17-⑦:異世界の過去⑤
そして、それから5日後、彼女は殺された。
敵にではない。テスがいた部隊の上官たちの慰み者にされて、無残な姿で森に打ち捨てられていたのだ。見当たらない彼女を夜通し探し続けて、テスがやっと見つけた時には虫の息だった。彼女は、テスに「ごめんね」と何度も謝りながら逝った。
彼女が殺されたことに、特に理由などなかった。ただ単に、捕虜として若い女が手に入らなかったから、性欲を満たすために目に付いた彼女を犯しただけであった。そして、口封じに殺しただけであった。
人員不足により女性が戦場に出るようになって以来、テスの国の軍ではよくあった事だったから、そんな規律の悪さなど誰も気にも留めなかった。
テスは彼女の死体を抱きしめ、泣き叫んだ。
―俺はどうなってもいい、死んでもいい
だから、彼女だけは、彼女だけは救ってくれ、俺から奪わないでくれ
テスは、自身がかつて信じた神に叫び、救いを求めた。いないとわかっていても、一縷の望みをかけて叫び続けた。
しかし、いつまでたっても救いなど、どこからも来なかった。やがて、テスは彼女の死体をそっと地面に横たえると、ふらりと立ち上がった。
―やはり、神などいないのだ