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そのひとなるは勇者のママなり  作者: リーシャ
8/10

救助



カチャッ


ドアのカギの音がして、浅い眠りの中にいた私は小さなソファーから身を起こした。カーテンのない格子の嵌まった小窓からは月明かりが部屋を照らしている。


そこへ 二人の男が入ってきた。


先に入ってきた男と視線が絡んだ。


その、整いすぎた顔と真っ赤な髪が月明かりに照らされ、神々しさまであった。


「おい、部屋間違えてんじゃねーか?あの女、黒髪じゃん。話だと金髪って言ってたじゃねーか。」


男が喋ると、神々しさが一瞬で消えた。


「いや、間違っていない。ベッドを見ろ。」


後ろから入ってきた、とても大柄な男が、低い声で言い、ベッドに寝ている少女を指差す。


「あぁ、あっちか。」


男が、金髪の少女に近づき、寝ている彼女を軽くゆさぶって起こした。


「な~に~」


彼女には警戒心がないのだろうか?気だるげに起き上がり、自分を見ているのが整った顔の男だと分かると、あら?と頬を染めた。


「あんたの父親からの依頼で、あんたを助けに来た。」


男達は彼女に見えるように何かの紙を見せたが、彼女はよく見もせずに起き上がり、「遅かったわね」と言いながら、真っ赤な髪の男にすり寄ろうとした。


真っ赤な髪の男は素早い動作でその場から一歩退くと、「あんたを連れていくのはこっちの男だ。」と言って連れの男を前に出した。大柄な男は一瞬、嫌な顔をしたが、黙って彼女を抱き上げた。


「えっ、嫌よ。私はあなたの方がいいわ。」


彼女が大柄な男から降りようとじたばたもがいたが、「黙ってろ。ここから抜け出したくないのか」と大柄な男の威圧するような低い声に動くのをやめた。


男達がそのまま出ていこうとする。


「ま、待って。」


つい、声をかけてしまった。

私もここにいたくない。

誰かに売られるなんて嫌だ。


めんどくさそうに後ろにいた真っ赤な髪の男が振り向く。


「何?」


「あの………」


私はソファーから降りて少し男達に近づいた。


「ちょっと、そんな売女無視して。さっさと行きましょうよ。」


金髪の彼女が、大柄な男の肩越しに私を睨み付けてくる。


真っ赤な髪の男が黙って私を見ていた。


「お願い……お願いします。私も連れてってもらえませんか?」


真っ赤な髪の男が口を開く前に、また邪魔が入る。


「ねえ、その子結婚してないのに妊娠してんのよ。そんなア◯ズレ放っといてよ。行きましょうよ。」


彼女はどこかいいとこのお嬢さんではないのか?口が悪すぎる。

そんなに私のことが気に入らないのか。


真っ赤な髪の男は、そんな言葉には反応せずに私を上から下まで眺めた。なぜか私の首に嵌まっている首輪をじっと見てくる。


「その首輪。あの粘着野郎、また新しく作ったのか。その首輪の解析欲しいな。」


「連れてくのか?」


「ああ。新しいパターンの首輪だ。ネイが欲しがるんじゃないか?」


粘着野郎もネイも誰かはわからない。この人達についていって助かるのかどうかも分からない。


だけど、明日誰かの奴隷になるよりマシだと思う。ここから出られたらどうにかして逃げよう。


「ハッ?何言ってんの?その女連れてくの?」


彼女が叫んだ。

遠くで誰かの声が聞こえる。


「気づかれたか。」


大柄な男が静かに言った。


「チッ。うるせぇクソ女のせいだな。もう、そいつの口縛っとけよ。きたねぇ事しか言わねぇんだから。」


真っ赤な髪の男が彼女より汚い言葉遣いで吐き捨てるように言った。

大柄な男が彼女の言葉より早く、どこからか出した布で、彼女の口を縛った。


一瞬の事だった。同時に、私に近づいた真っ赤な髪の男に、私は抱き上げられた。


心底嫌そうな顔をしながら男が言う。


「腹にガキがいなけりゃ、担いで行くんだけどな。」


ドアの外では数人がかけてくるような音が聞こえる。


私たちを抱えながらドアの外に出る男2人。ドアの外は長い廊下だった。


私を抱き上げてる男の手には何かが握られており、それを廊下に落として、音がする方に蹴った。


すぐに大量の煙幕が発生した。

何も見えない中、すごいスピードで男達が走り出す。


「ラットアスだぁ、ラットアスだったぞー。特Sの女、二人とも連れてたぞー。」


煙幕の向こうから男の叫び声が聞こえた。





私は………


自分の震える体を止める事ができなかった。


そんな場合じゃないのに。




建物の側に馬車が止まっていて、大柄な男が近づくと馬車のドアが勝手に開いた。


その馬車に勢いよく乗り込んだと思ったら、反対側のドアへ降りるのが見えた。


私を抱き上げている真っ赤な髪の男は大柄な男が降りたのを見て、同じような行動をした。


降りた先はなぜか建物の中だった。


降ろされたらしい金髪の彼女が、口の布を取ってキンキンした声で文句を言っているようだ。


建物の中だって、彼女のキンキン声だって、今は構っていられない。


「お、降ろして………」


それを言うのが精一杯だった。


「どうしたんだよ?」


思った以上に優しい響きの声が頭から降ってきたが、本当に限界で駄目だった。


震える腕をどうにか制御して真っ赤な髪の男から少しでも体を離す。


「おいっ。」


早く降ろしてくれたら良かったのに………もう………


「うわっ。」


私はその男に抱き上げられたまま盛大に吐いた………






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