サルート村の勇者
適当です
『何時までも子供扱いするんだから!』
ローツは少々憤りながら村の外れの薬屋へ向かっていた
シシーリュは困ったように囁く
『貴方のことを心配してるのよ』
そんな事は分かっているローツが5歳の時父親は村を襲って来たオークの群れを相手に単身挑みオークを撃退したもののその時の戦いで傷を負い二日後の夜に家族に見守られ村長にローツの事を頼み亡くなったのだ
それからは村長が父がわりになりローツを育ててくれたのだ
『分かってるさ・・・でも親父のように誰かの為にこの村の為にできることはしたいじゃないか!』
『それは畑仕事とかではいけないの?』
シシーリュはふと疑問に思った
ローツは一瞬考え込み
『親父は憧れなんだよ』
小さな手で大きな父の手を節くれ立つ手を剣を振るう手を握った事を思い出した
『貴方が死んだらお母さんはどうするのかしら・・・』
シシーリュの呟きにローツも流石に返す言葉が無かった
まだ肌寒い初春の風に舞う砂埃を気にしながら黙々と歩き薬屋に辿り着いた入り口には看板がかかっていた
『カリスの薬屋』
今日は店を開いて居るようだった時折一人でふらっと山へ行き薬草を取りに行くことが有るので開いてないこともあった
カタンカタンと木の乾いた音のするドアを開けると深草色のローブに指揮者の使う様なタクトを小脇に抱えた男が振り向き入って来た客の顔を見て
『やあいらっしゃい無謀な冒険者さん!』
ローツはしかめっつらをしながら返事を返す
『村長がカリスとアーズを連れて来いって!』
カリスは少し痩せた顔をローツに近づけ
『今度はどんな大冒険をしようというのかね!』
と笑いながら言った
『今年の年初めの魔物退治をやるんだって』
シシーリュがローツの代わりに答えた
『なんだって!?何時も冒険者を街で募ってやってることだろ?どうしてまたそんなことをしようと思ったんだ!?』
何と無く理由は分かっているがカリスは少々大袈裟に驚きながら聞き返した
『なんだって良いじゃないか村のお金を減らさずに済むし俺も強くなれるし!さっさとアーズの所へ行くぞ!』
ローツはそれだけ告げるとさっさっと店のドアを開け早足に教会の方へと向かってしまった
カリスはやれやれと言うような顔でシシーリュと顔を見合わせると店の看板を下ろしローツの後をゆっくりと歩きながら追うのだった