はぁ……まぁ、一応女騎士ですけど……もしかして、女って言うのが不服?もしそうなら心配しなくても……」
アーク「ここで会ったが百年目!!覚悟!!」
アークM「先手必勝で殴りかかる。そして……」
アーク「ぶへ!!」
アークM「返り討ち……女騎士さん、さすがです」
リアム「おうおう、今度の新人は元気がいいな!」
フレンダ「……」
アーク「お、お前達は……」
アークM「ここは俺様がいた世界とは別の世界……その筈なのに」
クレア「いきなり攻撃してくるなんて……随分な挨拶ね。でも、私の力が測りたかったなら、今ので分かってくれたかしら?」
アーク「なんで……なんで……お前達がここにいる?」
リアム「何でって……そりゃ、俺達がお前の新しい“仲間”だからだよ!」
アークM「勇者になった俺様の新しい仲間は、魔王である俺様を初めて追い詰めた“あの”パーティーだった」
長めの間
クレア「改めて自己紹介するわね……私はクレア・ヘーゲル。騎士で、このパーティーのリーダーです。よろしく」
アーク「……ふん!」
リアム「俺はリアム・ガレット!一応ランサー使いだ!よろしくな!」
アーク「……ふん!」
フレンダ「……」
アーク「……ん?」
フレンダ「じー……」
アーク「なんだよ……」
フレンダ「じー……」
アーク「なんなんだよ」
フレンダ「……ぷぃ」
アーク「あ、そっぽ向きやがった!俺様が折角自己紹介とやらに付き合ってやろうと思ったのに!」
フレンダ「そっちが先にそっぽ向いた……」
アーク「このクソガキ……」
リアム「悪い悪い!こいつは魔法使いのフレンダ・コックスだ!ちょっとばかし人見知りでよ!コミニケーション取るのが苦手なんだよ!」
アーク「チッ……まぁ、どうでも良いけど」
クレア「で、あなたの名前は?」
アーク「ふっ……はっはっは!よくぞ聞いてくれたな!!俺様は魔王アーク・マーティン様だ!この世界の偽物魔王をぶっ殺し、お前らの事もぶっ殺す!以上だ!」
フレンダ「……っ」
リアム「おぉ、元気がいいな!」
クレア「はぁ……」
アーク「先にハッキリ言っとくがな、俺様は俺様だけの力で魔王を倒す!」
クレア「どういう意味?」
アーク「お前らの力なんて必要ないって言ってんだよ」
アークM「誰がこいつらの力なんて借りるか……俺様は俺様だけの力で魔王を倒してやる!」
クレア「はぁ……全く、ハズレにも程がある」
アーク「なに?」
クレア「この際だから、こっちもハッキリ言っておく!誰もアンタみたいな雑魚、パーティーに欲しいと思ってない!」
アーク「グサッ!!」
クレア「召喚者様が勇者を召喚したって聞いたから来てみたはいいけど、ハッキリ言って無駄足だったわ」
アーク「グサグサッ!!」
クレア「一人で魔王を倒すなら勝手にすればいい……一人孤独に死ねばいいわよ!バーカ!」
リアム「おいおい、そこまで言わなくても……なぁ?」
アーク「……こまで」
リアム「あれ?」
アーク「そこまで言わなくても良いじゃないかぁぁぁあ」
リアム「あ、おい!アーク!!」
-アークは部屋を出ていく-
リアム「ありゃりゃ、出て行っちまったよ……クレア、流石に言い過ぎだぜ」
クレア「……あんな奴、いない方がいい。いてもすぐに死ぬだけよ」
リアム「だけどよ〜」
フレンダ「ほっとけばいい……」
リアム「……ったく、女ってのは何でこう意地っ張りっていうか何て言うか……ん?そう言えばあいつ外出て行ったけど、武器とか持ってんのか?」
クレア「え?」
リアム「この辺は周りが森になってるから、もし森に入ったりでもしたら、モンスターに襲われちまうんじゃ……」
クレア「いや、流石に丸腰で森に入るほど馬鹿じゃないでしょ……」
リアム「ま、まぁ……そりゃそうだよな」
クレア「……うん、そんな馬鹿じゃない……というか、私達には関係ない」
フレンダ「あ……」
クレア「どうしたの?」
フレンダ「森に入った……」
クレア「……え?」
長めの間
アークM「ここは一体どこだろう……どこを見ても木、木、木。俺様ともあろう者が迷子なんて……何たるミスだ」
カラステング1.2.3.4「カーカーカー!」
