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21②-⑥:野暮用

「おい、カイゼル。まだ終わってないぞ。お前には後一つ、仕事が残っている」


 テスは、セシル達の傍まで来ると、「さっさと起きろ」とカイゼルの腰を蹴飛ばした。「なにすんだごらあ!」とキレるカイゼルの鳩尾に、テスは拳を一つ叩き込む。


「じゃあ、そう言う事で、こいつを借りていく」

「はは…どうぞどうぞ」

 カイゼルの首根っこをつかんで引きずっていくテスを、セシルは苦笑いしながら見送った。



「なんだよ!もう仕事なんて残ってないはずだぞ!」

 引きずられながら、カイゼルは叫ぶ。そんなカイゼルに、テスは前を向きながら説明する。


「マンジュリカは死んだ。王妃も消えた。だが、これから先、神の涙や神の瞳を利用しようとする輩が出てこないとも限らない。この2つの鉱物を、この世界から完全に消しておかなければ、お前達の世界が俺の世界の二の舞にならないとは言えない」

「…それもそうだな」


 カイゼルは、確かにと頷く。マンジュリカも王妃もいなくなったが、これから先、神の涙と神の瞳という物質が存在し続ける限り、それを悪用する人間が現れないとは言い切れない。あんな脅威の代物、消せるなら今のうちに消しておいた方がいい。


「だから、俺とお前で、この北の地から、完全に神の涙と神の瞳を消すんだ」

「分かった。…だけど実際、そんなことできんのかよ?ここ、ホリアンサどころの面積じゃねえぞ…?」

 カイゼルは、先程上空から見た、雪の山脈が海のように広がる光景を思い出す。


「できる。多少無茶はするがな」

 テスは、やたらと強い調子で断言した。

「…?」

 普段より力み加減が多いようなその言葉に、カイゼルは少々引っかかるところがあった。しかし、状況を冷静に分析できるテスなら、無茶な事を無理やりしようとするはずもないかと、すぐに気にするのを止めた。


「分かったよ。やってやるぜ。だけど、無理そうだったらすぐに止めるからな」

「ああ、そうしてくれ。俺も限界が来たら、すぐにそこで魔法を止めるからさ」

 テスは、さらっと言うと、重力の魔法陣を展開した。そして、カイゼルを促して乗せると、上空に舞い上がった。



「おいテス!カイゼル!どこに行くんだー?」

 急に空へと飛び立ったテス達に、セシルが慌てて叫ぶ。

「ちょっと野暮用にな」

 テスはなんでもなさげに答えて、セシルに手を振った。


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