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見える人と見えない人
夢の特許(使用料)生活。研究者ならだれでも一度はあこがれる甘美な言葉。しかしそれを生きているうちに味わえるものは、ほんの一握りの選ばれた人たち。
祐二は子供のときから時々霊が見えた。なぜ、見えるのか?ずっと疑問に思っていた。
一流私立大学を出て、一旦は親の強い勧めで公務員になったが、見える理由が知りたくて、退職した後、一人で研究に没頭した。贅沢をしなければ十年ぐらいは暮らせるだけの親が残した資産がある。唯一の身内の弟もすでに社会人だ。
そしてついにその手がかりを発見した。霊が見える人の目には、水晶体に特殊な有機化合物があり、それが霊が放つ光に反応して影として見えていたのだ。祐二はその化合物を人工的に作り出すことに成功した。その物質をレンズに適量混ぜると、普通の人でも霊を見ることができた。祐二はそれを霊視レンズと名付けた。