アーク「うわっ!!え、なに!?何だよ、カラスかよ!カラスの分際で俺様を脅かすなど……百年早いわ!!」
カラステング1.2.3.4「カーカーカー!アホーアホーアホー(アドリブ)」
アーク「煩ぁぁぁあい!ってか、今アホって言っただろ!!クソォ……力が戻ったらこの世界からカラスの存在を消してやる!」
カラステング1「やれるものならやってみろ……」
アーク「っ!?……なに?」
カラステング1「お前みたいなアホーに滅ぼされる程、我らカラステングはアホーじゃない!」
アーク「あぁ、なんだ……カラステングか……」
カラステング1「なんだとは失礼な奴だな」
カラステング2.3.4「アホーアホーアホー」
アークM「こいつらは下級モンスター“カラステング”だ。普段の俺様が相手なら、三秒で消し飛ばせるであろう雑魚モンスター……まぁ、残念な事に、今はその力はないが……と言うか武器もない」
アーク「あれ?よく考えればピンチじゃね?」
カラステング2.3.4「アホーアホーアホー!!(アドリブ)」
アーク「煩ぁぁぁあい!」
カラステング2.3.4.(黙る)
カラステング1「ふん、我らカラステングの縄張りに一人で入ってきた事を後悔するんだな」
アーク「くっ……」
カラステング1「くらえ!羽飛ばし!」
アーク「ちょっ!危ねっ!」
アークM「カラステング達の攻撃を走りながらかわす」
カラステング1「はっはっはっはっは!我らの攻撃“羽飛ばし”をよくかわしたな……」
アーク「攻撃の名前つけるセンス、皆無かよ!」
カラステング1「だが、逃げても無駄だ!」
カラステング2.3.4「アホー!アホー!アホー!」
アーク「逃げる……だと?」
カラステング1「なんだ?逃げるのはもう終わりか?」
アーク「自惚れるなよ!俺様がいつお前みたいな雑魚モンスターから逃げた!」
カラステング1「いや……完全に逃げていただろう」
アーク「俺様は逃げない……お前など俺様が本気になれば一瞬でチリに出来るんだからな!」
アークM「俺様の手に光が宿る」
カラステング「ん……それは魔法か?」
アーク「ふっ……俺様は何度も勇者と呼ばれる男達を葬ってきた……このくらいの魔法なら見ただけで真似できるわ!」
カラステング1「なに!?」
アーク「死ね!ホーリーブレイク!」
-光の玉がカラステングに直撃する-
カラステング1「ぐぁぁぁあ!」
アークM「初の光魔法!どうやら上手くいったみたいだ。本当は魔王である俺様が使うような魔法ではないのだが、まぁ、仕方ない……」
カラステング1「…………」
アーク「ふんっ、雑魚め!」
アークM「魔法が命中した手応えがあり、俺様は完全に余裕をぶっこいていた。だが……」
カラステング1「……ゲホッ……ゴホッ!」
アーク「あれ?死んで無い?」
カラステング1「くっ……油断したが、この程度では死なん!」
アーク「そんな……」
カラステング1「次はこちらの番だ!くらえ!!羽飛ばし!!」
-黒い羽がアークに向かって飛んでいく-
アーク「ぐあっ!!」
アークM「カラステングの黒い羽が体に突き刺さった」
カラステング1「ハッハッハ!大きな口を叩いた割に、見た目通りの雑魚だな」
カラステング2.3.4「アホーアホーアホー」
カラステング1「さぁ、そろそろ終わりにしようか!」
アークM「俺様の力が通用しない……俺様が……負ける?」
カラステング1「死ね!」
アークM「負ける………負ける……負ける……」
アーク「ふふふ……」
カラステング「ん?何がおかしい!気でも触れたか!」
アーク「いや、悪い……カラステングごときに、ここまで追い詰められるとは……認めるしか無いな……」
カラステング1「認める?」
アーク「俺様は本当に……この世界では雑魚なんだって」
カラステング「ふっ、諦めたか!」
アーク「……」
アークM「俺様が、世界で一番強い存在だと思っていた……俺様に勝てる奴など存在しないと本気で思っていた……はは……とんだ思い上がりだ。自分の力を過信して、相手の力を見下して、そうして生きてきたツケが今更になって回ってきたらしい……何ともまぁ、無様な事だ」
クレア『この際だから、こっちもハッキリ言っておく!誰もアンタみたいな雑魚、パーティーに欲しいと思ってない!』
