表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/123

16-①:ある日の出来事(★挿絵あり)

前編のあのシーンの、別視点となります。

 リアンの銀色の髪。それが窓から入る夕日に朱色に染まっている。こいつの髪に、朱色は絶対に似合わないなと思いつつ、テスは自身の赤茶色の髪をいじる。


「今度生まれ変わるなら、決してショタっ子でもイケメンでもなくて、かといって欠点をあげるところがなくて~いい意味でも悪い意味でもさして目立たない普通のやつになりたいんだよなあ」


 テスはその言葉に心底呆れる。


「生まれ変わり?ついにオカルトに手を出したかお前。悪いことは言わないからさっさと抜け出せ。人間なんて死んだら終わり。期待するだけ無駄」


 そうしれっと言ってやると、リアンはぶすっとふくれる。


挿絵(By みてみん)


「人の苦労も知らずにそんなこと言いやがって!この容姿のせいで、上官のしごきのターゲットになることよりか、男に犯されないかと日々戦線率立とするこのキャンパスライフ!こんないだなんて、晩飯の後外で一人特訓してたら先輩どもに草陰に連れ込まれそうになったんだぞ」

「結局返り討ちにしたんだろう?それだけの力があれば、やすやすと犯されやしないさ。それでもいやなら大学ここやめれば?」

「無理に決まってんだろ!金!ここでたらオレ生活できない!」


 それはそうに決まっているだろうな、とテスは思う。軍事系の大学は学費が要らないどころか給料ももらえる、こんな時代にありながら天国のような場所だ。だが、そこに入るという事はこの国に身を捧げる―自身の身体(からだ)も命も明日も未来もすべてこの国に任せるということ、つまりこの国の使い捨ての傀儡になるという事だった。まるで、畜産場か屠殺場のウシやブタだ。だが、ここを出てしまえば、貧乏人の俺達に行くあてなどない。


「じゃあ大人しく貞操を捧げりゃいいんじゃないか?一度汚れてしまえば、その後のことはあきらめもつくさ。慣れたら存外気持ち良くて、癖になるかもしれないぞ」


「…ようになってたまっかチクショー!!って言うかなんてこと想像させやがんだこの腐れ外道!」

 どうやら、リアンはその光景を想像したらしい。頭を抱えて振るリアンを、テスはしれーっとみた。


「お前な、なんだその眼は!友達が悩んでんだぞ、同情ぐらいしろ!」

「はいはい、かわいそうですねー」

 面倒くさいから、言葉だけで同情しておく。


「お前、棒読みくらいやめろ!」

 腹を立てたリアンは、板張りにだんだんと足音を立てさせながら、出入り口の引き戸をバアンと開けた。そして振り返りざま叫ぶ。


「もういい!覚えとけよ、オレはお前が来世で絶対、オレみたいなショタっ子になるよう呪ってやる!!!」


「オレと同じ苦労を散々味わいやがれ」とバアンと閉じられる扉。


 彼が言った言葉を一度口の中で反芻すると、やれやれとテスは椅子から立ち上がった。

「つくづくアホだな、リアンは」

挿絵はシンカワメグム様に描いていただきました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