おまけ話③-2:家族旅行~ノエルの探検編②~
「……」
探検を開始して、はや30分。ノエルは、手当たり次第に、部屋の扉を開けては覗いていた。だが、今や…
「…飽きた」
先程から、お目にかかるのは、ベッドに家具のある客間か、誰かの居室らしき部屋。そして、若しくは書斎。または、物置といったものばかりだった。
確かに、家具やら置物やら、自身の家とは違う趣向を凝らしてあるから、最初の内はノエルはそれらに興味深々だった。
だが、その趣向に見慣れてくると、真新しさはなくなってしまう。その上、物置にいくら芸術的な絵や彫像が置かれていようとも、おチビのノエルはその良さが分かるには、まだ早すぎた。
「つまんない…」
ノエルは、二十番目に探検に入った部屋のベッドで、でろ~んとうつぶせに突っ伏した。
「つまんないよぉ…」
ノエルは、布団に顔をうずめたまま、呟いた。やわらかい絹の布団は、母上とは違う、甘く柔らかい女性の匂いがした。なんだか急にノエルは、この匂いじゃない、母の匂いが恋しくなった。
「母上のとこに戻ろ…」
ノエルは体を起こそうと、手をついた。すると、ふと手に、固い物が触れた。
「ん…?」
不思議に思ってノエルが見ると、どうやらその固い物体は、シーツの下にあるようだった。ノエルは何だろうと思って、シーツを少しめくって手を突っ込み、それを掴んで取り出した。
「…本?」
それは、本だった。表紙には、2人の人物が抱き合っているのを、薔薇の花が包んでいる絵が描かれていた。
「…あれ…?」
ノエルはその表紙に、とても綺麗な絵だと感心したものの、その一瞬後には不自然さに眉をひそめ、首を傾げた。
「何なのこの絵…。どんな本なの…?」
そして、ノエルはその本を開いて…