アークM「その通りだ……俺様のような雑魚はパーティーに必要ない……だからこそ」
カラステング1「はっはっはっは!戦う事を諦めたなら話は早い!大人しくあの世へ……」
アーク「勘違いするな!」
カラステング1「なに?」
アーク「この世界では、俺様は確かに雑魚だ……だから、とっとと元の世界に帰って、お前らの種族を根絶やしにしてやる!」
カラステング1「何を言って……」
アーク「ホーリーブレイク!」
-光の玉がカラステングに直撃する-
カラステング1「ぐっ!こしゃくな……って、逃げやがった!追え!追え!!」
カラステング2.3.4「アホー、アホー、アホー!」
アーク「逃げてるんじゃない!戦略的撤退だ!!」
カラステング1「それを逃げるって言うんだ!!決め台詞吐いた途端これか!この臆病者が!!」
アーク「うるせぇ!なんとでも言いやがれ!!今は生き残ることが最優先なんだよ!!」
アークM「全力で走った。後ろから雨の様に羽が飛んでくる。それらをかわすだけでも一苦労だ。だが、ここで死ぬわけにはいかない……こんな所で、死んでたまるか!」
カラステング2.3.4「アホーアホーアホー!」
アーク「はぁ、はぁ、はぁ……」
カラステング2.3.4「アホーアホーアホー」
アークM「走る俺様。それを追うカラステング……そして」
クレア「セヤッ!!」
カラステング2「グエッ!!」
アークM「突然、カラステングの一匹が真っ二つになった」
カラステング1「何者だ!」
アーク「お前は……」
クレア「大見栄切ってた割に、無様に逃げ回ってるじゃない……格好悪い」
アークM「現時点で、俺様の最強の敵であり、そして、最強の味方……」
クレア「ここからは私、騎士“クレア・ヘーゲル”が相手になる!」
アーク「女騎士……ったく、相変わらずメンタルに来るセリフを吐く奴だな……そんな奴にこんな事を言いたくはないが……めちゃくちゃ助かったぜ、女騎士!」
クレア「ふんっ、あんたを助けにきたんじゃない!」
リアム「よく言うぜ。アークが森に入ったって聞いた瞬間、血相変えて一番に森に入って行った癖に」
クレア「リアムうるさい」
アーク「どうして俺様の場所が分かった?」
リアム「うちには優秀な魔法使いがいてな!探知魔法で場所を特定したんだよ!」
アーク「なるほど」
フレンダ「ぷぃ」
アークM「うん……相変わらず嫌われてるな。まぁ、嫌われるのは慣れてるが」
フレンダ「見せる」
アーク「え?」
フレンダ「本物のホーリーブレイク……見せる」
アーク「本物の……ホーリーブレイク?」
フレンダ「ホーリーブレイク!」
アークM「魔法使いが、手に持った杖から光を放つ」
カラステング1「ぐはぁぁあ!」
アークM「そしてホーリーブレイクが、カラステングに直撃した」
フレンダ「決まった……」
アーク「凄え……これがホーリーブレイクなのか……認めたくは無いが、見事なホーリーブレイクだ」
フレンダ「素人と一緒にされたくない……」
カラステング1「いや……さっきくらったのと大して変わらんぞ!」
アークM「カラステングはピンピンしていた」
アーク「前言撤回だよ!何?“決まった”って!何も決まってないからな!」
フレンダ「今日は……調子悪い……」
カラステング1「なんだか分からんが、取り敢えず纏めて死ね!羽飛ばし!!」
カラステング3「アホー!アホー!」
アークM「カラステングの猛攻。だが、俺様の前に大きな盾を持った大男リアムが立ち、黒い羽から守ってくれた」
リアム「悪いな!そこのフレンダは回復魔法とか、サポート担当なんだ!だから攻撃魔法は大して使えん!」
フレンダ「使える……」
リアム「はいはい!取り敢えず、アークの傷の手当てをしてやってくれ!」
フレンダ「嫌だ……」
アークM「うん、俺様この子とはやっぱり仲良く出来ない」
リアム「フレンダ、いいから頼む!クレア!雑魚は任せるぞ!」
クレア「もう終わってる!」
アークM「リアムが指示する前に、雑魚のカラステングは一掃されていた。分かってはいたけど、この女騎士の強さは尋常じゃない」
リアム「じゃあ、ボスさんは俺が仕留めるぜ!!」
