メイド、魔王様たちと出会う
「はいまずアナタ邪魔ー」
『グホォッ?!』
魔王城へ向けて走り出した私に向かって矢が飛んでくる中、目の前にいる兵士の顔面に飛び蹴りをかます。ヒールが兜にめり込み、その他大勢を巻き込んで吹っ飛んでいくのを見つつ、横から飛びかかってきた兵士の剣を箒で殴ってへし折った。
折れた剣を見て困惑している兵士の頭を掴んで素早く膝蹴りを入れると、今度は横から飛び出してきた別の兵士を、箒をバットの様に持って殴り飛ばす。重い鎧を着た兵士が軽々と頭から壁に突き刺さっていく。
普通、鍛えてなさそうな女子が鎧を着た自分の身長の倍のある兵士を殴り飛ばす、なんて無理な話なんだけど、ここは異世界。しかも前世からの知識と経験、魔術その他もろもろ受け継いだもんだからやり方なんてそれこそ数百程ある。私の場合は、魔術を使って相手の体重を軽くしてるけど、あの子は衝撃波を当てて飛ばしてたっけ。
ちなみに現在の私のステータスとモブ兵のステータスをゲーム風に簡単に表示するとこうなる。
ルーフェ・プルーブォ
LV988 HP80000 MP78000
モブ兵A
LV120 HP600 MP400
差がありすぎてモブ兵がモブを越えてただの雑魚である。
普段は隠しているからせいぜい300レベルぐらいの力しか出せないのだが、それでも楽勝。
魔術の火や氷が飛んでくれば、同じ魔術で打ち消したり。正反対の属性の魔術で打ち返す。
兵士が来れば、投げ飛ばしたりドロップキックをかましたりジャイアントスイングで窓から投げ飛ばす。
そんな事を繰り返していくうちに、魔王城の中まで入り、巨大な玉座が置かれた広間のような場所へと来ていた。
赤と金色のカーテンの奥に玉座があり、その玉座を取り囲む様に見た目が個性的なメンバーが揃っている。赤い鎧を着た二足歩行のドラゴンに、ほぼ下着と思えるような服を着ている女淫魔と男淫魔。この3人が魔将で、その奥にいるのが堕天使・吸血鬼・魔女。あと一人はローブで顔が見えないけど、たぶん四天王。玉座に誰か座っている様に見えるけど、あれが魔王かな?目測でしかないから後でちゃんとスキルで確認しておかないと。
「魔将クラスに四天王が勢ぞろいとは・・・豪勢ですねー」
『ようやく来たわね・・・って子供!?』
どうやらそこまで私の情報は伝わってなかったらしく、私の姿を見た彼らは驚いて仲間内で相談し始めた。
そりゃあ見た目はまだ14歳の子供だし、元々童顔だから更に年下に見られてるかもしれないけど、まさかこんな子供が兵士を倒してここまで来たとは信じられないですよねー。
『ねぇ本当にあんな子が部下達を倒したって言うの!?』
『報告通りではそうだが』
『あんなちみっこいやつが?無理じゃねーの?』
『もしかして仲間がいるとか』
『でも他に人間らしき奴はいなかったぞー』
「あのー私はお師匠様に会いに来たのですがー」
『じゃあ内通者がいる?』
『それはない。我々から人間に接触した事は全くないからな』
『じゃあここまであいつ一人で来たってことじゃねー』
『ありえないわ!それじゃあ、あんな小さい子供に我々魔族が負けたということになるじゃない』
「戦う気はあんまりないですよー?」
『もしかしたらあれは偽りの姿で実際は大男とかありえんじゃね?』
『だがあやつから魔術の匂いはしないぞ』
『マジックアイテムとかかしら』
『あの姿・・・ロリコンということか』
『変態ね』
『うむ』
「なんか話が脱線してきてるようなので言いますけど、私はちゃんと人間のお・ん・な・です。ちみっことか子供とか私はまだ14だから子供に見られても仕方ないのはわかりますよ。身長低いですしまだ胸は発展途上ですし童顔なのは自分でも自覚しておりますから。あとここには自分一人で来ましたよ?」
いい加減うざくなってきたから箒で床を叩いて大声で口を挟んだら、全員無言でこちらを振り返ってくる。
そしてわざとらしく咳をすると、それぞれの武器を構え、私に向けてきた。急に取り繕っても遅い気がするのは気のせいだろうか。
『よく来たな勇者よ。だが一人で来るとは無謀な』
「あっ私、勇者じゃなくてただのメイドです」
『勇者じゃねえの!?』
「なんでメイド姿なのに勇者だと思うんですか馬鹿ですか」
『そもそも普通のメイドは魔王城に一人で乗り込んで来ねぇから!』
そう言われればそうだけど、普通のメイドじゃないんだから問題ないと思うんだけどなー。
とりあえずその問題は置いておいて私はここに来るまでの経緯を説明し始めた。
人間の王城に勤めていたこと。王女のワガママに疲れて城を飛び出してきたこと。師匠に会うために魔王城に来たこと。ついでなら魔王様に雇ってもらえたら嬉しいなーという事。
説明し終えると、全員から呆れたような顔で見られた。
『・・・素直に同情出来ない部分が多いが、その師匠というのは誰なんだ』
ドラゴンさんのその言葉に、私は少し考えたあと苦笑しながら答える。
「先々先代の魔王の娘です」
私の言葉に魔将達は勢いよく膝を折って崩れ落ち、四天王は両手で顔を覆い、地面に崩れ落ちた。
そう、私の師匠は私と友達パーティーが前世で倒した魔王の娘。ムキムキマッチョの魔王の娘だったのだ。魔族の歴史の中でも、ある意味有名人だったりする。男好きで筋肉好きの変態として。私の前の旦那も食われかけた。全力で阻止したから大丈夫だったけどね!
魔族の平均寿命は魔力の量で決まるから、ここにいる魔将や四天王の内誰かは実際に会ったことがあるかもしれない。
私もまさかね、前世で殺した相手の娘が今世で師匠になるとは思わなかったよ。というか、あの魔王に娘がいるとは思わなかった。
世の中わかんないもんだね、うん。
私がしみじみと過去の思い出を懐かしんでいると、魔将と四天王を蹴飛ばしてこちらに歩いてくる人物がいた。魔将と四天王以外の人物なんて一人しかいない。
今代の魔王が私の方へと歩いてきていた。初めて見る今代の魔王を見て一言言いたい。
なんで覆面マスク被ってるんですかね。




