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LostTechnology ~幼帝と保護者の騎士~  作者: CB-SXF6
本編(建国38年~建国47年)
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BBQ キャラ弁

 翌日、ディートハルトは朝起きると、早速仕掛けた罠の回収に向かっていた。

 サイズは小さいが、川魚とカワエビとカワガニの捕獲に成功する。


(以前、野戦料理を振る舞った時は、調味料がなかったからな……

 今回は塩も胡椒もあるし、油もたっぷり用意した)


「魚はともかくとして、そのエビとカニも食べるんですか?

 寄生虫とか大丈夫なんでしょうね?」


 カミルが引きつった顔で、ディートハルトが持ってきた甲殻類を見る。


「知るか!

 別に強制はしないぞ。油で揚げれば大丈夫だ!」


 油がたっぷりと入った飯盒に、何匹か適当に放り込むと、焚き火の上に設置する。


「どうだか……」


 一方、マリーは魚を捌き、エビとカニと野草の下処理を始めた。

 カミルの発言を気にしたのか、マリーは自身の氷術で一度食材を凍りつかせてみせた。

 寄生虫がいようと凍らせて死滅させれば問題ないというわけである。


「マリー! 今日は何を作るのじゃ?」


「姫様、せっかくの魚介類ですので、スープでも作ろうかと」


「それは楽しみじゃのう」


「マリーさんが作るなら安心ですね」


「よかったリーダーが作るんじゃなくて……」


(こいつらは……)


 食材を茹でる、焼く、炒める、煮る、揚げるといった単純な調理しか出来ないディートハルトではなく、しかるべき技術をもったマリーが作ることでプリンセスガードは安堵した。


「ところでリーダー! 泥抜きって工程を知っていますか?」


「バカヤロウ! 死ぬか生きるかの現地でそんな余裕はない。

 これは訓練という事を忘れるな!

 いいか? 俺たちプリンセスガードはな、いかなる状況でも、姫を守るため、生き抜かなくてはならんのだ。

 淡水性の甲殻類くらいで、ガタガタ言うな!」


 カミルがディートハルトの調理にツッコミを入れてくるが、ディートハルトは毅然として言い返す。

 ディートハルトからしてみれば、アグネスを始め、女性もいることを踏まえ、蛇や蛙といった爬虫類、両生類、また、昆虫などの敬遠されがちな食材はあえて除外している。

 これが、プリンセスガードしかいなかったら、遠慮なくその手の類も捕獲し、何が何でもカミルにだけはたんと食わせただろう。

 油で揚げた甲殻類は、赤く染まり、素人目に見ても美味しそうに見えなくもないが理解は得られなかった。


「ふん……」


 ディートハルトは、自分で揚げたカニをまる齧りし、バリバリと音を立てて食べた。。


(普通に美味いと思うがな……)


 最後の肉が焼き上がり、ご飯が炊け、スープができ上がる。


「うむうむ……流石はマリーじゃ」


 アグネスはカニとエビと野草のスープを完食した。


「では、片付け班と弁当班に分けるか……」


 ディートハルトは余った料理を使って弁当を作る班と、テントやゴミの片付けをする班に分けた。

 自身は弁当班となって、弁当の製作に取り掛かる。

 二手に分かれているので、自分の分ともう一人の分を作ることになる。

 ディートハルトは自分の分は、焼いた肉を2切れと炒めた野草を適当にブチ込み、残りはご飯を敷き詰めただけの適当な弁当。

 しかし、もう一方は、食材を使ってオカメインコやうさぎ、ヒマワリを表現するという手の込んだ弁当の制作に取り掛かる。


(ここでなんといっても重要なのは色……綺麗な黄色を出せるかどうかだ)


 ここにきて初めてディートハルトはマリー用意させておいた切り札『生卵』を投入した。

 馬車の揺れで割れないように一個一個、柔らかくした干し草で包み箱に入れ、氷を敷き詰めた箱にその箱を入れ鮮度を保つ。

 ディートハルトは二重箱の封印を解き、鉄板に油を敷くと卵を割り、炒り卵を作り始めた。


(俺には、料理人が持つようなテクニックはない。だが、手先の器用さには自信がある。

 料理に大事なのは技ではなく愛情……)


 卵焼きを使って、黄色のそぼろを作り、余った肉で茶色のそぼろ作る。

 野草を使っての緑を表現することで、ご飯の上での描画を可能にした。


「出来た!」


 ディートハルトのキャラ弁? を作り終える頃には、マリーは作った弁当をアグネスに渡していた。

 普通に考えれば、アグネスの専属料理人的な位置づけであるマリーがアグネスの弁当を担当するのが妥当と言える。

 コレットが少し恥ずかしそうにローラントに弁当を渡していた。

 ハンスは、マリーには及ばないものの、侍女達に勝るとも劣らない料理の腕を持ち、見るからに旨そうな弁当を作り上げていたが、受け取ろうとする侍女は現れず、イザークが慰めるかの様に受け取り、哀愁を誘っていた。


(そうか……そうだよな……)


 冷静になり、誰に弁当を渡すかと、一同を見渡すと、ニヤついているカミルしか残っていなかった。

 ディートハルトは、自分で食う予定だった適当弁当の方をカミルに渡す。


「あれ? リーダー、私はそっちの弁当が食べたいのですが」


 ディートハルトは何も言わず、正拳突きをカミルの顔面に見舞った。


「よしっ、引き上げるぞ!」


 帰りの馬車の中で、ディートハルトはアグネスに遠征訓練の感想を聞いてみる。


「姫、いかがでしたか? 遠征訓練は」


「うむっ! とっても満足じゃ!

 ディートハルト、そなたの働き、誠に大義である」


「お褒めに預かり恐悦至極……」

(リベンジ終了)


「早く、大軍を率いて遠征したいものじゃあ!」


 ディートハルトは遠征訓練という名目にしたことを後悔した。

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