カラステング1「くっ……だが、その程度の長さのランスなど、空を自由に舞う我には届かん!」
リアム「それはどうかな……」
アークM「リアムのランスが光を帯びる」
カラステング1「何だと!?」
リアム「これで終わりだ!!」
アークM「リアムがランスを突き出すと、その先から光が放たれ、カラステングの体をいとも簡単に貫いた」
カラステング「ぐぁぁぁあ!!む、無念……」
アークM「最後のカラステングが倒され、森全体を覆っていたのではないかと言うほどの緊張感が、一気に抜ける。やはり、この俺様を追い詰めただけあって……こいつらは強い」
間
リアム「はぁ〜終わった!」
フレンダ「はぁ……」
クレア「全く、とんだお騒がせ勇者ね。丸腰で森に入って行くなんて」
アーク「……」
クレア「だいたい、貴方は自分の弱さを理解しなさ過ぎ!悪い事は言わないから、魔王を倒すのは諦めて、町で商人でもやってればいいわ」
アーク「……」
クレア「なに?その反抗的な目は……文句があるなら言ってみなさいよ」
アーク「……ください」
クレア「なに?聞こえない」
アーク「俺様を……パーティに入れて下さい!!」
クレア「……はい?」
アーク「俺様をパーティに入れてくれ!」
クレア「いや、今の話聞いてた?私は諦めろって言ったんだけど」
アーク「俺様はどうしても魔王を倒さないと行けないんだ!」
クレア「……え?」
アーク「でも、ハッキリ言って俺様はめちゃくちゃ弱い!自分でもビックリするくらい弱い!だから多分一人じゃ魔王には勝てない!いや……多分じゃなくて絶対に勝てない!だから頼む!……俺様を……俺様を……パーティーに入れてくれ!!」
クレア「なんか、さっきまでと全然態度が違う様な……」
アーク「俺様は生まれ変わったんだ!強くなりたい!この世界で強くなって……」
クレア「強くなって?」
アーク「あぁ……えっと……兎に角、魔王を倒したいんだ!」
クレア「でも……」
リアム「いいじゃねぇか!パーティーに入れてやっても!仮にも勇者だぜ!絶対にこの先、俺達の力になる!」
クレア「……」
アーク「お願いします!女騎士様!!この通り!」
クレア「この通りって……土下座のテンションで言ってるけど、頭少し下げてるだけじゃない……ったく」
アーク「……」
クレア「はぁ……約束して。絶対に死なない事。それと、強くなる事!」
アーク「……あぁ!約束する!!」
クレア「私があんたを短期間で強くする!だから、もう二度と今日みたいな無茶はしないで」
アーク「約束する!!」
クレア「………………分かった」
アーク「あ、ありがとう!!女騎士!!」
クレア「さっきから、私の事を女騎士って呼ぶのやめてくれる?自己紹介したでしょ?私にはクレア・ヘーゲルっていう名前があるの!ヘーゲルって呼びなさ(被せ)」
アーク「よろしく!クレア!」
クレア「ちょ、いきなり呼び捨てって……」
リアム「良かったな!アーク!」
アーク「おう!色々とありがとうな、リアム!これからよろしく頼むぜ!」
リアム「おう!よろしくな!」
アーク「あと……フレンダ、だっけ?お前もよろしくな!」
フレンダ「ぷぃ……」
アークM「うん、こいつだけはマジで友達になれない」
リアム「フレンダ、新しい仲間なんだから仲良くしろって」
フレンダ「無理……」
アークM「マッハで拒絶された……」
フレンダ「私は……誰とも馴れ合うつもりはないから……」
リアム「あ、おいフレンダ!」
-歩いて行くフレンダ-
リアム「すまんな。難しい年頃って奴なんだ!」
アーク「あぁ……まぁ、そのうち慣れるだろ」
リアム「そうだな!取り敢えず宿に戻ろう。そんで、今から歓迎会だ!」
アーク「おう!」
間
アークM「この世界の俺様は弱い……一人では何も出来ない……だからパーティーに入った……だが悪いが、俺様も馴れ合うつもりは一切ない。この世界の魔王を倒したら、次に死ぬのはお前らだ……それまで精々仲間ごっこを楽しめば良い……俺様は絶対に強くなる……強くなって、全てを牛耳る魔王に戻ってみせる!絶対に、絶対に!」
間
アークM「次回【魔法使いに友達はいらない】」
end